ICONが月面での住宅建設プロジェクト「Project Olympus」を発足【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/9/28〜10/04】
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3Dプリンター技術を利用した住宅建設を手掛けるICONが、月面での住宅建設プロジェクトを発足
3Dプリンター技術を利用した住宅建設方法に取り組む宇宙ベンチャーICONが、米国の中小企業技術革新研究プログラム(SBIR)の契約を獲得し、月面での住宅建設研究開発プロジェクト”Project Olympus”を発表しました。
Project Olympusには、コペンハーゲンやニューヨークに拠点をおく建築家によって構成されるBIG-Bjarke Ingels Groupと、深宇宙探査の居住デザインコンセプト制作を手掛けるSEArch+がパートナーとして参画するとのことです。
ICONは、2017年にテキサス州オースティンで設立されたベンチャー企業です。
2018年には、米国で初めて3Dプリンター技術による住宅建築の許可を取得し、実際に建設用自律型3Dプリンターで住居を建設した実績を持っています。(その際の動画がこちら)
ICONの創業者兼CEOのJason Ballard氏は、以下のコメントを出しています。
“Building humanity’s first home on another world will be the most ambitious construction project in human history and will push science, engineering, technology, and architecture to literal new heights. NASA’s investment in space-age technologies like this can not only help to advance humanity’s future in space, but also to solve very real, vexing problems we face on Earth.
(訳:宇宙に人類初の家を建設することは、史上最も野心的な建設プロジェクトであり、サイエンス・科学技術・建築手法を文字通り新しいレベルに押し上げることでしょう。このような深宇宙探査技術へのNASAの投資は、有人宇宙開発を前進させるだけでなく、地球上で直面している社会課題の解決にも役立ちます。)
ICONは、今年の8月にシリーズAの資金調達を実施しており、累計調達額は約4400万ドルにのぼります。
3Dプリンターの開発だけでなく、ロボティクス技術・材料開発にも強みを持ちながら月面での住居建設に挑むICONに、引き続き注目です。
インド国内での通信衛星インフラ構築に向けてNelcoとTelesatが協定を締結
インドの大手宇宙企業で、衛星通信サービスプロバイダーであるNelcoが、カナダの大手衛星通信事業者であるTelesatと協定を締結しました。この協定で両社は、Telesatが提供する衛星通信コンステレーション(Telesat LEO)をインド国内で提供するために、地上設備・商業配信・規制の枠組みについて協力していく予定です。
Telesat LEOは、Telesatが保有するKaバンド周波数帯と特許出願中の最新の衛星バス構造を活用する次世代の衛星コンステレーションです。Telesat LEOが配備されることで、インド全域をカバーした良質な衛星通信を提供することが可能になります。
今回の協定について、NelcoのCEOであるP. J. Nath氏は、以下のコメントを出しています。
“Considering the huge potential for Satcom services growth in the country in the coming years, we are continuously exploring the latest satellite technologies to bring better value to our customers and expand the market. We believe that our partnership with Telesat will help in bringing LEO satellites into the country, which has the potential to revolutionise connectivity in the future”.
(訳:今後数年間のインドにおける衛星通信サービスの可能性を見据えて、顧客への価値提供と市場の拡大のために、最新の衛星通信技術を常に追い求めています。Telesatとの協定を通して衛星コンステレーションが、将来的にインドの通信サービスに革命をもたらすと信じています。)
通信衛星を活用することで都市部だけではなく農村地域でもインターネット接続がしやすくなります。インドでの通信衛星インフラ整備によってインドの経済にどのような変化をもたらしていくのか今後も注目です。
着実に進む、民間ロケットベンチャーと射場の打ち上げ合意
ドイツの新興ロケットベンチャー、Rocket Factory Augsburgが、ノルウェーの射場を所有するAndøya Spaceと基本合意書(MoU)を締結しました。
Andøya Spaceは新規に建設する射場の打ち上げパートナーとして3〜4社のロケット企業を誘致する予定であり、今回の合意書の締結によってRocket Factory Augsburgは打ち上げパートナー第一号となりました。
新しい射場の建設は、今年後半からAndøya Spaceの既存の射場から南に35km離れたAndøya島で開始される予定です。Andøya Spaceの株式の90%はノルウェーの通商産業水産省が所有しており、新規の射場建設費用として、ノルウェー政府から3億6500万ノルウェークローネ(3850万ドル)が既にAndøya Spaceに供給されています。
ドイツの大手宇宙企業OHB Systemsの打ち上げ部門として2018年に設立されたRocket Factory Augsburgは、3段式ロケットRFA Oneの開発を進めています。RFA Oneは、第1段に9基の液体燃料エンジンを搭載し、高度300kmの極軌道に最大1.3tのペイロードを軌道投入可能です。
Rocket Factory Augsburg の広報担当のIbrahim Ata氏によると、Andøya Spaceを射場として選んだのは、射場としての政府からの手厚い支援、太陽同期軌道や極軌道への軌道投入の容易さなどが理由とのことです。
また、インドの宇宙ベンチャーでも同様のニュースがありました。
チェンナイを拠点にするインドのロケットベンチャーであるAgnikul Cosmosが、アラスカのコディアック島に射場を所有するAlaska Aerospace Corporationと基本合意書(MoU)を締結しました。
両社は今後、米国連邦航空局(FAA)の打上げ認可や米国への輸出管理など、必要な規制当局の承認を得るために協力していく予定です。
今回の合意書により、コディアック島の射場Pacific Spaceport Comples – Alaska (PSCA)から、Agnikul Cosmosは少なくとも1回試験打上げが実施可能です。今後の合意で、追加の試験と運用打上げも視野に入れるとのことです。
Agnikul Cosmosが開発するAgnibaanは、高度700kmまでの地球低軌道に最大100kgのペイロードを搭載できる小型衛星ロケットです。
各国で民間企業によるロケット開発が盛んになっていますが、ドイツでもインドでもベンチャー企業によるロケットの開発が進み、打ち上げ試験を行おうとしています。今後、どのロケットベンチャーが打ち上げを成功していくのか、さらなるベンチャーが生まれてくるのか引き続き注目です。
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参考記事
NASA Looks to Advance 3D Printing Construction Systems for the Moon and Mars
Nelco and Telesat partner to bring advanced LEO satellite network to India
Chennai space startup Agnikul Cosmos partners with Alaska Aerospace to test its launch vehicle
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