「早急かつ強力に整備すべき国家インフラ」「勝ち筋をしっかりと見定める」第124回宇宙政策委員会で語られた古川内閣府特命担当大臣の言葉
2026年9月28日に開催された第124回宇宙政策委員会における古川内閣府特命担当大臣(宇宙政策担当)の言葉について、その内容と関係する宇宙産業の動向について紹介します。
2026年9月28日、第124回宇宙政策委員会が開催されました。主な議題は「令和9年度宇宙関係予算の各省庁の概算要求状況」「宇宙戦略基金の進捗状況」「宇宙基本計画改定の論点整理に向けたポイント」の主な3点です。
冒頭、9月17日に就任した古川俊治内閣府特命担当大臣(宇宙政策ほか科学技術政策、人工知能戦略、海洋政策、サイバー安全保障など)からは、「今回が私だけではなく、皆様にとっても新しい体制になって初の宇宙政策委員会である」として「ともに宇宙基本計画の改定も含めた宇宙政策の推進に取り組んでいくことを大変心強く思っております」との言葉がありました。
発言では、宇宙を「早急かつ強力に整備すべき国家インフラ」と位置付ける考えが示されたほか、宇宙戦略基金について「我が国としての勝ち筋をしっかりと見定め」て集中的に支援する方針も語られました。本記事では、古川大臣の発言を3つの議題に分け、記者ブリーフィングで語られた内容も交えて紹介します。
(1)シーリングにとらわれない初の予算編成、2026年度の宇宙関係予算は初の1兆円超え
まず、古川大臣は各府省からの概算要求の報告について、次のように語りました。
「本日の議題の中で、各省から概算要求情報のご報告をいただきますが、今回の概算要求は、7月に高市総理からご発言があったように、シーリング枠を設けない強く豊かな日本投資枠を含めた初めての予算編成になります。シーリングにとらわれることなく、宇宙政策の推進に必要な予算をしっかりと要求すべく、関係府省間で意識を共有してまいりました。」
シーリングとは、各府省が概算要求で要求できる金額の上限のことです。「強く豊かな日本」投資枠は、6月24日の経済財政諮問会議・日本成長戦略会議合同会議で高市総理が創設を表明したもので、国内の民間設備投資や潜在成長率を大きく引き上げる効果の高い措置を対象に、シーリングを設けず必要額を要求できる仕組みです。7月に決定された2027年度(令和9年度)予算の概算要求基準に盛り込まれました。
「『強く豊かな日本』投資枠の創設など予算編成改革の具体化に向けて」には「要求上限を設けることなく、事項要求も含めて、所要額を適切に要求できるようにする」という言葉も記載されており、予算編成プロセスについても「投資に見合うリターンを通じた成長への寄与、民間投資の誘発効果等を精査し、真に効果的な施策に重点的に措置することを通じて、予算編成を成長力強化に資するものに改めていく」と、複数の観点が重要であると記されています。
続けて古川大臣は、宇宙関係予算の現状と今後について次のように述べています。
「宇宙政策関係予算は年々増額をしており、今年度は初めて1兆円の大台を突破いたしました。宇宙政策を力強く推進するには、さらなる予算の手当が必要であり、私自身としてもその確保に向けて尽力をしていく所存でございます。」
「初の1兆円超え、令和8年度宇宙関係予算を読み解く。安全保障・通信インフラ・サプライチェーン・衛星データ利活用・国際連携の5軸で拡大」でも紹介している通り、2026年度(令和8年度)の宇宙関係予算は、当初予算と2025年度補正予算の合計で1兆10億円で、前年度から1,090億円(12%)の増額となっています。
特に、防衛省の衛星コンステレーション構築や、総務省の低軌道衛星インフラ整備事業など、安全保障と通信インフラの分野で大きく増額しています。
そのうえで、令和9年度概算要求における宇宙関係予算については、1兆791億円(+事項要求)が示され、概算要求のポイントも記者ブリーフィングで説明がありました。
