100を超える宇宙ビジネス企業とゆく年くる年、2025年のトピックと2026年の展望
2025年、日本で活動された100を超える宇宙関連企業のゆく年くる年アンケートをまとめました!各社の2026年の市場予測もまとめています。
はじめに
2025年は、読者の皆様にとって、どのような1年でしたか?
今年もSpaceXの躍進に目を見張る1年でした。全長123mの再使用型ロケット「Starship」の打上げが5回行われ、今年最後の打上げでは見事計画通りの成功となりました。来年は順調に進めば衛星の軌道投入も行われる計画です。また、同じくSpaceXがサービス提供するStarlinkは、契約数が900万を突破しました。2024年12月時点では460万だったことを考えると約2倍となっています。
また、光学センサを搭載した地球観測衛星のコンステレーションを構築し、世界をリードするPlanet Labsは、4四半期連続で調整後EBITDA(税金・借金の利子・減価償却などを除外して、本業における現金創出力を測る指標)で黒字を達成しています。安全保障用途を主とした政府機関との大規模な契約獲得が成長の鍵となっています。
日本に目を向けると、2025年はH-IIAロケットが6月「GOSAT-GW(いぶきGW)」を搭載したラストフライトで、見事打上げ成功。有終の美を飾りました。今後、後継機となるH3ロケットに基幹ロケットの座を譲ることとなりました。
そのH3ロケットは、2025年2月2日に「みちびき6号機」、10月26日に「新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)」の打上げに成功しましたが、12月22日の打上げを行った「みちびき5号機」は、第2段エンジンの燃焼に不具合があり、所定の軌道投入ができず失敗となりました。現在、原因の調査を進めており、早期の打上げ再開が望まれます。
また、2025年は、特命担当大臣(知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策、経済安全保障)の経験がある高市早苗さんが日本初の女性総理大臣に就任。国家戦略技術として6分野が選定され、そのひとつに宇宙が含まれています。宇宙戦略基金も第2期のテーマを募集し、採択結果が発表され、国策としての宇宙技術開発への注目が高まっています。
日本の民間企業の動向としては、8月にアクセルスペースの上場もありました。日本で「ニュースペース」という言葉が騒がれ始めた時代から日本の宇宙スタートアップを牽引した企業がまたひとつ上場することとなりました。
今回のゆく年くる年の企画に回答いただいた企業の数は100を超えました。日本では、アクセルスペースやispace、QPS研究所、Synspective、アストロスケールといったニュースペースを牽引した企業を第一世代とするならば、第二世代、第三世代とも言える新たな宇宙スタートアップが続々と誕生し、これまで宇宙産業とは関係のなかった企業の宇宙参入も増えています。
象徴的だったのは2025年11月25日発売、Forbes JAPANの2026年1月号の特集「日本の起業家ランキング2026」にて、アークエッジ・スペースの福代孝良さんが1位に輝いたこと。年の瀬に日本の宇宙産業が湧いた一大ニュースでした。過去には「日本の起業家ランキング2019」にて、アストロスケールの岡田光信さんも受賞しています。
さらに、2025年4月に始まり、半年にわたって開催された大阪・関西万博を訪れた方は、各国が宇宙開発をテーマとした展示があり、宇宙開発が夢やロマンを語るだけではなく、私たちの生活に身近なものとして近づいてきていることを実感した方も多いのではないでしょうか?
『宙畑』では2020年より「宇宙ビジネスゆく年くる年」と題して、1年の振り返りと新年の抱負について、さまざまな宇宙ビジネス企業にアンケートをさせていただき、宇宙ビジネスの盛り上がりを読者の皆様に紹介しています!
今回のアンケートでは、年末のお忙しい時期にも関わらず、総勢100を超える企業・法人に回答をいただきました。回答いただいた皆様には、あらためて御礼申し上げます。
※回答いただいた企業社数は記事公開後も随時更新いたします。
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第6回目となる今年は以下4つのメインの質問をお伺いしました。
・2025年のトピック
・顧客と提供価値について、実事例と今後狙っていきたい理想的なユースケース
・2026年の抱負
・求人情報(任意)
そのほか、宇宙ビジネスの市場規模や投資額が2026年はどのように増減すると思うかといった質問にも回答いただきました。
「この企業の計画はここまで進んでいたのか」「この企業はこんなこともやっていたのか」「来年が楽しみだな」と年末年始のおともに記事をご覧いただけますと幸いです。
また、本年のアンケートも昨年同様に、宙畑がご連絡できた宇宙ビジネス企業の皆様に、アンケートの依頼をさせていただきました。今年連絡がきていない企業の方で、来年以降ご協力いただける企業様がいらっしゃいましたら、ご連絡をいただけますと幸いです。
各社の回答詳細はこちらからご覧いただけます。
※本アンケートは2025年12月10日(水)を締切として各企業様に記載いただいたものであり、一部内容について、最新の状況を反映していない箇所もある点、ご留意ください。
また、本記事は、ご覧の各社の皆様に協賛いただき、制作しております。皆様の温かいご支援に感謝申し上げます。ご協賛いただいたお金は、日本の宇宙産業発展に繋がる、より良い記事の企画・制作をするため、ありがたく活用させていただきます。
(1)回答いただいた宇宙ビジネス企業紹介
以下、今回アンケートに回答いただいた企業・法人を主なサービス分野に分けてまとめました。
(敬称略、五十音順)
◆製造・インフラ・コンポーネント部門
株式会社アークエッジ・スペース
株式会社IHI
株式会社アストレックス
AstroX株式会社
イセ工業株式会社
出光興産株式会社
インターステラテクノロジズ株式会社
株式会社インフォステラ
株式会社荏原製作所
NPO 円陣スペースエンジニアリングチーム
株式会社Orbital Lasers
株式会社アクセルスペースホールディングス
株式会社ワープスペース
Kick Space Technologies株式会社
株式会社QPS研究所
シスルナテクノロジーズ株式会社
将来宇宙輸送システム株式会社
株式会社Synspective
スカパーJSAT株式会社
株式会社SPACE WALKER
株式会社Space Compass
トヨタ自動車株式会社 (TOYOTA MOTOR CORPORATION)
日揮グローバル株式会社
日本電気株式会社(NEC)
PDエアロスペース株式会社
富士通株式会社 宇宙ビジネス推進室
株式会社Fusic
株式会社Pale Blue
三菱電機株式会社
株式会社MJOLNIR SPACEWORKS
湯本電機株式会社
Letara株式会社
◆利用部門(地球観測データや測位情報、宇宙空間利用など)
株式会社AOZORA
株式会社Agriee
株式会社アグリライト研究所
Archeda, Inc.
株式会社WHERE
宇宙サービスイノベーションラボ事業協同組合
ウミトロン株式会社
衛星データサービス企画株式会社
株式会社ALE
株式会社Exspace
NSW株式会社
株式会社オーイーシー
合同会社 Oppofields
株式会社Gaia Vision
株式会社グリーン&ライフ・イノベーション
株式会社GLODAL
サグリ株式会社
株式会社スペースシフト
Space Tech Accelerator株式会社
株式会社スマートリンク北海道
ソフトバンク株式会社
株式会社デジオン
株式会社Tellus
日本地球観測衛星サービス株式会社
株式会社New Space Intelligence
株式会社パスコ
株式会社ハレックス
株式会社Helios
Penguin Labs合同会社
松嶋建設株式会社
株式会社Marble Visions
株式会社MIERUNE
有人宇宙システム株式会社
YuMake株式会社
LAND INSIGHT株式会社
株式会社Ridge-i
一般財団法人 リモート・センシング技術センター
◆人類の宇宙活動領域拡張
Amateras Space株式会社
株式会社ElevationSpace
株式会社DigitalBlast
栗田工業株式会社
株式会社TOWING
日揮グローバル株式会社
Fuseki株式会社
◆宇宙の持続可能性
株式会社アストロスケール
株式会社Orbital Lasers
◆人材・教育部門
株式会社インバイトユー
株式会社sorano me
フォースタートアップス株式会社
株式会社レヴィ
◆商社・コンサル部門
ASTRO GATE株式会社
EY新日本有限責任監査法人
株式会社INDUSTRIAL-X
KPMGコンサルティング株式会社
SEESE株式会社
Space BD株式会社
株式会社Space Food Lab.
