衛星データプラットフォームの理想の姿とは、宇宙業界のキープレイヤー達が語る「宇宙産業の今」
7月16日に開催したオンライントークセッション「2020年宇宙産業の今-課題と役割についてステークホルダが語る-」では、衛星データの市場を拡大していくために何が必要なのか、宇宙産業に従事するキーパーソンの皆さまに衛星データビジネスの今後の課題とTellusの役割について話あっていただきました。
7月16日に開催された「Tellus SPACE xData Fes. -Online Weeks 2020-」のトークセッションの一つ、「2020年宇宙産業の今 -課題と役割についてステークホルダが語る-」。
このトークセッションでは、JAXAや三菱電機、三菱重工業といった宇宙業界を代表する企業のほか、PwCやパスコといった衛星データビジネスのコンサルやデータ販売を行う企業も加わり、Tellusを取り巻く宇宙業界のステークホルダの皆さまを集めて、それぞれの視点から今の宇宙業界の課題やそれぞれの役割についてディスカッションを行いました。
なお、ファシリテーターは、政治、経済、金融、テクノロジー、企業戦略、スポーツなど幅広い分野のニュースを配信するビジネスメディア「Business Insider Japan」の編集長、伊藤氏が行い、ビジネスの切り口で各登壇者への質問を投げかけていきました。
今回は、登壇者の方々の実際のやりとりを紹介しながら、衛星データビジネスにおけるTellusの役割を明確化していきます。
本イベントのポイント
・宇宙産業の市場を拡大する中で衛星データ利用ビジネス市場の成長が今注目されている
・衛星データ利用の課題は、使えることへの期待値のギャップと利用へのハードルの高さ
・Tellusの役割は、誰にもビジネスをするチャンスがある環境の整備と利用者の育成
なお、イベントはYouTubeで公開されています。ぜひ合わせてご覧ください。
(1)宇宙業界をけん引する6名の登壇者紹介
今回のトークセッションで登壇されたのは以下の6名。
国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 新事業促進部長 岩本裕之様
三菱電機株式会社 電子システム事業本部 主席技監 小山浩様
PwCコンサルティング合同会社 宇宙ビジネスチーム リード Manager 永金明日見様
株式会社パスコ 衛星事業部 副事業部長 石塚高也様
三菱重工株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 技術部 主席技師 川戸博史様
さくらインターネット株式会社 フェロー 松浦直人
また、トークセッションのファシリテーターとして、Business Insider Japan 編集長の伊藤有様にご出演いただきました。
では、さっそくイベントで語られた内容をほぼそのままご覧いただければと思います。
(2)今、世界の「宇宙産業」で起こっている変化は?
伊藤:今日は、「2020年宇宙産業の今-課題と役割についてステークホルダが語る-」というテーマで宇宙産業のこれからについて語っていくセッションをやりたいと思います。
今日のセッションでは「今日初めてこのTellusを観ます」という方もいらっしゃると思いますが、今宇宙産業はこうなっていて、特に衛星データビジネスということについてはこういう課題がある、ということを宇宙産業の中にいらっしゃる方から課題の提起をいただきながら、Tellusは何ができるかということを語るという非常にお得なセッションになっております。
さっそく本題に入っていきたいと思います。
まずは、今、世界の「宇宙産業」でどのような変化が起こっているかということをお聞きしたいと思います。トップバッターは、海外の衛星データビジネスの現状に詳しく、ビジネスコンサルも行っているPwCの永金さんにお願いしたいと思います。永金さんよろしくお願いします。
永金:よろしくお願いします。PwC永金です。
では、私から、世界を含めて宇宙産業が今どういう状況なのかというところをお話したいと思います。
永金:宇宙産業について、衛星製造やロケットの打ち上げビジネスをアップストリーム、ロケットで衛星を打ち上げた後の保守運用や地上設備ビジネスミッドストリーム、衛星が撮影した画像や測位衛星が提供する位置情報を利用したビジネスをダウンストリームと我々は分けさせていただいていて、この市場についての数字を見ていただくと、かなり大きな金額が動いているとわかると思います。
なかでも中心になってきているのがダウンストリームの部分で特に衛星データの利活用といったところです。
ダウンストリームのところを見ると24.3兆円で、2016年というデータにはなりますが、アップストリーム、ミッドストリームと比べて一桁違う金額を上げている。
特筆すべきは、その下のところに書いてある衛星画像のデータプラットフォームを活用した欧州の経済効果というところ。これがなんと2020年時点で4,550億円です。
年度成長で言うと14%というところで、この成長はまだまだこれからも続くだろうと見られていて、衛星データが及ぼす影響っていうのはかなり大きくなってきているなと。
永金:なぜこうなってきたのかについて、一言で言ってしまうと、データの取扱いの形が変わってきたというのがポイントです。
かつて官需中心で1つのデータに対してそれを解析していくというところが、クラウド化されることによって大量のデータを解析できるようになりました。
しかも衛星の小型化も後押しして、かなり安い金額でできるようになってきている。場合によっては無料で扱えるデータもあります。
永金:クラウド化とはどういうことかと言うと、まさにTellusもそうですが、プラットフォームのデータベースに衛星データが溜め込まれ、分析ツール、開発環境も同時にあり、いろいろなサービスが開発できる。
このような環境が政府系・民間主体系とありますが、かなり整ってきています。グローバルで言えば欧州のコペルニクスが有名で、このようなプラットフォーマーが登場してきています。
宙畑メモ
欧州のコペルニクス、米国のAWSなど海外では先んじてプラットフォームの整備が進んでいます。
永金:スライドの下部にある中間ユーザーまたはエンドユーザーがデータを今後分析して活用して、新しい示唆を得て様々なサービスに昇華していくということが起きています。
グローバルの流れを見ると、やはりプラットフォーマーを目指す事業者と中間ユーザー、いわゆるスペシャリストと言われるような特定の分野でデータを活用していくことを深堀りしていくようなプレーヤ—が続々と現れてきています。
先ほど見せたビジネスの広がりっていうところをけん引役となるのが、まさに今この中間ユーザーまたはエンドユーザーと言われるような、特定の分野で特定の知見を持って、様々なサービスに昇華させていくようなプレーヤーなのかなと思っています。
永金:欧州で中間ユーザー・エンドユーザーが出てきているのは、安価に衛星データを活用できる、つまり、トライ&エラーをできる環境がかなり整ってきたということであり、いろいろなチャレンジをして、その中で自分たちの活路を見出していくというような流れができているからなのだと思います。
