Ursa Space SystemsがSARのユースケーストーナメントを実施。違法漁業船舶の検出に関心【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/03/15〜03/21】
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Ursa Space Systemsが、SARのユースケースのトーナメントを開催
衛星が撮影したSAR画像を解析することで様々な業界の課題解決に取り組んでいるUrsa Space Systemsが、SAR画像のユースケースとして何が注目されているかを一般ユーザーに問いかけるトーナメントを実施しました。投票は誰でも可能で、同社の公式SNS(LinkedIn及びTwitter)で実施されました。
今回の投票は一般ユーザーによるもので、各回における投票数も両SNSを合計しても100票以下ですが、一般の方がどのようなSAR画像の利活用に関心があるかを理解する一つの指標にはなります。
結果として、今回のトーナメントでもっともユーザーが関心を示したのは、違法漁業船舶の検出でした。結果はこちらのTweetで発表されました。
以下、各項目について簡単に解説していきます。今回選出された候補は、以下の4カテゴリーから2つずつ選出されています。
SAR(合成開口レーダ)のキホン~事例、分かること、センサ、衛星、波長~
海洋
船舶が海洋上で何らかの違法行為を行っている場合、自動識別装置(AIS)の送信機をオフにしている状態が多々見られます。このような状況下でも、SAR画像を使用することで、違法行為を行っている疑いのある船舶を差分検出することが可能です。AISの送信機をオフにしている所謂”dark vessel”と呼ばれる船舶が行う違法行為に対するSARのユースケースとして、
- ・違法漁業船舶の監視
・制裁逃れの取り締まり
が選出されました。
国連海洋法条約に違反した漁業行為は、世界中の海洋資源の持続可能性を脅かし、毎年何十億ドルもの経済的損失をもたらしていると報告されています。このような理由から、今回最も注目を集めたと見られています。
陸地ではなく公海にて、政府や企業が禁止している違法な商品取引を行うためにAISをオフにしているのが、制裁逃れの船舶です。このような船舶の検出で、陸地を逃れて違法取引を実行する船舶を取り締まることが可能です。
注目され始めたSAR画像×船舶×機械学習を概観する
環境
地球環境の保全に関するユースケースとして
- ・原油流出の検出
・森林破壊の検出
が選出されました。タンカーなどの船舶から流出した原油が海水面に漂うと、海水面の反射特性が変化します。したがって、マイクロ波を発射しその反射を観測するSAR衛星の画像の利用が有効です。
ブラジルやインドネシアのボルネオ島などの熱帯雨林では、森林破壊が大きな問題となっています。森林破壊は光学画像でも観測できますが、熱帯雨林が発達している低緯度の熱帯地域は雲に覆われている割合が多いため、SAR画像が有効です。
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経済
経済活動に大きく寄与するパラメータを衛星画像で観測する事例は多々あります。ある国の経済指数の推定に活用されたり、特定の企業の株価などの裏付けなどにも活用されています。今回は
- ・原油貯蔵量測定
・車両検出
の2つが経済に関するユースケースとして選出されました。
貯蔵量は、原油価格を変動する重要な指標の一つであり、原油の価格は世界の経済動向を左右します。SAR画像で貯蔵量の変化を測定することで、経済活動の予測することが可能になります。
また、都市を走る車両の数や特定の施設に駐車している車両の数を検出することで、経済指数の可視化や特定地域の流通状況を評価することが可能です。
気象関連
気象に関する事例として、
- ・洪水による水没地域の検出
・農地のモニタリング
の2つがユースケースとして選出されました。
洪水のような天候による災害が起きた際、天候によって観測できない場合がある光学衛星より、雲があっても撮像可能なSAR画像が有効です。また、農地をモニタリングすることは、農作物の収穫量を予測し、気象災害による農作物の被害把握などに役立ちます。干ばつや異常気象など世界規模で起こる変化にも、衛星データは地上での観測の補足として注目されています。
今回の結果を踏まえて、今後違法漁業船舶の検出に関して同社が独自に分析した情報も紹介される予定のようです。
