宙畑 Sorabatake

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続々と続く宇宙ベンチャーの買収 選択と集中で加速していく宇宙ビジネス【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/10/26〜11/1】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

RedwireがRoccorの買収を発表し、今年に入り4回目の買収成功。

宇宙ベンチャーの買収を次々に成功させているRedwireが、新たな買収を発表しました。Redwireが今回買収したのは、太陽光パネルなどの宇宙空間での展開物の開発に取り組んでいるRoccorです。具体的な買収条件は明かされていません。

2012年にコロラド州ロングモントで設立されたRoccorは、アンテナや太陽電池パネルなど宇宙空間で展開可能な構造物を開発している宇宙ベンチャーです。Roccorは既にNASAや米軍、民間宇宙企業に納品経験があり、同社の製品は、軍需と民需を合わせて75回の宇宙ミッションで使用されているとのことです。

Redwireは、航空宇宙や防衛に特化したPEファンドであるAE Industrial Partners,LPが 6月初旬にAdcole SpaceDeep Space Systemsをそれぞれ買収した後、統合して設立された企業です。その後、宇宙空間で使用可能な3Dプリンター開発のパイオニアであるMade In Spaceも買収しています。

Redwireの創業者兼CEOのPeter Cannito氏は、今回の買収について以下のコメントを出しています。

Roccor is exactly the type of company we are looking to add to the Redwire platform—a proven, growth company with a list of top-tier customers, that is also an industry disruptor. We are very excited to work closely with the talented Roccor team to build on their  remendous success and accelerate their advanced technologies.”
(訳:Roccorは、我々がRedwireのプラットフォームに追加したいと考えていた企業でした。我々は、才能溢れるRoccorのチームと協力しながら、彼らの先進技術を加速させることを非常に楽しみにしています。)

主に軌道上サービスを展開する上でのコア技術を有しているベンチャー企業の買収を進めるRedwire。同社は、買収した企業の技術を相乗効果でスケールさせながら、軌道上サービス事業を加速させていくようです。

今年に入り4回の買収を成功させたRedwire。今後の同社の事業戦略に注目です。

Roccorが独自開発する小型の太陽電池パネル Credit : Roccor

Ansysが軌道シミュレーションソフトを開発するAGIを買収

工業製品のシミュレーションソフトを展開するAnsys(アンシス)が、軌道シミュレーションソフトを開発しているAnalytical Graphics, Inc.(以下AGI)を7億ドルで買収することに合意したと発表しました。

今回の買収額のうち67%は現金で支払われ、33%はAnsysの普通株式の発行によって支払われる予定です。この取引に伴い、Ansysは新たな資金調達を行うことを予定しているとのことです。

AGI は、軌道上の物体を追跡しそのデータを分析し、衛星オペレータに接近の可能性や衝突の警告を提供するCommercial Space Operations Center(ComSpOC)を提供しています。同社は、ComSpOCに加えて、顧客が衛星コンステレーションの運用に使用するソフトウェアなども開発しています。

自動走行やブロックチェーンなどの新規技術開発と比較して、宇宙空間での実証機会が限られているのが宇宙ビジネスの難しい部分です。今後、ますます重要視される宇宙空間でのシミュレーションソフトウェアにも注目です。

AGIが提供するCommercial Space Operations Centerの表示画面の例 Credit : AGI

D-OrbitがPlanet Labsの衛星の軌道投入に成功

小型衛星の放出システムを開発するイタリアの宇宙ベンチャーD-Orbitが、独自に開発した小型衛星放出機構を活用し、Planet Labsの衛星”SuperDove”12基を所定の軌道へ投入したことを発表しました。

D-Orbitは、ロケットから放出された後に小型衛星を特定の軌道まで輸送し放出する”軌道投入のラストワンマイル”サービスに取り組んでいます。D-Orbitにとって、今回が初の商業ミッションの実証実験でした。

D-Orbitは、顧客のミッション内容に応じた小型衛星放出システムを提供すべくInOrbit NOW(ION)と呼ばれる独自の小型衛星放出機構を開発しており、今回のSuperDoveの放出にも同装置が使用されました。今年の12月に実施予定のSpaceXのFalcon9打ち上げでは、最新版のIONを搭載する予定です。

D-OrbitのCCOのRenato Panesi氏は、次回のミッションについて以下のコメントを出しています。

We are in the final phase of testing and assembling our next satellite. It is 100% fully loaded, which means that the market is interested in this new service we are able to render.”
(訳:我々は次のミッションの最終段階にあります。現在順調にミッションの準備が進んでいますが、それは市場が我々の新しいサービスに興味を持っていることを意味しています。)

近年増えてきている小型衛星の相乗りサービスですが、主衛星となる大型衛星に比べ、相乗りする小型衛星にとっては軌道投入の自由度が低いのがデメリットです。
したがって、IONのような小型衛星の軌道投入を支援するサービスが実用化されると、相乗り打ち上げサービスであっても、小型衛星を希望の軌道へ安価に投入可能となります。

D-Orbitは日本のインターステラテクノロジズ社と丸紅と業務提携も締結しています。
(参考:IST、丸紅、D-Orbitが業務提携。各社の強みを活かして顧客層の拡大へ【週刊宇宙ビジネスニュース 4/13〜4/19】

D-Orbitと類似の事業を展開している競合として、MomentusExoLaunchがあげられます。徐々に競争も激化している軌道上サービス市場で、D-Orbitが存在感を発揮できるか、今後も注目です。

D-OrbitのIONを用いたキューブサット放出のイメージ図 Credit : D-Orbit

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