Tellusがこれから本格化していく中で、日本でもこういった動きが出てくるのは非常に期待されている部分です。
伊藤:ありがとうございます。これはやっぱりトライ&エラーができるようになっているというところは、プラットフォームとしてデータが取扱いやすくなってきているから、ということですかね。
永金:そうですね、衛星データを扱うハードルがかなり下がってきたといえると思います。
伊藤:Tellusが日本版のプラットフォームにあたるというところで、そこは1つ期待の高いところかなということですね。
永金さん、ありがとうございました。では、データビジネスがどのように変わってきたかというところで、これまで多くの人工衛星の製造を担ってきた立ち位置から三菱電機株式会社の小山さんにお話をお聞きしたいと思います。
(3)観測衛星の歴史と昨今の衛星データビジネス
伊藤:小山さんには、観測衛星の歴史やビジネスモデルの変化をお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。
小山:三菱電機の小山です。今日はよろしくお願いいたします。私からは観測衛星の最近までの歴史と、ビジネスモデル関係の話をさせていただきたいと思います。
小山:上記のスライドはJAXAさんのご指導によって、今まで開発してまいりました日本の観測衛星を示しています。
今まで気象衛星をはじめとして、地球の温室効果ガスを観測できる衛星、合成開口レーダ、光学センサを使って地上の様子を観測する衛星……こういったものが開発されてきました。
基本的には1機ないしは2機がペアで観測するというものが大半です。
また、衛星の規模も中型・大型衛星と言って、数トン規模のものが多かったことが今までの傾向です。
こうした衛星を使って地球を回りながら観測するわけでございますけれども、やはり機数が限られていることもあり、いつでもどこでも見られるというわけではありませんでした。
そこで最近登場してきたものが、次のスライドにある小型衛星使ったコンステレーションです。
小山:これまでも何時間おきかに災害の状況を監視したいという話は何回もあり、その場合は世界各国の衛星、十数機、十機程度の衛星を使って観測をするという話はありましたが、ここで紹介する小型衛星コンステレーションの数はそれをはるかに上回ります。
このスライドにある通り、常時120機以上、あるいはものによっては80機以上、衛星を周回させ、常時地球の様子をモニターする、そういったことを可能にするシステムです。
この傾向が登場してきたのは、ここ十年ぐらいの話です。
このシステムはこれから先のビジネスモデルを変える大きな契機になると考えています。
小山:このスライドはかなり抽象化して書いたものになりますが、これまでの衛星ビジネスは「すでに撮った衛星をあるアーカイブにアップロードしておいて、それをユーザーの方が個別購入していく」というビジネスになっていました。
また「あるところを撮ってほしい」という場合ですと、それをプライベートセクターの専門の方にお願いして、そのデータを撮っていただいて、加工して入手する、こういったものが今までの典型的なビジネスモデルでした。
ところが、最近はいつでもどこでも観測できるようになり、それをアーカイブとしてクラウド上にアップし、常にアップデートすることで、常に最新の画像が自由に手に入るということになります。
つまり、進歩し続けるクラウド技術、IT技術、そういったものとミックスすることによって、ビジネスモデルが1枚ずつ買うというものから、常にアップロードされているものをバルク買いしていく、年間契約で自由に取れるようにしていくといった変化が起きているのが昨今の衛星データビジネスの傾向です。
この変化により、単に画像を販売処理というのに加えて、さらに付加価値をつけてくださるユーザー(カスタマー)が現れてきました。
上記イラストだと右端にビジネスインテリジェンスプロバイダーとありますが、これはAIを駆使して、車の台数や石油の備蓄状況といったものを自動的に見る、そういったインテリジェンスを付加するようなプロバイダーが出てきたというのが大きな特徴です。
例えば、その典型例が次のスライドになります。
小山:これはOrbital Insightと呼ばれる会社の画像解析の例ですが、例えばよく引用されるのが、石油タンクの備蓄量をいわゆるルーフの高さから自動的に判定して調べるというもの。他にもショッピングモールに駐車している車の台数を自動評価して流通の動態指標を把握する、農作物の生産量を自動評価する……こういったものが衛星画像とAIを駆使することによってできるようになってきました。
伊藤:ありがとうございます。Orbital Insightの石油の需給量の判定については、これはタンクの屋根が下がっているか否かを影で判断するんですよね。
小山:そうですね。石油タンクの屋根の上下を影から見て、今ここの石油のコンビナートにはどれぐらい石油があるぞというのがわかるという仕組みになっています。
伊藤:まさにデータがある程度手軽にアクセスできるようになったからこそ新しく生まれたような技術ということが言えるかと思います。ありがとうございます。
続きまして、日本における宇宙と言えば、やはりJAXAさんということで、JAXAから見た日本の宇宙業界の現状ということをJAXAの岩本さんお願いできますでしょうか。
(4)JAXAが進める産業振興
岩本:JAXA新事業促進部の岩本です。私からはJAXAから見た産業界、どのようにJAXAが産業を振興しているかという話をさせていただきたいと思います。
まず、「宇宙」というイメージですと、ロケット、人工衛星とあるのですが、実際我々がやっている活動はそういった技術開発から国際協力、安全保障、そして今日のテーマの産業振興やデータ利用、そういった多岐に渡るところをJAXAとしては技術で支えていく。そのような役割を我々は担っています。
岩本:以下スライドで、我々が具体的にどのように産業振興に取り組んでいるかという例をいくつか挙げさせていただきました。
岩本:1つが技術実証・事業共創プログラム。今「J-SPARC」というプログラムを立ち上げており、そこで民間プレーヤーの新規参入を促進しています。
2つ目にJAXA発ベンチャー支援。AXAの職員が自ら会社を立ち上げて、JAXAの持っているノウハウですとか知財、そういったものを活用して社会実装することで経済社会に貢献しています。
スライド左下、宇宙起業家の育成は、内閣府などと一緒にビジネスアイディアコンテストということで、新しい宇宙ビジネス、潜在的な宇宙ビジネスを種から盛り上げる政策や、実際に起業家と投資家をマッチングする「S-Matching」といった支援をすることで宇宙の起業家を育成しています。
そして右下のリスクマネー供給の拡大については、実際事業を起こしたとしても、やはりお金がないと宇宙は進みませんので、DBJ(日本政策投資銀行)さんですとかINCJさん、それから最近ですとスパークスさんなどと連携協定を結び、宇宙ベンチャー等が資金調達できることを活性化しています。
例えば、以下のスライドはJAXA発ベンチャーということで、JAXAが立ち上げた会社ですけど、これまで7社ですね。我々の職員が立ち上げております。
