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民間宇宙産業が直面するCOVID-19による影響【週刊宇宙ビジネスニュース 3/16〜3/22】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

Arianespace、ギアナの射場から引き上げ

世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)は、民間宇宙産業でも大きな波紋を呼んでいます。

感染症の更なる拡大に対応するために活動の制限を実施するというフランス政府の発表を受けて、ロケット打ち上げプロバイダーのArianespaceは3月16日に、南米のギアナ宇宙センターからの打ち上げ活動の一時停止を発表しました。ギアナ宇宙センターは、フランスの宇宙機関であるCNESによって運営されているため、フランス政府の意向に従った形になります。

ギアナ宇宙センターの次の打ち上げは3月24日のVegaロケットの予定でした。同ロケットは相乗り打ち上げで合計44機の小型人工衛星を軌道投入させる予定でしたが、延期となってしまいました。

フランス領ギアナの射場に設置されているAriane 5 Credit : ESA/CNES/Arianespace

ギアナ宇宙センターからの打ち上げがどのくらいの期間中断されるかは明確ではありませんが、中断が長期にわたると、今年後半にベールを脱ぐ予定だった2種の新型ロケット”Vega C”および”Ariane 6”の打ち上げ計画に影響を与える可能性もあります。

今のところ、ギアナ宇宙センター以外から3月下旬に打ち上げ予定の以下のロケットに関しては予定通り打ち上げされるとのことです。

  • SpaceXのFalcon 9(米国のケープカナベラル空軍基地)
    Rocket LabのElectron(ニュージーランドのマヒア半島)
    AstraのRocket3.0(アラスカKodiac)

4月中に打ち上げ予定だったVirgin OrbitのロケットLauncherOneは、スケジュールを見直しているとのことです。

あらゆる産業に猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症ですが、民間宇宙産業にも影響が出始めています。

衛星メーカーのOHBが新型コロナウイルス感染症の影響について言及

ドイツの衛星製造メーカーOHBは3月18日に決算報告を出し、新型コロナウイルス感染症が世界で猛威を振るっているが、2020年に11億ユーロ(約12億$)の売上を予定していると発表しました。

OHBのCEOであるMarco Fuch氏は、決算報告会にて、

The major difference from the space industry to many other industries is we are not at risk with regards to revenues. There might be delays but it’s not a cancellation. The demand is not changing.”

(訳:宇宙産業と他の多くの産業との主な違いは、収益に関してリスクがないことです。遅延が発生する可能性がありますがキャンセルではありません。需要は変化していません。)
と発言しています。

その他にFuch氏は、OHBの約3,000人の従業員の大部分はエンジニアリング業務やその他の業務にリモートで取り組むことができるとも述べています。

しかし、OHBが大規模プロジェクトにおけるマイルストーンを達成できない程に遅延が発生してしまうと、財政的問題に直面する可能性があります。現在、OHBの子会社であるLuxSpaceが開発したESAILは、ギニア宇宙センターでVegaロケットでの打ち上げ待ちですが、それがいつまで延期になるかは不透明です。

ギニア宇宙センターに輸送前の小型衛星ESAILの様子 Credit : LuxSpace

OHBの報告によると2019年の同社の売上は10億3,000万ユーロで、前年から3,000万ユーロ増加しました。利子・税金・減価償却前利益は7830万ユーロで、前年から1330ユーロ増加しました。

ロケットの人工衛星の製造から運用を行うには、宇宙空間での動作を確認するための実験施設なども様々な種類があり、自社グループの資産のみで完結できることはありません。民間と国の機関で歯車を合わせて行くことが必要な場面も少なくありません。今後の情勢を見た、慎重かつ大胆な経営が求められているのではないでしょうか。

機内Wi-Fiを提供するGogoが2020年の業績について言及

34機の通信衛星を介して機内Wi-Fiを提供するプロバイダーであるGogoは、新型コロナウイルス感染症が自社の業績に悪影響を及ぼしていると、3月13日の決算報告で述べています。

金融サービス会社のWilliam Blairによると、Gogoの収益の約3分の2は民間航空会社によるものです。その割合のうち、約73%が北米・19%がアジア・5%が欧州・3%が他地域の発着便であると、GogoのCEOであるOakleigh Thorne氏は述べています。

Gogo最大の顧客であるデルタ航空をはじめ、多くの航空会社が就航数を減少させている昨今の状況は、Gogoにとって厳しくなっています。

米国証券取引委員会への提出資料によると、GogoはIntelsatSESから多数の衛星の通信容量をリースしています。昨年10月にはGogoは2022年に打ち上げ予定のEutelsat-10B衛星の通信容量を使用する契約への合意を発表しており、数年で衛星のリースを更新しようとしていることが見てとれます。

GogoのCEOであるOakleigh Thorne氏は以下のように述べています。

We are a very valuable customer to the satellite companies, for some operators Gogo is their largest customer.”

(訳:我々は衛星企業にとって有望な顧客であり、いくつかの衛星事業者にとっては最大の顧客となっています。)

つまり、Gogoの収益が悪化することは連鎖的に多くの衛星事業者にも悪影響を及ぼすことになるでしょう。

Blair氏は、2019年度の自らのボーナスを業績回復するまで延期させるとのことです。航空業界の業績に左右されているGogoですが、この波を是非乗り越えてほしいですね。

航空機に掲載されているGogoのロゴ Credit : Gogo

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