宙畑 Sorabatake

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SpaceXが有人打ち上げに挑戦・ドッキングまで成功!【週刊宇宙ビジネスニュース 5/25〜5/31】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

歴史的打ち上げに成功したSpaceX

5月30日午後3時23分(日本時間5月31日午前4時23分 )、フロリダに位置するNASAケネディ宇宙センターの39A打ち上げパッドから歴史的な打ち上げが行われました。

この打ち上げは、世界を代表する宇宙企業であるSpaceXがNASAの宇宙飛行士2名を国際宇宙ステーション(ISS)に運搬するミッションでした。

2011年7月8日にスペースシャトルが135回目のフライトで引退したのち、有人飛行は長らくロシアのソユーズロケットで宇宙飛行士をISSまで運んでいました。

スペースシャトルの引退から9年が経過し、アメリカ本土からの有人飛行の火ぶたを切ったのはNASAからCommercial Crew Programの一環として宇宙飛行士の運搬を受注したSpaceXでした。

宇宙飛行士2名を乗せて打ちあがるFalcon9 Credit : SpaceX

5月27日の打ち上げは、天候不良のため打ち上げ10分前に中止されました。

有人飛行の場合は、射場や上空の天候だけでなく、海上の天候も重要になってきます。万が一宇宙飛行士が緊急脱出して大西洋に着陸した場合、海が荒れていると救助船が駆けつけることが出来ないリスクがあるからです。

打ち上げ成功後、歓喜の様子のElon Musk氏 Credit : Spaceflight Now

ドッキングに向けて技術的な注目点

今回の打ち上げでも、Falcon9の第1段回収は実施されました。
Falcon9の第1段は、無人ドローン船である”Of Course I Still Love You”に、しっかり着陸しました。

着陸した画像を確認した2名の宇宙飛行士が拳をあわせる様子は、胸が熱くなった視聴者の方も多かったのではないでしょうか。

第1段回収に成功した様子を確認する2名の宇宙飛行士 Credit : SpaceX

また、今回のCrew Dragonのドッキングが成功によって、ソユーズ・こうのとり(HTV)・Crew Dragonという3種類の宇宙船がISSに接続される形となります。

ISSへのドッキングまでのミッションシーケンス Credit : SpaceX

Crew Dragonは、打ち上げ約19時間後に、完全自動でISSにドッキングを行い、日本時間5月31日23時30分 に無事成功しました。その後日本時間6月1日1時45分にハッチが開きISSに2名の宇宙飛行士が乗り込みました。

Crew Dragonに対してHTVは、ISSに地球側から少しずつ接近しISSの下方10mの位置で停止します。その後相対的に停止しているHTVをISSのロボットアームで捕獲してドッキング成功となります。

上記の野田篤司さんのTweetのように、無人ミッションと有人ミッションでは、緊急離脱の重要性の違いが理由で投入軌道が異なるようです。

HTVのドッキングまでのミッションシーケンス Credit : JAXA

宇宙船が秒速約7.65km/sの速度のままISSに接近する技術は、JAXAのHTVが培った技術であり、Crew Dragonでも利用されています。

まだ具体的な話はありませんが、今後、日本の有人宇宙船が登場する日を楽しみにしていきましょう。

ドッキング後、ISS船内での対面の様子 Credit : NASA

Starship SN4が燃焼試験中に爆発

今週は続けてSpaceXのトピックです。

SpaceXは5月29日に、テキサス州ボカチカの開発施設で新型宇宙船のプロトモデルであるStarship SN4の燃焼試験を実施しましたが、エンジン点火約2分後に爆発する結果となりました。

StarshipにはSpaceXが現在新規開発中のRaptorエンジンが搭載される予定で、Raptorエンジン単体による地上燃焼試験には成功しています。今回の試験はStatic Fire Testと呼ばれるもので、実際に宇宙船にRaptorエンジンを搭載し燃料も充填した状態で地上でエンジンに点火させる試験でした。

したがって、過去に耐圧試験の際に破裂を起こした際と異なり、今回は燃料と酸化剤が充填されていたため、大きな爆発となったと見られています。

爆発するStarship SN4の様子 Credit : NASASpaceflight

SpaceXは試験の前日に、アメリカ連邦航空局(FAA)からStarshipのサブオービタル軌道への打ち上げ許可を取得していました。今回の打ち上げ許可では、フライト数や投入高度には明確な制限は設けられていません。具体的な打ち上げ高度は事前に申請した条件に準拠する必要がありますが、それらの情報は非公開となっています。

今回の爆発で、試験打ち上げのスケジュールは見直されることでしょう。CrewDragonの華麗な打ち上げに成功するSpaceXですが、改めて、新型ロケットエンジン開発の困難さを感じる結果となりました。

今後のStarshipの開発も見守っていきたいと思います。

今週の週刊宇宙ニュース

参考記事

Launch America

Crew Dragon in orbit after historic launch

RETURNING HUMAN SPACEFLIGHT TO THE UNITED STATES

宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機(HTV9)の概要

SpaceX gets FAA approval for Starship flight tests

SpaceX’s Starship SN4 launch vehicle prototype explodes after static engine fire test