PwCコンサルティング合同会社
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
株式会社minsora
株式会社理経
◆保険
東京海上日動火災保険株式会社
三井住友海上火災保険株式会社
◆非営利団体・一般社団法人
一般社団法人クロスユー
一般社団法人SPACETIDE
一般社団法人Space Port Japan
一般社団法人Space Medical Accelerators
◆メディア・コンテンツ・エンターテイメント
株式会社ALTILAN
株式会社クロスアーキテクツ
株式会社SpaceBlast(SPACE Media)
日本テレビ放送網株式会社
株式会社バスキュール
株式会社4X(UchuBiz)
◆その他
株式会社日本政策投資銀行
三菱倉庫株式会社
(2)2025年の注目ポイント
それぞれの部門紹介に入る前に、宙畑編集部が注目した今年のアンケートの注目ポイントをご紹介します!
1.宇宙戦略基金や民間投資が日本の宇宙技術開発の起爆剤に
2024年からさまざまな宇宙技術開発の公募が始まった宇宙戦略基金。第1期で採択された企業が動き始めたこともあり、各社の回答に「宇宙戦略基金」という言葉が並びました。
また、インターステラテクノロジズへのウーブン・バイ・トヨタからのシリーズFでの70億円の出資や日本テレビ放送網のFrontier Innovationsの宇宙ディープテックファンドへの出資など、誰もが知る日本企業が宇宙スタートアップに出資するというニュースもありました。宇宙事業会社であるスカパーJSATも不動産取引を宇宙から支援する「WHERE」、カーボンクレジット創出事業を展開する「Green Carbon」と資本業務提携を発表するなど、民間企業からの宇宙産業への投資も加速しています。
宇宙ビジネスに限らない話ではありますが、事業を生み出すためにはヒト・モノ・カネが不可欠です。その上で、始めるための第一歩、そして、技術開発を続けるために資金が重要であり、宇宙ビジネスは特に初期投資が必要な産業です。国策の重要投資分野として、民間企業が期待する産業として宇宙産業が期待され、資金が集まり始めていることをますます感じさせる1年だったように思います。
2.宇宙業界に必要なさまざまな人材
今回のアンケートでは「貴社の求人状況と求める人材像について教えてください」という回答任意での質問を各社様にお伺いさせていただきました。その結果、7割の企業が任意回答にも関わらず、自社の求人状況と求める人材像を教えていただきました。
宇宙戦略基金の開始はもちろんのこと、宇宙スタートアップの上場、宇宙スタートアップの起業もこの数年で増えており、宇宙産業の人材は必須の状態となっています。
国内最大級の国際宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE」を開催するSPACETIDEが新規事業として、宇宙業界への転職者や参入者向けの宇宙ビジネス基礎研修プログラム「SPACETIDE Academy」を開講したのも今年でした。
他にも、宇宙業界に特化した人材エージェントであるインバイトユーや、スタートアップ専門エージェントのフォースタートアップスといった人材事業における宇宙業界への転職支援も活発化しているようです。
各社の求人状況については、ぜひ、回答詳細のPDFをご確認ください。
3.2025年の注目キーワードは共創・共同研究
2025年の振り返りと2026年の抱負に関する各社の回答で、多くの企業・法人の回答にあった、宙畑編集部が注目したキーワードのひとつは「共創・共同研究」です。
すでに紹介したスカパーJSATの宇宙スタートアップとの資本業務提携についても、スタートアップ共創が目的であり、今後もその動きを加速させると回答がありました。
SPACETIDEの「2026年は、国際宇宙ビジネスカンファレンス『SPACETIDE 2026』において、これまで以上に多様な国・地域・産業の方々が共創する場を目指す」という回答からも、共創する場の創出が今後も重要なテーマであることが分かります。
他にも、宇宙産業共創プラットフォームをコンセプトに、非宇宙企業・団体と宇宙産業の接点を創出し、拡大する宇宙産業の更なる成長を支援するクロスユーは会員数が340を超え、年間270回以上の会員主催イベントを超えたそう。同団体が運営するイベント「NIHONBASHI SPACE WEEK」の内容をさらに充実させ、共創事例の創出を推進すると回答しています。
では、実際にどのような共創・共同研究が2025年に生まれたのか。
ひとつは、すでに紹介したトヨタ自動車とウーブン・バイ・トヨタがロケット開発のインターステラテクノロジズと本格的なパートナーシップを結んだことでしょう。トヨタグループの長年培ってきたモノづくりの知見がロケット開発に活用されることで、日本における宇宙輸送技術の進化が大きく期待されるニュースでした。
「Toyota Woven City」の「Inventors」としてインターステラテクノロジズが宇宙企業として初参画、5社・団体との打上げ契約も発表【宇宙ビジネスニュース】
また、共創・共同研究は大企業と宇宙スタートアップのコラボだけではありません。大阪・関西万博で西陣織を用いた次世代宇宙服「VESTRA」を公開したAmateras Spaceは「京都大学・山敷教授、岐阜医療科学大学・田中教授との共同研究により、有人宇宙開発を牽引するスタートアップとしてのポジションを一段と確立できた1年だった」と回答。宇宙スタートアップとアカデミアの共創も今後加速することが期待されます。
地上局のシェアリングサービスを提供するインフォステラは、3月にインドのDhruva Space、6月に韓国のCONTEC、10月にイタリアのLeaf Spaceと世界的なGSaaSプロバイダーと立て続けに提携を発表。グローバルでの地上局提供能力が数・質の両面で飛躍的に拡大しています。
株式会社アークエッジ・スペースは、TICAD9、COP30、中央アジアサミット等の首脳級イベントに参加し、衛星およびこれらのデータ活用を中心に、10か国・25件の覚書等を締結して、グローバル展開を加速したとのこと。
さらに、宇宙戦略基金第1期の技術開発テーマ「衛星データ利用システム海外実証(フィージビリティスタディ)」にて「サステナブル調達に寄与する衛星データを活用したパームヤシ農家支援アプリ開発」の技術開発で採択されたSpace Tech Acceleratorは、2025年の振り返りで「農家400人を束ねる農協でのユーザテストに着手し、農園から調達企業までを結ぶ『現場連携インテリジェンス技術』の実装可能性を明確化。あわせて、現地機関・行政との連携体制も大きく前進」と回答いただきました。また、2026年の抱負は「日本企業との連携に加え、欧米を含むグローバル全体で、サプライチェーンがどうあるべきかを議論し、産業構造の“あるべき姿”を共創できる体制の確立を目指す」とのこと。
大企業と宇宙スタートアップ、宇宙スタートアップとアカデミア、国内宇宙企業と海外宇宙企業との提携、宇宙関連企業と宇宙を活用したビジネスを利用する顧客、宇宙関連企業と海外政府……さまざまな共創・共同研究の形が見られた2025年でした。
(3) 製造・インフラ・コンポーネント部門
製造・インフラ・コンポーネント部門では、宇宙ビジネスを推し進めるために欠かせない、産業を下支えする役割を担う企業のゆく年くる年を紹介します。
例えば、衛星が宇宙で活動するために、衛星を宇宙まで運ぶロケットが必要であり、衛星が観測したデータが地上で使えるようになるためには、衛星から地上のインターネット回線まで何らかの手段でデータを輸送(通信)する必要があります。
また、衛星製造はもちろんのこと、ロケットや衛星を開発する際に必要な部品・コンポーネント・素材、環境試験を行うための設備提供、宇宙機を計画通りに運用するためのソフトウェア開発などが本部門にあたります。
本部門でアンケートに回答してくださったのは以下の企業です。
===
株式会社アークエッジ・スペース
株式会社IHI
株式会社アストレックス
AstroX株式会社
イセ工業株式会社
出光興産株式会社
インターステラテクノロジズ株式会社
株式会社インフォステラ
株式会社荏原製作所
NPO 円陣スペースエンジニアリングチーム
