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コンペ受賞者を発表!「Tellus 宇宙データビジネスフォーラム vol.2」レポート

12月18日に行われた「Tellus 宇宙データビジネスフォーラム vol.2」では、「Tellus Satellite Challenge」の受賞者発表や衛星データについての講演、関係者によるパネルディスカッションが行われました。その模様をまとめています。

(左から)さくらインターネット株式会社の山崎秀人氏、一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)の向井田明氏、株式会社SIGNATEの齊藤秀氏 Credit : sorabatake

これまで宙畑でもたびたびリポートしてきた日本初の衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)。7月31日に行われた「Tellus 宇宙データビジネスフォーラム」に続き、12月18日に「Tellus 宇宙データビジネスフォーラム vol.2」が開催されました。

第2回のフォーラムでは「日本版Kaggle」でお馴染みのデータサイエンティスト参加型のコンペティションを主宰するSIGNATEで開催された「Tellus Satellite Challenge」の受賞者が発表されました!(コンペの詳細は土砂崩れをいち早く発見! 賞金総額200万円の衛星データ解析コンテスト始まるでチェックしてみてください)

今回の記事では、先日行われたフォーラムの様子をお届けします!

(1)経済産業省が見据える宇宙ビジネスの未来像

授賞式に先駆け、経済産業省 宇宙産業室の國澤朋久氏から衛星データの利活用に関するプレゼンテーションが行われました。そもそも「Tellus」は、さくらインターネット株式会社が経済産業省からの委託というかたちで開発が進められているプロジェクトです。

日本の宇宙機器産業市場は世界と比べればけして大きいとは言えません。国内における衛星データ活用のおよそ8割が官需であり、今後宇宙ビジネスを拡大させていくためには民需を広げていくこと、そのためにリモートセンシングデータをもっと手軽に活用できるようにすることが不可欠だと語ってくれた國澤氏。

宇宙ビジネスの規模は現在約1.2兆円で、2030年までにその倍の数字を目標に掲げている Credit : 内閣府・経産省(「宇宙ビジネスの動向と政府の取組」より引用)

内閣府の資料によると、国内における現在の宇宙機器産業と宇宙利用産業の市場規模はおよそ1.2兆円。国として2030年までにその倍の2.3~2.5兆円規模に市場拡大することを目標にしており、「Tellus」はそうした大きな目標を叶えるためのチャンスを与えてくれる場と言えるでしょう。

(3)「Tellus」のキーマン3氏によるプレゼンテーション

続いて「Tellus」プロジェクトに従事する3氏によるプレゼンが行われました。

最初に登壇したのはさくらインターネット株式会社の山崎秀人氏。山崎氏はもともと宇宙開発事業団(現:JAXA)で国際交渉業務やALOS(だいち)の防災利用事業、はやぶさプロジェクトの帰還業務に従事したのち、2018年10月よりさくらインターネット株式会社に出向。現在は「Tellus」開発の中心メンバーとしてプロジェクト全体の指揮を取っています。

「Tellus」の開発状況やその意義をテーマに語ってくれたなかで、印象的だったコメントを一部紹介します。

「衛星データは、データそのものが分かりにくい、データが大きい、有償といったさまざまなハードルがあります。『Tellus』はそうした障壁を取っ払って皆さんにどんどん使ってもらうことで新規ビジネスや雇用の創出を目指していきたいと考えています。

特に新しいビジネスをはじめたいと考えているスタートアップがスピード感を持って、なおかつ低コスト・低リスクでチャレンジできる環境を作りたいと思っています」(山﨑氏)

「Tellus」を通じて宇宙ビジネスのseedを生み、育てること。さらに「Tellus」の究極の目標は、政府が掲げる2030年の市場拡大に貢献していくことであると説明してくれました。

気になる「Tellus」とは一体どのようなプラットフォームなのか、図解を用いて以下のような説明がありました(下図参照)。

「『Tellus』はプラットフォームを盛り上げる環境を『パーク』と呼び、そのなかで衛星データや地上のフリーデータを提供します。また、『ラーニングイベント』を実施し、データサイエンティストになりたいと考えているユーザーを対象にトレーニングを実施。