岩本:地球観測データから航空まで含めて、いろいろな会社が今立ち上がっています。
次に、技術実証・事業共創プログラムの一環である宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)の目的は新しいプレーヤ—、これまで宇宙に入っていなかった業界の方々、分野の方々を、是非宇宙で活躍してほしいというもの。
新しい宇宙関連の事業、これまでなかったような宇宙の事業を立ち上げたい、さらにここで技術革新・イノベーションを創出したいと考えています。
岩本:具体的な分野は地球の社会課題を解決する、まさに今日のテーマである地球観測衛星のデータですとかビッグデータ、そういったものから、宇宙探査、月探査ですとか、宇宙の軌道上に出るといった、人類が地球の外に出て行くことで起きるビジネス、さらに宇宙を楽しむアミューズメント、エンターテインメント、衣食住からバーチャルリアリティまで、そういった幅広い形で民間企業との共創活動を考えております。
仕組みとしては、アイディアを持っている企業さんにすぐJAXAに来ていただき事前対応を始めて、具体的に取り決めを結び、コンセプト共創活動、事業共同を実証することで新しいビジネスを起こしていく。JAXAは民間の方々と一緒にやることで新しい技術を得る。双方リソースを持ち寄った形でのパートナーシップの協力を行っています。
岩本:今現在で約20社ありますが、上のスライドはこれまで一緒にやった企業の一例です。
ANAさんのような航空会社から、宇宙ベンチャーであるロケット会社、それからGREEさんのようなソフトウェアを扱う形の会社、教育まで含めていろいろな企業さんと協力を行っているところです。
J-SPARCのキャッチフレーズが「共創しよう。宇宙は、世界を変えられる。」ということで、民間企業さんと組むことで新しい時代を創っていきたいということを考えております。
伊藤:ありがとうございます。今、この宇宙産業で今どのような変化が起こってきているかというのを、様々な視点でお話をいただきました。
キーワードがいくつが出てきましたね。
①データプラットフォームがあることによって、これまでとは違うビジネスが起り始めている
②ビジネスモデルも変わり海外を中心にビジネスが広がっている
③宇宙産業を全体を広く見たとき日本としてもそのような方向に来ている
ということで、次のテーマは、じゃあこの宇宙産業の現状を踏まえた課題の部分というのは、どういうものがあるのでしょうかという点について、特に日本の宇宙産業、衛星データ利用の点で語っていきます。
(5)パスコが語る、宇宙産業における課題とは
伊藤:まずは、パスコ石塚さんに実際に衛星データの提供をビジネスとしてやって来られて、このへんがなかなかうまく回らなかったんだよなというようなところをお話していただきたいなと思っております。よろしくお願いいたします。
石塚:パスコの石塚です。シンプルなスライドですが課題提起させていただきます。
石塚:弊社パスコの立ち位置からすると大きく2つの役回りがあるかなと思いまして、ひとつは衛星データの利活用企業ということで実際にデータを使うという立場のパスコ、もうひとつはデータのプロバイダー、要は衛星データを販売・提供するという立場のパスコです。その2つの役回りからの課題というものをいくつか挙げています。
まず1つ目の利用について、まだまだ我々も深堀りをしているつもりではありますが、もっともっと宇宙産業というか、宇宙データを使えるフィールドがあるのではないのかなと、まだまだ限られた分野でしか利用されていないんじゃないのかなといったところが、非常に大きな課題として挙げられると思っています。
また、今まで衛星データを使って「〇〇ができるか」とか、「こういったことができますよ」とは言ってはおりますけども、果たしてその衛星データだけでお客様が持っていらっしゃる課題が本当に解決できるのかな。衛星データだけではなくて地図があったりだとか、統計データがあったり、ビッグデータがあったりだとか、そういったものと組み合わせて、初めて宇宙データの利活用促進とか、その価値が上がるんじゃないのかなと思っていまして、そこがまだまだ衛星データだけでやろうとしているというところは私は疑問視しています。
次に衛星データプロバイダーという立場では、先ほど三菱電機の小山さんのお話で、いろいろな新しい衛星が出てきたとか、時間分解能が上がったというのはあるんですが、それでもまだ意外と欲しいところが撮れないというのが現実です。
伊藤:意外と撮れないんですね。
石塚:必要なときに必要な条件(この条件っていうのも大事なんですけども)をお客様から我々も聞いても「すいません、ちょっとこの状態だと撮れません」とかですね、そういったことがまだ続いているっていうのが、目先の課題ですね。
それから衛星データというのは、AIだとかIoTとかありますけども、要は変化を撮るという意味では、新しく観測するデータだけでは駄目。
過去のアーカイブデータと新たに観測したデータ、その2つがセットになって初めて衛星データの価値が出てくるので、いくら新しいデータが取れたとしても過去と今を比較する両方がセットになって使わないと意味がないのではないか、価値が半減するのではないかと思っています。
また、データ利活用っていうことで、さきほどの永金さんのお話の中で、我々はどちらかと言うとダウンストリーム系に当たるのですが、ダウンストリーム系でビジネスは広がっていきます。
ただ、ひとつひとつのパイが小さいので、数多くのビジネスを作っていかなければいけない。ベースとなるところは、データプロバイダーがちゃんとしっかりとしたビジネスとして成り立っていて、アンカーテナンシー(民間の産業活動において政府が一定の調達を補償することにより、産業基盤の安定等を図ること)としてあったうえで、さらにデータ利活用のところで我々民間企業がビジネスができるというところが非常に重要。まだまだそこのバランスを取らないと事業は成立しないのではないかと感じています。
石塚:上記スライドは弊社の会社概要なのですが、弊社のビジネスの中で衛星っていうのはこの左側の遠隔監視、リモートセンシングの部分になります。
航空写真とか道路計測がありますが、その中の1つのリソースとして衛星があります。また、リモートセンシングだけではなくて、オンサイトセンシングって言っていますが、やっぱり最後は現場を見ないとなかなかわからないといったところは、国内外でも同様です。
現場にいかなきゃわからないデータもあるという部分とのバランスを持って、情報を集めて、解析をして、下にあるようなテーマに対して我々はサービス提供をしています。
下のテーマというものは、まだ限られた分野でしかないと思いますので、星データ、宇宙データが使えるフィールドっていうのがまだまだたくさんあるんじゃないかな、可能性があるんじゃないかな、というふうに考えています。
伊藤:ありがとうございます。永金さん、今出た課題の中で、衛星データだけで課題解決しようとしているなとか、そうするとなかなか事業が成立しないな、みたいなところは同じような課題感を感じられていますか?
