宙畑 Sorabatake

ビジネス事例

誰も知らない魅力を発見、ロケ地探しに衛星データ活用! 熊本のマイ聖地発掘チャレンジ~ヒアリング編~

衛星データを活用したビジネスアイデアの検証を進める宙畑編集部。ユーザーの顔が見えないという課題を解決するため、初心に帰ってビジネスアイデアのヒアリングを開始しました。

宇宙ビジネス起業連載vol.4『宙畑編集部、投資家ピッチに挑戦』」にて、株式会社 iSGSインベストメントワークスの五嶋さんにサービスピッチを行い、ボコボ……たくさんの貴重なアドバイスをいただいてから早半年。

あれから宙畑編集部は、各メンバーが自身の考える衛星データを活用したサービス検討を進めています。

本記事は、宙畑編集部の中村が新しく事業検討を進めるサービス「撮れるんです」の検証過程を紹介するものです。

まずは「撮れるんです」がどの様なサービスか、また、実際にニーズはあるのか?をヒアリングした内容を紹介します。

(1)お好みのロケ地探しサービス「撮れるんです」とは

「撮れるんです」は一言で言えば、カメラマンやドラマ制作会社といった、特定の場所で撮りたい何かがある個人・企業が、撮りたい場所を衛星データを用いて探せるサービスです。

例えば、宙畑ではこれまでにも、いくつかの○○ができる場所を探すという取り組みをしています。

宙畑による衛星データを活用した○○探しの一例

元々は、宙畑編集部のメンバーが天体観測が好きだったり、ロケットが見える場所を探したい!、妖怪を探してみたいといった、個人の興味や欲望から生まれた企画。ここで分かったのは、日本には観光名所と言われている場所以外にも、意外な場所が自分が求めるスポットかもしれないということ。

このような使い方は、カメラマンやテレビ番組の制作会社といった、撮りたい何かがあり、かつ、できれば誰かが撮影した場所とは違う場所に行きたいというモチベーションがある方々のお役にも立てるのではないかと考えました。

(2)「撮れるんです」の想定利用者を整理

五嶋さんからのアドバイスで宙畑編集部のほぼ全員が言われたのは「ユーザの顔が見えない」ということ。

そこで、まずはユーザを整理し、本当にニーズがあるのかをヒアリング。

最初に想定していた「撮れるんです」のユーザは
・プロカメラマン(63970人)
・テレビ放送事業者(127社)
・映画監督(700人以上)※今回ヒアリングできず……
です。

(3)本当に需要ある? 知り合いのカメラマン、テレビ局ディレクターに聞いてみた

まず話をうかがったのは、カメラマンの知人2名と、某テレビ局に勤めるディレクター経験のある友人1名です。

まず、カメラマンの知人2名に「撮影したい風景はありますか? 平らな場所、山と湖が背景な場所など、『衛星データからカメラマンの方が撮りたい場所探す』サービスを検討してます」と質問。

すると、さっそく以下のような回答が。

「観光地みたいなみんなが知っているところではなく、こんなところに絶景がみたいなのがあればいいですね。」

「仕事でお金かけられるところは専門の人がいるんですが、作品撮りとか規模の小さい撮影だとあると助かるかもしれません!

専門の方は、病院とか学校のシーンを使いたいとなったら許可取ったりスケジュール調整したり、自然の風景もテレビや広告のための撮影になると市とかに許可とったり……そのような仕事も含めてやっていると思います。」

個人で活動されているカメラマンの方に聞いたこともあり、いわゆる観光地や知られた絶景スポットではなく、作品のための穴場探しに使えるならば気になるかもしれない。また、テレビの撮影や広告を撮影を行うためのロケ地探しはどうやら専門職があるようですね。

次に、某テレビ局に勤めるディレクターの友人に久しぶりの連絡。

「テレビ局で働きながらロケ地探しをする際に困ったことってありますか? 例えば、『〇〇を撮影したい!』となったときになかなかいい場所が見つからないなとか。衛星データを使えばお好みのロケ地探しのお手伝いが簡易的にできるかもなーと思い立って急に連絡した次第です」と質問。

すると、

「困る事といえば、街や地域の全景を撮れる場所を探すことかな。地元のタクシーのおじちゃんに聞いたりして探すこと多くて、高台とか、ビルの屋上とか。

撮りたい景色は町によっていて、瀬戸内海に面した地域なら海まで含めて全景に収めたいし、都市ならビル群、工業地帯なら工場とか見下ろせる場所探す感じ。

地味に許可取りが大変で、ニュースとか報道系のロケだと、ほんとにその日に探すし、番組ロケとか旅番組だと日程に余裕があるから事前にリサーチしに行くのだけれど、探すのは意外と苦労したりする」

街ロケ番組にとっては、街の全景が撮れる場所を探すことが多く、探すのは大変で、何よりも許可取りが大変とのことでした。

宙畑では標高データを活用して「神戸の100万ドルの夜景の実証」をしたり「ロケットの打ち上げを観測できる場所」を探したりと、衛星データx見通しは何度か解析を行ってきたので、なんらかの方法で求める撮影スポット探しが出来るかもしれません。

