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特集

理想の“くるキャン”スポットを衛星データで探せ!〜 Vol.1 キャンプのプロに車中泊のキホンを聞いてきた

昨今ブームが起きつつある車中泊を、衛星データを使ってもっと快適に!?楽しむ車中泊、略して「くるキャン」を衛星データで最高の機会にするべく、宙畑編集部 城戸の旅が始まります。

奥津湖(岡山県)の夜空 Credit : 城戸 彩乃

第4次キャンプブーム到来! と言われてはや数年経ちますが、このブームはいまだ衰えるところを知りません。2020年以降はコロナ禍の影響もあって、いままでアウトドアに興味を持っていなかった人たちも巻き込み、ブームにさらに拍車がかかっているという状況が続いています。

われわれ宙畑編集部の城戸も例に漏れず、愛車のプリウスαでキャンプを楽しむのがマイブーム。

長野県駒ヶ根市の森林サイトでご満悦の城戸 Credit : 城戸 彩乃

といっても、テントではなく車内を就寝スペースにしている、いわゆる車中泊キャンプ。人気キャンプアニメをオマージュして、宙畑では“くるキャン”と呼ばせていただきますが、非日常感たっぷりで、とにかく自然の中で生活することが楽しいんだとか。

伊是名村(沖縄)のキャンプ可能なビーチ Credit : 城戸 彩乃

「右も左もわからないので、とりあえずは近場のキャンプ場に行って、御飯作って焚き火して、眠くなったらクルマに入って寝るというのがいまのスタイルです。せっかくなので、もっと素敵な場所で“くるキャン”をしてみたいんです」(城戸)

 

車中から海が一望! Credit : 城戸 彩乃

なるほど。であれば、お得意の衛星データを使って理想の“くるキャン”スポットを見つけよう! と言いたいところですが、そもそも城戸のような初心者“くるキャンパー”にぴったりなスポットってどんなどころ? “くるキャン”を楽しむために知っておくべきことは? と気なることは盛りだくさん。

そこで今回は、理想の“くるキャン”スポットを探す連載の第一回目として、その道のプロにインタビュー。アウトドアライターで星のソムリエ®としても活動しているSAMさんに、車中泊のキホンを聞いてみました。

アウトドアライターSAMさん Credit : SAMさんご提供

■SAMさんプロフィール
アウトドアライター/コラムニスト。”キャンプブロガーの元祖”と言われる。多方面のメディアにも出稿、CMコーディネート、日本オートキャンプ協会インストラクター/講師、星のソムリエ®など幅広い分野で活動中。著書「ベテランキャンプブロガーSAMの、お気に入りキャンプ場教えます」(ベースボールマガジン社)
*SAMのLIFEキャンプブログ Doors , In & Out ! https://samcamp.exblog.jp/

レジャー目的の“くるキャン”なら、選択肢は2つ

── “くるキャン”に理想の場所を探しているんですけど、そもそもどういうところでできるんでしょうか?

SAM:キャンプをはじめとした“レジャーを目的とした車中泊”のためという前提ならば、、大きく2つに分けられます。ひとつはオートキャンプ場です。クルマの乗入れができて、サイト内に駐車スペースがある場所ですね。キャンプ場にはサイト内へのクルマの乗り入れがNGのところもありますので、そういうところだと車中泊はできません。ですので「オートキャンプ」場を探しましょう。テントを張ってキャンプをすることが本来の目的な上に、クルマも停められて、焚き火もできますし、荷物を広げて生活することができます。

美星町(岡山県)のキャンプ場でタープ&車中泊 Credit : 城戸 彩乃

もうひとつは、クルマの中で寝ることを目的とした、いわゆるRVパークのような施設です。ここではテントを張ったりするのはNGで、キャンピングカーのような装備が整ったクルマを招き入れるのを主としています。ですので、一般車両で行くと、少し浮いた存在になってしまうかもしれません(笑)。

── なるほど、RVパークはまだ行ったことはないのですが、調べていたときも一般車(しかもハイブリッド車)にはちょっと敷居が高そうだなと感じていました。

SAM:行っちゃいけないわけじゃないですし、行くことも可能ですけど、「おばあちゃんが床屋にやってきた」みたいなイメージでしょうか(笑)。基本的に、RVパークってクルマ旅のための場所なんです。オートキャンプ場はそこに行くのが目的にもなりますが、RVパークはどちらかというと、目的地の途中に宿泊する場所という意味合いが強いです。例えばキャンピングカーを持っている方というのは、キャラバン的に、通常のキャンプよりも長い日数、移動しながらクルマ旅そのものを楽しむという過ごし方をします。キャンプを目的としたキャンプ場と、クルマ旅の中継地としてのRVパークだと、役割が違うんです。

