宙畑 Sorabatake

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【2020年6月の宇宙ビジネスニュースまとめ】軌道上3DプリンターメーカーのMade In Spaceが買収。宇宙特化型ファンドが加速させる宇宙ビジネス

本記事では、2020年6月に起きた宇宙ビジネスニュースをまとめてお届けします。

本記事では、2020年6月に起きた宇宙ビジネスニュースをまとめてお届けします。

6月は、様々なベンチャー企業のロケット打ち上げが実施され、NASAが進めるアルテミス計画の話題のほか、軌道上3DプリンターメーカーのMade In Spaceの買収が注目を集めました。

それでは、2020年6月に取り上げたニュースとその要約を11本ご紹介します。興味のある記事や読み忘れていた記事などございましたらぜひご覧ください。

アストロスケールが静止軌道上サービス市場に参入

宇宙ゴミ除去に取り組む株式会社アストロスケールホールディングスの米国拠点が、イスラエルの衛星延命・サービス会社であるEffective Space Solutions R&D Ltd. (ESS)の知的財産権を取得し、R&D拠点の従業員を雇用する正式契約を締結しました。

これまで低軌道上サービスの展開を進めていたアストロスケールですが、新たに静止軌道上サービスまで事業ポートフォリオを拡げることになりました。

今年の5月からシリーズEの資金調達も開始させているアストロスケールの今後に注目です。

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Northrop Grummanが月軌道ゲートウェーの居住用モジュール設計を受注

NASAは、月を周回する有人拠点「月軌道プラットフォーム・ゲートウェイ」における初期の有人モジュール (Habitation and Logistics Outpost , 以下HALO)の開発先として、米国の軍需メーカーのNorthrop Grummanを選出しました。

今回の契約金は、機能要件定義とシステムの仕様設計のレビューまでで、総額1億8700万ドル。2020年末までに完了する予定です。

HALOはゲートウェイ計画の最初のコンポーネントで、2023年に同時に打ち上げられる予定です。また、NASAによると輸送サービスのプロバイダーは2020年末までに選出するとのことです。
NASAと民間企業が手を取り合って進めるアルテミス計画に引き続き注目です。

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月軌道プラットフォーム・ゲートウェイのイメージ Credit : NASA

宇宙資源の所有権を認める新法案に進展あり

6月2日、自民党の宇宙・海洋開発特別委員会が、民間企業が月面で採掘した資源の所有権を認める法案の骨子をまとめたと報道がありました。

2015年に米国、次いで2017年にはルクセンブルクが、民間企業が月面で採掘した資源の所有権を認める法律を制定しました。国内においても、2018年頃から新法制定を視野に有識者会議が開催され、議論が進められてきました。

宇宙空間および天体の探査と利用に関する基本原則を定めた「宇宙条約」では、いずれの国家もその領有権を主張できないことが明記されています。一方で、世界的な宇宙法学者によって構成される国際宇宙法学会(International Institute of Space Law, 通称 IISL)が2015年に発表したポジションペーパーでは、国際法の下で宇宙資源に対する所有権は否定されない旨を明らかにしています。

月面での資源採掘を計画している日本の宇宙ベンチャー、ispaceは、2021年と2023年にランダーを着陸させ、月面探査を実施する予定です。

民間企業の参入を促進し、月面開発の主導権を逃さないためにも、できる限り早い法整備が必要に迫られています。

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SpaceX Starlinkとの初のライドシェアサービス提供に成功

SpaceXは、Falcon 9によるStarlinkとのライドシェア(相乗り)打ち上げを実施し、Starlink 58機と共にPlanet LabsのSkySat 3機の軌道投入に成功しました。Planet Labsは7月のStarlinkのライドシェアにも3機のSkySatを搭載する予定です。

2019年8月に発表されたライドシェアプログラムにおいて、200kgの輸送費用は、100万ドルと破格のコスト設定になっています。また、太陽同期軌道(SSO)への打ち上げは4カ月ごとに実施し、万が一ペイロードの製造が遅延した場合でも、10%の手数料を支払うことで次回以降のミッションへの振替も可能という柔軟性の高いプログラムです。宇宙への格安定期便とも言える本サービスは、小型衛星ビジネスの拡大に寄与すると見られています。

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SpaceXのWebサイトで輸送費用を見積もれるようになっています Credit : SpaceX Source : https://www.spacex.com/rideshare/

亡きチームメンバーへの想いを込めたRocket Labのミッション「Don’t Stop Me Now」

小型衛星による輸送サービスを展開するRocket Labが、アメリカ国家偵察局(NRO)の衛星3機と大学のキューブサット2機の軌道投入に成功しました。同社の小型ロケットElectronは、今回の打ち上げで11回連続での成功となりました。
※7/4のミッションで第2段燃焼中に問題が発生し、軌道投入に失敗しています

今回の打ち上げは3月下旬に予定されていましたが、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響を受けて延期し、およそ2カ月半遅れの実施となりました。

また、今回のミッション名「Don’t Stop Me Now」は、2020年初めに亡くなった同社の取締役員Scott Smith氏に敬意を表して、彼が好きだったQueenの楽曲からとったものでした。
小型ロケット界のリーディングプレイヤーであるRocket Labの今後に注目です。

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MOMO 5号機は緊急停止。求められる「宇宙品質」へのシフト

小型ロケットによる打ち上げ輸送サービスの提供を目指す、インターステラテクノロジズ株式会社(以下、IST)が観測ロケットMOMO5号機を打ち上げました。

射場からの離床には成功しましたが、上昇中に不具合が発生したため緊急停止し、到達高度は目標であった100kmを下回る11.5kmとなりました。機体は安全に海面に落下したことが確認されています。

