H3ロケットの初打ち上げが再延期。「信頼性高く仕上げるための改良」【宇宙ビジネスニュース】
【2022年1月24日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
1月20日、JAXAは2021年度中に予定していたH3ロケット試験機1号機(TF1)の打ち上げを見合わせると発表しました。
開発中のエンジン「LE-9」に新たな不具合
H3ロケット試験機TF1は当初、2020年度中の打ち上げを予定していました。
ところが第1段エンジンとして新たに開発中のLE-9の、タンクから燃焼室に推進剤を供給する回転機器(液体水素ターボポンプ)のタービンの一部に亀裂やひび、燃焼室の壁に小さな穴が生じているのが確認され、設計を見直すためにTF1の打ち上げは2021年度に延期されている状況でした。
原因究明と対策のために振動試験や燃焼試験等を進めた結果、不具合を改善する対応策が確立されました。一方、新たにターボポンプのタービンの土台部分に振動(フラッタ)が生じる不具合などが見つかり、TF1の打ち上げは延期されることとなりました。
確認された不具合は、打ち上げの失敗に直結するような致命的な現象であると断定されているわけではありませんが、H3ロケットのプロジェクトマネージャ岡田匡史氏は21日に開催された記者会見で
「我々(JAXA)にはエンジンを極めて信頼性高く仕上げるという責任があると思っていますので、その基準に照らし合わせたときに改良すべきであると思っております」
と説明しています。
H3ロケットの前身であるH-IIAロケットの打ち上げ成功率は97.8%。世界的にみても高い打ち上げ成功率をH3ロケットでも実現させるべく、着実な道を選んだのだと見受けられます。
だいち3号・4号の打ち上げスケジュールはいかに?
現在は複数の対応策を検討している段階であると言い、TF1の打ち上げスケジュールは明示されていません。
H3ロケット試験機1号機には先進光学衛星「だいち3号(ALOS-3)」、以降も先進レーダ衛星「だいち4号(ALOS-4)」が搭載して打ち上げられる予定です。
これらの衛星の打ち上げについて、H3ロケットの岡田氏は
「(衛星の)データを使われる方や運用される方など色々な方がいらっしゃいますので、丁寧に話をしながら調整をさせていただく、まさにその最中にあります。詳細に、丁寧にご説明させていただきながら進んでいきたいと思います」
と答えました。
一般的にロケットは計画的に製造されるものです。相乗り打ち上げが可能な超小型衛星はロケットを変更するケースも出てきていますが、大型衛星の打ち上げる場合はロケットを変更・調達するための調整は、「簡単ではない」と岡田氏は言います。
H3ロケットの開発状況に今後も注目が集まりそうです。