大分県、Virgin Orbitと提携しアジア初の宇宙港へ【週刊宇宙ビジネスニュース 3/30〜4/5】
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大分県、Virgin Orbit社と提携しアジア初の宇宙港へ
4月2日、Virgin Orbit(ヴァージン・オービット)は、大分県と水平型の人工衛星の打上げに関するパートナーシップ締結を発表しました。
プレスリリースによると、今回の契約は大分空港を水平型宇宙港(スペースポート)として活用しようとするものであり、今後は必要な準備や手続きを進め、最速で2022年に衛星の打上げを目指すとのことです。実現すれば、アジアで初の宇宙港開港となります。
Virgin Orbitは衛星の打上げを手掛けるベンチャー企業です。同社は、有人宇宙旅行サービスの提供を計画しているVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)から2017年に分社しました。
Virgin Orbitに関する詳細は過去の記事をご覧ください。
地球規模の課題解決を宇宙港を通じて応援したい。大分県担当者を単独取材
宙畑編集部では、本取り組みを先導する大分県先端技術挑戦室の担当者に、取材に協力いただきました。
大分県が宇宙港の候補地として選出されたことについて、
「大分空港には3,000メートルにおよぶ滑走路が整備されていることをはじめ基本的なインフラが整っていること、コンビナートや精密機器メーカーなど宇宙港を支える産業基盤があること、そしてVirgin Orbitのエンジニアや顧客となる衛星関係会社の方々が滞在中に楽しめる四季折々の観光資源があることなど、これまでの取り組みが総合的に評価されたのではないか。大分県としては、県が宇宙産業のハブとなり得るチャンスと捉え、今回のパートナーシップ締結に踏み切った」
とのことです。
大分県はこれまでも、九州工業大学の環境観測衛星「てんこう」プロジェクトに、県内のものづくり企業4社が参画するなど、宇宙産業へ挑戦してきました。
今後は
「宇宙港を核として、インフラ関連産業や衛星製造関連産業への参入のほか、衛星データを活用するベンチャー企業の創出、さらには観光関連産業への波及にも繋げていきたい」
と考えているようです。
読者へのメッセージとして以下のようなコメントをいただきました。
「宇宙には、無限の可能性が存在し、衛星の『防災・減災』『公衆衛生』への活用も進められています。大分県は、地球規模の課題解決に挑戦していく、テクノロジー企業、ベンチャー企業を、水平型宇宙港を通じて応援していきたいと考えています」
日本の宇宙産業拡大のキーマンは民間企業
Virgin Orbit は、2019年6月にANAホールディングス(以下、ANAHD)と、日本およびアジア展開に関するパートナーシップを締結したことを発表しました。SpaceNewsによると同契約の覚え書には、日本国内で発射システムを導入することができる空港を挙げることが含まれていたとのことです。
ANAHDは、日本に宇宙港を開港することを目指して活動している、一般社団法人Space Port Japan(スペースポートジャパン)と連携して、国内における宇宙機発着場に関する検証を進めてきました。
シンガポールやマレーシアなどが宇宙港開港の構想を打ち出していた中での日本の選出は、日本の安全保障や政治的観点はもちろんのことですが、ANAHDらの取り組みが大きく後押ししたと言えるのではないでしょうか。
Space Port Japan・新谷 美保子氏 独占インタビュー
宇宙ビジネスの実務に精通した弁護士としてTMI総合法律事務所に所属する傍ら、Space Port Japanの理事を務める、新谷 美保子氏へのインタビュー。SPJでの取り組みや日本でスペースポートを運用する上での課題をお話していただきました。
日本を宇宙旅行の拠点に。弁護士・新谷美保子氏が語るこれからの宇宙ビジネス
次期宇宙基本計画案が公開
3月30日、宇宙政策委員会が開催され、次期宇宙基本計画案が公開されました。
宙畑メモ
「宇宙政策委員会」とは、内閣府に設置されている審議会のことです。JR東海・取締役名誉会長の葛西 敬之氏が委員長を務め、慶應義塾大学大学院法務研究科・青木 節子教授や東京大学大学院工学系研究科・中須賀 真一教授、宇宙飛行士の山崎 直子氏らが委員として参画しています。
宙畑メモ
「宇宙基本計画」とは、2008年に施工された宇宙基本法に基づき、5年ごとに策定される日本の宇宙開発利用の基礎となる計画です。現行の計画は2016年に策定されました。
今回公開された次期宇宙基本計画の草案では、宇宙政策の目標として「自立した宇宙利用大国」になることが強調されました。