株式会社アクセルスペースホールディングス
株式会社ワープスペース
Kick Space Technologies株式会社
株式会社QPS研究所
シスルナテクノロジーズ株式会社
将来宇宙輸送システム株式会社
株式会社Synspective
スカパーJSAT株式会社
株式会社SPACE WALKER
株式会社Space Compass
日本電気株式会社(NEC)
PDエアロスペース株式会社
富士通株式会社 宇宙ビジネス推進室
株式会社Fusic
株式会社Pale Blue
三菱電機株式会社
株式会社MJOLNIR SPACEWORKS
湯本電機株式会社
Letara株式会社
===
年間30本以上の日本からのロケット打ち上げに向けて各社の技術開発が進行
今、宇宙戦略基金基本方針では2030年代前半までに国としての打上げ能力を年間30件程度確保することが目指されています。
冒頭でご紹介した通り、2025年はH-IIAロケットが50号機でラストフライトとなり有終の美を飾りました。H-IIAロケット全体の開発を推進していたのは三菱重工ですが、IHIグループが開発・製造した固体ロケットブースタ(SRB-A)、ロケットエンジン用ターボポンプ、第2段ガスジェット装置(姿勢制御装置)、火工品、ロケット搭載カメラ等が搭載されていました。また、H3ロケットにおいても、IHIグループは同様の部品を開発・製造しています。そのうえで、「イプシロンロケットの打上げ早期再開に向けて、引き続き着実に取り組んで参ります」と日本の基幹ロケット(安全保障を中心とする政府のミッションを達成するため、国内に保持し輸送システム の自律性を確保する上で不可欠な輸送システム)を支える企業としての抱負を語っていただきました。
一方で、2030年代前半の打上げ件数目標に対して、基幹ロケットだけでは年間10件程度が限界と考えられており、残りの20件をカバーするには、民間ロケットの活用が不可欠です。そのため、民間企業によるロケット開発、射場の整備がどんどん進んでいます。
すでに紹介したインターステラテクノロジズの他、AstroX、将来宇宙輸送システム、スペースワン、PDエアロスペースといった民間企業がロケット開発を進めています。
「宇宙開発で“Japan as No.1”を取り戻す」というビジョンを掲げるAstroXは「シリーズAラウンド1stクローズでの18億円資金調達を通じて、人材採用やパートナー連携を加速し、2026年の宇宙空間到達に向けた準備を本格化」した1年だったと振り返り、2026年を「宇宙空間到達に向けたRockoonシステムの統合試験と技術実証をやり切る一年」と抱負を語っていただきました。
将来宇宙輸送システムは、「再使用型ロケット開発及び将来的な事業化に必要な連携を深めていくことができた」と「JFEエンジニアリング及び旭化成と連携し、ロケットの製造・組立・試験の拠点を確保」や「日本旅行と『宇宙旅行サービスの商用化フェーズに向けた業務提携契約』を締結」など、具体例を教えていただきました。後述するハイブリッドエンジンを開発するLetaraの回答にも将来宇宙輸送システムの名前があり、連携強化が進んでいることを実感しました。
PDエアロスペースは2025年の振り返りとして「R&Dを基軸とした新規開発を行っていくが、培った開発力・技術力を他の宇宙系スタートアップや研究機関の開発を請け負う形でサービス化していける段階にあり、実施を開始」、2026年の抱負は「新型エンジンの完成および販売(受注)開始」と、これまで築いた知見と技術力の事業化についても言及いただきました。
また、ロケットエンジンに関わる開発を行っていることを回答いただいたのは荏原製作所、Letara、MJOLNIR SPACEWORKSの3社でした。
荏原製作所は、ロケットエンジン用電動ターボポンプの実液(燃料:液体メタン、酸化剤:液体酸素)運転試験を完了し、Letaraは、ハイブリッドロケットエンジンおよび衛星用エンジンの迅速な開発に成功。MJOLNIR SPACEWORKSは、ロケットエンジン燃焼試験の高頻度実施を達成と、着実に技術開発が進んでいることを教えていただきました。
さらに、日本の基幹ロケットにも関わり、直径4.5インチまでの中口径アルミ材のパイプ加工に強みを持つイセ工業は、H3ロケットでの実績から国内小型ロケットベンチャー企業数社と開発協力をすることになったそう。日本がこれまでさまざまな工業製品で培ってきたものづくり技術は、日本の宇宙産業成長を加速させる基盤となっています。
各社の衛星が続々と打ち上がり、新衛星の開発、衛星の量産化も加速
2025年は、日本の民間企業が関わる衛星が続々と打ち上げられた1年でした。
冒頭にも紹介した今年打上がった準天頂衛星「みちびき」、温室効果ガス観測技術衛星「GOSAT-GW」、HTV-X1号機は、三菱電機が開発・製造に携わっています。
2026年には火星衛星探査計画(MMX)の探査機の打ち上げも予定されており、同社が開発・製造に関わる宇宙機が続々と宇宙に運ばれる計画です
加えて、みちびきについては、NECの測位ミッションペイロードが搭載されています。NECは『改訂新版 人工衛星の”なぜ”を科学する』を2025年8月に発刊しています。人工衛星の仕組みや役割について、ちょっと深い技術と合わせて学びたい方は、ぜひ購入の検討をしてみてはいかがでしょうか。
また、小型SAR衛星のコンステレーション構築を進めるQPS研究所は、3月の9号機を皮切りに、5月・6月・8月・11月と打上げを重ね、順調に運用・初期運用を進めています。また、12月21日にも打上げに成功しています。
九州に拠点を置き、2007年から最先端産業の分野に関わるNPO法人である円陣スペースエンジニアリングチーム(略称:e-SET)には、2025年の振り返りとして、QPS研究所の衛星のメカ系の製作を行ったことを回答いただきました。
QPS研究所と同じく小型SAR衛星の開発を行うSynspectiveも、7機目となる第3世代SAR衛星の打上げに成功しています。さらに、Rocket Labと合計20機分のマルチローンチ契約を締結しており、衛星コンステレーションの構築に向けて着々と計画が進行しています。
Rocket LabのCEOであるピーター・ベック氏が来日された際に、日本の宇宙企業や市場の将来性について質問した際に以下のような回答をいただきました。
「日本は私たちにとって非常に重要な市場です。Synspectiveは重要な顧客ですし、QPS研究所やアストロスケールの衛星も打ち上げました」「日本の宇宙企業に共通しているのは、これまでにない画期的でユニークなことをやっている点です」「日本の宇宙産業は起業家精神に溢れた始まりの時期にあると思います。私たちRocket Labは世界中の国の企業と仕事をしていますが、日本の宇宙市場が急成長していること、そして企業の質の高さを実感しています」
日本の宇宙産業に対する海外からの評価を直接聞くことができたことは宙畑としても非常にありがたい体験だったことが今もなお鮮明に思い出されます。
史上最大規模。SynspectiveがRocket Labと10機の衛星打ち上げに合意【宇宙ビジネスニュース】
光学センサを搭載した地球観測衛星に関わる宇宙企業では、2025年6月に、アクセルスペースが次世代地球観測衛星「GRUS-3」の性能検証衛星「GRUS-3α」を打上げました。GRUS-3は2026年内の7機打上げを発表しています。
宇宙戦略基金第1期の技術開発テーマ「高分解能・高頻度な光学衛星観測システム」に採択された株式会社Marble Visionsも2025年4月にプロジェクトを本格的に開始。高解像度・高頻度3D空間情報とデジタルツイン・プラットフォームに期待が高まります。
さらに、株式会社アークエッジ・スペースは、自社衛星7機を並行開発、その全てで軌道上実証に成功しました。ONGLAISATでは6Uとして世界最高レベルの地上分解能(2.5~3.0m)を達成、AE2aではハイパースペクトル画像の撮像に成功、VDES衛星ではAIS信号の受信に成功……と、さまざまなミッションに対応した衛星を開発できることを証明しました。
「2026年は、2025年に軌道上で得られた実証衛星の成果をもとに、コンステレーション構築に向けた具体的な取り組みを一層加速させる一年にしたいと考えています。複数機運用を前提とした開発・運用体制を磨き上げ、衛星データを安定的かつ継続的に提供できる基盤づくりを進めます」と、抱負を教えていただきました。