永金:まさに同じ思いで、やはり衛星データで全てをやっぱり解決できるわけではないので、いかに他のデータと組み合わせるかというところが、最も重要なポイントかなと思います。
企業さんが持っているデータと、何か衛星データを組み合わせて新しい施策が生まれた、というようなところが理想とすべきような話かなと感じています。
もう1点、なかなか事業が成立しないのもおっしゃる通りで、インプット情報って非常に重要で、そのインプットがどれだけ揃えられるかっていうところが、今後鍵になってくるかなと思います。
まさにアーカイブと新規っていうところもおっしゃっていただきましたけど、ここがやはり「日本で」って言ってしまいますけど、この衛星データビジネスがいかに広がっていくかっていうところのキーポイントになるかなと思っています。
伊藤:ありがとうございます。続きまして、三菱重工業といえばロケット製造業ですが、衛星データ利用事業も始めているという川戸様から、また別の視点で課題提起いただきたいと思います。川戸さんお願いできますでしょうか。
(6)三菱重工業が語る、宇宙産業における課題とは
川戸:はい。ご紹介いただきましてありがとうございます。三菱重工業の川戸でございます。
私からは日本の宇宙データ産業の課題と申しますか、こういう方向性で進んでいく必要があるんじゃないかなということについて2点ほどお話したいなと思います。
川戸:オープニングでも「カスタマー視点」というお話がございましたが、1点目は業界外とのコミュニケーションということが課題としてあると思っています。
私達、宇宙業界の人間は宇宙から世の中への貢献と衛星画像をより広く使ってもらうということが、大きな役割の1つだと思っているんですが、一方で業界の外ではまだまだ「衛星画像って我々には使えないんじゃないの?」とような状態にあると感じています。
私自身、衛星画像をいろいろな人に説明し回ったりしているんですけれども、その中で社内で災害時の対応をサポートするような事業を考えており、その人たちに「衛星画像はどう?」という聞き方をしているのですが、まず言われたのが「えっ、使っていいの?」というような反応でした。
このギャップを埋めるためにも、まず業界外とのコミュニケーションを積極的にやっていかなきゃいけないと感じております。
ちなみに、そういったやり取りがあったこともあり実は開発がスタートして、弊社で開発しているのがBRAINSというもの。衛星画像をAIで解析し、そこから相手が求める情報に落とし込むとか、あとは対応計画の立案までサポートするようなことを今やっていきたいなと考えているところです。
2点目はとにかくトライしてみる必要があるということです。
お客様にご提案していても、「衛星画像の解析結果はこうなります。条件次第ではこうです。どうでしょうか?」って言ってもなかなか響かないというところがあるなと。
多少未完成でも相手の課題に入り込んで、データを分析して、相手に必要なデータに落とした結果を見せていくと、やはり反応が変わります。
とにかく、現場に対してトライをしてフィードバックをかけることが重要かなと思っていまして、先ほどの永金さんの話にもありましたけれども、今はだんだんトライができるような環境が整いつつあるので、より良い状況になってきていると考えています。
川戸:こちらのページは弊社が考える衛星データ利用の1つの形を示しています。我々がBRAINSと呼んでいるもののソリューションを提供する形の1つです。
衛星画像解析と、災害対応計画ソフトを組み合わせて、自治体さん等の意思決定の支援をできるようにしたいなと考えており、相手に寄り添っていくと、よりユーザーを開拓できるんじゃないかなと考えているところです。
伊藤:ありがとうございます。業界外とのコミュニケーション、とにかくトライしてみる、この2つはどちらもハードルを下げるっていうところが1つ共通のキーワードとしてあるのかなと感じたんですけど、その点はいかがでしょうか。
川戸:おっしゃる通りです。やはり、相手方は敷居が高いととても感じていて、そこをいかに相手を理解して、相手の欲しい情報に我々が解釈して落としてやるかということが大事かなと考えています。
(7)三菱電機が語る、宇宙産業における課題とは
伊藤:ありがとうございます。続きまして、三菱電機・小山さん、また別の観点からでしょうか。課題提起をお願いいたします。
小山:私は仕組み的な側面から考えていることをまとめてみました。
海外でいろいろな衛星データ利用が進んでいるわけですが、日本の状況とどこが違うのかなと調査したときの結果を整理したものです。
小山:まず、上のスライドはアメリカと欧州における衛星データ利用の仕組みをまとめたものです。
やはりアメリカ、欧州では衛星データを促進する仕組みっていうのがかなりうまくできております。
アメリカだとオープン系の民間利用をNOAA(米国海洋大気庁)が統括している。逆にクローズ系は国家情報長官室というところが一元的に統括して、様々な利用を促進しているという状況です。
また欧州、こちらはコペルニクスというプログラムが有名ですが、こちらが欧州の公的利用をうまくたばねて、それを一元的に推進・統括しているという状況です。
このような仕組みに乗って、様々な利活用が推進されているん点が重要なのではないかと思っております。
それに対して、今までの日本の状況を見てみると、4つの課題があったのではないかというのが次のスライドです。
小山:1つは先ほども言葉が出ておりましたが「アンカテナンシー」という言葉です。
これはいわゆる公的利用が定常的にあって、それに衛星データを利活用いただけるということを意味してますが、府省庁、自治体、あるいは公的機関で衛星データを定常的に使っていただくことで、ベースロードとなり得る仕組みが必要だと思っています。
宙畑メモ
Planetなど民間企業が打ち上げた衛星データを政府や教育機関や購入し事業を援助するなどと動きがアメリカを中心に進んでいます。
小山:それに乗って、さらなるチャレンジングな、その先のビジネスが展開できる仕組みが必要ではないかなと。
次もまさに川戸さんが話されていた内容そのままで、今まで衛星データを手に入れようとしてもいったいどこに行けば、どういうデータが手に入るのか、しかもそれが安定的に手に入るのか、そういったことがやっぱり仕組み的になかなか見えにくかったんじゃないかなと思っています。
そういった課題を解決することがまず大事じゃないかなというのが、2点目です。
3つ目は、これまで話されてきた理想的な仕組みが一時的なものではなくて、定常的に継続することが大事じゃないかなということで、やはり行政サービスとしての継続が必要なことであり、課題ではないかと思っております。
最後は先ほど、欧州・アメリカの例をご紹介いたしましたけども、それを統括する司令塔です。
全体の方向性を決めていく司令塔的な組織が必要であるということで、この4つが今までの課題じゃなかったかなと思っています。
(8)衛星データがビジネス利用に繋がりにくいのはなぜか
伊藤:ありがとうございます。ここでさくらインターネット、松浦さん、ここまでの課題が出てきたところで、なかなかみんなが触れるものではなかった、というところがあると思いますが、これまでにもうまく広げたいなと事業者の人たちは思っているけれども広がらなかったというような現状があるのでしょうか。
松浦:広げたいと思っていたし、今でも思っているのですけど、人工衛星の計画ってだいたい5年掛かりなんですよ。
計画を立ててから打ちあがって、さらにパスコの石塚さんのところで売れるようになるまでにはプラス2年とかかかってしまいます。
宙畑メモ
政府の衛星はミッションの決定から製造まで5~10年、打ち上げてデータ利用が事業になるまで、データの校正検証期間や実証実験などを踏まえて2年ほどかかります。
伊藤:すごく長いですね。
松浦:やはり大型の衛星だとそのぐらい時間が掛かってしまいます。その場合、5年前からこういうふうに使いたいって手を挙げてくれる人は、基本的には政府機関、あるいは省庁といった公的機関がほとんどで、あとは研究者の先生方。そのため、どうしても広く使ってくださいって言うようなものにはなっていないし、そのような観測の計画にもなっていません。
石塚さんが話されていた欲しいときに取れないとか。そんなようなことが課題です。
そのため、コンステレーションで自前で上げていくと、自分でユーザーを設定して、そのユーザーのためにどんどんデータを取るっていうことは可能なんですが、大きなお金が必要になるということになります。
伊藤:ありがとうございます。では、この流れで、松浦さんもスライドを1ついただいているので、こちらをご説明いただいてもいいですか?