社会システムにおいて基本的な役割を果たす衛星とその打上げに必要な基幹ロケット等の輸送システムは、自律的に開発および運用ができる能力を継続的に強化していく必要性があげられています。また、月および火星の探査・開発に必要な能力の強化についても触れられています。
宇宙活動の自立性を支える産業・科学技術基盤を強化と宇宙利用の拡大の好循環を実現し、宇宙開発における自立性を担保していきたい考えのようです。
また、具体的なアプローチについては、顕著な項目を以下にまとめました。
安全保障の確保に衛星コンステレーションが活用(安全保障の確保)
近年は米国やフランスが宇宙軍を設置するなど、各国が安全保障の文脈で宇宙利用を強化していることが宇宙政策を巡る環境認識にあげられました。
2019年に改定された宇宙基本計画工程表では、2020年度に宇宙領域専門部隊を新編する旨が記載されていました。
宇宙基本計画においては具体的なアプローチとして、Xバンド防衛衛星の通信網の整備や情報収集衛星の10機体制の確立などがあげられています。さらに、早期警戒などミサイルの探知、追尾などの技術動向として、衛星コンステレーションについて米国との連携を踏まえながら検討を進めていくとのことです。
日本人宇宙飛行士の活躍の場を確保(宇宙科学・探査による新たな知の創造)
宇宙科学・探査分野において大きな柱となっているのは、米国・NASAが進めている国際宇宙探査プログラム「アルテミス計画」です。
従来の宇宙科学・探査とは性格が異なり、月での継続的な活動を目指していることから、経済活動や外交・安全保障などの観点からの関与も含め、政府をあげて検討を進め主体性が確保された参画とする姿勢です。
また、国際宇宙探査計画への参画を活用し、日本人宇宙飛行士の活躍の場の確保や、月周回有人拠点「ゲートウェイ」の建設や運用、利用にも取り組んでいくとのことです。
2030年代早期に国内宇宙産業市場の倍増を図る(宇宙を推進力とする経済成長とイノベーションの実現)
経済成長とイノベーション分野では、2030年代早期に現在1.2兆円の国内宇宙産業市場の倍増させることが基本方針として掲げられています。
具体的なアプローチとしては、衛星データの利用拡大や国プロジェクトにおける民間企業からの調達拡大、宇宙産業への参入促進支援などがあげられています。衛星データ利用促進の観点から、政府衛星データプラットフォーム「Tellus」に関する言及も数か所あります。
宇宙港の整備対応についても触れられているほか、サブオービタル飛行に関する環境整備の加速、宇宙空間の資源探査・開発や軌道上での活動、宇宙交通管理に関しても必要な制度整備を検討していくとのことです。
現行の宇宙基本計画と比較して、宇宙産業の各分野が成熟したためか、より詳細に記載された印象を受けます。また、次期宇宙基本計画は、今後宇宙政策委員会などでさらに精査したのちに、パブリックコメントを募ったうえで、正式に決定される見通しです。
ボーイングが早期退職者を募集
4月2日、大手航空機メーカー・ボーイングが従業員16.1万に向けて、早期退職者の募集を発表する見通しである旨が報道されました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる旅行需要の減少による、長期的な航空機の需要減少に備える目的です。
2019年12月に、有人宇宙船「CST-1000 Starliner」のテストフライトを実施するも、軌道投入に失敗し、ISSへのドッキングを断念。同じくNASAより委託を受けて有人宇宙船の製造開発を行うSpaceXに遅れをとっている状況です。
同社は旅客機「ボーイング737 MAX 8」による墜落事故を受けて、株価が低迷。各航空会社から737 MAX 8の運休延期や発注契約の解消が相次ぎ、2019年12月にはCEOを務めていたデニス・マレンバーグ氏が辞任しました。さらに2020年1月には、FAAによる安全認証の取得に遅れが出ていることから、生産を一時停止に追い込まれる事態となりました。そのような状況の中、追い討ちをかけるように新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが発生しました。
今後米国政府が救済措置を行うのか、どのような措置がとられるのか焦点となるのではないでしょうか。
今週の宇宙ニュース
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参考
Oita Partners with Virgin Orbit to Establish First Horizontal Spaceport in Asia
大分県、ヴァージン・オービットとの提携により、アジア初の水平型宇宙港に
Virgin Orbit selects Japanese airport as launch site
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