地上からレーザーでデブリ除去!?パワーレーザーが挑む宇宙の持続可能性【宇宙ビジネスニュース】
「デブリ除去=衛星が必要」という常識を地上レーザーが覆す。小型デブリに衛星なしで挑むパワーレーザー社の挑戦が、宇宙の持続可能性を大きく後押しします。
2026年1月28日、大阪大学発のスタートアップであるパワーレーザーは、JAXAが公募する「宇宙戦略基金事業(第二期)」において、地上レーザーを用いたスペースデブリの観測および除去技術の開発機関として技術開発テーマ「空間自在利用の実現に向けた技術」における「宇宙状況把握技術(SSA)」と「軌道上物体除去技術」という2つの技術開発に採択されたことを発表しました。
パワーレーザーは、大阪大学レーザー科学研究所の技術を核としたスタートアップです。世界トップレベルの高出力レーザー技術を持ち、金属加工やスマート農業など、他産業向けにも展開しています。2025年6月には、Frontier Innovations株式会社を引受先とする第三者割当増資による資金調達を実施し、研究開発を加速させています。
これまで、宇宙用レーザー除去技術といえばスカパーJSAT発のOrbital Lasersなどが取り組む「衛星搭載型」が主流のテーマでしたが、同社は「地上からの照射」という独自の立場でこの分野に挑んでいます。
特に、同社に期待されているのは、これまで対策が困難だった微小デブリの軌道を高精度に推定し、また、デブリを地上から除去できる技術の獲得です。
今回の最大の特徴である「地上に設置したレーザーで、軌道上のデブリを観測・除去する」ため、以下の2つの技術がその主軸となっています。
1. 超解像観測技術(把握技術)
これまで観測が困難だった10cm以下の微小デブリ(特に観測が困難とされる数cmサイズ)を、レーザー照明やAI軌道予測を組み合わせて高精度に追尾します。
2. 地上レーザーによる軌道変更(除去技術)
高繰り返しパルスレーザーをデブリに照射し、その推進力(レーザーアブレーション)を利用して軌道を変え、大気圏へ落下させることを目指します。
宙畑メモ:高繰り返しパルスレーザーとは
一定の間隔で、極めて短い時間(パルス)だけ光を放つレーザーのこと。これを高速で連射(高繰り返し)することで、対象に効率よくエネルギーを伝えます。 今回のデブリ除去では、このレーザーを当てることでデブリ表面の物質を爆発的に蒸発させ、その反動で推進力を得る「レーザーアブレーション」を利用します。1発あたりの変化はわずかですが、1秒間に繰り返し「連射」することで、デブリの軌道を着実に変えることが可能になります。
これまで、 デブリ対策は、衛星に搭載したシールドで守る手法や、専用の衛星を打ち上げてデブリへ接近・捕獲する方式が検討されてきました。しかし、シールドで守る手法は極小のデブリ(1mm~1cm)にしか適用できず、大型デブリ向けの専用衛星では開発期間や多額のコストを要するため、小型を含む全てのデブリに対処するのは現実的ではありません。
今回の「地上からのレーザー除去」が可能になれば、専用の衛星を何機も打ち上げる必要がなくなり、持続的なデブリ排除(スペースサステナビリティ)が実現されます。
今後、同社は大阪大学やレーザー技術総合研究所と協力し、事業期間内に観測システムの実証およびレーザー技術の高度化を進める計画です。シミュレーションと模擬実験を統合し、AIによる照射制御システムのモデル構築を進めます。
一方で、「地上からデブリ除去」を実現するには、技術的・運用的ないくつかのハードルを乗り越える必要があると考えられます。
最大の懸念は、飛行物体へのリスクです。遠方のデブリを動かすほどの高出力レーザーが、万が一飛行中の航空機や、運用中の衛星に当たってしまうというリスクです。航空管制や衛星地上局との綿密な連携に加え、意図しない照射を物理的・電気的に防止する「インヒビット」を用いた二重、三重のロックシステム(複数の独立したスイッチや回路を介さないと動作しない)など、安全に関する配慮が必要です。
また、大気によるエネルギーの損失も大きな課題となるでしょう。地上から発射されたレーザーは、大気の揺らぎによって拡散し、数百キロ先の数センチの的に集中させるのは非常に難しいことが考えられます。
こうした課題に対して、大阪大学や同社が培ってきた世界レベルのレーザー技術がどう乗り越えていくのか。今回の宇宙戦略基金採択による今後の展望が非常に楽しみです。
参考
・地上設置型高出力レーザーによるデブリ除去技術の検討
・パワーレーザー プレスリリース(PR TIMES)
・パワーレーザー公式サイト(技術紹介)

