宙畑 Sorabatake

宇宙ビジネス

急成長する中国の宇宙開発~注目民間ロケット企業と世界初への挑戦~

中国独自の宇宙ステーション建設に世界初のローバーによる月面裏側の探査など、壮大な計画を打ち立てている中国。あまりメディアで語られる機会が少ない中国の宇宙開発の見どころろは。

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中国独自の宇宙ステーション建設に世界初のローバーによる月面裏側の探査など、壮大な計画を打ち立てている中国。

あまりメディアで語られる機会が少ない中国の宇宙開発だが、本記事では宙畑が注目する民間のロケット開発企業2社と月面裏側の中継衛星について紹介しよう。

中国の民間ロケット開発会社(1) LandSpace

TQ-2エンジンイメージ Credit : LandSpace

LandSpaceは2015年に設立され、2018年4月に約3,200万ドルのシリーズBでの投資を受けた、民間ロケット開発会社だ。政府の下で働いていたトップのロケット技術者たちがLandSpaceを設立しており、現時点では中国民間会社で最も技術力が高いグループと言われている。

LandSpaceは、液体酸素・メタンによる10トン級ロケットエンジンであるPhoenixの燃焼試験に、中国の民間会社で初めて成功した。

LandSpaceが開発中の次期ロケットは、70トン級のTQ-2ロケットエンジンである。酸化剤に液体酸素、推進剤にメタンを使用し、ZQ-2というロケットに搭載される。ZQ-2ロケットの打ち上げ能力は、500kmの太陽同期軌道に1,500kgのペイロード、200kmの地球低軌道に3,600kgのペイロードになる予定だ。これは米国、ニュージーランドをベースにするRocket LabのElectronロケットの約10倍に相当する打ち上げ能力である。

このまま開発が進めば、中国は米国、ロシアに次ぐ、世界で3番目に液体酸素・メタンによるロケットエンジンを民間で開発した国になるだろう。

中国の民間ロケット開発会社(2) OneSpace

OS-X打ち上げテスト Credit : OneSpace

OneSpaceは、弾道飛行中に技術テストや実験を行うことができる、OS-Xというロケットを5月17日に高度39kmまで打ち上げたと発表した。衛星打ち上げ用のOS-Mロケットも同時に開発している。

OneSpaceはRocket LabやVector Space Systems同様、小型衛星打ち上げロケットに可能性を見出しており、小型ロケット開発に力を入れている。

現在、中国には民間打ち上げ会社だけでも上記の2社に加え、LinkSpace、iSpace、ExPaceがあり、開発競争が激しくなっている。

月面の裏側へ~中国が狙う世界初~

中継衛星Queqiaoイメージ Credit : CNSA

中国は月探査ローバーを月の裏側へ着陸させるという、成功すれば世界初になる偉業の達成を目指している。その第一歩に、月の裏側を探査するローバーと地球間の通信を中継する衛星Queqiaoを5月20日に打ち上げた。

Queqiaoは月裏側から64,000km離れた、ラグランジュポイント2(*1)に配置される予定である。

月の裏側は地球に面することは決してないため、地球から見ると月の影に位置するローバーは、地球の通信局と直接通信することができないのだ。しかし、ラグランジュポイント2に位置する中継衛星は、月の影に隠れることがなく、ローバーと地球の両方と通信を行うことができる。

この中継衛星が予定通り機能することが確認されれば、2018年末にローバーは打ち上げられる予定である。

各国が宇宙開発に力を入れる中、中国の急成長する宇宙開発には目を見張るものがある。これからの動向に目を離せない国の一つである。

出典元

2018/05/29, SPACENEWS, Analysis | The rise of China’s private space industry
http://spacenews.com/analysis-the-rise-of-chinas-private-space-industry/
2018/05/22, SPACE.com, China Joins Private Space Race with Landmark OneSpace Rocket Launch
https://www.space.com/40662-china-first-private-spaceflight-launch.html
2018/05/21, SPACE.com, China Launches Relay Satellite for Mission to Moon’s Far Side
https://www.space.com/40646-china-queqiao-moon-relay-satellite-launch.html
2018/05/29, Kr ASIA, Chinese Equivalent of SpaceX Raises US$ 32 Million in Series B Round to Develop the Country’s First Privately Funded Liquid Rocket Engine
https://kr-asia.com/chinese-equivalent-of-spacex-raises-us-32-million-in-series-b-round-to-develop-the-countrys-first-privately-funded-liquid-rocket-engine/

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