※宇宙政策委員会の配布資料が公開され次第キャプチャを追記いたします
(2)累計8,000億円の宇宙戦略基金、ステージゲート審査で「勝ち筋」を見定め集中支援へ
次に、宇宙戦略基金については、今回の委員会で議題を分けて進捗が報告されました。古川大臣は現状を次のように説明しています。
「現在、令和五年度および令和六年度補正予算で措置された6,000億円分につきまして、順次支援を実施しており、令和七年度補正予算分の2,000億円についても現在公募を行っており、今後支援を開始するものと承知をしております。」
宇宙戦略基金は、民間企業や大学等による宇宙分野の技術開発を複数年度にわたって支援するため、JAXAに設けられた基金です。2023年度・2024年度の補正予算でそれぞれ3,000億円が措置され、2025年度補正予算の2,000億円では第3期として19の技術開発テーマが設定されました。
宇宙戦略基金については「『10年で1兆円』宇宙戦略基金を知る、内閣府 宇宙開発戦略推進事務局への3つの質問」でも紹介していますのでぜひご覧ください。
そのうえで古川大臣は、今後の基金運営について次のように話しました。
「今後、ステージゲート審査が本格化する中で、我が国としての勝ち筋をしっかりと見定め、これというものには社会実装、事業化を見据え、集中的に支援を行うことが重要だと考えております。JAXAにおかれましては、引き続き宇宙戦略基金、宇宙事務局や本委員会とも連携しつつ、成果最大化を目指した基金の運営をよろしくお願いを申し上げます。また、関係府省におかれましても、引き続き官民の需要獲得等の出口戦略を含めた積極的なマネジメントをお願いしたいと思っています。」
宙畑メモ:ステージゲート審査
技術開発の途中段階で進捗や成果を評価し、次の段階へ進めるか、支援を継続・拡大するかを判断する仕組みです。宇宙戦略基金の第3期の公表時にも、ステージゲート評価に基づいて追加の原資を調整する方針が示されていました。
記者ブリーフィングでは、ステージゲート審査があったとしても、海外の技術開発状況も踏まえながら、開発を進める技術が陳腐化しないかの判断も必要なのではないかという意見があったとの共有もありました。
古川大臣の冒頭の発言だけでも、「勝ち筋」「社会実装、事業化」「出口戦略」という言葉から、技術開発の成果だけでなく、その成果を日本の宇宙産業、ひいては日本経済の発展につなげるため、実際のサービスや政府・民間の調達につなげられるかどうかが問われていることが分かります。
そのうえで、宇宙戦略基金では、TRL(Technology readiness levels:技術成熟度レベル)の低い技術開発テーマも存在しています。宇宙業界に限らない、幅広い業界からの宇宙技術開発参入もこれまでの宇宙戦略基金では採択されており、日本として他国にないユニークな技術開発を持つという観点での有望な技術開発の成果が生まれることも宙畑編集部としては期待していることのひとつです。
これまでの採択事例は「宇宙戦略基金のHP」をぜひご覧ください。異業界からの採択事例としては、キオクシア、ダイキン工業、日本郵船、大熊ダイヤモンドデバイスといった大企業からスタートアップまで、さまざまな企業が名を連ねています。
(3)宇宙を「早急かつ強力に整備すべき国家インフラ」へ、宇宙基本計画改定は年末に向け論点整理
最後に、今回の宇宙政策委員会で審議されたのは宇宙基本計画改定の論点整理です。古川大臣は改定の経緯を次のように紹介しました。
「宇宙基本計画の改定につきましては、6月の宇宙開発戦略本部において、高市総理から我が国の宇宙活動の自立性を維持強化し、宇宙先進国の一角として世界をリードしていくため、改定作業の加速の指示がございました。」
