宙畑 Sorabatake

ビジネス事例

ロケット打上げを観測できて、星も綺麗な場所を探したら、熊本で1箇所だけ見つかった!

衛星データを活用したビジネスアイデアの検証を進める宙畑編集部。星が綺麗でロケットの打ち上げも観測できる場所を衛星データをもとに探した結果……

夕日が海に沈む場所、田んぼが視界一面に広がる場所、満点の星空が観れる場所……といった、お好みのロケ地を探せるサービス「撮れるんです」の事業検証を進める宙畑編集部。

果たして、衛星データやその他データを駆使すれば、既存のロケ地データベースに載っていない未発見の素晴らしいロケ地を見つけることができるのか。

本記事では、衛星データを活用して見つけたロケ地の解析結果を紹介します。

※記事内で解析結果を紹介しておりますが、現地に赴かれる場合は最新の情報や交通アクセス、注意事項を確認の上、自己判断で訪問をお願いいたします。

前の話はこちら

(1)今回発見したいロケ地の条件

今回、宙畑が探すロケ地を探すのは熊本県。ロケ地の条件は、以下4つの条件を満たす場所と設定してみました。

・星がきれい。天の川も肉眼で観測できる
・標高が高い(空気が澄んでいると想定)
・晴れている割合が高い
・種子島から打ち上げられるロケットを観測できる

これらすべての条件を満たす場所が見つかると、以下のような素敵な映像を撮影できるロケ地であるはずです。

キャプション)昼間にロケットの打上げを楽しんだ後は、夜に天体観測を満喫……
Credit:Tomohiro Sugaya

……ぜひ、見つけたい!

ということで、さっそくロケ地探しを始めます。

今回、ロケ地探しの解析にご協力いただいたのは、俺人さん(@Oregin2)です。
俺人さんは、宙畑記事「Kaggleランカーの9人に聞いた、2020年面白かったコンペ9選と論文9選」でも回答いただいたほか、衛星データ解析コンペSolafuneの「衛星画像から空港利用者数を予測するコンペ」で2位になるなど、その他機械学習コンペにも積極的に参加されています。

(2)ロケ地探しの手順

では、具体的にどのようにロケ地を探したのか。大きく分けて、以下の4ステップになります。本記事では③までが完了し、その内容を紹介します。

1.撮影利用実績があるロケ地の特徴把握
2.発見したいロケ地の条件を、地理空間データで表す
3.解析
4.実地調査

簡単に4つのステップについて紹介します。

1.撮影利用実績があるロケ地の特徴把握

まずは、撮影班が訪れるロケ地にどのような場所が選ばれるのか、その特徴を探ります。いかに景色が最高な場所であっても、ロケ地に必要な設備がなければ、意味がありません。

そこで宙畑編集部が行ったのは、文化庁が運営する「全国ロケーションデータベース」の一覧で、撮影履歴が残っているものと残っていないものを分類し、履歴があるものの特徴を調べること。

ロケ地としての最低限の条件を担保したうえで、最高のロケ地を探します。

2.発見したいロケ地の条件を、地理空間データで表す

次に行うのは、先に述べたロケ地に求める条件をどのようにデータを使って解析するかを言語化するステップです。

今回、4つの条件それぞれをどのようにデータで解析をかけるか、言語化した結果が以下になります。

・星がきれい。天の川も肉眼で観測できる

→天の川が見える、またはそれに相当するとコメントがある天体観測スポットをリストアップ
→リストアップした天体観測スポットの平均的な暗さを衛星データから算出
平均的な暗さ以下の場所を絞り込み

・標高が高い(空気が澄んでいると想定)

→リストアップした天体観測スポットの標高を取得し、適切な標高ベンチマークを確定
設定した標高以上の場所を絞り込み

・晴れている割合が高い

→雲がない日が多い
→気象データから特定の期間の雲がない日照率を算出
51%以上晴れている場所を絞り込み

・種子島から打ち上げられるロケットを観測できる

→種子島から打ち上げられたロケットの高さと、特定地点の間に視界を遮る障害物がない
2地点間を結ぶ直線の標高データを作成し、可視・不可視を判定
可視と判定された場所を絞り込み

詳しくは「富士山が見える場所はどこまで?標高データから解析!」をご覧ください。

3.解析

1,2でやることが決まったらいよいよ解析です。

ロケ地の前提となる特徴がある場所を理解したうえで、4つの条件を満たす場所をピックアップします。

4.実地調査

ピックアップして終わりだと、本当にその場所がロケ地として最適なのか分かりません。実際に行ってみて検証する必要があります。

検証したうえで、ふさわしくなかった場合は、どのような要素を解析に考慮する必要があったのかを再考する必要があります。何事も一回の実験で正解がでてきたらそんなに簡単なことはありません。

以上、ロケ地を探す4つのステップを紹介しました。では、いよいよ解析のステップに進みましょう。

(3)現在利用されているロケ地の特徴把握

まずは、撮影利用実績があるロケ地の特徴把握の結果から。

全国ロケーションデータベースの中でも、撮影実績があるロケ地のページの特徴を解析してみた結果が以下になります。

解析した結果、撮影履歴の「あり」、「なし」を判定する機械学習モデルが重要視した特徴量は「ご利用条件あり」でした。また、第3位に撮影可能時間ありが来ていることからも、しっかりと管理されている場所で撮影を行いたいという意図がうかがえます。

