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OneWebが衛星製造開始の許可を得て、事業の再始動へ【週刊宇宙ビジネスニュース 7/13〜7/19】

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OneWebが衛星製造元への支払い許可を裁判所から受け取り、事業の再始動へ

ニューヨーク南部地区の米国破産裁判所は7月10日に実施した審問の結果、7月3日に英国政府とBharti Globalに買収されたOneWebに対し、同社の子会社であるOneWeb Satellitesに支払いを行うことを承認しました。

これにより、今年3月に破産したOneWebは、通信コンステレーション網を整備するために通信衛星の製造を再開させることが可能となりました。

OneWeb Satellitesは、OneWebとAirbus Defence and Spaceのジョイントベンチャーで、衛星の製造を手がける工場はフロリダに位置しています。

英国政府とBharti Globalは、OneWebに合計で10億ドルの投資を計画しています。そこから管理費・負債の支払い・つなぎ融資額を差し引いた後、約6億4000万ドルがOneWebの運営資金として利用可能になるだろうと、衛星業界のアナリストであるQuilty Analyticsは推定しています。

OneWeb Satellitesで製造される小型通信衛星 Credit : OneWeb Satellites

OneWeb Satellites広報担当のMolly Townsend氏は、現在OneWebが最初に発表した648機の衛星コンステレーション計画からの変更に取り組んでいると語りました。しかし、今後OneWeb Satellitesが製造する衛星の数については明言を避けています。

英国のビジネス・エネルギー・産業戦略担当国務長官のAlok Sharma氏は、今回OneWebに投資を決めた理由は、
・地球全域におけるインターネットアクセスを可能にする社会の実現への貢献
・民間宇宙産業分野で英国の地位を高める戦略的観点
の2点であると述べています。

また、一部から、英国独自のGNSS構築に向けた投資であるのではという声があがっている件については、以下のようにコメントしています。

I think there’s been debate around a [Global Navigation Satellite System], and that wasn’t the rationale for this particular investment. But of course, we are exploring how OneWeb may be able to contribute to Positioning, Navigation and Timing (PNT) resilience in the future.
(訳:全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)については議論があったと思いますが、それは今回の投資の理由ではありません。しかし、我々はOneWebが今後衛星測位システムの構築にどのように貢献できるか検討を続ける予定です。)

通信衛星大手のイリジウムグローバルスターも、チャプター11を経験した後に事業の再建に成功しています。新たな支援者のもとで再始動するOneWebに引き続き注目です。

西ロンドンに位置するOneWeb本社のコントロールセンターの様子 Credit : OneWeb

SESがインテルサットに最低18 億ドルの損害賠償を請求

ルクセンブルクの通信衛星大手企業であるSESが最低18 億ドルの損害賠償を求めて、通信衛星大手企業のインテルサットを提訴したことを発表しました。

今年5月にインテルサットは業績の悪化から、米国連邦破産法11条(チャプター11)に基づく会社更生手続きの適用を申請していました。

現在、連邦通信委員会(FCC)が主導しながら、主に衛星放送に使用されるCバンドと呼ばれる3.7~4.2GHzの周波数帯の再割り当てを、オークション形式で実施しようとしています。その過程で、Cバンドを多数所有するSESとインテルサットは大きな受益者でした。

しかし、インテルサットがチャプター11を申請したと同時に、Cバンドアライアンスからも脱退しました。これにより、インテルサットとSESがCバンドアライアンスのオークションから徴収する予定だった収益を均等に分配することで合意していた契約が成り立たなくなったことが今回の提訴の内容となっています。

SES社は、今回求めている18億ドルには填補損害賠償と懲罰的損害賠償が含まれていると述べています。具体的な告発内容は、インテルサットの契約違反・善管注意義務違反、不当利益の3点となっています。

周波数の分配に関する問題は、今後衛星が数多く打ち上げられることが計画されている中で避けては通れない問題です。Cバンドの再割り当ては、今後の5Gネットワークの整備にも影響してくるかもしれません。

SESが所有する地上局 Credit : SES

電気推進を手がけるExotrailがシリーズAラウンドの資金調達を発表

小型衛星向けの電気推進機構や軌道上輸送のソリューションを開発しているフランスのベンチャー企業Exotrailが、シリーズAの資金調達を実施し総額1300万ドルを獲得したことを発表しました。

今回の資金調達ラウンドは欧州のVCであるKaristaとInnovacomがリードインベスターとして主導し、IXO Private Equity・NCI-Waterstart・Turenne Capital・360 Capital Partners・Irdi Soridec Gestion・Bpifranceも参加しています。

2017年の創業以降、エンジェルラウンドとシードラウンドで既に3回の資金調達を実施しているExotrailは、今回のシリーズAラウンドで調達総額が1740万ドルとなりました。

Exotrailが今回獲得した資金は、推進システムの開発費、宇宙デブリ低減に繋がるソリューション開発、欧州と北米での事業開発スタッフの雇用等に活用するそうです。

同社創業者兼CEOのDavid Henri氏は、現在の年間約10基の推進システムの製造能力を2023年までに年間約100基に拡大し、従業員数を27名から50名に増やす計画だと述べています。

Exotrailの手がける軌道上サービスと軌道遷移のイメージ図 Credit : Real Dream, Exotrail

Exotrailは現在、様々なキューブサットにデモ用の推進システムを搭載することを進めています。今年末にSpaceX社のFalcon 9で打ち上げるキューブサット1機、来年Clyde Spaceがユーテルサットのために製造するキューブサット2機に、デモ用の推進システムが搭載される予定です。

また、昨年11月に打ち上げ予定だったインド宇宙機関のPSLVで打ち上げられるキューブサットにもデモ用の推進システムが搭載される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で打ち上げロケットPSLVの延期が続いており、秋の終わりまでに打ち上げが実施される可能性はかなり低いだろうと予想しているようです。

Exotrailはこのようなデモ用の推進システムの打ち上げを進めながら、今後1年間で、キューブサットより大型の10~250kgの小型衛星に搭載させる推進システムの開発に取り組む予定です。

デモ用の推進システムのフライトモデルの様子 Credit : Exotrail

2024年までには、Space Vanと呼ばれる新たな宇宙輸送システムを提供する予定です。このシステムは、ロケットから小型衛星が分離した後に小型衛星を希望の軌道に運ぶことを可能にします。フランスの宇宙機関CNESから、Space Vanの資金調達のために10万ユーロの契約を獲得もしており開発は順調のようです。

ヨーロッパのニュースペース分野のリーディング・プレイヤーになることを目指すと強く語るExotrail。近年プレイヤーも増えてきている軌道上サービス市場を牽引するExotrailに今後も注目です。

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