宙畑 Sorabatake

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IST、丸紅、D-Orbitが業務提携。各社の強みを活かして顧客層の拡大へ【週刊宇宙ビジネスニュース 4/13〜4/19】

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IST、丸紅、D-Orbitが小型衛星打ち上げに関する業務提携を発表!

4月14日に、インターステラテクノロジズ(IST)、丸紅、D-Orbit(ディーオービット)の3社は、超小型衛星の軌道投入ロケットに搭載される予定の小型衛星放出システムの研究・開発を行うために業務提携を目的とした協業意向書を締結したことを発表しました。

ISTと丸紅は、2016年にロケット開発に関する調査研究費用の拠出および国内外の顧客に対するロケット販売支援に関する業務提携、2019年11月には資本提携を発表しています。

D-Orbitは、小型衛星放出システムの軌道輸送に焦点を当てた研究・開発を行うイタリアのベンチャー企業です。主力事業は、小型衛星の打ち上げのアレンジと軌道投入を行うサービス「InOrbit NOW」。顧客のミッション内容に応じた小型衛星放出システムを用いて、正確に安定させて衛星を希望する軌道へと投入させることができます。

プレスリリースによると、ISTとしては今回の業務提携を通じて、ヨーロッパをはじめとする幅広い顧客層に対して同社の軌道投入ロケット「ZERO」を活用した衛星打ち上げサービスの提案および提供に乗り出したい考えです。

一方、D-Orbitは今回の業務提携をどのようにとらえているのでしょうか。宙畑編集部では、D-Orbitの共同創業者でCCOを務めるRenato Panesi(レナト・パネージ)氏に、取材にご協力いただきました。

創業者兼CCOのレナト・パネージ氏。名門のピサ大学で航空宇宙工学のPh.D.を取得している
Credit : D-Orbit

D-Orbitにとって、ISTと丸紅の魅力についてはという質問に

「ISTはZEROおよびMOMOで私たちに柔軟性と俊敏性を提供してくれますし、費用対効果の高い状態で確実にミッションを達成するための重要なパートナーです。
また、丸紅の巨大なネットワークとさまざまなサービスのおかげで、世界中のお客様にアプローチし、設計から目的の軌道までアセットを管理するのに最適なパートナーです。」

原文:”IST is a key partner to enable us to accomplish our mission, as its Zero and Momo vehicles provides the required flexibility and agility to ensure high-value and cost-effective missions.
Marubeni, thanks to its huge network and variety of services, is the perfect partner to enable us to reach customers worldwide and to take care of their asset from their design desk to their destination orbit.”

とコメントをいただきました。

さらに、今回のパートナーシップについては

「(丸紅とIST、D-Orbitのパートナーシップは)市場にサービスを提供するために求められるスキルが組み合わさっています。D-Orbitの専門知識が加わることで、既存の宇宙空間への物流インフラに、新しく完全で統括された宇宙物流インフラを追加できるでしょう。」

原文:”The partnership among Marubeni, IST and D-Orbit combines all the required competences and skills to provide a complete service to the market. By joining our expertise, we’ll be able to offer a full and integrated space logistics service, thus adding the space dimension to the existing logistics infrastructures.”

と考えているようです。

それぞれのアドバンテージを活かしたパートナーシップの締結は、技術の確立が難しい宇宙分野においては重要なキーワードとなるでしょう。また、米国と比較して発展途上である日本とヨーロッパの民間企業同士の協業には今後も注目が集まるのではないでしょうか。

SynspectiveがRocket Labと打ち上げ契約を締結

4月14日に、小型SAR衛星の開発および運用を行う日本のベンチャー企業、Synspective(シンスペクティブ)が、米国を拠点とするRocket Lab(ロケットラボ)と初号機の打ち上げ契約を締結したことを発表しました。

打ち上げの時期は2020年内を予定しているものの、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大による影響で遅延する可能性もあるとのことです。

SynspectiveのCEOを務める新井 元行氏は「Synspectiveは、独自のSAR衛星と、衛星から得られるデータの解析及び機械学習によるソリューション提供で、データに基づく新たな視点で、着実に進歩する世界の実現に貢献できるよう事業を進めてまいります。今回の初号機打ち上げにより、いよいよその第一歩を踏み出せることを楽しみにしております」とコメントしています。

2018年の創業以来、Synspectiveの累計資金調達額は109億円。シーピーエスジャパンによると、創業から1年5カ月で同額の調達は宇宙スタートアップとしては世界最速、日本国内では最大規模となります。今後も同社の活躍に期待が高まります。

Northrop Grummanが衛星の寿命延長に成功!

4月17日、戦闘機や軍艦、衛星を手掛ける米国の軍需メーカー、Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)とその子会社であるSpace Logistics(スペース・ロジスティクス)は、Mission Extension Vehicle(MEV-1)の実証実験で、Intelsat(インテルサット)の衛星の寿命延長に成功したことを発表しました。

今回対象となったのは、データ通信を目的に2001年に打上げられたIntelsat-901衛星です。今年2月にMEV-1とIntelsat-901衛星は軌道上でドッキングし、その後Intelsat-901衛星の軌道を変更することに成功しました。

MEV-1がドッキング前に撮影したIntelsat-901衛星 Credit : Northrop Grumman

Intelsatはプレスリリースで、本サービスを「費用対効果が良く効率的である」と評価していて、2020年後半にはIntelsat-1002衛星にサービスを受けるためにNorthrop Grumman とMEV-2の契約をすでに締結しています。

Mission Extension Vehicleのようなサービスが一般化すると、宇宙ごみの削減など環境問題への対策が期待できる一方で、輸送サービスの提供企業にとってはニーズ縮小の驚異となる可能性も否定できないのではないでしょうか。

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参考

丸紅、D-Orbit との小型衛星打上げ事業に関する業務提携について

丸紅とインターステラテクノロジズの資本提携について

インターステラテクノロジズ株式会社との業務提携について

Rocket Lab (ロケットラボ)社と打ち上げの契約を締結

第三者割当増資により累計調達額が109億円に

Intelsat 901 Satellite Returns to Service Using Northrop Grumman’s Mission Extension Vehicle

Northrop Grumman Successfully Completes Historic First Docking of Mission Extension Vehicle with Intelsat 901 Satellite

Intelsat-901 satellite, with MEV-1 servicer attached, resumes service