6月12日に開催された宇宙開発戦略本部では、宇宙基本計画工程表の改定に向けた重点事項が決定されました。その場で高市総理は「来年の宇宙基本計画の改定に向けた作業を加速してください」と指示されています。
そして、今回の挨拶で特に宙畑編集部として注目したのが次の言葉です。
「宇宙はこれまで次世代の国家インフラと位置付けてまいりましたが、実態としては今や国民生活、産業、安全保障に欠くことのできないものとなっていることに加え、各国間競争やビジネスが急拡大しており、我が国としても早急かつ強力に整備すべき国家インフラと位置付け、大きく発展させていくことが重要と考えております。」
2025年5月21日に開催された第118回宇宙政策委員会では、当時の城内内閣府特命担当大臣から「宇宙分野は自動車産業に次いで我が国の基幹産業となりうる」という言葉がありました。
つまり、1年前は「成長が期待される産業のひとつに宇宙がある」という状況だった一方で、今回の古川大臣の発言では宇宙は「次世代の国家インフラ」ではなく「早急かつ強力に整備すべき国家インフラ」と位置づけられたことが分かります。
実際に、安全保障に加えて、カーナビやスマートフォンの位置情報、天気予報、災害時の被害把握、金融取引の時刻同期、航空機内・船舶・被災時の高速なインターネット環境など、私たちの生活の多くはすでに衛星に支えられています。
宇宙基本計画改定の論定論点に向けたポイントでも「社会実装」というキーワードが入っており、外需・民需の獲得にもつなげることが重要であるとポジティブな意見があったと記者ブリーフィングの中で共有がありました。
そのようななか、各国の競争やビジネスは急速に拡大しており、自国で整備・運用できる自立した宇宙インフラをどこまで持つかは、今後の改定の大きな論点になっているという状況です。
今後の宇宙基本計画の改定スケジュール(案)は以下の通りです。
2026年6月12日:高市総理大臣より、来年の宇宙基本計画の改定に向けた作業の加速について指示(宇宙開発戦略本部)
2026年9月28日:「宇宙基本計画改定の論点整理に向けたポイント」について議論(宇宙政策委員会)
2026年10~11月:宇宙政策委員会に属する部会・小委員会等にて分野別に議論
2026年12月頃:次期「宇宙基本計画」の論点整理(宇宙政策委員会)
2027年1~2月頃:次期「宇宙基本計画」骨子(案)について議論(宇宙政策委員会)
2027年4月頃:次期「宇宙基本計画」(案)について議論(宇宙政策委員会)
2027年5月頃:次期「宇宙基本計画」(案)の了承(宇宙政策委員会)
その後、閣議決定
※上記スケジュールは見通しであり、今後変更の可能性あり
本日の宇宙政策委員会における古川大臣の発言からは、総じて、日本における宇宙活動が今後もさらに加速することを期待される力強い意思が示されました。
古川大臣は最後に、委員への感謝とともに引き続きの尽力を求め、挨拶を締めくくられました。
「本日のご審議も含め、今年末にかけまして、議論整理を進めてまいります。我が国が宇宙先進国として宇宙活動の自立性を維持強化し、また、宇宙を成長産業として大きく発展させることができるよう、関係各省および関係機関とも連携の上、全力で取り組んでまいります。」
シーリングにとらわれない予算要求、宇宙戦略基金の「勝ち筋」を見定めた集中支援、そして宇宙を「早急かつ強力に整備すべき国家インフラ」とする位置付けの見直し。新体制で初となる今回の委員会からは、日本の宇宙政策が投資を広げる段階から、成果と自立性を強く求める段階へ進みつつあることがうかがえました。年末に向けた宇宙基本計画改定の議論にも注目です。
もしも、宇宙戦略基金をはじめとした宇宙関連の政策や、宇宙業界への参入に興味はあるが、自社の技術や事業がどう関われるか分からないという方がいらっしゃいましたら、宙畑までお問い合わせください。

