SSC Space、アークエッジ・スペース、ElevationSpaceとMoU締結。民間企業から広がる宇宙産業成長を加速する補完関係の強化【宇宙ビジネスニュース】
スウェーデン発の宇宙インフラ企業SSC Space(スウェーデン宇宙公社)は、日本の宇宙スタートアップ企業であるアークエッジ・スペースとElevationSpaceの2社と、それぞれMoUを締結しました。概要と今後への期待を記事でまとめています。
2026年10月14日、スウェーデン発の宇宙インフラ企業SSC Space(スウェーデン宇宙公社)は、日本の宇宙スタートアップ企業2社と、それぞれMoUを締結しました。その2社とは、アークエッジ・スペースとElevationSpaceです。
アークエッジ・スペースとは地上局サービスの利用契約と地上局分野のMoUを、ElevationSpaceとは微小重力実験や再突入・回収、地上局サービスといった幅広い事業における包括的な協力を検討するためのMoUを締結しました。
本記事では、2件の概要と、宙畑編集部が注目したポイントを紹介します。
SSC Spaceは1972年設立の宇宙インフラ企業で、世界各地の地上局ネットワークを使った衛星運用支援や、観測ロケットの打ち上げ、微小重力実験サービスなどを各国の政府機関や民間企業に提供しています。
スウェーデン北部・キルナ近郊ではエスレンジ宇宙センターを所有・運営しており、同センターからはこれまでに600機を超える観測ロケットが打ち上げられてきました。
日本の宇宙産業とは40年以上にわたる関わりがあり、2026年1月に日本法人を設立。同年7月には、インフォステラと提携してセーレンの小型衛星「FUSION-1」向けに、小型衛星向けのグローバル地上局サービス「SSC Space Go」を提供すると発表していました。
【関連記事】
「テンポの良い地上局展開と実用できる衛星コンステレーションの構築を」インフォステラとSSC Spaceが提携し、セーレンの小型衛星「FUSION-1」向けに地上局サービスを提供【宇宙ビジネスニュース】
(1)アークエッジ・スペースはSSC Space Goの利用契約と、地上局の「相互」配備支援
アークエッジ・スペースは、さまざまな用途の衛星コンステレーション(多数の衛星を連携させて運用する仕組み)の設計・開発・製造・運用を手がける、日本の宇宙スタートアップです。地球観測からIoT通信、測位、月面インフラまで、幅広いミッションに取り組んでいます。
今回の「SSC Space Go」の利用契約により、アークエッジ・スペースは超小型衛星コンステレーションのテレメトリ(衛星の状態を示すデータ)の受信やコマンドの送信、観測・通信データの伝送を行うグローバル地上局ネットワークを自動的に利用できるようになるとのことです。主な用途としては地球観測衛星やIoT通信が想定されています。
また、同時に締結したMoUでは、非独占的な枠組みとして、以下の3分野での協力を検討するとしています。
・光地上局(レーザー光で衛星と通信する地上局)を含む、SSC Spaceのグローバル地上局インフラの活用
・アークエッジ・スペースが海外に地上局を配備する際の、SSC Spaceによる拠点・電力・地上通信回線の提供、許認可手続きや保守の支援
・SSC Spaceの顧客が日本国内に地上局を配備する際の、アークエッジ・スペースによる拠点・インフラ・運用知見の提供
今回の契約とMoUについて、アークエッジ・スペース代表取締役CEOの福代孝良さんは以下のようにコメントしています。
「衛星コンステレーションを安定的に運用し、宇宙から得られるデータやサービスを世界中に届けるには、宇宙と地上を確実につなぐグローバルな地上局インフラが欠かせません。SSC Space Goの利用により当社の衛星運用基盤を強化するとともに、国内外における地上局の構築・運用に関する協力を進めてまいります。」
(2)ElevationSpaceはエスレンジ宇宙センターの活用も視野に、微小重力実験から回収まで
ElevationSpaceは、宇宙の微小重力環境で行った実験の成果物や製造物を地球に持ち帰る小型宇宙機を開発する、東北大学発のスタートアップです。無人の小型衛星で実験・実証を行い地球へ帰還させる「ELS-R」や、宇宙ステーションからの高頻度回収カプセル「ELS-RS」の提供を目指しています。
今回のMoUは、微小重力実験、宇宙実験用機器の開発、サブオービタル(地球周回軌道に達しない弾道飛行)および衛星の打ち上げ、大気圏再突入・回収、地上局サービスまでを含む、長期的かつ包括的な協力を検討する枠組みです。
