宙畑 Sorabatake

宇宙ビジネス

「小国こそイノベーティブであれ」ルクセンブルク政府が30年以上、宇宙産業に投資を続ける理由_PR

いま宇宙資源が世界で注目されているのはなぜなのか。ルクセンブルク経済省 インフラストラクチャー&テクノロジー部門長のマリオ・グロッツさんを取材し、業界を牽引するルクセンブルクの戦略に迫ります。【PR】提供:ルクセンブルク貿易投資事務所

Credit : © SIP / Uli Fielitz, tous droits réservés

「ルクセンブルクのような小国が経済成長を続けるには、常にイノベーティブでいなければなりません。経済成長のチャンスがあるならば、リスクは取って出るべきです。そうしなければ、イノベーションは始まらないのです。」

こう語るのは、“宇宙資源”事業を推進する、ルクセンブルク経済省 インフラストラクチャー&テクノロジー部門長のマリオ・グロッツさんです。

西ヨーロッパに位置するルクセンブルクは、神奈川県ほどの面積の小国であるにも関わらず、宇宙にある水や鉱物などの資源を採掘する事業に国を挙げて乗り出したことで注目を浴びました。

地球からの輸送コストが何億円もかかる月面で水を発見することが出来れば、エネルギー源として高値で取引されることは間違いありません。さらに、月面や天体の土壌には、レアメタルや貴金属が眠っているのではないかと期待されているのです。

一連の取り組みはSF映画の世界の話のようにも思えますが、実は日本においても、2021年6月に、国が宇宙資源事業を推進する足掛かりとして、宇宙で採掘された資源の所有権を認める法律「宇宙資源法」が国会で成立しています。

いま宇宙資源が世界で注目されているのはなぜなのか。業界を牽引するルクセンブルクの戦略に迫ります。

(1)経済危機、そして大胆な投資が育て上げた宇宙産業の土壌

ルクセンブルクの街並み Credit : © SIP, all rights reserved

ルクセンブルクの宇宙産業の始まりは、30年前に遡ります。

1970年代の石油危機を受け、それまで国の経済を支えてきた鉄鋼業に暗雲が立ち込めました。そこで、政府は2つの産業に目を付けました。一つは、同国の代名詞と言っても過言ではないほど成長した金融業。もう一つが宇宙産業でした。

ルクセンブルク政府が支援を行い、1985年に衛星通信企業SESを創業しました。支援の内容は、政府によるSESへの直接出資と、最初の衛星を打ち上げる際に提供した当時の政府予算の5%にのぼる政府保証。SESは世界最大級の衛星通信企業へと成長を遂げました。

グロッツさんは、当時の政府のSESへの大胆な投資を英断だと評価します。

「イノベーティブなことをやりたいのなら、リスクは取らないといけないということを政治家もわかっていたのです。」

政府がSESのアンカーテナンシーになることで、衛星通信事業が拡大。そこに関連事業者が引き寄せられてきて、宇宙産業のエコシステムが出来上がっていきました。

(2)イノベーションが引き付ける多様なハイテク人材とマルチカルチャー

宇宙産業のエコシステムが出来上がったこと、また、イノベーティブな姿勢を続けることで「ルクセンブルクには今後の成長を担う多様で優秀な人材が引き付けられ、集まっている」とグロッツさんは話します。

データを扱える人材、ロボティクス人材といった、最先端分野の事業を推進するうえで、最適な人を雇用できるかは重要なポイント。ルクセンブルクには優秀な人材が集まる魅力がたしかに存在します。

象徴的な事例の一つとして、挙げられるのはルクセンブルクが欧州諸国の中で最も早く公表したデータイノベーションストラテジーです。昨今日本でもDXという言葉が様々なところで飛び交っていますが、ルクセンブルクでは、いち早く、政府が率先してデータ活用を進めています。

「データというのは、自動車からクリーンテック、スペーステックまで、いろいろな業界のビジネスモデルそのものも一遍させるくらいの可能性を秘めていると思いますので、広い意味での宇宙産業を盛り立てることにより、ルクセンブルクの国内の他のセクターもさらなる発展・展開を実現することができるのです。」

また、ルクセンブルクは、毎年11月に開催される欧州最大規模の宇宙ビジネスカンファレンス「Newspace Europe」の開催国で、宇宙ビジネスに携わる様々な企業やビジネスチャンスを探す起業家や投資家たちが世界各国から集まり、交流を深める場にもなっています。

Newspace Europe2019の様子 Credit : 井上榛香

これらのイノベーティブな姿勢を30年以上継続したルクセンブルクは現在、欧州で最も国際的な労働市場となり、国民一人当たりの言語数は3.6か国語(欧州1位)という、多様なハイテク人材が集まるマルチカルチャーな国となっています。

宙畑メモ Newspace Europe
ルクセンブルクで毎年11月に開催される欧州最大規模の宇宙ビジネスカンファレンス。4回目となる今年は、リアルとオンラインのハイブリッド形式で11月24日に開催されます。「Space Debris & Space Security / Space Traffic Management」「The business of space and the climate for investment」など、今後の宇宙ビジネスを予見するために必見のセッションが目白押しです。
※本記事の最後に宙畑読者の方限定で、抽選で5名様に当たる「Newspace Europe」の無料招待枠プレゼントキャンペーンについて記載しています。宇宙ビジネスの最先端を知りたい!という方はぜひご応募ください。

