インターステラテクノロジズの小型ロケットMOMOの先にあるもの

■インターステラテクノロジズ、MOMO2号機打ち上げ迫る

堀江貴文氏が立ち上げた宇宙ベンチャー『インターステラテクノロジズ(Interstellar Technologies Inc.)』が、2018年4月に打ち上げを予定しながら技術的なトラブルにより延期していたMOMO2号機を6月30日に打ち上げる。

軌道投入ロケットZEROの前段階として、サウンディングロケットMOMOの開発が行われており、去年打ち上げに失敗した初号機のリベンジ。目標としていた高度100kmを再び目指す。

2017年12月に実施したクラウドファンディングでは、2,800万円以上の資金を集めることに成功した。国民的な注目は、間違いなく集まっていると言えるだろう。

ただ、注意したいのは、打ち上げは成功したら終わりではなく、ロケットの打ち上げが成功してもロケットサービス提供会社としての売上は計上されない。

ロケットは、衛星を宇宙まで運ぶ運送屋である。飛行機や電車、トラックと同じでヒト・モノを目的地に届けることではじめてお金が発生する。

本記事ではロケットビジネスとしての視点で、本事業について考えてみたい。

【目次】
1.小型ロケットビジネスはタクシービジネス!?
2.小型ロケットの考察:打上げの頻度
3.小型ロケットの考察:金額(コスト)の差
4.小型ロケットビジネスの考察まとめ
5.小型ロケット企業一覧~社長、ロケット、スペック、進捗~

1.小型ロケットビジネスはタクシービジネス!?

インターステラテクノロジズは小型ロケットの開発を行っている。先に述べた通り、ロケットは衛星の運送屋であるので、小型ロケットということはすなわち小型の衛星を宇宙に運ぶための輸送機である。

この”小型衛星”というのが、今、宇宙業界では流行っている。性能は劣るが、小さく安く作って、数をたくさん宇宙にあげることで従来にないサービスを展開しようというものだ。

小型衛星の宇宙への輸送手段は、主に2通りある。大型ロケットで複数の衛星をまとめて宇宙まで運ぶパターンと、小型ロケットで単独の衛星を打ち上げるパターンである。今までは、大型ロケットが主流であったが、最近では小型ロケットの開発を行っているベンチャー企業も多い。

大型ロケットと小型ロケットの関係を例えるなら、路線バスとタクシーである。

あなたがとある目的地に行きたい時、路線バスの場合は、目的地に一番近いバス停で降りるしかなく、バス停から目的地までは徒歩で歩いていかなければいけない。発車時間も決まっていて、好きな時間に行くことはできない。しかし、みんなで相乗りしているので、料金は安い。

一方、タクシーの場合、目的地のすぐ近くまで行ってくれる。事前に電話をしておけば、自分の都合の良い時間に合わせて運行してくれる。ただし、その分バスよりも高い。

同じことがロケットにも言えるのである。

大型ロケットは、みんなで相乗りしている分、衛星1機あたりの費用は安いが、目的地は自由に選べず、打ち上げのタイミングも制約がある。一方で、小型ロケットでは目的地や打ち上げのタイミングを自由に選べるが、その分費用はお高めである。

では、目的地の宇宙へ、小型ロケットを使いたいという需要は、ビジネスが成り立つほどにあるのだろうか。

100kgの超小型衛星を宇宙へ運びたいという顧客を例に、小型ロケットに期待されるものをもう少し深掘りしてみよう。

   

2.小型ロケットの考察:打上げの頻度

まず、大型ロケットの打上げの頻度に目を向けてみる。

Spaceflight IndustriesのWEBサイトを参考にすると、2018-2019の2年で100kg級の衛星が打ち上げられる機会は14回ある。3カ月に2回は打上げがある計算である。さらに、今後ロケットの打ち上げ数は増えていくことが予想される。

ただし、これらのロケットは行き先(軌道)が異なり、すべての衛星が3カ月に2回チャンスがあるわけではない。スピード感を持ってビジネスを立ち上げたいベンチャー企業にとって、この頻度は十分とは言えないだろう。

   

3.小型ロケットの考察:金額(コスト)の差

では、金額の面ではどの程度差があるのだろうか。

大型ロケットに相乗りとして搭載する場合、その相場はSpaceflight industriesのWEBサイトによると、100kgの衛星の価格は約400万米ドル程度である。大型ロケットは昨今の価格競争の中で、価格低減を謳った新しいロケットの開発を発表している。

例えば、商用ロケット打ち上げ市場で圧倒的な経験を誇る欧州のArianespaceは現在使用しているAriane5の次号機としてAriane6の開発を行っているが、Ariane6はAriane5と比較し、重量当たり40~50%の打ち上げ費用の削減が可能となるという。

日本の新型ロケットH3も同様に、従来のH2Aロケットの半額に相当する約50億円での打上げを目指して、開発を進めている。
※Arine6、H3ともに2020年に初号機の打ち上げを予定

つまり、100kg衛星の打ち上げコストは、2020年には200万米ドル程度になっている可能性がある。

一方、小型ロケットベンチャーはというと、ニュージーランドに射場を持つRocket labのElectronというロケットが、100kgまで打ち上げ可能で500万米ドル以下を目指している。