松浦:私からは宇宙データ産業の課題への「計画」からのアプローチと題して、簡単にご説明させていただきます。
松浦:表の部分は、宇宙基本計画の工程表と言われている表を、少し加筆、修正、あるいは省略したりして作ったものになっていまして、これは2020年代まで全部書かれている計画ですので、いくつかの衛星群は小山さんご指摘されたように継続性が担保されています。
注目していただきたいのは1番左側に「情報収集」とか「陸域・海域観測」「気象観測」と書かれているところ。このような分類で衛星が計画されていて、オレンジのところに「主な利用分野」と書いてあります。何に使うかということを、我々の言葉で言うと「ミッション」と言っているんですが、人工衛星の主な利用分野はすでに決められているということになります。
主な利用分野の中でビジネスをするにもやはり人工衛星がキーコンポーネントになるかどうかっていうのは重要なんですが、1番キーコンポーネントになるのは「情報収集」の分野と「その他リモートセンシング」の中の「高分解能」と書いてある1番下のところ。
これはやはり安全保障とか防災については人工衛星がほかのデータでは補完できないキーコンポーネントになりますね。
そうするとその利用分野の中でビジネスも可能になるはずなのですが、安全保障の世界は特別扱いされてビジネスになりにくかったり、データが欲しいんのではなくてデータからわかる情報にしてくれという話になっていたりしています。
それから真ん中に3つ、「気象観測」「温室効果ガス観測」、「その他リモートセンシング」の中の「雲雨」と書いてある部分のところに「衛星データがキー!」って書いてありますが、ここも人工衛星のデータがけっこうキーコンポーネントになるんですが、公共利用目的なので無料か、実費で世の中に出回るため、衛星データだけではなかなかビジネスになりにくい世界になります。
残った2つ、矢印が書いてあるところで、上の「陸域・海域観測」のところは、「衛星データがキーコンテンツだった?」と記載していますが、今でも衛星データは売られていたりするんですが、昔はすごい金額、何十万出しても買ってくれる人がいたんですけれども、最近はどんどん金額が下がってきていまして、薄利多売、もしくは無償になってきているので、こちらもデータだけでビジネスをするのではなくてキーとなる情報に変換する必要があります。
それから下から2番目にあります「その他リモートセンシング」の「陸海空」と書いてあるところで、ここも衛星データがキーコンテンツになりますが、基本的には無償のデータなりますので、使ってもらえる情報に変換してビジネスをやっていく必要がある。
これらひとつひとつ説明しましたけれども、衛星それぞれにミッションがあって、完結している部分がけっこう多いので、ビジネスにしていくっていうのは難しいケースが多いのですが、それらを1か所にまとめて、他のデータと一緒に活用するということで道が開けるんじゃないかなということを感じています。
伊藤:ありがとうございます。事前の打合せで面白いなと思ったのが、気象データのところで、衛星データそのものでビジネスをやるのではなくて、気象データの周辺に広がっているビジネスという考え方で見ると、今後のビジネスをどう作るかみたいなことのヒントになるんじゃないか、みたいな話が松浦さんからあったんですが、それをお聞きしてもいいですか?
松浦:真ん中のところの気象観測で、ひまわりってこれ皆さんご存知のもので、よく雲画像とか見たことがあると思います。
伊藤:毎日テレビで見ていますね。
松浦:当然衛星データだけで市場に利用されているわけではないんですが、日本ですと気象分野の市場はだいたい市場が300億円台だと言われていまして、アメリカですとその倍ぐらいと言われています。
ひまわりは三菱電機さんが開発した衛星で、気象観測のために使われているんですが、かなり性能が良くなってきていて、雲だけじゃなくてエアロゾルという海を越えて飛んでくるものの分布であるとか、陸の植生、植物の分布とか、そういうことも見られるようになっていて、データが大量になってきています。
これらの様々な観測データを活用してビジネス展開というのはできてくるのかなと思っていますし、アメリカの例ですと、先ほど600億とか、700億円ぐらいの市場があるといいましたが、例えば農業保険で気象データを利用した会社の売上だけで3兆円とか、そんなレベルの市場がもともとの市場の外側に隠れている。
気象衛星じゃない他のデータについても、別の分野・業界で使われていくと、爆発的な、今よりも広がりが出てくるんじゃないかなと。それこそ永金さんの最初に示した4,500憶円以上の広がりが出てくるんじゃないかなと思っています。
伊藤:永金さん、何かコメントありますか?さっきから、うんうんと頷きながらお聞きになっていたので。
永金:そうですね。まさに気象のところって今後も注目されるかなと思っています。というのも、気候変動って世界的な問題になっていて、特に日本は昨今の熊本の大雨もありますが、それに対する意識っていうのはかなり変わってきているので、データとして何か社会的に寄与できるようなビジネスに育てていくっていうところは十分にありうるかなと思っています。
伊藤:データそのものを売るとか、データそのものでビジネスするというよりも、そこから新しい価値をどう生むか、掛け合わせの考え方でしょうかね。
永金:そうですね。やはり何かと何かを掛け算することによって生まれるっていうところで、その掛け算の片方としてやはり衛星データは非常に魅力的だと思います。
