楽天が通信衛星ベンチャーへの大型投資を発表!【週刊宇宙ビジネスニュース 3/2〜3/8】
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楽天とVodafoneが通信衛星ベンチャーに投資!
日本を代表する企業である楽天が、3月3日に市販のスマートフォンで直接接続できる衛星通信ネットワーク網「SpaceMobile」を構築しようとしているAST & Scienceへの大型投資を発表しました。今回のAST & Scienceの資金調達はシリーズBのラウンドという位置づけであり、投資額は1億1000万ドルとのことです。
2017年創業のまだ新興のベンチャーであるAST & Scienceの合計投資額はこれで合計1億2,800万ドルにのぼりました。
今回の資金調達には楽天の他に、Vodafone・Samsungの投資部門であるSamsung Next・American Tower Corporation・Cisnerosが参加しています。
AST&Scienceの試験衛星であるBluewalker-1は、昨年4月にインドのPSLVロケットで打ち上げられました。 Bluewalker-1の試験結果については公式サイトでの発表はありませんが、SpaceNewsの記事によると「衛星と携帯電話間で直接通信できることは既に確認済みである。」とAST & Science CEOのAbel Avellan氏は述べています。
AST&Scienceが今後通信網を整備するためにどの程度の数の衛星を打ち上げる必要があるかは語られていません。Abel氏は、既に軌道上にある約860kgの衛星通信衛星「Iridium NEXT」よりも大型の衛星をAST&Scienceは開発予定であると語っています。
今後大型の衛星を開発予定にも関わらず、AST&Scienceは超小型衛星のノウハウが豊富なリトアニアの衛星メーカーのNanoAvionicsとタッグを組むことを発表しています。AST & Scienceは2018年にNanoAvionicsの経営権を獲得しており、Abel Avellan氏はNanoAvionicsの取締役会長も兼務しています。大型衛星を造ろうとしているにも関わらず、超小型衛星を開発するメーカとタッグを組むのは、一見すると違和感はありますが、このようなグループ会社としての背景もあるかもしれません。
いずれにせよ、今まで超小型衛星を中心に開発してきたNanoavionicsが、今回の通信コンステレーション向けの大型衛星を開発するには乗り越えなければならない課題は多くあります。ただし、乗り越えた場合は、従来まで他社から受けてきた超小型衛星の受託のみならず、大型衛星の受託開発もできる企業へと変貌します。そうなると、超小型から大型衛星まで対応できるユニークな企業ともなるため、何かしらのゲームチェンジが起きる可能性もあり、楽しみなところです。どのように乗り越えていくのかが見所ですね。
また、大型の資金獲得に成功したAST&Scienceですが、実は競合企業には遅れをとっています。以前までUbiquilinkという企業名で知られていたLynk Globalも、スマートフォンで活用できる衛星通信ネットワークに取り組んでいます。同社は既にFCCより認可を受け、Northrop Grumman社が開発した貨物船Cygnusに搭載したペイロードで通信のテストを実施中です。
楽天の三木谷氏は、今回の投資について以下の声明を発表しています。
AST & Science’s SpaceMobile venture is a perfect fit for us. Our investment is part of our broader strategy to become a leading mobile network operator in Japan and a global solution provider to markets around the world.”
(訳:AST&ScienceのSpaceMobileは私たちにぴったりです。私たちの投資は、日本を代表するモバイル通信オペレーターおよび世界の市場へのグローバルプロバイダーになるための戦略の一つです。」)
日本の企業と通信衛星ベンチャーの取り組みと言えば、SoftbankとOneWebの取り組みが有名ですが、そこに楽天も参入してきた通信衛星市場。今後楽天がユーザーに支持されるプロダクトを市場に投入できるかどうか、目が離せません!