種子島でのロケット打上げが見える場所をマッピングした結果

また、当たり前ですが、テレビのロケ地探しと言っても、番組のジャンルによってニーズが違いそうです。

そこで、次にお話を伺ったのは、日テレR&Dラボチームの皆様です。このヒアリングを通して「撮れるんです」の形が大きく変わる可能性が……。

(4)本当に需要ある? 日テレR&Dラボに「撮れるんです」を提案した結果

「撮れるんです」のサービスブラッシュアップのために、さらなるヒアリングを重ねようと思っていたところ、ちょうど日テレR&Dラボのnoteを発見しました。

日テレR&Dラボは、日本テレビに2019年6月に出来た新設部署で、「社会環境・生活者・テクノロジー・メディア・コンテンツや広告関連業界の変化など、”これからのニーズ”をリサーチしながら、日テレらしい社会への提供価値を探求していく」というミッションのもと、「日テレがテレビ番組の放送以外でもっとやれること、未来にむけてやるべきことを考える」チームとのこと。

チームメンバーも以下のように、ドラマ、バラエティ……と様々なジャンルの番組制作に携わった方々が集まっているそう。

思い切ってTwitterでご連絡してみたところ、ロケ地探しについてお話を伺えることに。

ヒアリングを行った結果、

「ドラマのロケ地探しは、基本的に東京都内が多く、ロケ地探しと許可撮りをする専門の方がいる。また、基本的に許可を得られるところを知っているので、新しい場所を探したいというニーズはそこまでないかもしれない。地方のロケ地探しであれば、専門の方も探すケースはあるかもしれないが、聞いてみないと分からない」

「むしろバラエティ番組の方が、海で大物を狙う企画をするときに、少しでも釣れる可能性を高めるため、また、釣れる確度をあげる演出のために衛星データが使えるかもしれない」

といった、ロケ地探しのリアルやバラエティ番組で使える可能性を教えていただきました。

たしかに、巨大魚釣りといった企画は釣れなかった場合の撮れ高が少なくなったり、仮にボツとなってしまう場合はコストだけがかかるということも……? これは宙畑でも衛星データを利用した海釣りをして大漁報告ができたこともあったり、お手伝いができそうです。

2019年に衛星データから海水面温度データを見て漁場のアタリをつけた結果、大漁報告できた様子

そして、今回のヒアリングでもっともありがたかったのが、

「ビジネスとしてロケ地探しにお金をテレビ局が払うかと言われたら正直まだピンとこないかもしれない」

と率直なご意見をいただけたこと。また、

「ロケ地を探しについては、映画やテレビドラマ、CMなどのロケーションを誘致し、撮影がスムーズに進行するようサポートする非営利団体であるフィルムコミッションを見てみると良いのでは。フィルムコミッションは地方自治体の観光誘致を担う部署が管理しているケースが多く、ロケ地への撮影隊誘致は観光客を増やす方法のひとつでもあり、予算をかけて力を入れているところもありそうで、「撮れるんです」にお金を払ってでも使いたいというところが見つかるのでは」

という、「撮れるんです」のビジネス化につながるアイデアまで逆提案いただきました。

今回ご提案いただいたビジネスの流れをスライドにまとめてみると以下のようになります。

衛星データが新たなロケ地候補を発見し、テレビ局、映画監督、カメラマンといった人々がロケ地として使っていただくことで、ロケ地候補を発掘した地方自治体にとっては、観光客も誘致することができるという新たな「撮れるんです」の形が見えてきました。

ちなみに、日本テレビR&Dラボチームの皆様とは、このヒアリングをきっかけに宙畑で見つけた鬼が出そうな場所を実際にフィールドリサーチへ。その道中と結果が「宇宙から「鬼を探せ」!衛星データが導く東京ミステリー紀行」にまとまっていますのでぜひご覧ください。

次回予告~衛星データ解析で熊本県内の新たなロケ地発掘~

ヒアリングを通して分かったことは、とても当たり前の話ですが、顧客となり得るだろう方に実際に話を聞いてみないと今考えているアイデアにお金を払ってでも解決したいニーズがあるか分からないということ。

今回、当初考えていた「撮れるんです」のままでは正直ピンとこないというのは大きな一歩だったように思います。よりニーズを深く知り、サービスの具体的なイメージを固める必要がありそうです。

次回は、ロケ地探しがどこまでできそうかを具体的に知っていただくため、実際に衛星データを使ったロケ地探しの解析をしてみた結果を紹介予定。中村の生まれ育ったふるさと、火の国熊本で、ロケ地サイトに掲載されていない新たなロケ地を探してみました。

その後、実際に地方自治体で、観光を盛り上げたいロケ地管理をされている部署にヒアリング予定、お楽しみに!