ただ、まだまだここの解っていうところですかね、何と掛け算してどういう解を導くのかっていうところが出ていないところかなと思うので、今後それをみんな知恵を絞って出していく必要があるかなと思います。
(9)宇宙産業の今に対して「Tellus」が担う役割と期待
伊藤:ありがとうございます。ではこれまでいろいろな課題の提起がされたところで、議論に移りたいと思います。
これまでは衛星データが触りやすいものではなかったので、気軽にまず試してみてビジネスを作るということが難しかったという課題があったかなと思います。
そう思うと、例えば、どこか1社がデータを開放するようなことを思っても、プラットフォームとして整備するのってけっこう大変ですし、作ること自体が大変なので安価にはできないし、1社だけのデータじゃなくの他社のデータも一緒に扱えるようにしないと掛け合わせみたいな概念とかも生まれにくいかなと思います。
そこでこのTellusの何が良いのかっていうところに繋がってくるのかなと思います。衛星データのオープン化というのがどのように役立つのか、「あ、こういうことなのかな」っていうのが、何か伝わると良いかと思い、下記のスライドを松浦さんに整理していただきました。これを松浦さんお聞きしても良いでしょうか。
松浦:これはTellusの6つの要素と呼ばれているもので、これまでにいろいろな方から出てきた課題を全部解決するものではありませんが、かなりいいところまで解決できるんじゃないかなと思って今構築しているものになります。
6つ要素。左上からいきますと、「コンピューティング」で、やっぱり衛星データってすごく大きなものなので、データを取ってくるだけでも大変ですが、クラウド上1か所にあって、そこで解析もできる。
で、真ん中の「インターフェース」なんですが、解析するにあたっても、まず見るだけでも初心者でも扱いやすいUI/UXを持っていますし、本格的な開発環境っていうのも提供できる。
さらにここで何らかのソリューションとかサービスができたら、そのままマーケットプレイスがありますので、そこに入れていただける。というふうな一気通貫で実現できるようなプラットフォームになっています。
それからもう1つ、下のほうの話になりますけれども、こちらのほうは利用の拡大に属するもので、先ほど言ったデータの掛け合わせも重要なんですが、それを使ってくれる方々がいないといけません。
左下の「オウンドメディア・宙畑」は、今日ご覧になっていただいている方々も、「宙畑」を愛読している方々っていうのは多いかなと思いますけども、ユーザー開拓とコミュニティの醸成をしておりまして、月間ですと15万ページビューと、かなり伸びてきているオウンドメディアになっています。
真ん中の「ラーニングイベント」、これがまさに衛星データを解析できる人材をつくりたいということでやっております。
コロナの問題がありましたので、Tellusのラーニングというツールを今無償公開しておりまして、1万人以上の方々がこのラーニングをやっていただいております。
さらに右下、「データコンテスト」とありますが、これまで3回行ってきております。解析のアルゴリズムを書くのは非常に難しいんですけども、それをコンテストで解決しようということで、短時間で世界のデータサイエンティストが作ってくれたツールを手に入れることができるということで、これは3回やっておりまして、挑戦していただいた方々が構築したアルゴリズムの精度が驚くほどいいです。
というような、6つの要素ということで、今も継続して構築しているところになります。
伊藤:ありがとうございます。事前に打ち合わせでここの6つの要素をどう解説しようかなということで、皆さんにヒアリングをするとちょっと面白くて、上3つが自分としては特に期待しているという方々と、下3つに期待しているという方がけっこう綺麗に分かれたので、その文脈でお聞きしようかなと思っているんですけど。
まず上派の三菱電機・小山さん、お聞きしてもいいでしょうか。
小山:先ほどいくつかの課題を申し上げたんですけれども、課題を解決する大きな手段になると思っているのが上3つ部分です。簡単な図を1枚入れさせていただきました。
小山:Tellusを核にして、まず衛星データに容易にアクセスできて、トライ&エラーができる開発環境も提供いただける、さらには事業化への障壁を下げるための、マーケットも提供されるっていうことがやっぱり非常に魅力だと思っています。
いわゆるデータストアだとかアプリケーションストアが簡単にこのTellusを使ってできる、これは大きなメリットで、ビジネスへの使いやすさを加速するためのデータプラットフォームとしての役割をものすごく期待しています。
伊藤:同じく上がいいんじゃないかと、気になるとおっしゃっていた三菱重工・川戸さんいかがでしょうか。
川戸:今小山さんがまさにおっしゃった通りですね。私が先ほど課題のところで、とにかくトライしていくことが大事だということを申し上げたんですけれども、まさにTellusを使ってまず衛星データ、ないしはその他のデータが利用できる、開発環境も整っている。
さらにお客様に持って行く際にもTellusを使えば一元的に見せることができるということで、非常にありがたいと感じています。
伊藤:マーケットがあるっていうのがけっこう大きいと思うんですよね。テストで作ってみて、「これ売れそうだよね」って思っても、必ずしも売る相手や売るための機能を自社で持っているわけではないので、Tellusにちゃんと売る場所があるってけっこう大きくないですか?