── そうなると、RVパークで焚き火とかはありえないわけですね。

SAM:そうですね。明確に「キャンプ場ではありません」と謳っているところもありますし、あくまでもクルマの中で生活を完結させるというのが基本的な考え方です。

── やはりビギナーにはオートキャンプ場が良さそうですね。

SAM:オートキャンプ場は一般車両がある風景も普通ですし、そこで何をしているかなんて誰も気にしません。テントを張らずに車中泊をしている人も増えてきているので、はじめての人には良いと思いますよ。ただひとつだけマイナス点としてあるのはコスト面です。オートキャンプはそこで生活することを前提にした値段設計なので、クルマで寝ることだけを目的にするとかなり割高になってしまいます。ですから、車中泊としてオートキャンプ場を使うなら、外で調理を楽しむとか、椅子に座って星空を眺めるとか、何かしらアウトドア環境を満喫できるとよいですね。

美星町の星空 Credit : 城戸 彩乃

── なるほど。ちなみに、オートキャンプ場とRVパークの中間のような施設ってないんでしょうか? クルマで泊まるのが目的だけど、自然にもふれあいたいですし、コストも抑えたいです。

SAM:最近は車中泊のニーズも多様化してきているので、空いている施設を有効活用しようという動きは少しずつ出てきています。例えば「かんぽの宿」の中には、駐車場を車中泊スペースとして貸し出しているところがあります。部屋には泊まらないけど、トイレや温泉といった設備の利用はできるというサービスです。

── おお! そんなサービスがあるんですね。

SAM:サマーシーズンの解放されたスキー場なども最近はありますね。トイレや水道がそろっているし、星もキレイ。今後数年の間に、車中泊スペースを提供するような場所はさらに整ってくると思いますよ。

── 衛星データを使って、いままでなかったような理想の“くるキャン”スポットを探すというのも夢物語ではなさそうですね。

快適な“くるキャン”のために知っておくべきこと

── SAMさんも車中泊をされると聞きましたが、あると便利なアイテムってありますか?

SAM:いくつかありますが、一番のおすすめは意外かもしれませんがBluetoothのスピーカーです。夜になって「さぁ寝ようか」と思っても、すぐに寝られるわけではありません。ましてやクルマの密閉空間って結構慣れないもので、寝るまでにはどうしたって時間がかかるんですよね。そんなときに、枕元に置いて小さなボリュームで音楽やラジオを流しておくと自然と眠りにつけるんです。イヤホンだと寝返りが大変ですし、クルマのオーディオは外に響くから使えません。一台あると、寂しさも紛らわしてくれますよ。

ポータブルスピーカー(城戸持ち物) Credit : 城戸 彩乃

── 確かに、あの無音環境は慣れるまで怖かったです。今度から持っていくようにします。ほかにも、よく眠れるように工夫していることはありますか?

SAM:おすすめは低反発素材の枕です。自宅で使っている人も多いかもしれませんが、いろんな空間を埋めるのに重宝します。シートを倒して、キャンプ用のマットを敷く人が多いと思いますが、それでも腰のあたりが少し浮いてしまったり、完全なフラットにするのは一般車では難しいです。気になる空間に低反発の枕を入れると、寝心地もよくなるので試してみて下さい。

枕とマットレスで快適?な車中を作ってみた Credit : 城戸 彩乃

── 了解です。参考にさせていただきます! あと、これからの時期は暑くなりますが、夏の“くるキャン”ってやめておいたほうがよいですかね?

