日本発のAI半導体企業EdgeCortixがNASA試験で放射線耐性を実証【宇宙ビジネスニュース】
日本発EdgeCortixのAI半導体がNASAの重イオン試験をクリア。月面や静止軌道など、過酷な放射線環境下での高度なAI活用を実現する成果として注目されます。
2026年1月7日、日本発のAI半導体企業であるEdgeCortixは、同社のエッジAI半導体「SAKURA-II」が、NASAによる重イオン試験において高い耐放射線性能を実証したことを発表しました。
これにより、従来は困難だった静止軌道や月面といった過酷な放射線環境下においても、限られた電力で高度なAI処理(取得データのリアルタイム選別・解析や月面探査車の自律制御など)が可能になると期待されます。
宙畑メモ:エッジAIとは
クラウドサーバーなどにデータを送って処理するのではなく、クルマやカメラ、衛星といった端末(エッジ)側でAIの推論処理を行う技術。通信遅延が少なく、通信量を削減できるため、通信環境が限られる宇宙空間では特に重要視されている。
宙畑メモ:重イオン試験とは
加速器を使って重イオン(原子核)を高速で物質に衝突させる試験のこと。宇宙空間には高エネルギーの宇宙線が飛び交っており、これが半導体に当たると誤作動(ソフトエラー)や破壊(ラッチアップなど)を引き起こす。地上で擬似的にこの環境を作り出し、半導体の耐久性を評価するために行われる。
EdgeCortixは、エッジでの生成AI処理などに特化した、エネルギー効率の高い半導体を開発するファブレス(自社工場を持たない)企業です。
地上との通信に制約がある宇宙空間(通信機会が限られており、地上に受信できるデータ量に限りがあるなど)では、このエッジ(衛星側)での処理は非常に有効です。特に、生成AIを用いた取得データのリアルタイム処理のような膨大な計算リソースを要するものに対しては、より高性能なエッジデバイスが求められています。
同社は、独自のハードウェア・ソフトウェア協調設計に強みを持ち、省電力かつ高性能なAI半導体を提供しています。防衛、航空宇宙、スマートシティなど、幅広い分野で事業を展開しています。
今回の発表は、2024年に同様の試験で優れた結果を残した第1世代製品「SAKURA-I」に続く成果です。
NASAの重イオン試験はテキサスA&M大学のサイクロトロン研究所施設にて実施されました。結果として、「SAKURA-II」は破壊的な事象(故障)が確認されず、一時的な放射線影響もごくわずかであることが明らかになりました。
従来、宇宙でのAI活用には、高度なセンサー処理に伴う計算負荷と自前の太陽光パネルやバッテリに依存する電力制約によるトレードオフが課題でした。特に、高性能なGPUは消費電力が大きく、一般的なCPUでは処理能力が不足しがちです。
加えて、地上とは異なる厳しい放射線環境に晒されるため、半導体チップの破壊やビット反転といったデータエラーなど、様々な不具合を起こすリスクがあります。計算機負荷が増すほどその傾向は顕著です。
今回の試験結果により、「SAKURA-II」が宇宙において低消費電力で高度なAI処理を実行できる可能性が示されました。放射線環境下での十分な耐性があることから、低軌道だけでなく、より厳しい環境の静止軌道や月面環境での利用も視野に入ります。
EdgeCortixの創業者兼CEOであるサキャシンガ・ダスグプタ博士は、次のようにコメントしています。
「今回の重イオン試験の完了とNASAによる報告書の公開は、エッジコンピューティングを地球外へ拡張するというEdgeCortixのミッションにおける重要なマイルストーンです。これらの結果は、SAKURA-IIが極限環境下でも卓越した耐放射線性能を有することを実証するとともに、軌道上や月面で高度なAI処理を高い信頼性をもって直接実行できることを示しています。宇宙システムにおいて、より高い自律性、低消費電力、リアルタイムでの意思決定が求められるなか、EdgeCortixは、エネルギー効率に優れたAI駆動型の次世代宇宙探査の実現に貢献できることを誇りに思います。」
近年、衛星が取得したデータを地上に全て送るのではなく、エッジAIが必要なデータを選別して解析する需要が高まっています。
今回、NASAの試験で耐放射線性が示されたことは、「SAKURA-II」にとっては信頼性を高める大きな一歩です。日本発のAI半導体が、気象観測衛星や月面探査車での活動など、今後期待が高まる宇宙空間で活躍することに期待が高まります。
参考記事
・EdgeCortix、軌道・月面ミッション向けSAKURA-IIの耐放射線性能を実証
・EdgeCortix SAKURA-II Machine-Learning Accelerator SEE Heavy Ion Test Report