また、宇宙機開発に携わる新しい企業も現れました。Kick Space Technologies株式会社は、九州工業大学発ベンチャーとして2025年に創業。超小型人工衛星の設計製造サービスを顧客に提供しています。
宇宙技術戦略にも記される日本のサプライチェーンの強靭化と事業化に向けて
上述したイセ工業のように、ロケット開発、衛星開発を行う上で、重要な部品・コンポーネントの安定した供給のための国産化は、経済安全保障の観点で近年注目されています。
本領域において「永きに渡りインキュベーションしてきた成果がようやく皆様の目に見える形になってきました」と回答いただいたのは出光興産です。同社が開発中の宇宙用CIGS太陽電池は、放射線耐性が極めて高いことが特長です。顧客の宇宙機の寿命延命や、より放射線環境が厳しい軌道用途(例えば中軌道)に貢献することが期待されています。
SPACE WALKER は、長年の有人飛行に向けたスペースプレーン開発で培った技術資産と産業ネットワーク基盤を活用した事業拡大として、2025年8月に「高頻度往還に資する宇宙輸送向けコンポーネント提供事業」へ進出しています。2026年は、宇宙輸送向けコンポーネント事業の本格拡大を図り、まずは国内市場における推進系・構造系製品の開発と受注生産案件の更なる獲得を推進するとのこと。
また、人工衛星用バッテリーユニットやPCU、PDUで多くの実績を持つアストレックスは「2025年は人工衛星の利活用を通じた宇宙技術の社会実装が本格化し始めた年と考えられることから、ホームページの刷新や展示会出展など、これまで限られたお客様へ提供していた弊社宇宙技術の情報を広く知っていただくための活動も新たに展開しました」とのこと。特に50~100kg級小型衛星に対して既存技術を高めながら品質保証や生産体制の強化などを通じて今まで以上の価値をお客様に提供するなど、宇宙産業の拡大を肌で実感できるコメントをいただきました。
他にも、湯本電機は気球での宇宙遊覧サービスを手掛ける岩谷技研に部品を製作して納品。同社の宇宙部門は「Stella Mechanics」という名前で商標も取得して活動しています。NIHONBASHI SPACE WEEK 2025にも初出展し、来場者のお話を聞く中で「より宇宙業界の注目度と将来性を感じることができた」と宇宙産業の可能性も見えた1年であったと教えていただきました。
シスルナテクノロジーズは、同社が月周回衛星バス開発で参画しているTSUKIMIプロジェクトが宇宙戦略基金1期に採択され、実際にispace社のランダーに搭載され月に輸送されることが決定しています。
さらに、小型エンジンに搭載する水を利用した推進器開発を行うPale Blueは「宇宙実証が相次いだ年になった」と2025年を振り返ります。同社は今年で5周年を迎え、代表の浅川さんには宇宙実証の実績があることで海外企業からの信用獲得につながり、事業化が見込めることなど、宇宙実証の重要性についてインタビューで教えていただきました。
「人類の可能性を拡げ続ける」「スタートアップの勝ち筋はスピード」5周年を迎えたPale Blueの手応えと展望
今年は、JAXAの研究開発部門が実施していた「革新的衛星技術実証プログラム」「小型技術刷新衛星研究開発プログラム」、及び、JAXAの新事業促進部が実施していた「産学官による輸送・超小型衛星ミッション拡充プログラム(JAXA-SMASH)」等が再編された新たなプログラム、JAXA宇宙技術実証加速プログラム(JAXA-STEPS)も立ち上がりました。
また、アクセルスペースは、2020年より共同開発してきたASPINA シナノケンシのリアクションホイールの打ち上げと軌道上実証も予定。「急拡大する宇宙用コンポーネントの早期軌道上実証ニーズに今後も弊社の技術と経験を最大限活かして応えてまいります」と2026年の抱負を語っていただきました。
JAXAの取り組みとして、民間の事業として、宇宙実証の機会が増え、日本発の宇宙用部品・コンポーネントが、日本で利用されることはもちろんのこと、海外からも求められる事業として花開くことが期待されます。
射場、地上局設備、ソフトウェア開発……宇宙産業の成長を加速する領域の重要性高まる
ロケット、衛星開発、部品・コンポーネントをこれまで紹介しましたが、次章以降の宇宙を利用したサービスを私たちが提供してもらうためには、いわゆる宇宙ビジネスと聞いてイメージするようなモノづくり企業以外の多くの役割を持つ企業が欠かせません。
そのひとつが、ロケットを宇宙に打ち上げるための射場です。発射場設備の効率化に関する研究開発や、世界中のスペースポートの企画を進めるASTRO GATEは、Starlinkを活用した、ロケット発射場遠隔運用システムを開発。僻地での映像による監視や、IoT運用など、さまざまな展開を予定しているそう。
また、地上局がなければ、ロケットや衛星の運用ができません。さまざまな海外企業との提携を行った地上局シェアリングサービスを展開するインフォステラは「2026年は、これまでに構築してきた戦略的パートナーシップを、単なる準備や基盤整備にとどめず、実際のサービスとしてお客様にしっかりと届けていく年にします」と抱負を語っていただきました。
さらに、衛星と地上の通信だけではなく、宇宙空間に配備された衛星と衛星との通信にも注目が集まっています。株式会社ワープスペースは、宇宙戦略基金の第2期の技術開発テーマ「衛星光通信の導入・活用拡大に向けた端末間相互接続技術等の開発」で採択されました。2026年の抱負には、光モデムとデジタルツインシステムについては実証試験を行い、その成果を持って売買契約を複数成立させることが目標として掲げられ、着実な販売成績を立てていくことによる、黒字でのIPOが中期的な目標であると回答がありました。
また、株式会社Space Compassも2025年4月に光データリレー衛星の実証に向けた防衛省受注を獲得し、軌道上での高信頼・高速通信の確立に向けた事業開発を進めています。数年以内にGEO光データリレー衛星を打ち上げ、軌道上での高信頼・高速通信サービスを開始するという抱負を教えていただきました。
富士通株式会社は、軌道技術および地上運用技術を発展させた衛星運用インフラの高度化・効率化を提供価値として、多くの実績を積み重ねています。2025年は宇宙ビジネス推進室およびFDNS宇宙ソリューション事業部を発足し、宇宙エンジニアを集約。社内で、安全保障分野、民間分野、研究開発分野の3つの組織で、宇宙事業を加速させる体制を構築したそうです。
「宇宙 × クラウド」領域でさまざまな宇宙企業の支援を行う株式会社Fusicは「当社が強みとするAWS を活用したクラウド環境構築やデータ解析、システムインテグレーションの知見を業界と共有し、相互理解を深めたことで、宇宙事業拡大に向けた明確なロードマップを描くことができました」と1年を振り返りました。
実際に、アストロスケールとのコーポレートパートナーシップ、AWSアクセラプログラム参画、Kick SpaceやInfostellarとの提携など、クラウドに精通したプロとして、宇宙産業でその存在感を高める1年だったようです。
(4)衛星利用・衛星データ提供・プラットフォーム
衛星利用部門では、通信衛星、測位衛星、地球観測衛星を活用した地上の生活をより良くするためのサービス提供に関わる企業のゆく年くる年を紹介します。
ロケットや宇宙探査といった印象が強い宇宙産業ですが、その実態は現在も未来も、宇宙技術を活用した地上におけるサービス展開とその波及効果が市場規模の多くを占めています。
衛星利用部門の企業のマネタイズが成功し、衛星を利用したいという需要が生まれることによって、最終的にはロケットや衛星開発の需要や宇宙の持続可能性が必要であるという重要性が増します。つまり、衛星利用部門の成功は、宇宙産業全体の行く末を左右すると言っても過言ではありません。
では、日本で衛星利用サービスの拡大と発展に関わる企業にとって2025年はどのような1年だったのでしょうか。今回アンケートに回答してくださったのは以下の企業です。
===
株式会社AOZORA
株式会社Agriee
Archeda, Inc.
