SoftBank GroupがOneWebに再度出資を発表【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/01/11〜01/17】
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SoftBank GroupがOneWebに再度出資を発表
昨年11月に英国政府とインドの大手通信企業Bharti Globalの買収により米国破産法第11章(Chapter11)による保護状態を脱したOneWebが、新しい資金調達を発表しました。
(参考記事:OneWebが新しい衛星打ち上げを発表。買収が完了し再起を目指す【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/11/16〜11/22】)
今回投資を決定したのは、OneWebが破産申請をする前にも投資していたSoftBank GroupとHughes Network Systems LLCで、投資額は総額4億ドル(約415億円)です。今回の資金調達で、破産申請後のOneWebの獲得資金は総額14億ドル(約1453億円)となりました。今回の投資で、SoftBank GroupはOneWebの取締役会の席を獲得したとのことです。
今回OneWebが獲得した資金は、2022年末までの構築を目標にしている、低軌道通信衛星648機からなるOneWebの第一世代の通信コンステレーションの構築に充てられる予定です。
SoftBank Groupの代表取締役会長兼CEOの孫正義氏は、今回の投資について以下のコメントを出しています
We are excited to support OneWeb as it increases capacity and accelerates towards commercialisation. We are thrilled to continue our partnership with Bharti, the UK Government and Hughes to help OneWeb deliver on its mission to transform internet access around the world.”
(訳:OneWebが衛星機数を増やしながら商業化に向けて加速する中、我々はOneWebをサポートできることが非常に楽しみです。世界中のインターネットへのアクセスを変革するというOneWebのミッション実現に向けて、Bharti・英国政府・Hughesとのパートナーシップを継続できることを嬉しく思います。)
またOneWebは、米国市場で最終的に運用予定の地球低軌道(LEO)通信衛星コンステレーションの規模を、4万7884機から約7000機に縮小する調整について、米連邦通信委員会(FCC)と合意したと発表しました。FCCに提出した資料はこちらからダウンロードできます。
コンステレーション計画の改定案が決まったことは、英国政府とBharti Globalとのコミットメントを明確に示し、費用対効果が高く、信頼性の高い通信衛星ネットワークの展開に繋がるとOneWebは述べています。
再起に向けて新たな資金を獲得したOneWebに引き続き注目です。
FCCがSpaceXのStarlinkの極軌道打ち上げを認可
次は、OneWebの競合にあたるStarlinkのトピックです。
米連邦通信委員会(FCC)が、SpaceXが取り組んでいる通信衛星コンステレーションStarlinkに対して、極軌道への軌道投入を認可したことを発表しました。
Starlinkは既に約1000機が地球低軌道(LEO)に軌道投入されていますが、極軌道への軌道投入は初めてです。1月21日に打ち上げ予定の、小型衛星専用のライドシェアミッションTransporter-1の一部として、10機のStarlink衛星が極軌道に軌道投入される予定です。
いくつかの衛星を極軌道に投入することで、既存のStarlink衛星がカバーできていなかった地域でのサービス提供を可能にできるとSpaceXはFCCに提出した資料で主張しています。FCCは、SpaceXが以前から要求していたStarlink衛星の投入軌道高度を下げるというライセンス全体の変更については、決定を延期しています。
極軌道を利用することでサービスを提供するエリアも拡大し、SpaceXの体制は盤石になりつつあります。
政府の提供するデータプラットフォームが続々と
3D都市モデルプラットフォームPLATEAU
国土交通省は、日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクトとして、PLATEAUを発表しました。
PLATEAUは、バーチャルな空間に様々な都市活動情報を重ねることが可能な、3D都市モデルプラットフォームです。PLATEAUは官民問わずあらゆる分野の知見が集積し、オープンデータとしての公開も予定されており、政府の掲げるSociety5.0の基盤として誰もが自由に都市のデータを活用できるプラットフォームになることを期待されています。
PLATEAUでは、3D都市モデルの可能性を引き出すため、2021年1~3月において3D都市モデルを活用したハッカソンが予定されており、新しい機能やサービスのアイデアやプロトタイピングが集まると見られています。
2021年4月以降には、3D都市モデルのデータセットをオープンデータ化し、3D都市モデルのデータ仕様書やユースケース事例集等を公開する予定です。
PLATEAU のデータを閲覧可能なブラウザベースのWebアプリケーションであるPLATEAU VIEWには、こちらからアクセスすることができます。
農業気象情報衛星モニタリングシステムJASMAI
農林水産省は、JAXAと締結した「農林水産分野における地球観測衛星データ等の利用の推進に関する協定」に基づき、農業気象情報衛星モニタリングシステム「JASMAI」を構築し、1月15日から一般公開しました。
JASMAIを用いると、JAXAとNASAの衛星観測データを活用して得られた、海外の主要穀物生産地帯における穀物・農作物の生育に関わる情報を画像やグラフで見ることが可能になります。
現在の対象地域は、
米国全土・メキシコ・南米・オーストラリア・ヨーロッパ・ロシアを含む中央アジア、中国東部・中国北部・南アジア・東南アジア・アフリカ北部・アフリカ南部
と多岐にわたっています。
閲覧可能なデータは以下の通りです。
- ・気象データ(土壌水分量、降水量、地表面温度、日射量)
- ・作物の生育状況(植生指標NDVI)
データの更新頻度は月2回で、半月平均のデータが毎回更新されます。
政府が展開するオープンデータプラットフォームが続々と登場し、様々なデータの利用促進が進んでいます。これからどのように活用されていくか期待です。
Blue Originの宇宙船New Shepardが14回目の試験飛行に成功
Amazon.comの創業者であるジェフ・ベゾス氏が設立したロケット企業のBlue Originが、同社が開発中の再利用型有人宇宙船New Shepardの14回目の試験飛行を行い、無事成功しました。New Shepardという名称は、アメリカ初の宇宙飛行士であるAlan Shepard宇宙飛行士に因んでつけられています。
今回のNew Shepardは高度約105km、機体の最大速度は3,609 km/hに達しました。離陸から7分25秒後に第一段ブースターが着陸し、離陸から10分10秒後にクルーカプセルが着陸し、共に成功でした。
今回の試験飛行の様子はこちらから視聴できます。
今回のNew Shepardには、RSS First Stepという名称の宇宙飛行士が搭乗するクルーカプセルの改良版が搭載されました。
搭乗する宇宙飛行士の快適さや安全に関する以下のような改善がされています。
・キャビン内にマイク付きスピーカーを設置し、宇宙飛行士が常に地上のミッション・コントロールセンターと通話可能に。
・座席を6席に拡充。
・各座席にパネルを設置し、安全に関するメッセージを乗客に伝えるクルーアラートシステムを導入。
・クッション性のある壁や消音装置を採用し、カプセル内の騒音を低減。
・冷却装置や湿度制御による船内の温度調整及び飛行中の窓の曇り防止を実現。
New Shepardには実際に宇宙飛行士が搭乗する予定ですが、宇宙飛行士が搭乗する具体的日程は未定です。
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参考記事
ONEWEB SECURES INVESTMENT FROM SOFTBANK AND HUGHES NETWORK SYSTEMS
OneWeb Streamlines Constellation
OneWeb Adjusts Target Constellation Size Down to 7,000 Satellites
FCC grants permission for polar launch of Starlink satellites
国土交通省が主導する、日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU」
農林水産省『農業気象情報衛星モニタリングシステム(JASMAI)の公開について』
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