IoT通信ネットワークの構築に取り組むSwarm TechnologiesがMomentusと契約締結【週刊宇宙ビジネスニュース 4/20〜4/26】
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Swarm TechnologiesとMomentusが打ち上げサービス契約を締結
水とマイクロ波を使用する新たな推進機を開発している宇宙ベンチャーであるMomentusが4月22日に、Swarm Technologiesと打ち上げサービス契約を結んだことを発表しました。
今回の契約内容は、2020年にSpaceXのFalcon9で打ち上げ予定のSwarm Technologiesの12機のSpaceBee衛星のライドシェアの手配及び、2021年と2022年のSpaceBee衛星の追加打ち上げとなっています。
Momentusは、宙畑でも記事で取り上げたように、今月初旬に台湾の宇宙ベンチャーであるOdysseus Spaceと打ち上げ契約を締結しています。現在顧客開拓に力を入れているのかもしれません。
コストを抑えられる大型ロケットによる相乗り打ち上げでは、投入軌道を自由に選択できない一方、軌道を自由に選べる小型ロケットによる打ち上げは、相乗り打ち上げと比較すると割高です。そんな2択の中で、Momentusのような推進機器メーカが第3の選択肢として新たな軌道投入方法の開発に取り組んでいます。
通信コンステレーションのように多数の衛星を軌道導入したあとにサービスインが可能となる事業を行う企業にとっては、第3の選択肢はニーズがあると言えるでしょう。
Swarm Technologiesの共同創業者兼CEOのSara Spangelo氏は、
To offer global coverage for customers seeking to relay messages through the internet, Swarm satellites must be stationed in different orbital planes and spread out within those orbital planes like a string of pearls
(訳:インターネットを介したメッセージのやりとりを求める顧客に対し、通信ネットワーク網を世界中で提供可能にするためには、我々の衛星を様々な軌道に投入し真珠の糸のように分散させる必要がある。)
とSpaceNewsに語っています。
Swarm Technologiesは、2017年に設立された衛星通信ネットワークに取り組むベンチャー企業です。同社は現在9機の衛星を保有しており、2021年までに150基のコンステレーションを構築予定です。
帯域幅は狭いながらも世界中のスマートデバイスの常時接続を目指しているSwarm Technologiesに引き続き注目です。
SpaceXが7回目のStarlinkミッションに成功
SpaceXは4月22日に7回目のStarlink衛星打ち上げミッションを実施し、無事に成功したことを報告しました。
今回のミッションで新たに60基のStarlink衛星が軌道投入され、地球低軌道で運用中のStarlink衛星の総数は422基になりました。
SpaceXは今年後半に、カナダと米国北部をカバーする衛星通信ネットワークの提供を開始する予定です。さらに、2021年に全世界へサービスを展開する計画ですが、そのために1万2000基から4万2000基の小型衛星を打ち上げて通信ネットワーク網を完成させる予定のようです。
なお、SpaceX CEOのElon Musk氏はツイッターで、Starlinkのベータ版を3か月以内に、公開版を半年以内にそれぞれ高緯度地域から開始させる計画であることを明かしています。
また、Starlink衛星の打ち上げのたびに、小型通信衛星が星空の景観や科学研究に与える影響について議論が起きています。今回Elon氏より、この課題に対して同社が行っている対策についても報告がありました。
現在、Starlink衛星が明るく光るのは衛星の太陽電池パネルの角度に問題があるそうです。そこで、9回目のStarlink衛星の打ち上げミッションより、すべての衛星に”サンシェード”のようなものが装備される予定とのことです。
大規模なコンステレーション網を完成させるStarlinkミッションをユーザーに受け入れてもらうためには、この光害の問題への対応が必要になるでしょう。
1万基を超えるStarlink衛星の開発だけではなく、再使用できる巨大ロケットStarshipの試験など今後の取り組みに注目していきましょう。
5月までに開催の衛星データコンペ3選
最後に、今年計画されている衛星データコンペを3つ紹介したいと思います。
以下の2つのコンペは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対策で開催されるようです。
COVID-19 Custom Script Contest
4月6日~5月31日の間、Euro Data CubeとESAにより、地球観測衛星Sentinelの画像を用いるコンペ”COVID-19 Custom Script Contest”が開催されます。
今回のコンペは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にフォーカスを当てており、
・経済従事者数の変化の観察
・人類の活動分布の変化
・農業活動の観察
の3つのカテゴリーが用意されているようです。
コンペの狙いとして、新しいアルゴリズムを探すのではなく、衛星データがどのように現在の新型コロナウイルスの状況に役立つのか、というアイデアを探すとのことです。
NASA Space Apps COVID-19 Challenge
NASAのデータを使ったハッカソンの開催経験が豊富なNASA Space APPSも、COVID-19にフォーカスをあてたハッカソンを計画しているようです。
2020年のNASA Space Appsは、10月2~4日に計画されていますが、COVID-19をメインテーマとしたNASA Space Apps COVID-19 Challengeを5月30~31日に開催する予定とのことです。
参加方法などの詳細は、今後アナウンスがあるそうです。
また、過去に多数コンペを実施しており宙畑でも記事で取り上げているSpaceNetも新しいコンペが現在公開されています。
SpaceNet 6 Challenge Multi-Sensor All-Weather Mapping
SpaceNetは過去に多数コンペを実施していますが、現在はSpaceNet 6 Challengeが公開されています。
3月16日から開始し、5月1日まで開催しているこのコンペは、SARと光学画像データセットを使用して、建物のフットプリントを自動的に抽出するという内容となっています。詳細はこちらからご覧ください。
また、地理空間機械学習の応用研究を加速させることを目指している非営利組織であるSpaceNetに新たにPlanetがパートナーとして加わったことが、同社のツイッターで発表されました。
これまでに、Maxar Technologies・Amazon Web Services・Intel AI・Capella Spaceなどがパートナーでしたが、Planetの加入で更に多様な衛星データを扱えることになるでしょう。
今後の衛星データ解析コンペにも注目していきましょう。
今週の週刊宇宙ニュース
中国の宇宙資源ベンチャー Origin Spaceが望遠鏡開発に向けて衛星メーカーと契約【週刊宇宙ビジネスニュース 4/21〜4/27】
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参考記事
Announcing Our Work with Swarm
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Starlink passes 400 satellites with seventh dedicated launch
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