株式会社アグリライト研究所
株式会社WHERE
宇宙サービスイノベーションラボ事業協同組合
ウミトロン株式会社
衛星データサービス企画株式会社
株式会社ALE
株式会社Exspace
NSW株式会社
株式会社オーイーシー
合同会社 Oppofields
株式会社Gaia Vision
株式会社グリーン&ライフ・イノベーション
株式会社GLODAL
サグリ株式会社
株式会社スペースシフト
Space Tech Accelerator株式会社
株式会社スマートリンク北海道
ソフトバンク株式会社
株式会社デジオン
株式会社Tellus
トヨタ自動車株式会社 (TOYOTA MOTOR CORPORATION)
日本地球観測衛星サービス株式会社
株式会社New Space Intelligence
株式会社パスコ
株式会社ハレックス
株式会社Helios
Penguin Labs合同会社
松嶋建設株式会社
株式会社Marble Visions
株式会社MIERUNE
有人宇宙システム株式会社
YuMake株式会社
LAND INSIGHT株式会社
株式会社Ridge-i
一般財団法人 リモート・センシング技術センター
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農業分野での急速な社会実装
最も象徴的だったのが農業分野での展開です。
LAND INSIGHT株式会社の「圃場(ほじょう)DX」は前年比500%超の成長で120自治体への導入を達成。
株式会社アグリライト研究所は山口県産小麦「せときらら」の開花期追肥診断情報サービスが事業化3年目を迎え、2025年6月収穫分について2500筆の圃場へ情報提供を行いました。
サグリ株式会社は出光・LASUCOと連携したカーボンクレジット創出をスタートさせ、WEFテクノロジーパイオニアに選出されました。
Penguin Labs合同会社はNEDOが開催する衛星データ利用コンペ「NEDO Challenge –農林水産業を衛星データでアップデート!–」でファイナリストに選出され、気象・衛星データを統合した次世代農業インフラ「TWINZ Plus」への挑戦を本格化させています。
農林水産業を衛星データでアップデートする厳選されたアイデアが集結! NEDO Challenge, Satellite Dataのワークショップ参加レポート【PR】
スマートリンク北海道はセンシング画像による生育不良箇所抽出・スポット散布業務を拡大し、株式会社Agrieeは原材料の安定調達を支援するツール「GrowthWatcherバイヤーズ」をリリースしました。
Archeda, Inc.は自治体や林業事業における衛星利用(森林モニタリング)などを進めており、2026年は売上倍増を目指しています。
このように、農業×衛星データは、注目が集まり、社会実装も進んだ1年だったように思います。さらに、農林水産省の令和8年度予算概算要求における宇宙関係予算は、前年度比+97%とほぼ2倍。さらなる技術開発と社会実装が進むことが期待されます。
AI・DX技術との融合が加速
生成AIを含むAI技術と衛星データの融合も大きな潮流となりました。
株式会社デジオンは生成AIを用いた衛星データ活用ソリューション「DiXiM Imaging AI」を用いた農地調査支援サービス「イナリス Powered by DiXiM Imaging AI」が福岡県の支援事業に採択されました。
また、株式会社Ridge-iは「マルチモーダル解析」や「生成AI×衛星データ」の技術開発でメディアに多数取り上げられました。
株式会社GLODALではLLMの普及により5カ国体制での業務効率が大幅に向上し、NSW株式会社は日本工営様と協働して、ペルー政府向けに衛星SAR解析を提供して海外展開に貢献しています。
AIをキーワードに上げた企業は他にもあります。株式会社AOZORAは、「日本発の小型マイクロ波観測衛星とAI気象を組み合わせた新たな防災・産業ソリューションを実装し、観測 × AI × 産業の三位一体で世界の気象レジリエンス向上に寄与したい」と、AIを使った気象分野への貢献を目指しています。
防災・インフラでの実証進展
防災分野では、衛星データサービス企画株式会社が2025年4月から日本版災害チャータの実証サービスを開始し、実災害時における衛星データの提供を行っています。
宇宙サービスイノベーションラボ事業協同組合は、アジアオセアニア地域でGNSSの利用促進を行うMGA(Multi-GNSS Asia)の事務局に選定され、フィジーでQZSSを活用した津波早期警戒システム、オーストラリアで森林火災時の避難誘導支援を実証しました。
松嶋建設株式会社は大規模津波総合防災訓練に衛星画像解析チームとして参加しています。また、同社は、CONSEOにおける衛星画像利用促進イベントの担当企業として富山でのイベント開催に全面協力していました。宙畑も参加させていただきましたが、実際の災害時にどのように衛星データが活用されるのか、また、衛星データではまだ解決されないことがあるのかを実感できる非常に素晴らしい機会でした。
Gaia Visionは洪水予測に加え土砂災害や水資源の予測技術開発に着手し、宇宙戦略基金の連携機関として採択されました。
実は、トヨタ自動車もSAR衛星データと地上データを組み合わせた浸水域解析に以前から取り組んでいます。2025年は「人とクルマのテクノロジー展」(横浜・名古屋)に出展し、多くの方々に高い関心が寄せられたそうです。
株式会社New Space IntelligenceはMETI-SBIR大規模プロジェクト3年目で校正・統合技術が実用段階に近づき、鉄道インフラ監視での活用検討が進んでいます。
不動産・インフラ分野では、株式会社WHEREがユーザー数100社を突破、WHEREアメリカ版をCESで発表し、世界初の「宇宙×不動産カンファレンス(SRC2025)」には1000人超の申込がありました。株式会社オーイーシーは大分県で固定資産税業務の効率化実証を実施しています。
また、一般財団法人リモート・センシング技術センターは漏水調査サービス「mizuiro」を開始しました。
株式会社ハレックスは、2025年に宇宙分野へ踏み出しました。株式会社ハレックス・株式会社スペースシフト・Tellusの3社で、防災・減災分野につながる世界初の生成AI衛星自動タスキングを成功させました。
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衛星×気象×AIが創る次世代の防災・減災「衛星データ×気象データで切り開く新時代の防災とは」イベントレポート
データプラットフォームと多様な展開
データプラットフォーム分野では、株式会社Tellusが「Tellus AI Playground」と「Tellus Pro」をリリースして衛星データとAIの融合を牽引。
【衛星データ×基盤モデル】Tellus AI PlaygroundでAIモデルを動かしてみた!
