宙畑 Sorabatake

ニュース

【現地取材】若田さんらを乗せた「Crew-5」がISSへ。露飛行士の米宇宙船搭乗は20年ぶり。宇宙開発と国際協力の行方は?

【2022年10月6日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。

ロケットのエンジンから噴き出す炎は、自然と目で追いたくなるような不思議な魅力があります。

VABから見たCrew-5の打ち上げの様子 Credit : Haruka Inoue

10月6日午前1時、若田光一さんら4人の宇宙飛行士が搭乗するクルードラゴン運用5号機(Crew-5)を搭載したFalcon9ロケットがケネディ宇宙センターから打ち上がるのを、私(=筆者)はケネディ宇宙センターにあるスペースシャトル組立棟の屋上から見ていました。

宇宙へと打ち上がるCrew-5 Credit : Haruka Inoue

眩しいオレンジ色の炎は雲を超えて、真っ直ぐ、力強く、宇宙船を空高くまで運んでいきます。

数秒経つと「バリバリッ」という大きな音が聞こえてきました。足下からは振動も伝わってきます。ロケットが大地を蹴って、地球を飛び出して行く振動です。地球の重力を脱して、宇宙に行くにはこんなにも大きなエネルギーが必要なのかと感じさせられた瞬間でした。

そのときに思い浮かんだのは、ミッションスペシャリストとしてCrew-5に搭乗しているロスコスモス(ロシアの宇宙開発を担う機関)の宇宙飛行士アンナ・キキナさんが、10月1日にヒューストンのジョンソン宇宙センターからケネディ宇宙センターに到着した際に話した言葉です。

ロスコスモスのアンナ・キキナ宇宙飛行士(左) Credit : NASA

「私たちの後ろにはたくさんの困難があります」

キキナさんは、こう続けました。

「それは誰もが知っていることですが、みんなが幸せに暮らせるように、仕事を成功させられるように、そして一緒に興味深い仕事をして発展していけるように、人々は大きな挑戦を続けてきたのだと思います」

Crew-5の打ち上げの様子から、人々が宇宙を目指すエネルギーの強さが見えたように思えました。

NASAとロスコスモスによる座席交換

クルードラゴン宇宙船は、退役したスペースシャトルに代わるアメリカの輸送機として開発されました。2020年5月から8月にかけて実施した有人飛行試験を成功させ、同年11月に運用が開始。これまでにNASA、JAXA、ESA(欧州宇宙機関)の宇宙飛行士、そして民間の宇宙飛行士が搭乗しています。

ロスコスモスはソユーズという自国の輸送機を有していますが、2022年7月にNASAとの間で輸送機の座席交換を行う協定を締結したことを発表しました。これにより、9月21日に打ち上げられたソユーズMS-22にNASAのフランク・ルビオさん、Crew-5にはキキナさんが搭乗することが決まったのです。ロシアの宇宙飛行士がアメリカの宇宙船に搭乗するのは20年ぶりです。

国際情勢が緊迫するなかで、なぜ座席交換は実施されたのでしょうか。

7月21日にJAXAが開催した記者会見で若田さんは、2003年にスペースシャトルコロンビア号の事故が発生した後も、ソユーズ宇宙船によって絶えずアメリカの宇宙飛行士がISSに滞在し続けられた事例を挙げて、座席交換はISSを安定的に運用する上で重要なことだと説明しました。

若田光一さん。帰国記者会見にて撮影 Credit : Haruka Inoue

さらに、国際情勢の影響について若田さんは、現時点では情勢がISSの運用に大きな影響を与えていることはないと説明した上で、

「私達宇宙⾶⾏⼠たちが有⼈宇宙活動の現場でできることは、世界各国の宇宙⾶⾏⼠たちとチームワークをきちんと取ってISSの利⽤成果を最⼤化できるように⽇々努⼒するということで、この取り組みの考え⽅はこれまでと全く変わらないと思います」

と語りました。

9月30日にJAXAが開催した記者会見で、若田さんにCrew-5に搭乗するクルーメイトとの仲を聞くと、ニコリと表情を緩めて訓練期間中に好きな映画について語り合ったことを振り返りました。Crew-5の打ち上げの前日には、若田さんはツイッターでキキナさんに散髪してもらったことを報告しています。

射場へと出発するCrew-5の宇宙飛行士たち Credit : NASA

およそ半年にわたる宇宙での共同生活に向けて、クルーメイトとの信頼関係が構築されている様子がうかがえました。

国際宇宙ステーション、2024年以降ロシアの参画継続は?

打ち上げ後記者会見の様子 Credit : Haruka Inoue

Crew-5の打ち上げの後にケネディ宇宙センターで開催された記者会見では、報道陣からロスコスモスに今後もISSの運用に参加するのかどうかを尋ねる質問が目立ちました。

当初ISSの設計寿命は2016年までとされていて、参加国間で運用の継続が合意されていたのは2015年まででした。老朽化が進むISSを補修しながら、これまでに2度運用期間を延長し、現在参加国間では少なくとも2024年までの運用継続が合意されています。

そして、2021年12月にNASAのビル・ネルソン長官がISSの運用を2030年まで延長する方針を発表し、各国は継続的参加の可否を検討している最中です。

記者から挙がった「ロシアにとって、ISSの参加国であり続けることはどれほど重要なことなのしょうか。ロシアが2024年にISSの参加国から離脱した場合、有人宇宙飛行プログラムを維持できるのでしょうか」という質問に対して、ロスコスモスの有人宇宙飛行プログラム担当エグゼクティブ・ディレクターを務めるセルゲイ・クリカレフさんは、このように回答しました。

セルゲイ・クリカレフさん Credit : Haruka Inoue

「私たちは、新しい宇宙ステーションの建設を検討していて、その予備設計を開始しています。まだ最終的な決定はしていませんが、新しいインフラができるまではISSを飛ばし続けるつもりです。

新しい宇宙ステーションはどのように作られるのか、どのようなモジュールがあるのかは、まだ分かりませんが、国際的なパートナーシップを維持することは間違いないと思います」

国際協力と平和のシンボルと称されるISSがどのような役割を果たしていくのかを今後も注意深く見守っていく必要がありそうです。

宙畑編集部のおすすめ関連記事

今週の宇宙ニュース