川戸:おっしゃる通りだと思います。提供しやすい環境が整っているなと感じております。
松浦:あと有償ではなくて無償でも置いておくことができるので、マーケットリサーチみたいな形でも利用していただくことが可能です。
伊藤:需要があるのかどうかをまず測ることができると。
松浦:そうです。
川戸:トライアルをしていくっていう意味でも非常にありがたい仕組みだと思っています。
伊藤:ありがとうございます。そして上派、永金さんもそうですよね。
永金:そうですね、私も皆さんと同じでトライできる環境というところが非常に重要かなと思っているので、コンピューティングとインターフェースが揃っているというのがTellusの魅力だと思っています。
やっぱり新しいイノベーションって遊びの中から生まれるっていうのは、歴史を紐解いてもその通りなので。
有名なのがソニーのウォークマンとかですけど、事業外で遊びで作っていたらできてしまった。そして結果的に、世界中で爆発的にヒットしたっていう。
やっぱり遊べる場っていうところで、私はTellusって面白いなと思っていて、なおかつマーケットがあることによって、提供する場所としてもそうなんですけど、いろいろな種類のデータもここで手に入れられる。
課金なのか無課金なのかいろいろな提供の仕方もあると思うんですけど、自社にないデータもマーケットで手に入れて組み合わせていけるっていうのは、非常に可能性のある仕組みなのかなと思います。
伊藤:ありがとうございます。続いて下派の人にいきたいと思うんですけど、パスコ石塚さん、まさにデータの利用を今までも事業として行ってきたかと思いますが、パスコさんの視点でいかがでしょうか。
石塚:下派というか、下にも期待しているというところですね。
パスコの仕事のフィールドのメインとなっているのは、実は右上のマーケット、データを供給したり、アプリケーションを作ったり、使い方を教えたりなんですけども、そこを広げるためにも、下も重要になるかと思っています。
「どういったデータが使えるのかな」「衛星データってどんなものがあるのかな」って方向けにラーニングイベントがあり、学んだ成果や自分のスキルを発表するデータコンテストがあれば、Tellusのプラットフォームの中に衛星データを使ったビジネスのヒントが見つけてもらえる可能性があると思っています。
その見つかったヒントをアウトプットする、勉強するっていう場をTellusで設けることによって、新しいお客様とか、新しいユーザーっていうのが取り込めて、右上のマーケットプレイスで何か新しいビジネスをやっていただくっていうことがあるかなって期待しています。
また、やってみたいことが見つかっていって、もっともっとハイレベルなことになってくるとなかなかプラットフォームではやり切れないようなところがあると思います。
そのときに、実はパスコみたいな会社があって、もう少し具体的にディープにビジネスをやりたいといったお客様とかユーザーが出てくれば、ちょっといやらしい言い方ですけどそこに我々のビジネスチャンスってあると思っています。
そこを後押ししていただくためにもやっぱり下の3つをたくさん供給することでもっともっと今まで隠れていたお客様とかユーザーが掘り起こしできるんじゃないかなと思いまして、下の3つに期待しているというところです。
伊藤:ありがとうございます。下派で言うと、JAXA岩本さんもそうなんですけども、岩本さんいかがでしょうか。
岩本:そうですね。もちろん私も上の3つも大事だという前提で下派なんですけども。
今日のお話でいろいろあった通り、大きい衛星を政府が運用して、限られたデータしかなかった時代から、いろいろな種類のデータが得られて存在している。
そういう中で実際いろいろな地方自治体の人たちなどと、衛星データをどう使おうかって話をしていても、みなさんどうしても使えるのかなと一瞬止まってしまうんですね。
そういう意味で、やっぱりデータをきちっと使える人、どこにどういうデータがあってというのも含めて、データを集めてきてうまく使っていける人材を今後どうやって増やしていくか、っていうのは大きいポイントなのかなと思います。
衛星データを使ったらこんなことができるんじゃないかってニーズはいっぱいあるので、今宇宙に関わっていない人たちに「データ使えばこんなことできるぞ」みたいな形で利用しようとする人を取り込むか。魅力ある場をどう作っていくかだと思うのでデータを扱える人を増やしていくことができればどんどんデータ利用は広がっていくんじゃないかなと思っています。
そういう意味で、私は人材を育てるとか、人を集めるための企画、そういったところがTellusの大事ポイントなのかなと思っています。
伊藤:ありがとうございます。松浦さん、ラーニングイベントなんですけど、松浦さん自身で「データをなんかいじってみようかなと思って、実際今になって勉強してみるとこれはこれでやっぱり難しいな」っておっしゃっていたんですけど、ラーニングの必要性って感じられますか?
松浦:とっても感じています。ラーニングコンテンツを1人でやっているときは、「難しいよ。こんなの誰も使わねえよ」って独り言を言いながらやっているような状況でして、しょうがないので「宙畑」の記事に載っているPythonのコードをコピペしてきてパラメータを変えてみるなど、そんなやり方をして勉強しています。
伊藤:いいですね。
松浦:そうするとまあまあできるんですけどね。
伊藤:取っ掛かりがわからないという人に、そこの取っ掛かりの部分をちゃんと作ってあげるっていうのが大事なんじゃないかなと思うんですけれど、そういう意味ではラーニングイベントって、最初に何から始めたらいいかわからないっていうところの初歩の初歩もいけるでしょうし、もうちょっと踏み込んだところも学ぶ場があるっていうのも大事かなと思いしました。
松浦:そうですね。まだ提供できているのは難しいといっても基礎レベルなので、石塚さんのところのビジネスになるためのところまではまだギャップがあって、もうちょっと踏み込んだラーニングみたいなのをやらないとなっていうのは課題意識としてはありますね。
自分が関心のあるところにどう使えるんだってところまではまだ持ち込めていない感じがします。そこらへんが課題かなと感じています。
伊藤:私データコンテストに実は興味があって。というのはKaggleっていうのをご存じな方がどれぐらいいらっしゃるのかわからないですけど、海外ですが、データコンテストがあるんですよね。
宙畑メモ
世界中のデータサイエンティストやAIエンジニア約40万人が、企業の解決したい課題に対してコンペ形式で課題解決に挑むことができるプラットフォーム。衛星データに関するコンペも開催されている。
世界的な機械学習プラットフォーム「Kaggle」の概要と衛星データコンペ事例まとめ
伊藤:例えば企業が持っている持っているビッグデータの解析課題として、懸賞を付けてやってもらって、良いアルゴリズムを作ってもらうという。これってつまり課題を出している側の企業が自分たちでアルゴリズムを作れなくてもかまわないっていう話だと思うんですね。
マーケットで、データコンテストを懸賞付きでアルゴリズム開発を目的に使えば、より賢いアルゴリズムを作れる人が開発をしてくれて、そのアルゴリズムをそのままマーケットで売ってもらうみたいな動きも可能なんじゃないかなと。すごい可能性を感じるなと思います。
松浦:今Tellusでやっているデータコンテストも、まさにKaggleみたいなもので、賞金付きでやっています。
前回の第3回目は合成開口レーダで取得した画像から流氷をいかに正確に検出するかというものだったのですが、おそらく機械学習の手法は知っていても流氷なんでほとんど知らないような方が解析して、85%を超えるような正答率っていうのを出してきている。
つまり、対象を理解しなくても、精度の高いアルゴリズムを作成できるので、たぶんそのような人から買ったほうが早いっていう解もありかなと思います。
伊藤:すごくインターネットっぽいですよね。流氷を知らないけどできますよっていうやつですね。