イギリスの宇宙ベンチャーが動画ストリーミング衛星のテストを開始
イギリスの宇宙ベンチャーであるSenが、リトアニアの衛星メーカーであるNanoAvionicsと宇宙空間から超高精細映像を提供する超小型衛星の契約を交わしたことを発表しました。
Senは、5機の超小型衛星を利用して4Kの映像を提供する”Earth TV”というサービスを今後展開する予定です。
Senは、衛星用のビデオストリーミング技術を開発するために2014年に設立されたベンチャー企業です。同社は2019年に最初の6台の超高解像度カメラを商用衛星に搭載し、操縦可能なカメラが軌道上で、衛星と地球の動画をストリーミングすることに成功しています。
同社は今後、個人ユーザー向けにビデオサービスを無料で提供し、法人向けには有料のプレミアムサービスを提供していく予定です。
NanoAvionicsとSenの契約額は非公開ですが、契約内容は、16ユニットの超小型衛星バスをNanoAvionicsが製造し、南アフリカの宇宙機器メーカーのSimera Senseが衛星用の超高解像度カメラを製造し、リトアニアのVilniusの研究施設でSenのペイロードと統合する予定のようです。各衛星は、1.5m・10m・50m・広角の超高解像度映像をキャプチャする事が可能になるとのことです。
Senの今後のロードマップとしては、2021年に最初のEarthTV衛星を打ち上げ、2022年にはさらに4台の超小型衛星を打ち上げる予定です。しかし、同社の見積では、地球のほとんどの地域で1時間おきの撮像を可能にするには、約50機の超小型衛星が必要になるとのことです。
Senの創業者兼CEOであるCharles Black氏は、「ビデオストリーミングサービスであるEarth TVは、人類に情報を提供するだけでなく、教育の観点から刺激を与えるものにもなるだろう。」と述べています。また彼の話によれば、Earth TVの初期の顧客は、自然災害や人の移動に焦点を当てたプロジェクトになるだろうとのことです。
また、Black氏は、
“Sen is developing an open-source data platform to inspire applications and analytics developers around the world to see what they could do with the data.”
(訳:世界中のエンジニアやデータサイエンティストにデータを使って何ができるかを考えてもらうために、オープンソースのデータプラットフォームを開発しています。)
と述べています。
同社のプラットフォームを活用してアプリを開発した場合は、収益の一部を開発者に還元する仕組みを検討しているとの事で、プラットフォーマーとしても注目を集めそうです。イギリス発の宇宙ベンチャーSenに、今後も注目です!
中国の衛星ベンチャーMinoSpaceが資金調達に成功!
3月3日に、北京に拠点を置く衛星ベンチャーであるMinoSpaceが、シリーズAラウンドの資金調達を発表しました。今回の資金調達はBillionhome Capital単独による投資であり、投資総額は約1400万ドルとのことです。
今回の資金調達で、MinoSpaceの獲得投資総額は合計で1700万ドルとなりました。
同社は、長沙に拠点を置く衛星ベンチャーであるSpacetyと共同で、より大型の人工衛星プラットフォーム(ミッション機器を搭載するだけで打ち上げられる汎用的なバスシステムをもった衛星のこと)の開発を進めています。今回獲得した資金も、200kg以上と大型の衛星開発に充てる予定のようです。
しかし中国は2014年以降、軍事目的の宇宙事業と国民のための宇宙事業の融合である
”military-civil fusion”をスローガンに、民間の宇宙企業に対しての政府支援を推し進めてきています。この取り組みは、宇宙産業におけるイノベーションを促進する国家戦略の一環に据えられています。
2015年から2019年7月までに少なくとも161ラウンドの投資が実施されたと中国のリサーチペーパー「Future Aerospace」は報告しています。この期間で投下された投資額は14億ドルにのぼるとも発表しています。
盛り上がりが止まらない中国の民間宇宙産業には、今後も注目です!
今週の週刊宇宙ニュース
Axiom SpaceがISSへの商用宇宙飛行サービスを2021年に提供【週刊宇宙ビジネスニュース 3/2〜3/8】
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参考文献
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Space video company Sen awards multimillion-euro contract to NanoAvionics
Sen hires NanoAvionics to build EarthTV satellites
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