Tellusが法人向け新サービス「Tellus Pro」を発表! データの取得・処理・共有をクラウドで一元化
また、Tellusは宇宙戦略基金の技術開発テーマ「地球環境衛星データ利用の加速に向けた先端技術」にも採択されており、国産衛星データプラットフォームのさらなる進化を実現します。
株式会社パスコはMarble Visionsへの参画やALOS-4データ・サービス事業者の特定など新たな取り組みを進め、伊藤忠商事株式会社の資本参加により展開を強化しました。
株式会社スペースシフトでは、Claudeなどの生成AIとAPI連携可能な解析サービスのβ版も公開し、AI活用を前提とした新たな利用シーンの創出に取り組んでいます。
環境分野では、衛星データサービス企画株式会社が温室効果ガスモニタリングの取組みをCOP30で紹介し、ウミトロン株式会社は宇宙戦略基金事業で養殖業向け海洋空間計画を開発、Space Tech Acceleratorはパーム油サプライチェーンを対象としたフィージビリティスタディにおいて、農協でのユーザテストに着手し現地機関との連携を前進させました。
エコシステム形成と基盤強化
衛星データ利用の技術支援やエコシステム形成も活発化しました。
合同会社Oppofieldsは小中高生向け研修を実現して利用者の裾野を拡大。株式会社MIERUNEはオープンソースGISソフト「QGIS」のラージスポンサーに昇格しました。
その他、株式会社Heliosはシードラウンドの調達を完了しサービスのプロトタイプを完成させました。
また、株式会社グリーン&ライフ・イノベーションは取引先を増やし地上・衛星リモートセンシング統合アプローチを構想。
YuMake株式会社は気象・衛星データ統合の取り組みを推進したことを回答いただきました。
日本地球観測衛星サービス株式会社はデータの活用領域が業界・業務問わず拡大し、小規模な試行錯誤から大規模な活用までさまざまな活用形態が生まれたそうです。
(5)人類の宇宙活動領域拡張
人類の宇宙活動領域拡張部門では、月面や宇宙空間で人類が暮らしていくための技術・サービスについて提供している企業のゆく年くる年を紹介します。
これからの宇宙ビジネスは、人工衛星を利用したサービスにとどまりません。ISSのような宇宙ステーションが数多く計画され、月面滞在、火星探査などの構想が進むなか、新しい宇宙インフラの開発も進んでいます。
今回アンケートに回答してくださったのは以下の企業です。
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Amateras Space株式会社
株式会社ElevationSpace
株式会社DigitalBlast
栗田工業株式会社
株式会社TOWING
日揮グローバル株式会社
Fuseki株式会社
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ヒト・モノが宇宙と地球を高頻度に往還する時代に必要なインフラ
現在、新薬創出のための宇宙空間でのタンパク質の結晶化や農作物の育成実験が行われていますが、そのような宇宙実験を行った際に、地球にその成果を持ち帰る手段は限られています。宇宙に実験設備を輸送する機会も限られているのですが、成果を持ち帰るための機会も実験が終わったらすぐに地球に戻すことができず、一定の期間を待って持ち帰ることとなります。
しかし、これからは複数の商用宇宙ステーションが運用されることになるため、実験を行う機会は増えることが想定されます。そこで、宇宙戦略基金「高頻度物資回収システム技術」に採択され、宇宙ステーションなどの有人拠点から、実験サンプルや製造物資を地球にタイムリーかつ高頻度で回収するサービス「ELS‐RS」の実現に向けたシステム開発を加速したと回答いただいたのは株式会社ElevationSpaceです。
また、ElevationSpaceは有人拠点での実験に限らず、無人宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」も開発しています。2026年後半以降に日本初・民間主導の再突入衛星「あおば」を打上げ予定とのことで、その結果にも注目です。
宇宙環境を利用したサービスを提供・仲介する企業も、未来の宇宙ビジネスが拡大する時代においては欠かせない存在です。
株式会社DigitalBlastは、宇宙環境利用(ライフサイエンス及び半導体製造)および軌道上データセンターサービスを軸とした、積極的な海外展開と地方創生への取り組みを推進。タイ王国およびオーストラリアの研究者と共同で研究計画を策定し、宇宙×ライフサイエンス領域についてのプロジェクトを組成しています。
また、地域創生という観点では、埼玉県加須市産の種籾(たねもみ)をISS(国際宇宙ステーション)「きぼう」日本実験棟へ届けるプロジェクトが進行中です。「きぼう」で一定期間保管された後、地球に帰還させてブランド米を生産するとのことで、その味や(市販される場合は)値段が非常に気になるところです。
食料、水、プラント……人類が宇宙探索し、滞在する時代に必要なモノ・コト
人類が宇宙を探索し、滞在する時代に必要なモノと言えば何を想像しますか?
例えば、宇宙服。2025年の注目キーワード「共創」というパートでも紹介しましたが、Amateras Space株式会社は、大阪・関西万博にて西陣織を用いた次世代宇宙服「VESTRA」を初公開。同社は、日本の素材・技術を結集した“オールジャパン型”宇宙服開発を進めています。
また、食べ物や水を宇宙に人類が滞在する時代に必要なモノとして想像する方も多いでしょう。
日本にも、宇宙での食、そして、水をどうするかという課題に対してさまざまな技術開発を行っている企業が複数存在します。
例えば、水処理技術で私たちの生活を支える栗田工業株式会社は2025年を大きな転換点だったと振り返ります。「宇宙水資源開発室」として、これまでの技術探求フェーズから事業化を目指すフェーズへ移行。具体的には、ispaceと月面水資源の確保・供給インフラ構築に向けた戦略的パートナーシップを締結。また、株式会社日本低軌道社中が開発を進めるISS退役後の宇宙利用構想において、日本モジュールを活用した産業横断の協議・連携に参画し、低軌道での水再生・循環インフラ技術の検討を開始したと回答いただきました。
また、食べ物については、株式会社TOWINGは「SPACE FOODSPHEREやStardust Programの中で、宇宙農業システムの開発を実施し、成果を上げた」と1年を振り返ります。同社は千葉大学、プランテックス、農研機構とともに「品種開発と生育制御技術を融合した生産性向上の開発、および月の資源を用いた人工土壌の開発」を担当していました。
さらに、人が月面に降り立ち、探査・滞在を行う未来に向けて事業を進めているのは日揮グローバル株式会社で、JAXA事業「月面推薬生成プラントの実現に向けた地上実証プラントの基本設計及び要素試作試験等」に採択されています。月面の水資源を活用した水素・酸素の燃料を生成する推進薬プラントについては、2021/2022年度のJAXAとの連携協力協定から始まり、本年は地上実証プラントの基本設計にまでフェーズが進んでいるそうです。
同社は「有人与圧ローバー開発に係る技術管理支援業務」にも採択されており、NASAとの技術的な調整の支援やプロジェクト遂行に必要な文書類の案作成およびトレーサビリティ管理などを行っているそうです。
言われてみれば当たり前の話かもしれませんが、宇宙開発において必要なのは技術開発だけではありません。各国・各企業との調整や誰が見ても理解できるような文書類の作成も重要な役割のひとつであり、それを担う企業が存在するのです。
このように、宇宙スタートアップはもちろんのこと、地上のインフラを担う企業が月面インフラに参入するなど、さまざまな形で未来の宇宙ビジネスのインフラを作る企業が今後も増えることが想定されます。
小惑星を理解することは地球のピンチを救い、チャンスを拡げる!?