松浦:そうなんです。その機械学習のやり方を「宙畑」で解説してくれているんですけど、解析の詳しい内容はわからないものの、こうやっているんだと感動しました。
(10)トークセッションを通して、Tellusへ一言
伊藤:ありがとうございます。それでは、時間も無くなってまいりましたので、最後に皆さんに一言ずつ、改めて期待ですとか、これからこういう取り組みをやっていきますみたいなことがもしありましたら、お聞きしたいなと思っております。
伊藤:まず三菱重工業・川戸さんお願いいたします。
川戸:今日はどうもありがとうございました。今後Tellusに期待するところとして、一言で言うとより「安心」ということかなと思っています。
安定してサービスが継続されることによる安心とか、あとはセキュリティを強化して得られる安心とか、そういうところも今後期待したいなと思います。以上です。
伊藤:ありがとうございます。では、PwC・永金さんお願いいたします。
永金:今日はありがとうございました。今後の期待というところで、やっぱり先ほど申し上げた通り、イノベーションが生まれる場として、遊び場のような柔らかさみたいなところが重要かと思っています。
遊び場としていろいろな人たち、いろいろな発想を持った人たちが集まっていくことで、いろいろなデータを使って新しいことを見つけていけるのかなと思うので、そういった環境整備の部分を非常に期待しております。ありがとうございました。
伊藤:ありがとうございます。私知り合いのAIの開発しているような人たちも、やっぱり研究っていうよりは、何かと何かの組み合わせで新しいものが発見できることに気づくことが実はすごく大切なんで、遊びがめちゃめちゃ大事だって言っていました。ありがとうございます。
お次は、三菱電機・小山様お願いいたします。
小山:Tellusがないとコンピューティング環境から様々な画像から、あるいはビジネスの仕組みから自分で全部用意しなければならないわけですよね。
それがTellusはパソコンがあれば、それをインターネットに繋ぐことで全部できるので、障壁を大幅に下げる大きな資産だということ、そこにすごく期待しております。
あとこれはあわよくばなんですが、例えばベンチャーの方が「こんなことを考えているんですけども、プランに参画いただける人」っていうのをアピールできるようなことがTellusでできれば、さらにいろいろな可能性ができるんじゃないかなと思ったりいたしました。以上です。
伊藤:ありがとうございます。それではパスコ石塚さんお願いいたします。
石塚:ちょっとかぶるところがあると思いますが、我々の衛星ビジネスって非常にニッチな小さいフィールドだと思うので、Tellusを使ってもっともっと新しい人たちが参加してきていただきたいと思っています。新しい人たちが入ってくると今まで気づかなかったアイデアが出てくる場所になると思っているんですね。
是非Tellusを皆さんで使っていただくように、今日参加しているみなさんもそうだと思うんですけれども、Tellusをもっと盛り上げていきたいなと思います。
また、衛星のミッションで非常に重要なのはやはり社会貢献の中でも災害、今もずっと西日本のほうを中心に豪雨が大変ですが、防災・減災に対してなんとか貢献していきたい。我々としてはこれも任務だと思っていますので、この観点でもTellusをもっともっと活用していきたいなと思っていますし、期待していきたいと思っています。
伊藤:ありがとうございます。それではJAXA岩本さんお願いいたします。
岩本:Tellusには我々JAXAの衛星データをたくさん搭載していただいています。
やっぱりこれまで衛星データに対して難しいとか、使いにくいとかという現状があったと思います。
このTellusを通すことで、「えっ、こんな面白い使い方できるじゃん」とか、「こんなことも衛星でわかるんだ」っていうのをより広げてもらい、常に「Tellusに来れば面白いことができる」というイメージをで持っていただいて、どんどんどんどん、衛星データを扱う人を増やして、いろいろな使い方を発信していただけたらと思っています。
伊藤:ありがとうございます。それでは最後、さくらインターネット・松浦さんお願いいたします。
松浦:ありがとうございました。皆さんの貴重なご意見いただきまして、大変感謝いたします。
Tellusに関して、まだ課題もいろいろとあるんですけれども、非常に期待値が大きいということを実感しまして、少し安心しております。
Tellusを使ってみると少なくともデータに触われますし、解析もなんとかできるかなというところまで構築しつつあります。
しかし、ビジネスにするっていうのはまだまだギャップがあるので、そこのところをなんとか埋めていくというのを、いろいろなご意見をいただきながら、あるいはxData Allianceのいろいろな方々と協力して推進していきたいなと思っております。
非常に楽しく、貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。
伊藤:ありがとうございました。ということでそろそろ締めにしたいなと思っております。Business Insiderとしても、この衛星データをどうビジネスに変えていくかっていうところはすごく面白いなと思っています。
これまでなかなか縁遠かったものが、自分のすぐ近くで触れるような状態になることで、例えば大学生がちょっと試しにやってみたら新たな発見があったり、遊びからビジネスって生まれるかもしれないなと思って注目しております。
ということで、是非何かしら新しい展開がありましたら、Business Insiderにも是非ご連絡ください。お願いいたします。
司会:ありがとうございました。もし何かご質問などございましたら、本イベントのTwitter公式ハッシュタグ「#TellusFes」をつけていただきまして、ご質問のツイートをいただけましたらお答えさせていただきますので、皆様どうぞお気軽にツイート下さい。
改めまして、本日ご出演いただきましたJAXA・岩本様、パスコ・石塚様、PwCコンサルティング・永金様、三菱電機・小山様、そして三菱重工業・川戸様、さくらインターネット・松浦さん、それから本日ファシリテーターをお務めいただきましたBusiness Insider Japan編集長の伊藤様、誠にありがとうございました。
(11)まとめ
海外の衛星データビジネスの動向を知るPwC、今までも衛星データの提供をビジネスとして行ってきたパスコ、宇宙産業を衛星製造業者として支えてきた三菱電機、ロケット製造業を担いながら衛星データ活用事業も取り組み始めている三菱重工業、そして日本の宇宙産業を今も昔も牽引しているJAXA、それぞれのステークホルダが、昨今盛り上がりを見せている宇宙産業の裏側で見え隠れしている今後の課題について各社の視点から洗い出し、今後、Tellusに期待する役割について意見を出し合いました。
宇宙ビジネスには「衛星データなんて使えると思っていなかった」「衛星データがあればなにか解決できると思ってがそう簡単にはいかなかった」などといった、いろいろなギャップが今だ課題として存在しています。
そのギャップを埋めるため、衛星データをまず触れる状態にすること。衛星データだけではなく多くのデータを見ることができて、それらのデータの掛け合わせができるようになっていること。このような環境の整備だけではなく、データの在りかや使い方が誰にでもわかり、利用者を増やしていけるようにすること。どれもが重要になってきます。
Tellusは、徐々にデータや解析環境を整え、利用者を増やすためのラーニングコンテンツや、解析精度を競うコンテストを開催し、衛星データの使い方や実際の利用事例をこの宙畑で情報発信しています。
まだまだ、これからビジネスが生まれデータビジネスが発展していくには時間がかかるかもしれませんが、Tellusがどのように市場の発展に貢献していくか、役割の重要性が明確になったトークセッションだったのではないでしょうか。
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