SAM:冬の車中泊も厳しい環境ですけど、体に悪いのは夏の方ですね。脱水症状になってしまっては目も当てられないので、水分補給ができるようにしておくというのはすごく大事なことです。場所選びでいうと、なるべく標高が高くて夜の気温が下がるところ。それから、できるだけ日が当たりにくい森林系のサイトを選ぶことです。

森林系のサイトは昼間も涼しい@駒ヶ根市(長野県) Credit : 城戸 彩乃

── エンジン点けて、冷房ガンガンっていうのはマナー違反ですから、場所選びは大切ですね。

SAM:方角も大切です。太陽がどっちから登ってくるのかを計算してクルマを停めないと、朝日にやられちゃいます。特に夏は朝早くから日が出てくるので、睡眠時間を確保するためには覚えておくと良いでしょう。

日に当たる場所ではサンシェードが必須 Credit : 城戸 彩乃

── いやー、勉強になります。標高や方角、木の生い茂り状況など、衛星データを使ってどこまで見極められるかは要検討ですけど、いろんな視点があるんですね。

SAMさんおすすめの絶景“くるキャン”スポットは……

── 「SAMのお気に入りのキャンプ場教えます」という書籍を2014年に上梓されていますが、そこで紹介されているように「情景編」「風景編」といったカテゴライズで、おすすめの“くるキャン”スポットってありますか?

SAM:う~ん、これ一番難しい質問ですね(笑)。オートキャンプ場だとたくさんあるんですけど、“くるキャン”って絞ると明確な答えがありません。それだけ未開発ゾーンだなと改めて感じました。
クルマだから良くて、車中泊だからこそ活きるような場所って、もっと開発されていいところなんでしょうね。いままでの車中泊って、どちらかと言うとテントで寝ないからクルマで寝るというような手段となっていましたが、車中泊を目的とした場所というのは……わからないですけど、サスペンスドラマに出てくるような岬の先っちょとか(笑)。

東尋坊の先は駐車場がないので車中泊NGのはずですが・・・ Credit : 福井「越前・若狭」の旅情報 ふくいドットコム Source : https://www.fuku-e.com/010_spot/?id=476

── 衛星データで見つかるとロマンチックですね。トイレや水道の問題はありますけど…。

SAM:旅ってどこかでエクスプローラーなので、知らないものを作り出したり見つけたりするっていう意味合いがあると思うんですよね。なので、クルマに泊まるというのも、その旅をどれだけ長くするかということに関してのひとつの解だと思うんです。衛星データという別次元のものにつながって、そこで新たなストーリーが展開されているんだということになると、意義深いものになるんじゃないのかな思います。

── 衛星が旅の水先案内人になってもらうみたいな感じですね。

SAM:兄貴分みたいな人が僕にもいるんですが、その人に言われて印象に残っていることがあります。「SAMさん、夜はご飯どうするんだ?」とかって言うから、僕が「7時ぐらいに食べるつもりなんですけど。じゃあどうします?」と言ったら、「何をバカなことを言っているんだ。夕食っていうのは夕方に食べるんだ」って言われて。

家にいると時計を見て、その時間で夜を認識しているけれど、実際に夜になる瞬間を見ることってほとんどありません。カーテン閉めて電気を点けちゃうからですね。朝も寝ていることがほとんどで、朝になる瞬間を見ていないし、家事や仕事をしていたら、気づいたら昼になってる。アウトドアの良さは、空の移り変わりで時間を感じられることなんです。夜になる瞬間を見届けることができるし、朝明るくなってきたら自然に目が覚めてしまう。本来の地球のリズムを身体で感じてリセットするというのがアウトドアの本来の目的だと思うんです。キャンプ場とは違った場所で、そういったリセットできる場所が見つかるとおもしろいですね。

恩納村(沖縄)のビーチからの夕日 Credit : 城戸 彩乃

今回「衛星データで」というテーマを聞いたときに、データで精度が高く見れるということ以外にもすごく可能性を感じたんです。「地球のことは宇宙に教えてもらう」というのですかね。コンセプチュアルな面でも、衛星とアウトドアはすごくマッチするのではないかと思っています。頑張ってください。

── ありがとうございます! ご意見を参考に、衛星データで ”くるキャン”に適した場所を調べてみます!

取材を終えて

アウトドアライターのSAMさんにお話を伺って、改めて新しい車中泊の形 ”くるキャン”という概念と、衛星データとの親和性について思っていた以上に「あるな」という感触を得ることができました。衛星データをデータとして使うだけではなく、コンセプトとして「宇宙から地球を見る」ということ自体を楽しみながら、楽しむ車中泊 ”くるキャン”スポット探しを行っていきたいと思います!

ご協力いただいたSAMさん、ありがとうございました!

(次回に続く)

過去、人生をかけてやってみたもの