宙畑 Sorabatake

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ThrustMeの推進機が軌道投入に成功!【週刊宇宙ビジネスニュース 11/25〜12/1】

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ThrustMeの推進機が軌道投入に成功!

過去に宙畑の記事でも紹介したフランスの推進系宇宙ベンチャーであるThrustMeが、自社の推進機構を中国の宇宙ベンチャーであるSpacetyのキューブサットに搭載し、無事に軌道投入を果たしたことを発表しました。

2017年に設立されたThrustMeは、ヨウ素ベースの推進技術の商業化を目指しています。具体的には、コールドガススラスタと呼ばれる小型衛星用の電気推進機構の開発に取り組んでいます。

同社がキューブサットに実際に搭載した推進機構は、”I2T5非加圧式コールドガススラスタ”と呼ばれるもので、1ユニットを10 cm3とした場合の3~6ユニットのキューブサット向けに設計された1ユニットほどの推進機構となっています。この機構で、衝突回避・軌道上での衛星寿命の延長・再突入などを行うための推進力を得ることができます。

ThrustMeによると、I2T5スラスタは事前に充填された状態で出荷され、クライアントには加圧されない状態で届くとのことです。

今後は、NPT30-I2という名称のより高推力の推進機構を開発していくことを表明しているThrustMeに引き続き注目です。

I2T5推進機構の概念図
Credit : ThrustMe

Spacetyは、2016年に設立され、中国中部の長沙に拠点を置く宇宙ベンチャーです。低コストで高性能な超小型衛星に特化したベンチャーです。今回の打ち上げは早くも9機目であり、軌道上にはすでに同社の小型衛星は15機存在しています。
今回同社が打ち上げた超小型衛星”Dianfeng”は、6ユニットの超小型衛星です。

Spacetyは中国科学アカデミー(CAS)からのスピンオフであるLaserFleetと協力しており、レーザー通信を使用して低地球軌道コンステレーション網の構築を計画しています。

ThrustMeとSpacetyの協力関係は、今年2月に契約が結ばれ、11月上旬の軌道投入となりました。ThrustMeのファウンダーでありCEOであるAne Aanesland氏は、“意思決定のスピードとプロセスは迅速かつ明確でした。”と語っています。

北京に本拠を置く宇宙コンサルティング会社であるUltimate Blue Nebula Co. のファウンダーのTianyi Lan氏は、欧州企業と中国企業との間でこのような取引が増えると予想されると語っています。

“Compared with U.S. export policies and regulations, [the] European space environment is better … The [biggest] barrier should be the ITAR-like regulations, but more and more European companies are developing ITAR-free components or devices to meet the regulations,”

(訳:米国の輸出政策や規制と比較して、欧州の宇宙産業市場の方が優れています。ITARに似た規制が欧州の宇宙産業市場にも存在しますが、欧州の企業の多くはITAR Freeの宇宙機器やまたはデバイスを開発しています。)

宙畑メモ:ITAR

ITARとは、アメリカが実施している国際武器取引規制のことです。ロケットや人工衛星にアメリカ製の部品を使う際は、その用途がアメリカによって規制されます。ITAR Freeとは本規制に該当する部品を使っていないことを意味し、アメリカから何の制約も受けずに活動できます。

中国の宇宙ベンチャーもどんどん勢いを増してきています。Spacetyの今後にも楽しみです!

Spacetyの開発メンバー Credit : Spacety

Planetが、Superdove衛星を打ち上げ!

11月27日に、PSLVロケットによってPlanet社のSuperdove衛星12機が打ち上げられました。

同社が既に100機以上打ち上げているCubesatである「Dove」衛星をアップデートしたのが、今回打ち上げられた「SuperDove」衛星です。

Planetは、PlanetScopeというサービスを通じて、Dove衛星からの3〜5メートルの解像度の画像を販売しています。同社の小型で比較的安価な衛星の大規模な艦隊は、毎日更新されるグローバルな画像を提供できます。

Planetの創設者兼CEOであるWill Marshall氏によると、Doveでは4つの波長帯域しか観測していませんでしたが、新しいSuperDove衛星により、段階的に観測波長帯域を増やし、最終的には8波長帯域で画像を収集していくようです。初期のDove衛星の最大5倍の情報量を取得できるようになるとのことで、今回のアップグレードで、農業および汚染の監視に効果が発揮されることが期待されています。

おそらく、Dove衛星で観測頻度をある程度上げることに成功した中で、次なる課題として、より複数の波長帯域で観測すること、そして観測分解能を上げること(Skysatの観測分解能は1m弱から50 cm程度にまで性能を向上させるようです)が挙がってきたのでしょう。

PlanetのCEOと副社長がSuperdove衛星を紹介する様子 Credit : SpaceNews/Debra Werner

小型衛星界の雄であるPlanet社の動向から目が離せません!

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