SSC Spaceの観測ロケットや地上局の能力と、ElevationSpaceの軌道上実証・再突入・回収の能力を組み合わせ、日本やスウェーデンなどで実証・技術開発の機会を共同で探るとしており、エスレンジ宇宙センターの活用や事業開発も検討対象に含まれています。
今、国際宇宙ステーション(ISS)は2030年末に運用を終える予定で、宇宙で実験する「場」の確保が課題となっています。観測ロケットで得られる微小重力の時間は数分から十数分程度得られ、ELS-Rのような周回衛星では、長期間の実験が可能です。実験の内容や期間、費用に応じて手段を選べることは、利用者にとってもありがたい選択肢となるでしょう。
ElevationSpaceは2025年3月、ドイツのIsar AerospaceとELS-R初号機「あおば」の打ち上げ契約を結ぶなど、欧州との関係を深めてきました。
代表取締役CEOの小林稜平氏は今回の提携について、欧州の宇宙インフラ開発を牽引するSSC Spaceとの連携を発表できることへの喜びとともに「欧州市場における当社の将来ミッションの基盤を固めるションの基盤を固めるとともに、当社のミッションである『誰もが宇宙で生活できる世界』の実現に向けて挑戦を続けてまいります」とコメントしていました。
【関連記事】
ElevationSpace、独ロケットベンチャーIsar Aerospaceと打ち上げ契約を締結。2026年後半に打ち上げへ【宇宙ビジネスニュース】
【ポストISS時代を見据えて】ElevationSpaceとAxiom Spaceが高頻度な物資回収事業でMoU締結【宇宙ビジネスニュース】
「数回の打上げで市場は一気に拡大するだろう」ElevationSpace、Redwireが提携。バイオ医薬品技術を自社プラットフォームに統合へ【宇宙ビジネスニュース】
(3)海外インフラ企業の日本進出で広がる、日本の宇宙スタートアップの選択肢
日本では近年、民間企業による小型衛星コンステレーションの構築が進められ、衛星と地上をつなぐ地上局の確保がより重要になっています。
高緯度のスウェーデンは極軌道(北極・南極の上空を通る軌道)の衛星と通信できる機会が多く、衛星運用企業にとっては非常に重要な地上局を保有する国となっています。
そのようななか、今回のSSC Spaceと日本の宇宙スタートアップ2社の契約は単純に重要な位置にある地上局を利用するという内容にとどまっていないことが注目のポイントです。
アークエッジ・スペースとSSC SpaceのMoUには「SSC Spaceの顧客が日本国内に地上局を配備する際の、アークエッジ・スペースによる拠点・インフラ・運用知見の提供」という内容が持ち込まれています。また、ElevationSpaceとのリリースには「両社の協力を通じて、それぞれの能力、ネットワーク、専門知識を結び付け、将来の科学・商用実証ミッションの機会を広げるとともに、スウェーデンと日本で発展しつつある宇宙コミュニティを発展させ、持続的なパートナーシップを築いていきたい」というSSC Space 社長兼CEO Charlotta Sund氏のコメントがありました。
政府間同士ではなく、日本とスウェーデンという各国の民間企業同士でこのようなMoUが締結されたことは非常に興味深いポイントです。
社会情勢の変化から、各国が自律・自立の重要性を意識し始め、各国でどのような宇宙インフラを主権的に持つかの議論が活発化する中、民間企業同士が国境を越えて機能を補い合う構造も重要であると考えさせらえた発表でした。
なお、今回のMoUは、東京の駐日スウェーデン大使公邸において、SSC Spaceの日本法人の設立祝賀レセプションに先立ち、署名されました。
SSC Space 日本法人Country Manager 金澤 誠さんから、今回の2件のリリースについて、以下のようにコメントをいただきました。
「この度、日本を代表する宇宙スタートアップの2社と新しい提携の機会をいただけたことを嬉しく思います。SSC Spaceはこれまで、日本の安全・安心な社会の実現を宇宙インフラサービスの面から支えてきました。宇宙分野において商業化が進むなか、民間企業同士の対話を丁寧に行い、両国および国際的な宇宙産業の発展に貢献できるよう、引き続き尽力してまいります。」
日本法人を構えたSSC Spaceが、今後どのような日本企業と連携を広げていくのか注目です。

