宙畑 Sorabatake

ニュース

ホワイトハウスが次世代の宇宙探査戦略を発表。アポロ時代との違いは“持続可能性”【週刊宇宙ビジネスニュース 7/20〜7/26】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

ホワイトハウスが深宇宙探査に向けた戦略をまとめたレポートを発表

7月23日、米国・ホワイトハウスは、レポート「A New Era for Deep Space Exploration and Development(深宇宙探査と開発の新時代)」を公開しました。

A New Era for Deep Space Exploration and Development Credit : The White House,National Space Council

同レポートは主に、地球低軌道の商業化、月面再着陸と滞在、火星への人類進出の3つのテーマとそれに付随する科学的な意義と教育についてまとめています。アポロ計画とは対照的に、月面や火星へのアクセスを低軌道・月・火星を利用し持続可能なものにしていくことと、今後の宇宙開発にはNASAだけではなく米国のほとんど全ての省庁をはじめとして幅広いステークホルダーが携わるようになるであろうことが強調されています。

レポートの概要 Credit : 宙畑

さらに、今後は政府が中心的な役割を担いながらも、民間企業と協力的に宇宙開発を進めるために重要な政府の役割として5つの項目を挙げています。

  • ①長期で持続可能な宇宙活動のために安全性と予測可能性を促進する
  • ②宇宙での商業活動と産業の発展を支援する
  • ③新しい宇宙技術の研究開発を支援する
  • ④商業的および国際的なパートナーを据えて、宇宙探査および開発に必要なインフラストラクチャを構築する
  • ⑤公共および民間セクターの米国の研究コミュニティによる高度な宇宙研究を支援する

本レポートは、既に提供しているプログラムの目的をより明確化することに重きが置かれているようで、宇宙関連以外の省庁や他国など、今までとは違ったステークホルダーを巻き込んでいきたいというNASAや政府の狙いが感じられます。

NASA CFOに宇宙の“商業化”に明るいオートリー博士が指名

7月22日、米国大統領はNASAの次期CFO(最高財務責任者)にGreg Autry(グレッグ・オートリー)博士を任命したことをホワイトハウスが発表しました。

オートリー博士は、南カリフォルニア大学で技術の商業化を専門に研究しながら、フロリダ工科大学などで教鞭を取っています。米国連邦航空局(Federal Aviation Administration、通称FAA)の商業宇宙輸送諮問委員会(Commercial Space Transportation Advisory Committee)の安全分科会および商業宇宙輸送局(Office of Commercial Space Transportation)で議長を務めており、商業宇宙利用に関して明るい人物だと言えます。
さらに、3Dプリンターでロケットの製造開発を進めるRelativity Spaceのアドバイザーも担当しています。

今後米国上院の承認を経て、オートリー博士はNASAのCFOに正式に就任する予定です。

米国では、政府の財務管理を改善する目的で、1990年に最高財務責任者法(Chief Financial Officers Act of 1990 ,Public Law 101–576 以下、CFO法)が制定され、24の省庁や機関にCFOが配属されるようになりました。

NASAの体制図 2019年12月版 Credit : NASA
NASA 最高財務責任者室(OCFO)の体制図 Credit : NASA

NASAもCFO法の対象で、最高財務責任者室(OCFO)を設けて、予算分析や業績報告などを行っています。

ロシアが衛星攻撃兵器実験を行った疑惑で米国が非難

7月23日、米宇宙軍はロシアが7月15日に宇宙空間での衛星攻撃兵器の実験を行ったとして非難する声明を発表しました。

問題となっているのはロシアの衛星「Cosmos2543」です。同機は今回、軌道上に何らかの新たな物体を放出したとみられています。この衛星については過去にも様々な疑惑が生じていました。2018年には、当初表明していたミッションとは違う行動を取っているということで米国国務省が懸念を表明していました。2020年はじめには、米国偵察局の衛星を追尾していたと報じられたこともありました。

今回の声明で、米宇宙軍で宇宙作戦部長を務めるJohn Raymond(ジョン・レイモンド)氏は「米国は同盟国と協力して、(ロシアの)侵略を阻止し、宇宙での敵対行為から米国、同盟国、利益を守る用意が出来ている」と結論付けているとのことです。

さらに英国はロシアに対して、宇宙局のMarshal Harvey Smyth(マーシャル・ハーヴィー・スミス)氏が、ロシアの行動は宇宙の平和利用と、衛星やシステムに脅威をもたらす可能性があることを示唆し、実験の中止を求めました。

対してロシアは、外務省が7月24日に、偵察衛星が特殊な小型装置を使用してロシアの宇宙船の点検をしただけであり、国際法には違反していないと説明しました。

現行の国際法では、宇宙空間の利用における禁止事項は具体的に定められていません。他国や国際機関、団体がどのような姿勢を示すのか、注意深く見守る必要がありそうです。

宙畑編集部のおすすめ関連記事

今週の宇宙ニュース

参考

A New Era for Deep Space Exploration and Development

White House report outlines integrated strategy for space exploration and development

The Chief Financial Officers Act

President Donald J. Trump Announces Intent to Nominate Individual to a Key Administration Post

Russia conducts space-based anti-satellite weapons test

Russia satellite: Kremlin accuses US and UK of 'distorting' truth

U.S. Space Command again condemns Russia for anti-satellite weapon test