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SpaceXが有人打ち上げの日程を発表!【週刊宇宙ビジネスニュース 4/13〜4/19】

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SpaceXが有人打ち上げの日程を発表

ついにこの時がやってきました。
2011年のスペースシャトル引退後、約9年に渡り米国で休止していた有人打ち上げがついに復活の時を迎えます。

NASAは4月17日に、SpaceXの宇宙船”Crew Dragon”で宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)に輸送する初めてのテストフライトを5月27日に実施することを発表しました。

今回の有人テストフライトは、Demo-2と命名されており、NASAの宇宙飛行士Bob Behnken氏とDoug Hurley氏が搭乗予定です。2人とも、スペースシャトルに2回搭乗したことがある経験豊富な宇宙飛行士です。

今回のミッションでは、SpaceXのCrew Dragonの最終飛行試験として発射台・ロケット・有人宇宙船・同社の運用能力など、総合的に有人輸送システムをテストするのが目的です。NASAの宇宙飛行士が軌道上でCrew Dragonの機能をテストするのは、このミッションが初めてです。

Demo-2ミッションで使用されるCrew Dragon Credit : SpaceX

今回のCrew Dragonは軌道上で約110日間の滞在が可能ですが、具体的なミッション期間はまだ明かされていません。

ミッション終了後、Crew Dragonは2人の宇宙飛行士を乗せて地球の大気圏に再突入します。その後、SpaceX社の回収船「Go Navigator」によって海上で回収されてケープカナベラル空軍基地に戻る予定となっています。

SpaceXのCrew Dragonによる有人輸送の取り組みは、2015年から始まります。

2015年の11月21日にNASAが発表した有人輸送の民間企業への委託プログラム「Commercial Crew Transportation Capability(CCtCap)」のもとで、SpaceXとBoeingの2社と締結しました。その後SpaceXはNASAの審査を全てパスし、Boeingより一足先に有人打ち上げに挑戦することになりました。

軌道上を航行するCrew Dragonのイメージ図
Credit : SpaceX

また、今回Crew Dragonを打ち上げるFalcon 9には、昔のNASAのロゴ(通称ワーム)が刻印される事がNASA長官Jim Bridenstine氏のツイッターで明らかになっています。

今回のCrew Dragonの最終ミッションDemo-2が成功すれば、日本人宇宙飛行士の野口聡一氏の搭乗が待っています。

SpaceXがついに有人宇宙開発に挑む今回のミッション。
NASAとSpaceXによる新しい宇宙時代の幕開けに注目です。

Atlas AIが700万ドルの資金調達に成功

衛星データ解析に取り組むベンチャーであるAtlas AIが、シリーズAラウンドで総額700万ドルの資金調達に成功したことを4月14日に発表しました。

今回の資金調達には、リードインベスターであるAirbus Venturesの他、Micron TechnologyとThe Rockefeller Foundationが参加しています。今回の資金調達を経て、Airbus VenturesのパートナーであるLewis Pinault氏が同社の取締役会に加わることになっています。

スタンフォード大学で公益法人として設立され、ロックフェラー財団とのパートナーシップのもと、シリコンバレーのAI系ベンチャーとして創業したAtlas AIは、衛星データと地上実証データを掛け合わせ、独自の機械学習アルゴリズムで解析することに取り組んでいます。2018年の創業以来、Atlas AIは農業の収量やアフリカの経済発展などの分析に貢献してきました。

Atlas AIのDemoのTop表示画面 Credit : Atlas AI

Lewis Pinault氏は、今回の資金調達を受けて、以下のコメントを出しています。

At Airbus Ventures we’re proud to support Atlas AI’s exceptional ability to extract actionable data from cutting-edge satellite imaging capabilities, applying its unique system strengths to showing us sustainable ways forward

(訳:最先端の衛星画像処理能力から実用的なデータを抽出するAtlas AIの卓越した能力を支援し、その独自のシステムの強みを活かして持続可能な道を示してくれることを、Airbus Venturesは誇りに思います。)

今回獲得した資金は製品開発に活用し、サハラ以南のアフリカや南アジアを中心に、農業・インフラ・経済予測に利用できるデータの拡充を進めていく予定です。

AIの技術を使って衛星データ解析に取り組むAtlas AIの今後に注目です。

Virgin Orbit最終テストフライトを実施

ロケットの空中発射に取り組むVirgin Orbitが4月12日に、小型ロケットであるLauncherOneの最終テストフライト(captive carry flight)を実施し、無事完了したことを発表しました。

今回のテストは、地上での運用・ミッションコントロール・通信システム・射程距離の把握・空母機の離陸・プルアップ・基地への帰還など、一連の流れを網羅した完全な打ち上げリハーサルだったとのことです。

最終テストの内容は以下の通りです。

カリフォルニア州のモハベ航空宇宙港から、Boeing 747を改良した母船である”Cosmic Girl”が左翼にLauncherOneロケットを取り付けて離陸。打ち上げのシミュレーションとして様々なテレメトリデータを取得しながら、サンタバーバラの南太平洋上を飛行。約2時間後にロケットを取り付けたままモハベ航空宇宙港に着陸。

最終テストフライト前のLauncherOneとCosmic Girl Credit : Virgin Orbit

過去にLauncherOneを取り付けた状態でのフライト試験を実施したことはありますが、ロケットの燃料であるRP-1(ケロシン)を実際に搭載してのフライト試験は初めてとなります。ただし、安全のため、ロケットの酸化剤である液体酸素は搭載せず、代わりにタンクに液体窒素を充填していたとのことです。

過去の試験では、タンクに水を満たした状態で飛行試験を行っていました。実際の打ち上げでは液体酸素を充填するため、タンク周辺は極低温状態にはなります。ロケットの空中発射システムが、極低温状態でも正常に作動するかどうかを確認することは非常に重要です。液体酸素の沸点が-183℃、液体窒素の沸点が-196℃なので、ほぼ正常なシミュレーションと言えるでしょう。

Virgin Orbitの公式発表では、

All of us in aerospace know that about half of all rockets fail on their first launch attempt. Each team of intrepid rocketeers knows that in spite of all of our hard work we can never rule out that possibility. But we are also armed with the confidence that this pursuit is worth the struggle to overcome its inherent challenges, and comforted by the knowledge that we’ll learn so much about how our system operates. We’ll build on the good and figure out where improvements are needed and why.

 (訳:宇宙産業に携わる者なら誰もが知っている事実ですが、約半数のロケットは最初の打ち上げで失敗します。我々のロケットエンジニアは、どんなに努力してもその可能性を完全に排除することは不可能であることを認識しています。しかし、惜しみなくこのような努力をすることでしか、我々の挑戦の壁を乗り越えてシステムの運用にこぎつけないと信じています。我々は引き続き、改善が必要な箇所とその理由について理解を深めていきます。)

と力強いメッセージが記載されています。

最終テストフライトを行うLauncherOneとCosmic Girl Credit : Virgin Orbit

小型ロケットによる小型衛星打ち上げというマーケットにおいては後発にはなりますが、空中発射という新しいシステムに挑戦するVirgin Orbit。正式な日程はまだ発表されていませんが、彼らの初打ち上げが楽しみです。

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