ISTの代表を務める稲川氏は会見で、空中でノズルが破損したことにより機体が傾いた、当日は基準内であるものの強い風が吹いており、無風であれば目標高度に到達できていたのではないかという見方を示しています。今後は、品質の向上に力を入れていく方針のようです。

「輸送サービス」としてのロケットの打ち上げの実現に向けて、ISTの今後の動きに引き続き注目していきたいと思います。

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AstroboticがNASAから月面探査車の輸送契約を獲得

NASAは、2023年後半に打ち上げ予定の月面探査車VIPER(Volatiles Investigating Polar Exploration Rover)の輸送を担当する企業として、Astrobotic選出しました。今回の契約金は総額1億9,950万ドルとなっています。

VIPERの輸送にはAstroboticの月着陸船「グリフィン」が使用されるとのことです。グリフィンは最大500kgのペイロード(積載物)を月面に輸送する能力があります。

約450kgのNASAの月面探査車VIPERには、4つの科学機器のほか、月面に約3フィートの穴を開けるドリルも搭載されています。100日間予定されているミッションの間、VIPERは数マイルの距離を探査し、様々な土壌環境をサンプリングして水や氷を探す計画です。
民間企業としてアルテミス計画の一翼を担うAstroboticに引き続き注目です。

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Astroboticの着陸船からVIPERが出てくるイメージ図 Credit : Astrobotic

米国企業が英国のスペースポートからの打ち上げが可能に

米国企業が英国内のスペースポートからの打ち上げを可能とする新たな協定を締結したことを、英国政府が発表しました。

今回の協定締結により米国企業は、英国のスペースポートの建設や運用に携われるようになります。協定の目的には、スペースポートの顧客を獲得することに加えて、開発の推進も含まれているのではないかと考えられます。

政府と宇宙庁は、2019年6月にVirgin Orbitの衛星打ち上げを支援していくことを発表しています。英国南西部のコーンウォールに建設しているスペースポートでは、2021年後半に初の商業打ち上げが可能になる見込みです。

産業としての宇宙開発に積極的に取り組む英国にビジネスチャンスを見出す企業も出てくることが期待されます。

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Space Perspectiveが成層圏気球による旅行事業を発表

無人気球の開発に取り組むWorld Viewの創業メンバーが新たに立ち上げたSpace Perspectiveが、成層圏気球と有人カプセルを用いた上空30kmまでの旅行ビジネスに取り組むことを発表しました。

上空30kmの領域は成層圏に位置づけられ、宇宙空間ではありません。
※宇宙空間は上空100km以遠

しかし、成層圏でも空気は薄く、周囲は暗く、地球が球であることは実感できる高度となっています。Space Perspectiveが取り組む事業は、いわば模擬宇宙旅行と言えるサービスとなるでしょう。

Space Perspectiveが開発するカプセルはSpaceship Neptuneと名づけられており、上昇と下降にそれぞれ2時間、成層圏の縁飛行に2時間で合計6時間の飛行が可能となっています。また、このカプセルには8名の乗客が搭乗でき、予定料金は1人12万5000ドル(約1300万円)とのことです。

Space Perspectiveのメンバー一覧には、気球開発の経験が豊富なメンバーが名を連ねています。気球旅行に関する熱量と経験が豊富なSpace Perspectiveに、引き続き注目です。

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飛翔するSpaceship Neptuneのイメージ図 Credit : Space Perspective

Redwireが軌道上3DプリンターメーカーのMade In Spaceを買収

Redwireが宇宙空間で使用可能な3Dプリンター開発のパイオニアであるMade In Spaceとそのヨーロッパ拠点を買収したことを発表しました。

Made In Spaceは、米国を拠点とするスタートアップ企業で、2010年に創業。ルクセンブルクに子会社にあたるMade In Space Europeがあります。2014年に、Made In SpaceはNASAと共同でISSに輸送した3Dプリンターをリモートで操作し、工具の製造を成功させた実績もあります。

Redwireは、宇宙に特化したプライベートエクイティファンドであるAE Industrial Partnersが 6月初旬にAdcole SpaceとDeep Space Systemsをそれぞれ買収し、統合して設立された企業です。

Made In Spaceの前CEOとチーフエンジニアは、それぞれRedwireのCOOとCTOに就任し事業は継続させることが発表されていることから、今回の買収は両社にとって有益なのではないでしょうか。

宇宙ビジネスを加速させる一つのキーファクターが、宇宙特化型ファンドなのかもしれません。

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中国が、独自の衛星測位システムを構成する全ての人工衛星の打ち上げに成功

中国航天科技集団(CASC)は6月23日に測位衛星である北斗(BD3 GEO-3)の軌道投入に成功しました。今回の成功で、中国独自の測位システムである北斗衛星測位システム(BDS)を構成する全ての衛星が軌道投入されたことになりました。

これにより、中国はアメリカが運用するGPSに依存しない独自の衛星測位システム(GNSS)の運用が可能になります。

BDSは世界中に測位・ナビゲーションサービスを提供することが可能となっているため、米国のGPS・ロシアのGLONASS・欧州のGalileoに加わり、4つ目の世界的な衛星測位システムとなりました。

中国の軍事目的のみならず、民間目的の活用もBDSには期待されています。

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以上、2020年6月に宙畑が取り上げた宇宙ビジネスニュースでした。
次回2020年7月の宇宙ビジネスニュースまとめは、8月中旬ごろの公開を予定しています。

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