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ブルーカーボンのエリア評価など内閣府の衛星データ利用モデル実証に5社が採択【宇宙ビジネスニュース】

【2022年7月11日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。

ブルーカーボンのエリア評価など内閣府の衛星データ利用モデル実証に5社が採択

内閣府の宇宙開発戦略推進事務局が実施する「令和4年度 課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト」の採択企業5社が発表されました。本事業は2017年から実施されており、今年で6年目になります。2022年度のモデル実証では、新事業・新サービスの創出、既存産業の付加価値向上・生産性向上、地方創生、行政利用の促進等に貢献する取り組みが採択されています。

本記事では、今回採択された5つのプロジェクトについて、どのように衛星データが活用されるのか、概要を整理しています。

衛星データによる「ずっと、400年」の先へ続く醤油原料の地産化

サービス利用者は、ヒガシマル醤油及び高田商店です。本事業では、2社が取り組んでいる2年3作(米・小麦・大豆)輪作体系の生産性向上を実証します。

具体的には、以下の2項目を達成するために、各作物の栽培状況を衛星データなどで診断します。

  1. ・作物の生育状況から土壌改良の進展や排水性の良否を評価。
  2. ・輪作体系の中で前作の栽培結果を次作に活かす一気通貫した栽培・省力化情報提供。

醤油の原料である米・小麦・大豆を2年間の輪作で収穫することで、高品質かつ安定的な供給を目指します。本事業における衛星データの利活用においては、アグリライト研究所RESTEC山口県産業技術センターがサービス提供者として名を連ねています。

水道管路の漏水リスク評価手法及び漏水調査支援ツールの実証

サービス利用者は、愛知県豊田市上下水道局水道維持課です。全国の水道管の約17%が法定耐久年数を超えていますが、水道管の点検や対策には多額の費用と時間がかかるという課題があります。

そこでDeep Learningを用いて、衛星データ・漏水修繕データ・管轄データを組み合わせた「漏水リスク評価手法」を開発します。同手法には、10段階の漏水リスクマップを実装させ、自治体が漏水調査する際の優先順位付けを容易にするとのことです。今後は現地調査を行うことで精度向上を図り、自治体の作業効率化の効果を定量的に評価します。

漏水調査支援ツールの開発には、JAXAベンチャーの天地人が開発する土地評価エンジン「Tenchijin COMPASS」を活用する予定です。また、豊田市のみの利用にとどまらず他の地方自治体でも適用可能なビジネスモデルを構築させ、3年後には10の自治体への横展開を狙っています。

カーボンニュートラルを目指す自治体と民間企業とのマッチングに向けたブルーカーボンのポテンシャル評価事業実証

地球環境を持続的なものにするために、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みが世界中で進んでいます。藻場や浅瀬等の海洋生態系に取り込まれた炭素は、ブルーカーボンと呼ばれます。ブルーカーボンの蓄積量が多く素早く吸収できる海洋生態系は、CO2の吸収量を増やすための資源として注目を集めています。しかし、世界中の海洋に存在するブルーカーボンのエリア評価が困難であり、計画立案が進行していないという課題があります。

そこで、衛星データベンチャー企業のウミトロン・上天草市・ENEOSをはじめとする民間企業が三位一体となり、ブルーカーボンのマッチングプラットフォームを開発します。

本実証では、衛星データと地上データを活用し、ブルーカーボンの蓄積量及びポテンシャル評価を行います。また大手企業や自治体へのヒアリングを行い、両者のマッチングに必要な情報の評価検証も実施します。

今回の実証で開発する事業モデルは、他地域や他企業への横展開も狙うとのことです。

光学衛星と合成開口レーダを組み合わせた乾燥費用削減情報の提供プロジェクト

サービス利用者は、スマートリンク北海道です。農業分野では、光学衛星で得られるNDVI(正規化植生指標)を用いた生育状況の監視や刈取時期の提供が多く用いられています。

しかし光学衛星を活用した際は、曇天時や降雨時には活用が出来ないという課題があります。また、刈取時期の情報提供に加え、農作業で必要になる乾燥工程で用いる農業機械の燃料費の目安を知りたいという新たなニーズが生まれています。

そこで、スマートリンク北海道はパスコと協力し、圃場単位での乾燥費用マップを提供します。具体的には、以下の4工程を本事業で実証します。

  1. ・光学衛星が取得したNDVI情報を活用した刈り取り時期の判断。
  2. ・SAR衛星データを活用し、農作物の含水分率情報を整理。
  3. ・乾燥費用マップを作成し、農作機械を使用する際の燃料費の情報を可視化。
  4. ・解析結果を農家普及協力団体へ提供し評価を実施。

小麦を栽培する約6000haの農場を例にとった場合、約840万円の削減効果を見込んでおり、農業者には150万円でのサービス提供を想定しているとのことです。

光学衛星データを活用した河道内地被分類(植生、土砂)の推定

サービス利用者は、国土交通省国土保全局管轄の河川管理者です。国は、河川管理に重要な役割を果たす河川環境基図を作成していますが、1万kmにのぼる地形情報図の作成には膨大な時間とコストを要するため、一部河川での調査しか実施されていないのが現状です。これらの課題を解決するために、光学衛星データ及び機械学習を活用し、河川管理の高度化を本実証で目指します。

本実証には、衛星データサービス企画日本工営リバーフロントスカパーJSATが、サービス提供者として名を連ねています。実証概要は、光学衛星データを教師データとして機械学習させ、河道内地被分類推定を行うアルゴリズム開発です。具体的な実証試験の内容は以下になります。

  1. ・衛星画像の教師データを作成し、自動判別精度を検証。
  2. ・地域ごとの河道内植生に応じたブロック分けを実施。 
  3. ・教師データを活用することで、植生分類の判読精度の向上に努める。
  4. ・サービス利用者である国土交通省へのヒアリングを進め、精度に関するヒアリングを実施。

本実証の成果は、今後の都道府県への横展開を想定したシステム構築へ活用される予定です。

2022年度の本事業で採択された5事業は、衛星データを単純に活用するだけでなく、実証後のサービス実装までしっかり明記されている点が特徴でした。衛星データの利活用事例が今後も増えていくことに期待です。

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参考記事

令和4年度課題解決に向けた 先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト