ロシアの衛星破壊実験(ASAT)で1500以上のデブリが発生。外務省はガイドライン違反を指摘【宇宙ビジネスニュース】
【2021年11月22日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
11月15日、ロシアが軍事衛星「Cosmos 1408」の破壊実験(ASAT)を実施しました。その結果、追尾できるだけで1,500個以上のスペースデブリが発生したと見られます。これに対して各国の政府や関連企業が声明文を公開しています。
衛星破壊実験(ASAT)とは
衛星を意図的に破壊する実験は、衛星破壊実験(Anti-Satellite Test 通称ASAT)と呼ばれています。これまでに、ミサイルによるASATは、アメリカ、旧ソ連、中国、インドによって実施されたことがあります。
アメリカは2008年に地上に落下する危険がある衛星を追撃しましたが、その際は「デブリの発生を最低限に抑える」としていました。
ロシアのASATに対する米国・国務長官の声明「ロシアによる無責任な行為に対応していく」
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、今回の破壊実験により今後も数十万個のデブリが発生する可能性やそれがISSに滞在する宇宙飛行士に危険を及ぼすことを指摘する声明文を発表しました。
実際に破壊実験が行われた後、ISSに滞在している宇宙飛行士たちは、一時的に帰還用のカプセルに避難しなければなりませんでした。
また、ブリンケン国務長官は宇宙開発国に対して、危険な破壊実験を行わないよう呼びかけを続ける考えを示しています。
「同盟国やパートナーと協力して、ロシアによる無責任な行為に対応していきます。 私たちは、宇宙開発に取り組む全ての国に対し、ロシアが行ったような危険で無責任な破壊実験を行わないように呼びかけます」
ロシアのASATに対するNASA長官の声明「自国の宇宙飛行士をも危険にさらすとは考えられない」
ブリンケン国務長官に続いて、NASAのビル・ネルソン長官も声明文を発表しました。
「ブリンケン長官と同様、私もロシアの無責任な行動に憤慨しています。有人宇宙飛行の長い歴史を持つロシアが、ISSに滞在しているアメリカや国際パートナーの宇宙飛行士だけでなく、自国の宇宙飛行士をも危険にさらすとは考えられません。ロシアの行動は無謀で危険であり、中国の宇宙ステーションにいる宇宙飛行士をも危険にさらしています」
「すべての国には、ASATによる意図的なスペースデブリの発生を防ぎ、安全で持続可能な宇宙環境を育成する責任があります」
ネルソン長官は、ISSに滞在する宇宙飛行士の安全を確保するために、デブリの監視を続ける考えです。
ロシアのASATに対する日本・外務省の声明「ロシアの行為はガイドラインに違反」
ロシアの破壊実験に懸念の声を上げたのは、アメリカ政府だけではありません。11月18日は、日本外務省は報道官による破壊実験についての談話を発表しています。
外務省は、今回の破壊実験は2007年にロシアを含む国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)加盟国の全会一致で採択された「スペースデブリ低減ガイドライン」の内容に違反すると説明しました。その上で、破壊実験に対する懸念を表明し、ロシア政府に対して今後このような実験を行わないよう求めています。
宇宙関連企業の間でも、声明文を発表する動きが広がっています。
国内では、スペースデブリ除去サービスを計画するアストロスケールや、ロケットや衛星がデブリ化するのを防ぐ装置の開発に取り組むALEが声明文を発表しました。
「スペースデブリ低減ガイドライン」には法的拘束力がなく、対策は各国の自主的な取り組みに委ねられている状況です。そのような中で、各国政府や企業が意見を発表することは、ロシアによる今後の破壊実験やロシアに続いて破壊実験を実施する国が現れるのを抑制する効果が期待されます。
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参考
Russia Conducts Destructive Anti-Satellite Missile Test
NASA Administrator Statement on Russian ASAT Test