(3)宇宙資源事業に必要なカードは揃っていた

2014年、ルクセンブルク政府はグロッツさんを中心に、衛星通信事業に続く、次の事業に着手しようと検討を始めました。

「どこかの国がやっていることをそのまま真似るのではなく、ひと味違った取り組みが出来ればいいと思いました。」

調査の結果、候補に上がったのが“宇宙資源”。宇宙資源に注目する大きなきっかけはNASAと行ったワークショップでした。

「NASAとワークショップをするなかで、最初に宇宙資源が出てきたときは『ルクセンブルクがそんなことを?』と思いましたね。しかしながら、色々な側面から分析を行っていくうちに、宇宙資源事業に必要な通信技術やロボティクス技術、データ技術も全て、ルクセンブルクにはすでにあることに気が付きました。ルクセンブルクこそ、宇宙資源事業をやるべきなのだという結論に至りました。」

ルクセンブルクは、政府が10年、15年にわたって投資を行うことで、宇宙資源事業のエコシステムを育てられると見立てています。さらに、宇宙資源事業に注力することで、宇宙ロボティクスの開発が地上の製造業に応用されるといった、ほかのセクターへの波及効果が期待されていて、経済成長のチャンスの拡大が見込まれています。

ルクセンブルク政府は、複数の宇宙ビジネス関連事業者への出資を行っています。このような投資は実際の成果を生み出すために長期的展望を必要とします。しかし政府は、根気強く、計画に沿って支援を続け、ついに出資企業の一社(Spire Global)がニューヨーク取引市場への上場を果たしました。「国民にも成果を示せる実例になった」とグロッツさんは話します。

(4)マルチカルチャーが生み出した、リーガルマインド

前人未到の宇宙資源事業への挑戦に必要なのは、技術だけではありません。

国際ルール上、月面や天体は「人類共同の財産」と位置づけられており、月面や天体からの資源採掘には、慎重にならなければなりません。

ところが、現行の国際ルールは、宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンが人類初の宇宙飛行を成功させた数年後に成立したもの。当然、宇宙資源採掘を想定して策定されたものではありません。事業推進と並行して新たな法的枠組みを構築が求められます。

高いハードルのように思えますが、ルクセンブルクからすれば、自国のポテンシャルを活かせるチャンスでした。

「法律の解釈や各国の利害関係を超えて、新たな共通の枠組みを取りまとめる役割は、私たちに向いています。なぜなら、ルクセンブルクは中立的な立ち位置の国ですし、国際パートナーと協調しながら取り組むことは、DNAレベルで私たちに組み込まれているのです。

文化も人材もマルチな環境なので、海外の政府や投資家、事業者に対してもオープンで、共同で何かを取り組みやすいというのは、私たちの国が一線を画すポイントなのではないかと思います。」

ルクセンブルクは、2017年に自国の事業者が宇宙で採掘した資源の所有権を認める「宇宙資源法」を制定しました。同法を制定したのは、宇宙大国アメリカに次ぐ2カ国目でした。

そして2019年には、NewSpace事業者のための宇宙法整備を促進するために、国際連合で宇宙に関する政策を担当する「国連宇宙部(UNOOSA)」と資金提供協定を結び、支援を行っています。これは、国連加盟国に、国際宇宙法に沿った国内宇宙関連法令を整備・運用し、民間活動を含む自国の宇宙活動を適切に管理・監督するために必要となる法的能力の構築を支援していくもの。この支援は、特に宇宙新興国にとって、宇宙活動を責任ある、また持続可能な方法で行う一助となります。

(5)宇宙産業をさらに盛り上げるためにルクセンブルクと日本ができること

実は、日本も「宇宙資源法」を制定した国としては4カ国目と早く、ispace社やGITAI社など、宇宙資源をビジネスの舞台と捉える企業が少なくありません。また、ispace社については、ヨーロッパ支社としてルクセンブルクに拠点を置いている企業でもあります。

日本との関わりについてもグロッツさんにお話を伺ったところ、具体的には宇宙環境におけるSDGs(持続可能な開発目標)とも言える興味深いお話をいただきました。

「地上の資源は有限で、すでに様々なところで問題が発生し、問題が起きた後に解決策を話し合ってしまっている状況です。

ただし、宇宙の資源開発は今まさにこれから。つまり、宇宙では資源を最初からサステイナブルなかたちで開発していけるように、その仕組みを作り込めるのです。いずれは、この知見を地上の資源利用にも活かしていきたいと考えています。」

そのためにも「長期的に特に重要性が高まるリーガルフレームワークで、お互いの理解をすり合わせるためのディスカッションが重要だ」とグロッツさんは話します。

実際に、ルクセンブルクと日本は2017年に、宇宙資源の探査と商業利用の機会探るための覚書に同意しています。国際的な法的枠組み策定に向けて、お互いの理解をすり合わせていくことで、さらに宇宙ビジネス市場が盛り上がることが期待されます。

(6)抽選で5名様に「Newspace Europe」無料招待枠プレゼント!

宙畑読者の方のために、ルクセンブルク政府より「Newspace Europe」にオンラインで参加できるスタンダードチケット(200ユーロ)の無料招待枠を5名分いただきました。

Credit : Newspace Europe

応募資格は「宇宙ビジネスの動向やルクセンブルクに関心のある18歳以上の個人」であること。ぜひ参加してみたい!という方は「宙畑を読んで応募しました」というタイトルで、以下の内容を明記の上、11/12(金)17:00までに「tiotokyo@mae.etat.lu」宛にご連絡ください

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応募者には11月16日(火)に抽選結果をお知らせ。当選者には、11月22日(月)に招待コードをお送りします。

提供:ルクセンブルク貿易投資事務所