ispaceの月面着陸船が2022年末頃に打ち上げ。7つのペイロードを搭載予定【宇宙ビジネスニュース】
【2022年1月26日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
1月25日、月面探査を計画するispaceがランダー(着陸船)の打ち上げを2022年末頃に予定していることを開発進捗報告会で発表しました。
月面にペイロードを運ぶランダーの開発状況
ispaceの前身「HAKUTO」は、月面探査レース「Google Lunar XPrize」に参加する目的で結成されたチームです。インドの「チームインダス」が開発したランダーと調達するロケットに相乗り打ち上げすることで、2018年にローバー(探査車)を月面で走行させる計画でした。
ところが、チームインダスはロケットの調達に失敗。ランダーの開発をチームインダスに任せていたことから、打開策を見つけられないまま、2018年3月にレース終了の期限を迎えました。
その後、ispaceは独自にランダーを開発し、月面探査を続けることを表明。2021年7月には、ランダーの熱構造モデルの環境試験を完了させ、ドイツでフライトモデルの組み立てを開始したことを発表していました。
宙畑メモ フライトモデル
フライトモデルは実際に打ち上げるモデルのことです。衛星製造においては、熱構造モデルや電気試験などを行うエンジニアリングモデルなど、それぞれの試験をするために必要な機能を搭載した機体をいくつか製造します。
現在、組み立て作業は最終工程に入っており、2022年春頃までにペイロードの統合が完了する見込みです。環境試験を実施した後に、ランダーは打ち上げ予定地であるアメリカに輸送されます。
ランダーにはJAXAとタカラトミーらが共同開発した小型ロボットやUAE宇宙機関の月面探査ローバーを含む7つのペイロードが搭載され、2022年末頃に打ち上げられる予定です。
2度目の打ち上げは2024年。自社開発のローバーを搭載
開発進捗報告会では、ランダーの打ち上げに続き、開発中のマイクロローバーを2024年にispaceのランダーを使って打ち上げることが発表されました。当初ローバーの打ち上げは、2023年に予定されていましたが、社内外の状況を勘案して時期を変更したということです。
マイクロローバーは、ルクセンブルク宇宙機関(LSA)が主導するLuxIMPULSEプログラムの一環として、LSAとの共同資金で開発が進められています。さらに、マイクロローバーで取得した月面データの解析についてもルクセンブルク拠点を中心に行われる予定です。
ispaceの経営陣はルクセンブルクが宇宙資源事業への参入を政策として掲げていることを説明した上で、このように説明しています。
「データは宇宙資源開発で非常に重要なものであると考えていることもあり、ルクセンブルクでの活動を中心としています」(代表取締役 袴田武史氏)
「データ解析は我々の長期的なコアコンピタンスになると考えていますので、ヨーロッパから広げていく、日本でもそういう活動(月面のデータ解析)を取り入れながら大きくしていく。そういう戦略のスタートとして、今ルクセンブルクで活動しているという状況です」(CTO 下村秀樹氏)
また、2024年に打ち上げられるランダーに搭載可能なペイロードの容量はまだ残っており、搭載を希望する組織との交渉が行われている最中だといいます。
ランダーによる輸送費用について、ispaceの代表取締役 袴田武史氏は
「他社とだいたい同じくらいの価格。これまでは1kgあたり数十億円程度かかるようなイメージでしたが、我々民間企業は大きくコスト削減し、利便性を高め、(従来の)数分の1の価格になっているのではないかと思います」
と説明しました。
月周回軌道へと投入可能なロケットを開発するSpaceXなどのベンチャー企業が登場したことで、ペイロードを打ち上げるハードルが格段に下がりました。そこに民間企業が開発したランダーが加わることで、月面関連プロジェクトは盛り上がりを見せていくでしょう。
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参考
ispace、2022年末頃の打ち上げに向け、フライトモデル組み立ての最終工程に着手 HAKUTO-Rのミッション1と2の進捗報告を実施