また、トイレがある場所、駐車場がある場所が撮影履歴があるロケ地の特徴として出てきました。

考えてみれば、ドラマ制作や映画制作を行うためには様々な機材が必要で、車での移動が必須であることが多いでしょう。また、トイレがなければ……と言葉にするまでもありません。

とはいえ、衛星データから駐車場やトイレがある場所を探すことはできません。

そこで考えたのが、地名で「展望台」「公園」「高原」「神社」など、高いところにある場所で、駐車場やトイレもありそうな場所をまず洗い出し、そこから先の4つの条件で絞り込みを行うという方法です。

そうして、ベースとなるスポットを地名情報を頼りに洗いだしたところ、669箇所見つかりました。

(4)4つの条件を満たすロケ地候補の解析結果

では、669箇所から4つの条件を満たす素晴らしいロケ地は見つかるのか。ひとつずつ解析していきます。

・星がきれい。天の川も肉眼で観測できる

今回、主にインターネットを利用してリストアップした天体観測スポットは全75スポット。

これらのスポットの夜間光の輝度の平均値を出したところ、約0.41となりました。つまり、今回絞り込むのは熊本の夜間光の輝度が0.41以下の場所となります。

そして、熊本全体の夜間光データは以下のようになります。

Credit : Earth Observation Group, NOAA National Geophysical Data Center.

熊本市のある都市部は明るい場所が多く候補から外れそうですね。そして、夜間光データをもとに絞り込んだ結果が以下の66箇所となりました。

Credit : JAXA,さくらインターネット

・標高が高い(空気が澄んでいると想定)

続いては標高データによる絞込です。天体観測スポットの情報を参考にしながら、600m以上である場所が空気が澄んでいるとエイヤで決めてみました。

実際に600mで空気が澄んでいるか否かは、解析結果や実地調査をもとに判断してみたいと思います。

そして解析した結果がこちら。53箇所見つかりました。

・晴れている割合が高い

続いては晴天率が51%以上ある場所の絞り込みです。

宇宙データであの時あの場所の天気を調べてみよう! 常磐公園の去年6月の晴天率は60%? 衛星データ解析技術研究会講演資料」に、Tellusを用いた晴天率を算出する方法がありました。

こちらを参考に、晴天率51%以上のスポットを絞り込んだ結果がこちら。408箇所と多く見つかりました。

・種子島から打ち上げられるロケットの打上げを観測できる

続いては、種子島からロケットの打上げを観測できるスポットの絞り込みです。今回は、ロケットが5km以上打ち上がったと仮定した場合の可視・不可視を判定してみました。

その結果がこちら。全部で58箇所見つかりました。

熊本の南東部、天草に行けば、種子島からのロケット打ち上げが見えるポイントが多いようですね。実際に天草から打ち上げが見えたという動画の投稿もありました。

解析結果はある程度正しいと言えそうです。

・4つすべての条件を満たす場所をプロットした結果

ここまでで、4つの条件を満たすスポットは少なからずあることが分かりました。

いよいよ、すべての条件を満たす場所があるかの結果発表です。

なんと、669箇所あった候補地が1箇所に絞られました。

熊本県美里町にある「二本杉展望所」という場所のようです。この場所に行けば、天体観測もできて、ロケットの打上げも楽しめるかもしれないというわけです。

ちなみに、ロケットの可視エリア判定を抜いた場合、候補地は以下の6地点になりました。

ぜひ、天体観測と合わせて、候補地巡りをしてみたいものです。

(5)実証……ではなく、天文ファンが集まるイベントで検証結果を発表してみた

とはいえ、今はコロナ禍……実際に熊本に言って視察に行くことはできません。

そんなことを考えていた時、天文を仕事・趣味とする方が多く集まるオンラインイベント「星と宇宙の夏ライブ2021」に登壇する機会をいただき、今回の天体観測スポットを探す方法を話してきました。

果たして、このような探した天文ファンの方々は興味を持っていただけるのでしょうか。

お話した内容はこちらで確認ができます。興味がある方はぜひご覧ください。

後日、運営の方から以下のようなコメントをいただきました。

・興味深い活動でした。そうやってみつけた好地を荒らさないよう、観測する際の注意事項(実際のアクセス)もまとめるようにすると、より良い活動になるかと思います。
・衛星データの活用はすばらしかったです。大変興味がわきました。
・衛星データが無料の時代なんですね。新しい世界をしりました。ありがとうございました。

また、このような新たな追加データの参考にもなるコメントも。

空の暗さ、標高、晴天率。これに夜間晴天率が加わってDATAがより詳細になるといいですねー。

昼の晴天率と夜間の晴天率はたしかに違うと言います。次は夜の時間帯の気象に絞って解析を加えることでより良いスポット探しができるかもしれません。

(6)次回予告

次は、今回の解析結果をもって、企業、または地方自治体にヒアリングを実施し、サービスのアップデート案を検討します。

果たしてこの解析結果にどのようなフィードバックがあるのか、宙畑編集部としてもとても楽しみです。