「小惑星は、地球に衝突する『ピンチ』の側面と、地球だけでなく宇宙空間で使える資源になるという『チャンス』の側面があります」と話すのは、Fuseki株式会社です。同社は小惑星の探査を行う上で重要になる軌道、回転、組成、形状等の情報を超小型衛星のコンステレーションを使い、他社よりも圧倒的に効率的かつコストを抑えた軌道設計技術を保有しています。
2026年はFirst Mission の「Lapis」を実現するべく研究・開発を進めるという抱負を教えていただきました。
(6)宇宙の持続可能性
宇宙ビジネスが盛り上がりを見せる中、衛星やロケットの機数が増えていく中で、宇宙の持続可能性を考える必要が出てきています。
2025年3月には、第3回宇宙交通管理に関する関係府省等タスクフォース大臣会合が開催され、日本は技術開発とルールメイキングを車の両輪とした取り組みを着実に進めており、国際的に高く評価されているという発言が当時の内閣府特命担当大臣(宇宙政策)である城内実氏より発言があったことも印象的でした。
日本の取り組みが国際的に高く評価される宇宙交通管理(STM)とは?技術開発とルールメイキングを”車の両輪”として進める
今回アンケートに回答してくださったのは以下の企業です。
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株式会社アストロスケール
株式会社Orbital Lasers
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株式会社アストロスケールは、2024年11月30日に商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」が世界で初めて本物のデブリに接近し近距離(15m)で撮影に成功し、一区切り。その結果、同社の技術を実証できたことで、既存案件の開発が進むとともに、新規案件の受注や関心拡大が後押しされたと実感した1年だったようです。
実際に、大型衛星デブリの接近・観測を行うISSA-J1ミッションについては開発がフェーズIからフェーズIIへ移行。また、インドのNSILと打上げ契約を締結、燃料補給技術の契約や防衛省からの契約も獲得しました。
衛星ライダー事業とスペースデブリ除去事業を推進する株式会社Orbital Lasersは、2025年1月に創立1周年。1年という短い期間ながら、従業員数は50名規模と拡大、経産省「J-Startup」に選定されるなど、目覚ましい活躍を見せています。また「Global Startup EXPO 2025をはじめとした展示会への出展、カンファレンスや学会などへの参加といった対外活動も行うことで少しずつ弊社の認知度も高まってきた」と回答いただきました。
(7)宇宙産業時代に不可欠な企業が集うその他部門
ありがたいことに宙畑の年末特集「ゆく年くる年」に回答いただいた企業・法人の数が100を超え、昨年から部門の分類をより詳細にしております。しかし、それでもそれらのカテゴリでは収まりきらない、さまざまなサービスを提供する企業が宇宙ビジネスに参入しています。
紹介するどの企業も、研究開発が主な目的だった宇宙開発時代から、ビジネスとして経済的に持続可能な自立性も必要とされる宇宙産業時代に欠かせない企業ばかりです。
これまで宇宙ビジネスと無縁と思っていた方々こそ、どのようなニーズが宇宙産業時代に必要とされているのかの参考として、ご覧いただけますと幸いです。
本部門で回答いただいたのは以下の企業の皆様です。
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◆人材・教育部門
株式会社インバイトユー
株式会社sorano me
フォースタートアップス株式会社
株式会社レヴィ
◆商社・コンサル部門
ASTRO GATE株式会社
EY新日本有限責任監査法人
株式会社INDUSTRIAL-X
KPMGコンサルティング株式会社
SEESE株式会社
Space BD株式会社
株式会社Space Food Lab.
PwCコンサルティング合同会社
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
株式会社minsora
株式会社理経
◆保険
東京海上日動火災保険株式会社
三井住友海上火災保険株式会社
◆非営利団体・一般社団法人
一般社団法人クロスユー
一般社団法人SPACETIDE
一般社団法人Space Port Japan
一般社団法人Space Medical Accelerators
◆メディア・コンテンツ・エンターテイメント
株式会社ALTILAN
株式会社クロスアーキテクツ
株式会社SpaceBlast(SPACE Media)
日本テレビ放送網株式会社
株式会社バスキュール
株式会社4X
◆その他
株式会社日本政策投資銀行
三菱倉庫株式会社
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宇宙ビジネス人材部門:産業化を支える基盤の強化
2025年は、宇宙戦略基金やSBIRフェーズ3の本格稼働を背景に、人材支援サービスが大きく成長した一年となりました。
専門人材の流動化と幹部採用の加速
宇宙スタートアップの量産・海外展開への移行に伴い、幹部人材の需要が急増しています。株式会社インバイトユー(旧Prop-UP)は社名変更により宇宙特化ブランドを確立し、400名以上のエンジニアと転職相談を実施、30社以上へ紹介を進めました。内閣府「宇宙スキル標準」策定委員にも選出されています。
「異分野からのエンジニア転職が日本の宇宙産業成長の起爆剤」宇宙ビジネス時代に必要な人材と『宇宙スキル標準』が生まれるまで【PR】
フォースタートアップス株式会社は、昨年対比で約2倍となる人材支援を実現し、アークエッジ・スペースやSynspectiveなどを中心に、複数社宇宙スタートアップの幹部採用を支援しました。
また、人材支援にとどまらず、フォースタートアップスキャピタルを通じてアークエッジ・スペースや岩谷技研への出資を行うなど、資本面からも宇宙産業の成長を後押ししています。
裾野拡大と人材育成
教育・普及の面でも進展が見られました。株式会社sorano meはボードゲーム『宙の知恵』を開発。
【衛星データを楽しく学ぶツールを作りました】リピート希望率100%!社内研修にも使えるボードゲーム「宙の知恵」のクラウドファンディングは12月9日まで【PR】
sorano meのコミュニティ「ソラノメイト」を通じた多様な人材の参画を促進、WHEREと共催した「宇宙不動産カンファレンス2025」では1000名規模のイベントが実現しました。
株式会社レヴィはシステムズエンジニアリングとプロジェクトマネジメントの勘所を伝えることで宇宙人材の育成を図っています。
商社・コンサル部門:産業基盤の構築と新規参入支援
2025年は宇宙戦略基金の本格稼働を背景に、産業基盤強化と新規参入支援が加速した一年となりました。
政策形成と官民連携の推進
KPMGコンサルティング株式会社は国家宇宙政策の根幹を担う施策の事務局支援を実施し、非宇宙企業の参入も支援しました。
EY新日本有限責任監査法人は北海道スペースポートの民間事業化(コンセッション)等を引き続き支援するとともに、宇宙スタートアップのIPO実現を積極的に支援しています。
PwCコンサルティング合同会社は14ヶ国の宇宙チームと連携、世界経済フォーラムと共同で新興国向けNational Space Strategy Toolkitを開発しています。
産業構造改革とサプライチェーン構築
株式会社INDUSTRIAL-Xは宇宙戦略基金の「衛星サプライチェーン構築」において三菱電機・NECと連携し、衛星アーキテクチャの標準化を推進、地上の高度な製造業の技術を宇宙機器製造に転用することを目指しています。
自治体・企業の宇宙参入調査やJAXA「森林カーボンクレジット算定実証」を実施した三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社も産業基盤強化に貢献しました。
株式会社minsoraは、三菱UFJ銀行と連携し、衛星データを活用して天草市通詞島(つうじしま)沖の野生イルカを核に、新たな生物多様性保全及び海洋資源保全の実装を目指したプロジェクトに着手しています。
既存3事業セグメントの連携強化による宇宙市場での提供価値拡大を掲げた株式会社理経は、日本橋で定期的に宇宙セミナーを開催し、異業種ネットワーキングを促進しています。
事業化支援とインフラ整備