さらに『データコンテスト』では、『Tellus』のデータを活用して新たなアルゴリズムやアプリケーションを開発し、ユーザー同士が競い合えるような場も提供します。コンテストのアウトプットは『ストア』上に掲出し、他のユーザーが使えるようにしていきたいと考えています。

こうした過程のなかで生まれた知見は『ライブラリ』に集めてネット上で公開し、どんな方でも閲覧およびスキルの獲得できるような世界を作っていきます」(山崎氏)

「Tellus」のプラットフォームの概略図。「パーク」内に各種サービスが紐づいている Credit : さくらインターネット

続いて登壇したのは一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)の向井田明氏。向井田氏は1993年にRESTECに入社し、JAXA衛星のJERS-1やADEOS、ADEOS-2の校正検証業務に従事してきた衛星データ解析のスペシャリストです。

現在はソリューション事業第二部長として、全世界デジタル3D地図を使ったソリューション提供やデータ統合・解析システム(DIAS)などの利用促進を担当しています。

「リモートセンシングで何が分かる?衛星で何が見える?」というプレゼンテーマで、衛星データビギナーにも分かるようにリモートセンシングについて解説してくれました。

そもそもリモートセンシングとは、飛行機やドローン、衛星を活用して高所から地表を見て、地表の状況を調べることを意味します。

向井田氏曰く、衛星やセンサには主に3つのカテゴリがあり、「光学センサ」やSARデータなどの「レーダー」、さらに温度や二酸化炭素量、風を観測する「環境観測センサ」に大別できます。

各データの特性の解説に続き、「Tellus」に対する期待をこんな風に語ってくれました。

「これからのリモートセンシングは衛星の基数がさらに増えていくことにともない、膨大な観測データを人力で処理するのが困難になるでしょう。そのため、『Tellus』のようなデータアクセスをしやすくするプラットフォームやAIを使ったデータ処理の自動化などの注目度はますます高まっていくでしょう」

3種の衛星、センサを比較。一番左の光学センサは馴染みがあるが、レーダーや環境観測センサを活用するにはそれぞれの特性の理解が不可欠 Credit : RESTEC

最後に「Tellus Satellite Challenge」を主宰する株式会社SIGNATEの齊藤秀氏によるプレゼンが行われました。齋藤氏は株式会社オプトのCAOを経て、現在はSIGNATEで幅広い業種のAI開発、データ分析、共同研究、コンサルテーション業務に従事。データサイエンティスト育成および政府データ活用関連の委員に多数就任しています。

今回の「Tellus Satellite Challenge」のようなオープンイノベーションという考え方はAI先進国のアメリカや中国でも盛んに行われており、こうしたスタイルが定着しつつあると語ってくれた齋藤氏。もっとも有名なプラットフォームは昨年Googleに買収されたアメリカの「Kaggle」で、世界中のサイエンティストが参加して開発技術を競い合っているそうです。

また、こうしたコンペティションの意義を3つに分けて紹介してくれました。

1つ目は、コンペに参加するユーザー同志が競い合うことで高精度AIが具現化でき、結果的に「良い物が作れる」こと、2つ目は、非常に優秀なデータサイエンティストの発掘=「良い人が見つかる」こと、3つ目は、世界的に不足しているデータサイエンティストを育成していくにあたり、勝者から学べるため「勉強になる」こと。

これら3つのファクターを通じて、「衛星データ活用の裾野が広がっていく」と齋藤氏。

「Tellus Satellite Challenge」の課題をまとめたシート。SARデータはまだ認知が低いため、今回はじめて画像を目にしたコンペ参加者も多かったよう Credit : SIGNATE

(3)いよいよコンペティション受賞者を発表!

