SpaceXのStarlinkがIPOの可能性を示唆!【週刊宇宙ビジネスニュース 2/3〜2/9】
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SpaceXがStarlinkのスピンアウトの可能性を示唆
通信衛星Starlinkを順調に打ち上げているSpaceXから、興味深いニュースが飛び込んできました。
SpaceX COOのGwynne Shotwell氏は2月6日に世界有数の銀行持株会社であるJPMorgan Chase & Co.主催の投資家イベントに出席し、今後Starlink事業部門をSpaceXから分社化し、将来IPO(新規株式公開)させる可能性があると発言したのです。
Bloombergの記事によるとShotwell氏は
Right now, we are a private company, but Starlink is the right kind of business that we can go ahead and take public.
(訳:現在SpaceXは未上場企業ですが、Starlinkは株式市場に上場できるビジネスです)
と述べたとのことです。
2002年にElon Muskによって設立されたSpaceXは、これまでに36億ドル以上の資金を調達しており、投資総額から企業価値などを算出しているPitchbookによるとSpaceXの企業価値は、334億ドルと算定されています。同社の高い評価額は低軌道通信衛星網Starlinkのポテンシャルに起因しているとの声も上がっています。
農村地域や新興市場の顧客に高速インターネットへのアクセスを提供することを目指しているStarlinkは既に240機のStarlink衛星を打ち上げており、その数は衛星運用企業の中で最多です。今月中には5回目のStarlink衛星の打ち上げを予定しており、2020年末までに約1,500機のStarlink衛星を軌道投入させる予定です。
SpaceX CEOのElon Musk氏は、同社が火星に定期的にロケットを打ち上げられようになるまでSpaceXを上場企業にはしないと長年語ってきました。SpaceXが開発中のStarshipが火星に定期便を就航出来るようになり、持続的な収益をあげることが出来るのはまだまだ先の未来と見られているからです。
しかしStarlink衛星事業については今後数年のうちに、低軌道に12,000機の小型通信衛星コンステレーションを完成させ、光ファイバーや携帯電話接続を介して多くの人々に高速通信サービスを提供できるようになる可能性が高いです。このことは、定額制の通信サービスによりSpaceXに持続的な収益をもたらすことを意味します。
SpaceXはスピンアウトの具体的なスケジュールはまだ発表しておらず、実際のStarlink事業のスピンアウトは数年先である可能性があります。
宇宙ベンチャーの上場といえば、昨年、サブオービタルの宇宙旅行事業に取り組むVirgin Galacticが一般株式市場に上場しました。衛星ベンチャーのSpireも上場を検討していると言われています。2040年までに1兆ドルの市場規模に達すると予測されている宇宙産業の中で、一般株式市場への上場を果たす企業が徐々に増えてくることは今後投資家の関心を大幅に加速させることになるでしょう。今後のSpaceX及びStarink衛星から目が離せません!
業績悪化が続くIntelsatが経営再建に向け検討中
SpaceXの明るいニュースから一変し、通信衛星運用を行っているIntelsatがChapter 11(連邦倒産法第11章)つまり、日本でいうところの民事再生申請を検討しているという衝撃的なニュースが飛び込んできました。
衛星と地上の間の通信を行うための周波数は、同じ周波数を複数の企業が同時に使うと混線してしまうため、誰がどの周波数を使うのか国際的な調整が行われて使用されています。前述のSpaceXのように新たに周波数を使用し始める企業も増えているため、FCC(米連邦通信委員会)は、主に衛星放送に用いられるCバンドについて利用者の再割り当てを進めており、Cバンドの周波数帯は、現在IntelsatとSESの2社が占有しています。
Intelsatは所有するCバンド帯の一部を他の携帯事業者へオークション形式で売却しようとしていましたが、FCCのAjit Pai委員長が当局主導で入札を実施する計画を昨年11月に発表しました。そのためIntelsatは売却による資金を手にする機会が奪われてしまい、株価低迷が続く同社の民事再生の申請に繋がっているようです。
2013年の上場以降最大の下落となった昨年の11月19日以降、同社の株価は回復の兆しを見せていません。
FCCがIntelsatやSESなどの衛星サービス企業に補償を行うかはまだ未定です。Intelsatにとって、創業以来の試練を迎えています。
OneWebが34機の通信衛星を打ち上げ
通信衛星事業を手がけるOneWebが2月7日に、34機の通信衛星をソユーズ2.1bロケットで打ち上げ、無事成功しました。
今回打ち上げられた通信衛星は、ケネディ宇宙センター近くに工場を構えるOneWebとAirbus Defense and Spaceの合弁会社のOneWeb Satelliteが製造しました。
OneWebは2020年に最大で9回の打ち上げを予定しており、2021年までに648個の通信衛星でグローバルにビジネス展開させる予定とのことです。
今回打ち上げられた34機の通信衛星の設計寿命は最低5年間であり、キセノンを用いる小型スラスタを備えています。今回衛星が投入された軌道は、高度450kmの極軌道です。この後約5か月で、スラスタを用いて高度1200kmの軌道まで遷移させる予定になっています。競合にあたるSpaceXのStarlinkよりも高い軌道(Starlinkの運用軌道は高度550km)に投入するため、地球上から肉眼でOneWebの通信衛星を見ることは難しそうです。
OneWeb CEOのAdrian Steckel氏は、「Starlinkとは別のビジネスプランです。SpaceXのStarlinkは非常に成功する可能性があります。私たちは同様のテクノロジーを使用していますが、別のボールゲームをプレイしているのです。」と語っています。
SpaceXのStarlink衛星は最終的に、ネットワークが地上局を経由せずに衛星間のみでの通信の実現を目指しています。
一方でOneWebは、地上局またはゲートウェイを介してブロードバンド信号を中継することを目指しています。同社は世界中に分散した約40〜45のゲートウェイを開発予定とのことです。Steckel氏は、このようにゲートウェイを介することは、インターネット上で主権を行使する能力があることを確認したい政府や、中国やロシアなどの国にとってはより魅力的なものになるだろうと語りました。
SpaceXとOneWeb。両社が取り組んでいる通信衛星事業。我々の生活に当たり前になったインターネットですが、約30億人は回線速度の問題でインターネットを自由に使えないと言われています。2社のアプローチの違いを今回は取り上げてみましたが、2社の取り組みが彼らの生活を劇的に変える未来は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。
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参考記事
Musk’s SpaceX Plans a Spinoff, IPO for Starlink Business
SpaceX ‘likely to spin out’ and pursue an IPO for Starlink satellite internet business
Intelsat Weighs Chapter 11 Among Options on C-Band Plan
Intelsat considering Chapter 11 in C-band crisis
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