Space BD株式会社は社員を63名から80名に拡大、複数衛星搭載システム”TOHRO”が宇宙戦略基金に採択され、衛星開発教育プログラム「HURDLES」で人材育成にも着手しました。
SEESE主催の放射線勉強会の会員数は300名を超え、利用者の拡大に成功しています。
Starlinkを活用したロケット発射場遠隔運用システムを開発するASTRO GATE株式会社は、ダムや洋上風力など建設現場への展開を進めています。
また、自治体や企業への講演・事業支援を展開する株式会社Space Food Lab.は2025年を「今年は『宇宙をビジネスに』の年だった」と振り返ります。誰の目から見ても宇宙ビジネスだなと思える事業以外にも、どのような「宇宙関連ビジネス」が存在しているのか、どのように「宇宙」を活用するのか、どのようにマネタイズするのか……ということを考え実行する需要な転換期だったそうです。その上で、「宇宙社会が当たり前になる未来、そんな未来を形にする」というフレーズに至り、2026年の抱負のキーワードは発信と発展であると回答いただきました。
宇宙産業の裾野拡大に向け、政策・技術・人材の各層で基盤強化が進んでいます。
保険部門:リスクマネジメントの複雑化に柔軟に対応
東京海上日動火災保険株式会社は、宇宙産業について「特殊な契約慣習・商慣習が存在する宇宙産業への新規参入が、多様な業種・規模・地域の企業・団体・自治体において見られる近年においては、リスクマネジメントが極めて重要」と話します。
2025年の振り返りとしては、日本宇宙産業を牽引される数多くの企業様と連携し、保険のご提供や国際宇宙保険市場へのプロモーション活動を行ったとのこと。2025年7月には国際宇宙保険マーケットのアンダーライターを各国から日本に招聘し、国内宇宙企業・機関によるブリーフィング実施の機会も作られたそうです。
三井住友海上火災保険株式会社は、2025年の宇宙保険マーケットを「近年の大型損失が続いた局面とは異なり、この一年は比較的堅調に推移しました」と振り返ります。
一方で、ispaceによる再度の月着陸挑戦やH3ロケットの運用定着に象徴されるように、新技術の社会実装には依然として不確実性が残っていることに触れ、日本では宇宙戦略基金第2期が始まり、より自由度の高い技術開発が見込まれ、安全保障分野では衛星コンステレーション構築に向けた大型予算も動き出したことから、宇宙領域にとどまらず、より幅広い分野で新たなリスクを取り扱う必要性を生んでいることについてコメントをいただきました。
2026年の抱負としては、「宇宙やAIをはじめとしたディープテックを活用し、リスクの定量化・可視化を進めることで、リスクの専門家として業界に貢献していきたい」「さらにその先では、深宇宙による人類の活動領域拡大と同時に、地球環境を持続させる視点も不可欠です。サイバーや地球環境を含む複合的なリスクに向き合い、宇宙と保険をそのための手段としてどう活かせるかを考え続けていきたい」と回答をいただきました。
その他部門:エコシステムの形成・拡大と社会実装の加速
業界の発展に伴い、業界全体の底上げ、機運醸成を担う一般社団法人の活動や、メディアなど一般認知の拡大も進展した一年となりました。
エコシステム形成と交流促進
10回目を迎えたSPACETIDEの国際カンファレンスには35カ国から2000名が参加し、転職者向け「SPACETIDE Academy」開講と内閣府「S-Booster」継承により人材・起業家支援を強化しています。
一般社団法人クロスユーは、2025年の大きなトピックとしてX-NIHONBASHI TOWERに欧州宇宙機関(ESA)がアジア初拠点を開設したことを回答。上述した通り、会員数が340を超えたことに加えて海外展開も活発化しています。
製薬ヘルスケア分野では、一般社団法人Space Medical Acceleratorsがアステラス製薬やシスメックスを巻き込んだクロスオーバーセッションを主催しました。
日本において、法改正により有人宇宙飛行が現実的となったことを受け、一般社団法人Space Port Japanは世界のルールメイク参加を目指すと回答をいただきました。
メディア・コンテンツによる裾野拡大
衛星データの報道活用に向け、日本テレビ放送網株式会社が東京大学との共同研究を開始し、汐留サマースクールには4万人超が来場しました。
大阪・関西万博では、株式会社バスキュールが万博史上初のISS中継を実現、大西宇宙飛行士との双方向イベントを成功させています。
また、バスキュールは、2025年の大晦日に年越し配信イベント「宇宙の初日の出 2026」を実施予定。ISS滞在中のJAXA油井亀美也宇宙飛行士が日本で最も早い初日の出を宇宙からお届けする予定です。
株式会社4X(Uchubiz)は取材現場の生の声を届ける会員制宇宙ビジネスサロンを開始しました。会員には、クローズドなミートアップや、LINEを活用した速報発信、開発現場の視察ツアーなどが提供されています。
株式会社SpaceBlast(SPACE Media)は、2025年から独自の宇宙ビジネスに関する情報を届ける懇親会付きの勉強会「SPACE Mediaセミナー」を開催。また、メディアでも日々の宇宙ビジネストピックを更新し、独自のインタビュー記事を更新しています。
共創型のメディアプラットフォームを運営する株式会社クロスアーキテクツは、WEBメディア『SpaceStep』を創刊。非宇宙産業のビジネスパーソンや若い世代に向けて、宇宙ビジネスを「自分ごと」にしていただけるよう情報が発信されています。
株式会社ALTILANは、11月開催の「種子島宇宙芸術祭2025」にて、同社代表の永利光さんが15年追い続けてきた土星の衛星タイタンを、美術作家の山上渡氏と共同で43万分の1スケールで再現するインスタレーション作品を制作。また、タイタンを舞台にした小説『POINT NEMO』が執筆・公開されました。会期中は約350名の方が現地で作品を体験し、小説はオンラインを含め約1,000名以上が閲覧したそうです。今後もアート制作・小説執筆を通じて「宇宙×物語」の表現を深め、事業面では「ストーリードリブンの宇宙ビジネス開発」で具体的な成果を生み出すことが目標であると回答いただきました。
金融・インフラによる事業基盤支援
月面産業の国際競争力強化に向け、株式会社日本政策投資銀行がispaceへ出資を実行しました。福島県南相馬市では、三菱倉庫株式会社が福島県南相馬市内に宇宙関連産業向けのインキュベーション施設「MLC SPACE LAB」を開設し、実証環境の整備を推進しています。
産業コミュニティの拡大、一般認知の向上、事業化支援の三位一体で社会実装が加速しています。
(8)2026年の宇宙ビジネス予想(投資額、市場規模、企業数)とまとめ
宙畑では、2021年度のアンケートから毎年、各企業様に次年度の宇宙ビジネス予測を、投資額・市場規模・新規参入企業数の3つの観点で伺っています。
本年度は103社(1社未回答)の企業様に回答いただき、過去最大数の企業様にお答えいただくことができました。
回答いただく企業様の数が増えたこともありますが、2023年度以降ビジネスが上向きになると回答いただいた企業が会社数でも割合でも右肩上がりの結果となっています。これは、2024年度から始まっている宇宙戦略基金や、ispace、QPS研究所、アストロスケール、アクセルスペースなど主要宇宙ベンチャー企業の上場などが、次の投資や参入企業を増やす機運を作ったと考えられます。
2026年はいよいよ戦略基金も3年目となり、資金の使途の大枠が見えてくる年となります。政府資金を活用した研究開発が、国際的な競争力を生み、事業を拡大する兆しが見えるのか。また、それを核として民間の投資を呼び込むことができるのか。
宇宙戦略基金に期待されていた成果が生まれるのか、2027年度以降の宇宙ビジネスの分かれ道となる一年となりそうです。
宙畑は、2017年2月のサイトオープンから2026年2月で9周年を迎えます。10周年を目前に控えた1年となりますがサイト立ち上げ当初に掲げた「宇宙産業を日本の誇る基幹産業に。」という思いを実現するために、メディアとして何ができるのか、どんな記事が皆様を支えられるのか、あらためて振り返り、地盤を固める1年だと考えています。
今後も、宇宙ビジネスに関わり、日本の宇宙産業を支えていただいている皆様や、これから宇宙ビジネスを立ち上げようとされる方、宇宙業界に飛び込んでみようと思われる皆様が実現したいモノ・コトを後押しできる記事をこれからも作成していきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。