栄えある第1回「Tellus Satellite Challenge」の受賞者が発表されました! 1位は郁 青(いく・せい)さん、2位は大田哲也(おおた・てつや)さんが受賞しました。なお、3位に選出された方は当日欠席でした。

受賞に寄せて、お二方にコメントをいただきました。

――まず受賞されたお気持ちをお聞かせください。

第1回「Tellus Satellite Challenge」にて見事1位となった郁 青(いく・せい)さん Credit : sorabatake

郁さん:うれしいですね。検証に費やした日数は20日程度、毎日1時間半くらい時間を割いていました。だいたい就寝前に作業してENTERを押して、翌日結果を確認するというサイクルでやりました。

第1回「Tellus Satellite Challenge」にて見事2位となった大田哲也さん Credit : sorabatake

大田さん:僕も素直にうれしいですね。働きながらプライベートな時間を使って、平日は1~2時間程度、休日は3~4時間くらい費やしていましたね。

 

――お二方とも以前からSIGNATEに登録していたとお聞きしましたが、今回のコンペの参加理由や課題について感じたことをお聞かせください。

大田さん:KAGGLEで画像コンペに参加したことがあって、その手法を活用できると思ったので参加しました。課題が地震の土砂崩れの検証だったので、社会的にも意義がある取り組みだと感じました。

郁さん:最初に衛星画像を見たとき「これは人間の目で判別できるのかな?」と思いました。SIGNATEの他のコンペで優勝した経験もあるんですが、今回の課題は難しいぶん、やりがいがあると思いました。

 

――課題を検証するにあたってどんなことをしたんでしょうか?

郁さん:地震前と地震後の2枚の画像から「点群の移動」を計算して、それをディープラーニングに入力して、土砂崩れの有無を判断しました。

大田さん:流行っているAIのモデルを取り入れたり、エリア全体を見て土砂崩れが起きそうなところを推測してそれもモデルに組み込むようにしました。

今回のコンペは544人が参加し、1位の郁さんの正答率はおよそ30%。その数字から、いかに今回の解析が難しかったのかがお分かりいただけるのではないでしょうか。郁さん、大田さん、受賞おめでとうございました!

受賞者の左側が郁 青さん、右側が大田哲也さん。1位の郁さんには100万円、2位の大田さんには60万円が進呈された Credit : sorabatake

(4)まとめ

最後に、登壇した3氏によるパネルディスカッションが行われました。

コンペティションの結果についてSIGNATEの齋藤氏は「今回はじめてSAR衛星データを扱ったんですが、本当に難しくてパっと見では何か分からない。にもかかわらず、正答率が30%というのは、かなり高い数字だと思いました」と、30%という数字はけして低いものではないとのコメントがありました。

そして話題は、第2回の「Tellus Satellite Challenge」へ。年明け開催を予定しているとのサプライズニュースが発表されました!

使用するデータは「先進的宇宙システム(ASNARO-1)による高分解光学データ」。

質疑応答のなかでも「『ASNARO-1』はTellusで使用できるようになりますか?」と質問が上がるほど、注目のデータです。

回答は「コンテストで使用するデータは基本的には使用する予定です」というものでした。

Credit : sorabatake

「ASNARO-1」の光学画像の地上分解能は最高50cmと、車が判別ができる程度の高分解能。コンテストのテーマはまだ秘密・検討中とのことでしたが、どんなコンテストになるのか今からとても楽しみです。

第2回の「Tellus Satellite Challenge」、そして以前こちらの記事(めざせ!衛星データサイエンティスト「Tellus Satellite Boot Camp」全国5か所で開催!https://sorabatake.jp/102/)で紹介した衛星データ活用技術者養成講など、来年は新年早々から衛星データに関連する注目イベントが目白押し。

衛星データに興味がある方、データサイエンティストになりたいと考えている方はぜひコンテスト、トレーニング情報にご注目ください!

※第1回「Tellus Satellite Boot Camp」東京会場以外の応募締め切りはすでに終了、東京会場も1月10日までが応募締め切りになります。この東京会場は、50名の定員数に対して、すでに500名以上の応募が集まっています。参加者は抽選で選ばれるので、まだの方にもチャンスはあります。気になる方はぜひご応募ください。

 

■第1回「Tellus Satellite Boot Camp」の東京会場の開催場所・日程はこちら
日時:2018年2月9日(土)、10日(日)
開催場所:DMM.makeAKIBA
Tellus Satellite Boot Camp【東京会場】
応募ページ https://tsbc-tokyo0209.peatix.com/

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