宙畑 Sorabatake

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Starlinkアプリ ベータ版をローンチ。年内に北米でのサービス提供開始【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/10/26〜11/1】

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SpaceXがStarlinkアプリ ベータ版をローンチ

10月27日、SpaceXが構築を進めている小型通信衛星「Starlink」によるインターネットサービスを提供する公式アプリが公開されました。

Source : https://jp.techcrunch.com/2020/10/28/2020-10-27-spacex-launches-starlink-app-and-provides-pricing-and-service-info-to-early-beta-testers/

アプリを使用したベータ版のテストは、米国とカナダで2020年内に実施される予定。使用するにはプログラムに参加し、初期費用のハードウェア代499ドルのほか月額99ドルを支払う必要があります。また、ベータ版のテストは「Better Than Nothing Beta(ないよりはマシなベータ版)」と呼ばれており、過度な期待を煽らないようにしていることがわかります。

SpaceXは、国際電気通信連合(ITU)には合計42,000基の打ち上げを申請しており、初回の打ち上げが実施された2019年以来、Starlink衛星を約900基を打ち上げています。

同社は2020年に米国で、2021年には世界中でサービス提供を開始すると発表しており、現在のところはStarlink衛星によるサービス提供は計画通りに進んでおり、順調にいけば2021年には日本でもサービスの利用が開始されるのではないかと考えられます。

Rocket Labが打ち上げたキヤノン電子の衛星が軌道投入成功

キヤノン電子株式会社の超小型衛星3号機「CE-SAT-ⅡB」がRocket LabのElectronによって打ち上げられ、10月29日に軌道投入の成功および通信が確立されたことが発表されました。

2020年7月に同じくRocket LabのElectronによって打ち上げられたキヤノン電子の超小型衛星2号機「CE-SAT-ⅠB」は、Electronの不具合によって打ち上げに失敗し、その代替として今回の打ち上げが実施された経緯があります。

CE-SAT-ⅡBは、キヤノン製のミラーレスカメラとコンパクトデジタルカメラ、新たに開発された高感度カメラが搭載されており、深夜の地上観測が可能です。望遠鏡のシリーズ化に向けて、今後2年間の実証実験に取り組むとのことです。

2017年6月に打ち上げた同社の超小型人工衛星「CE-SAT-I」は、日本の民間企業が自己資金で打ち上げた初の衛星で、現在も実証実験を継続しています。

「2020年の大彗星」として話題となったネオワイズ彗星や月、惑星をとらえた画像などもWebサイト上で公開されています。 Credit : キヤノン電子株式会社 Source : https://www.canon-elec.co.jp/space/

キヤノン電子は、衛星・コンポーネント・衛星データの販売を柱に2030年には売上1,000億円を目指しています。データ取得や衛星製造のノウハウを社内に貯めながら、衛星とそのコンポーネントを売り出していくための着実な実績を積み重ねていく重要なフェーズに入っているようです。

Space BDがHTV-X1号機の超小型衛星放出技術実証ミッションを受注

10月29日、衛星の打ち上げや宇宙空間での実証実験の斡旋を行うSpaceBD株式会社は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進める次世代宇宙ステーション補給機「HTV-X」1号機で実施される超小型衛星の放出技術実証ミッションを受託したことを発表しました。

ミッション概要イメージ Credit : JAXA

同ミッションは、HTV-Xの特長である自在な飛行能力を活かし、ISSよりも高い高度から衛星を放出することにより、超小型衛星放出の新たな需要を引き出す目的で実施されます。

また、HTV-Xは月軌道ゲートウェイへの物資輸送も計画されており、月周回軌道からの衛星放出ミッションへの活用も期待されています。

Space BDはこれまでにISSの日本実験棟「きぼう」からの衛星放出事業や船外実験設備利用事業、H-ⅡAおよびH3ロケットの相乗りによる衛星打ち上げの機会提供事業を受託し、これまでに52基の衛星打ち上げを受注しています。

創業からわずか3年で宇宙商社としての実績を多くあげているSpace BDの活躍に今後も注目していきたいと思います。

NTT東日本 災害時の被災設備の把握に衛星データを活用

10月27日、東日本電信電話株式会社(NTT東日本)は、大規模災害発生時の早期復旧に向け、衛星データを活用した被災設備の早期把握に取り組むことを発表しました。
NTT東日本は、昨年度よりJAXAが提供する「防災インタフェースシステム」からのデータ取得を開始し、撮像データを活用した上空からの調査体制の構築について検討してきました。

今年度、さらに独自の衛星データ活用を行うことで、体制の強化を目指しています。衛星データは JAXAの「だいち2号」の合成開口レーダー(SAR)の撮像データのほか、株式会社NTTデータの提供する全世界デジタル3D地図「AW3D」を利用しています。レーダーを使ってデータを取得できるSARを組み合わせることで、雲がかかっていると観測できない光学衛星のデータを補完します。天候によらず迅速に設備の状況を把握することで、電気通信設備の早期復旧に取り組んでいくとのことです。

昨今増えてきている大規模な災害への対策強化の必要性がNTT東日本の中で高まったことで、本プロジェクトが進行したようです。2018に発生した北海道胆振東部地震や2019年の台風15号、台風19号では、同社の通信設備も甚大な被害を受け、復旧までには期間を要しました。

人工衛星のデータは、地上での災害の影響を受けづらいために、災害対策では注目されています。データのアクセス性や、取得頻度の向上により、増える災害の迅速な対応に貢献する場が増えるかもしれません。

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