日本の宇宙ベンチャーでもQPS研究所やSynspectiveなどが、SAR衛星に関する事業に取り組んでいます。今後、今回選出された事例のほかにも様々な分野でSAR画像が活用されることが期待されています。
JAXAが月輸送サービスの概念検討業務についてSpaceBD含む4社と契約
JAXAは”月周回軌道輸送サービスの概念検討業務”の実施企業を選定しました。JAXAが公開している資料によると、本案件に関してはSpace BD、株式会社ispace・三井物産株式会社・日本電気株式会社(NEC)の4社が選定されています。
ispaceは宇宙ベンチャー企業として、月着陸船及び月面探査機の開発に従事しています。
三井物産は、衛星ライドシェアサービスを展開するSpaceflight Industries, Inc.を買収するほか、ISSの民間主導の運用計画に名乗りをあげる動きもあります。
NECは、多くの人工衛星の運用および製造に従事していますが、米国の有人月面探査であるアルテミス計画で使用する宇宙船に、同社のAI技術を提供する動きなどがあり、月面ビジネスとの関連もあります。
SpaceBDは、「宇宙商社®️」として衛星打ち上げサービスや国際宇宙ステーション(ISS)での実証実験サービスを展開しています。
宇宙開発は宇宙基本計画の下、政府主導で進められていますが、アルテミス計画をはじめ、各国でも民間企業と協力して計画を推進していく動きが活発になっています。選定された企業も独自にJAXAやほかの事業社とともに事業を進めていました。今回の概念検討業務の制定によって、各事業社の強みを生かし、より月輸送サービスが推進されることが期待できるのではないでしょうか。
Raytheon Intelligence and Spaceが衛星データのクラウド構築について発表
アメリカの大手防衛企業のRaytheon Technologiesの子会社であるRaytheon Intelligence and Space(以下:RI&S)が、地球観測衛星Sentinel-6の観測データを、自身の施設内にサーバーを設置して運用するシステムからEarthdata Cloudと呼ばれるクラウド上で管理するシステムへ移行させる計画を発表しました。
今回の計画は、RI&SとNASAのJPL(ジェット推進研究所)の分散型活動的データ保存センターが協力して開発します。
NASAとESAが中心となって開発されたSentinel-6は、海面の観測が目的の地球観測衛星で、2020年10月に打ち上げられました。Sentinel-6は、地球全体の海面上昇の測定の他、地球の気候モデルを補完するための大気測定も行い、より精確な天気予報に貢献していく予定です。
NASA自身が情報システムを所有し自分たちのデータセンターで運用する、いわゆるオンプレミスな運用形態は、運用コストが高く柔軟性も低いためクラウドへの移行が期待されていました。新しいクラウドベースでの運用は、衛星データのアクセス性向上に加えて、NASAの地球科学データ情報システム(ESDIS)のデータ管理の課題解決にも繋がります。
RI&Sの防衛ソリューション部門長のDavid Appel氏は、以下のコメントを出しています。
NASA is required to keep all data in perpetuity. The data storage challenge becomes that much greater with the petabytes upon petabytes of data that satellites generate every day.
(訳:NASAは、すべてのデータを永続的に保存することを求められています。人工衛星が毎日撮像する膨大なデータにおいて、データ保存の課題は日に日に大きくなります。)
NASAの科学者が本システムを試験した後、2021年9月までにSentinel-6が取得するすべての衛星データを、クラウドベースのAPIを通じて一般公開する予定です。これにより、収集した衛星データを多くの科学者や一般の人々が今までより気軽に利用できるようになります。
日本の衛星データプラットフォームであるTellusも地球観測衛星のデータや地上のデータをクラウド上に管理することで、利活用を促進することを目的としていますが、今後、各国の衛星データがクラウドで管理していくことで、誰もが世界中のデータにアクセスできるようになる社会が構築されるのではないでしょうか。
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