すなわち、100kgの衛星にとって、小型ロケットは大型ロケットに比べて倍以上の値段がする移動手段なのである。

超小型衛星打ち上げの値段表(Spaceflight industriesより)
Image Credit: Spaceflight industries

4.小型ロケットビジネスの考察まとめ

   
以上の考察より、小型ロケットビジネスは打上げタイミングの柔軟性の点で大型ロケットに優位であるものの、金額の面では衛星自体の製造費用が数千万~数億円だとすると、もう1機製造できてしまうレベルの価格差があると分かる。

小型ロケットに価値を感じてあえて高い金額を支払いたいという需要については、懐疑的な声も聞こえていた。しかし、先日、同じく小型ロケットベンチャーのRocket Labが、小型衛星コンステレーションベンチャーであるBlackSkyおよび日本のキヤノン電子との契約を発表した。価格設定は明らかになってはいないが、2社が小型ロケットになんらかのメリットを見出したことは事実だろう。

各社はロケット開発とともに、顧客(小型衛星企業)の獲得に余念がない状況だ。インターステラテクノロジズもロケットの開発を進めつつ、顧客獲得に注力する必要がある。引き続き今後の動向に注目したい。
   

5.小型ロケット企業一覧~社長、ロケット、スペック、進捗~

最後におまけとして、小型ロケットを世界で盛り上げるプレイヤーを紹介したい。インターステラテクノロジズは日本においては小型ロケット開発をリードしているが、世界規模で見るとその進捗はどうなのか。

■インターステラテクノロジズ

社長:稲川 貴大
ロケット名:軌道投入ロケットZERO
衛星質量:100kg
打上価格:一桁億円前半
進捗:軌道投入ロケットZEROの前段階として、サウンディングロケットMOMOを開発中。MOMO初号機は目標高度100kmまで到達せず。6月末に2号機を打ち上げる。顧客(衛星)契約は未発表。

■Virgin Orbit

社長:George Whitesides(ファウンダーは実業家のリチャード・ブランソン)
ロケット名:LauncherOne
衛星質量:300~500kg
打上価格:12 Million dollar(約12億円)
進捗:初号機を2018年夏に打ち上げ予定。2015年に通信衛星のメガコンステレーションを計画するOneWebと39回の打ち上げを契約済み。2018年に入って超小型衛星を製造販売するGOMspaceとも契約を結んだ。

■Rocket Lab

社長:PETER BECK
ロケット名:ELECTRON
衛星質量:150kg
打上価格:$4.9 million(約5億円)
進捗:2017年5月に行った最初の打ち上げは軌道に到達せず失敗、翌2018年1月の2回目の打ち上げに成功した。2018年6月には最初の商用打ち上げを予定している。顧客はSpireとGeoOptics。続く商用2号機の打ち上げでは、日本のキヤノン電子およびBlackSky Globalとの契約を発表している。

■Vector Space Systems

社長:Jim Cantrell
ロケット名:Vector-R
衛星質量:› 26 kg (SSO, 450 km)
打上価格:$3 million 以下
進捗:2018年末にアラスカから試験機を打ち上げることが2018年初頭に発表された。その後、3基のロケットにより、超小型衛星を打ち上げる計画が発表されている。最初の衛星は、Alba Orbitalが開発している、CubeSatよりも更に小型なPocketQubeを予定している。最終的には、年間に100基のロケット打ち上げることを目論んでいる。

■Firefly

社長:THOMAS E. MARKUSIC
ロケット名:Firefly Alpha
衛星質量:3,000 kg (SSO, 500 km)
打上価格:10億円程度
進捗:2019年後半(Q3)に初号機を打ち上げ予定。小型衛星の開発大手である、イギリスSSTLが、6機の衛星をFireflyを利用して打ち上げるという発表が今月頭にあった。最終的には年間24基のロケットを打ち上げる計画となっている。

■PLD Space

社長:Raúl Torres
ロケット名:ARION 1/2
衛星質量:100-200 kg
打上価格:Arion 1:5,000 to 10,000 euros/kg /Arion 2, between 35,000 and 30,000/kg
進捗:2019年にArion1の初号機打ち上げを、その後Arion2を低軌道に投入することを計画している。両ロケットともにも、再利用可能なロケットにすることを狙っている。

■OneSpace

社長:Shu Chang
ロケット名:OS-M series
衛星質量:73 kg (SSO, 800 km)
打上価格:$6500程度
進捗:2018年末(Q4)に最初の打ち上げを計画している。最終的には、500kg程度のペイロードを搭載可能とし、SpaceX同様、再使用型のロケットに発展させる計画のようだ。打ち上げ予定コストは他国に比べると1桁安くなっており、年末の打ち上げが成功すると、他の企業への大きなプレッシャーとなるのは間違いない。

以上、ご覧いただくと分かる通り、単純に進捗だけを見るとインターステラテクノロジズは世界の小型ロケット開発企業と比較するとトップではないかもしれない。

しかしながら、射場となる大樹町のバックアップや日本政府による宇宙ビジネスへのリスクマネーの投下、冒頭に述べたクラウドファンディングの盛り上がりなど、インターステラテクノロジズの開発スピードを押し上げる要素も多い。

『宇宙産業を、日本の誇る一大産業にする』を掲げる宇宙ビジネスメディアとして、今後も応援し、さらには何か支援できるようになるまで、私達自身努力したい。
      
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