バイデン政権の宇宙政策はいかに? アルテミス計画 有人月面着陸は後ろ倒しか【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/11/2〜11/9】
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アルテミス計画 有人月面着陸は後ろ倒しか
世界中で注目となっていた米大統領選で、前副大統領のジョー・バイデン氏の当選が確実であることが報道されました。
米国では、大統領の方針が宇宙開発の計画に大きな影響を与えるケースが多々あります。ブッシュ政権時代に有人月面ミッションが計画されていましたが、オバマ政権で方針転換、火星を目指すと発表したものの開発自体は失速。トランプ政権では、中国の宇宙開発の目まぐるしい発展も背景にあり、再び宇宙分野でリーダーシップを取ろうと、政権発足後の2017年に有人月面ミッションと火星ミッションの実施を決定ました。
今回の大統領選で正式にバイデン政権に移行することになれば、宇宙開発はどのような方向で進んでいくのでしょうか。バイデン氏はこれまで、宇宙政策について詳細な説明はしていません。
やはり気になるのはアルテミス計画についてです。
アルテミス計画は当初、2028年に月面有人着陸を実施する予定でしたが、急遽2024年に変更されることとなりました。しかし、この変更は現実的には難しいのではないかと見られており、複数のメディアがアルテミス計画最初の月面着陸は2024年から4年後ろ倒した2028年になるのではないかと報道しています。
2020年1月には、米下院科学委員会で民主党指導部が「NASA Authorization Act of 2020」として、有人月面着陸のスケジュールを再調整、さらに、火星ミッションを優先し、2033年に火星軌道上での有人ミッションを実施する計画も提案しています。
国際プロジェクトへと発展したアルテミス計画には、日本も参画することが決まっています。2020年7月に文部科学省の萩生田光一大臣とNASAのジム・ブライデンスタイン長官が「月探査協力に関する文部科学省と米航空宇宙局の共同宣言(Joint Exploration Declaration of Intent ,略称JEDI)」に署名し、日本の協力内容が具体化されました。
さらに、2021年度予算案の概算要求では、アルテミス計画関連に810億円を要求し、新たな宇宙飛行士の募集計画を発表するなど、まさに日本の一大プロジェクトとして国をあげて参画しようとしている状況です。
これについてJAXAの職員は政府が開催した懇談会で、これまで米大統領の方針により月に行く、火星に行くと振れてきた方針を踏まえて、月軌道ゲートウェイは中途の拠点を置いて、どちらも目指せるように考えられていることを説明し、注意深く計画が作られているとしています。
NGAの地理空間情報のWebポータルにPlanetとBlackSkyので画像が搭載
11月5日、米国国家地理空間情報局(National Geospatial‑Intelligence Agency 以下NGA)は、Planet LabsとBlackSkyの衛星画像を国防省やインテリジェンス・コミュニティなどが利用する地理空間情報システムに追加することを発表しました。
宙畑メモ
国家地理空間情報局(NGA)は、地図や空中写真、衛星データの収集および分析、配信を行っています。
宙畑メモ
政府が設置している情報機関によって構成される組織のことをインテリジェンス・コミュニティと呼びます。米国には、中央情報局(CIA)や連邦捜査局(FBI)をはじめ、国家地理空間情報局(NGA)、国家偵察局(NRO)など16の組織があります。
これによりNGAが提供しているGlobal Enhanced GEOINT Delivery(G-EGD)と呼ばれる地理空間情報のWebポータルで、Planet LabsとBlackSkyの画像が配信されることになります。
これまで政府が情報収集に用いる衛星画像のプロバイダーには、1992年に設立されたDigital Globeが採用されるケースが多くありました。Digital Globeは2017年にMaxar Technologies(以下Maxar)に買収され、G-EGDの衛星画像はMaxarが提供しているもので構成されていました。
Maxarが提供する衛星画像は高解像度ではありますが、NGAは近年、比較的安い費用で高頻度の撮影が実現できる超小型衛星の活用に関心を示していました。
また、2019年7月には、Planet LabsとBlackSkyはMaxarともに、光学衛星画像に関する研究を国家偵察局(NRO)より受注しています。政府が求めるクオリティに、いよいよ民間企業の実力が到達してき始めたと言える事例の一つです。
今回のように政府がベンチャー企業の衛星画像を利用することで、衛星画像の利用促進が進むほか、ベンチャー企業の成長にもつながるのではないでしょうか。
QPS研究所 追加調達・融資で8.65億円を調達
SAR衛星によるコンステレーションの構築を計画している、九州大学発ベンチャーのQPS研究所は、既存株主から追加の資金調達および日本政策金融公庫からの融資を合わせて8.65億円を調達したことを11月5日に発表しました。同社は2017年にシリーズAラウンドで23.5億を調達し、累計の調達額は約33億円となります。
QPS研究所は、2020年12月に技術実証機の役割を担う2号機「イザナミ」の打ち上げを予定しています。2019年12月には同じく技術実証機の1号機「イザナギ」を打ち上げましたが、4月に配信されたレポートによると、データ受信機能部分で不安定な箇所があり、ファーストライトの取得に苦戦しているとのことでした。
しかしながら、イザナギの初期運用の段階で衛星の95%を実現したとのことで、衛星の製造開発および運用に対する知見がイザナミに活かされるよう期待したいと思います。
また、今回調達した資金は、2022年に打ち上げ予定の3号機~6号機の先行開発の資金に充てるとのことで、本格的なサービス提供の開始に向けて期待が高まります。
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参考
Key senator raises doubts about 2024 human lunar return
NGA’s primary commercial imagery delivery system now includes small satellites
NRO awards study contracts to BlackSky, Maxar and Planet
NGA adds Planet, BlackSky to imagery delivery system used by government agencies