宙畑 Sorabatake

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DARPAが核熱推進(NTP)の実証として3社を採択 【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/04/12〜04/18】

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DARPAが核熱推進(NTP)の実証としてBlue Originをはじめとする3社を採択

国防高等研究計画局(DARPA)は、同社が研究を進める宇宙推進システム技術である核熱推進(NTP)システム実証の第一フェーズとして、General Atomics Electromagnetic Systems(GA-EMS)、Blue Origin, LLCLockheed Martin Corporationの3社を採択しました。NTPとは、原子炉の高熱で推進剤を加熱膨張させ、高温の推進剤をノズルから放出して推力を得る方式で、実例はまだほぼ無い技術です。

今回の実証は、地球低軌道 (LEO) 上のNTPシステムを2025年に実証することを目指すDemonstration Rocket for Agile Cislunar Operations(DRACO)プログラムの一つです。

現在使用されている宇宙推進システムには電気推進と化学推進と固体推進があります。その他に原子力を活用した推進システムも存在します。原子力推進は深宇宙探査の分野で多く利用されてきた推進システムで、地球低軌道上では実例がほぼありませんでした。今回DARPAが実証を進めるNTPは電気推進の約1万倍、化学推進の2~5倍の比推力が実現可能と推定されており、地球低軌道上で活用し将来の宇宙推進システムの基盤となることを目指しています。

※比推力:宇宙機の推進剤の性能を示す目安となる値で、一般的に大きいほど推進剤として高性能なことを表す。推進剤1kgが1秒間に消費されるときに発生する推力の値で単位は秒。

今回のDRACOプログラムの第一フェーズは18ヶ月を予定しており、今回採択された3社は以下の業務を担当します。

GA-EMSは、2,200万ドル(約24億円)でNTPの原子炉と推進サブシステムのコンセプトの予備設計を担当し、Lockheed MartinとBlue Originは、それぞれ290万ドル(約3.2億円)と250万ドル(約2.7億円)で宇宙船のコンセプト設計と運用システム設計を担当します。

DRACOのプログラムマネージャーであるNathan Greiner米空軍少佐は、今回の契約について以下のコメントを出しています。

The performer teams have demonstrated capabilities to develop and deploy advanced reactor, propulsion, and spacecraft systems. The NTP technology we seek to develop and demonstrate under the DRACO program aims to be foundational to future operations in space.
(訳:今回採択した3社は、先進的な原子炉・推進装置・宇宙船システムを開発、展開させていく技術力があることを証明しました。DRACOプログラムで開発・実証するNTP技術は、将来の宇宙開発における基盤となることを目指しています。)

GA-EMSは宇宙企業ではありませんが、世界初の原子力潜水艦の開発を手掛けたことで知られる、原子力関連の研究開発実績の豊富な企業です。

GA-EMSが持つ原子力関連の技術力が、DARPAの契約を通じて宇宙開発にも活用されていく点にも注目です。

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参考記事

DARPA Selects Performers for Phase 1 of Demonstration Rocket for Agile Cislunar Operations (DRACO) Program

General Atomics Awarded DARPA Contract to Design Nuclear Thermal Propulsion System for DRACO Mission