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アクセルスペース、新サービスの実証衛星を2024年に打ち上げへ。ソニーとの共同実証計画も【宇宙ビジネスニュース】

【2022年10月21日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。

10月13日、地球観測プラットフォームを運用するアクセルスペースが新たに、実証衛星初号機「Pyxis(ピクシス)」を2024年第一四半期に打ち上げる計画を発表しました。

Pyxisのイメージ Credit : アクセルスペース

アクセルスペースは2022年4月に、衛星プロジェクトに関わる長く複雑なプロセスをパッケージ化するサービス「AxelLiner(アクセルライナー)」を発表していました。PyxisはAxelLinerの実証衛星初号機として、AxelLinerの構成要素の軌道上実証を行います。

10月13日に開催された記者発表会で語られた内容をまとめます。

脱一品物開発、汎用衛星バスシステムとは

Pyxisとは、航海用のコンパスとしても使われる「らしんばん座」の意味で、「今後の宇宙開発を進める企業への道しるべとなるように」という願いを込めて名付けられたそうです。

Pyxisにより、AxelLinerの3本の柱である、汎用衛星バスシステムの開発および軌道上実証、自動用システムの開発および軌道上実証、宇宙機製造アライアンスによる衛星製造体制の構築を行います。

AxelLinerを実現する3つの研究開発 Credit : アクセルスペース

今回宙畑編集部が注目したのは、「汎用衛星バスシステムの開発および軌道上実証」です。衛星バスシステムとは、衛星を動作させるのに最低限必要な機器類のことを指します。必要不可欠でありながら、従来は一点物として開発していたため、開発に時間がかかることが課題となっていました。

汎用衛星バスシステムを開発することで、受注から最短 1 年未満での軌道上でのビジネスサービスインをめざせるようになります。

実証衛星初号機「Pyxis(ピクシス)」 Credit : アクセルスペース

衛星汎用バスは2種類。同社の地球観測衛星「GRUS」と同等規模の汎用衛星バス「Bus-N」と、より高性能なミッションを実施できる「Bus-H」の開発が予定されています。Pyxisは「Bus-N」の実証を行います。

アクセルスペースは現在、Pyxisの試作を開発している段階です。試作の開発から得られたフィードバックを踏まえて、2023年にフライト品を製造。2023年末に衛星を射場に輸送し、2024年第一四半期にSpaceXのファルコン9によるライドシェアミッション「Transporter-10」で打上げられる計画です。

さらに、今後のスケジュールについての記者からの質問に対して、取締役CSO(最高戦略責任者)の太田祥宏氏は

「年産で50台程度の衛星を製造できるようなキャパシティを作っていきたいと思っています」

記者発表会場にて。AxelLiner実証衛星初号機プロジェクトマネージャー杉本和矢氏(右)と取締役CSO太田祥宏氏(右)

と回答し、衛星の製造体制を大幅に拡大させようとしている様子がうかがえました。

ソニーグループとの共同実証

記者発表会では、ソニーグループと共同で、バスシステムへの接続およびペイロードの開発に取り組むこと、軌道上でバスシステム実証に加えてELTRES(衛星測位システムを標準搭載し、見通し100km以上の長距離伝送性能を持つソニー独自のLPWA通信規格)を用いた通信システムの技術実証を行う計画が同時に発表されました。

ソニーグループは、衛星リモートセンシングと地上IoTセンサを組み合わせて、地球上をくまなく観測する「地球みまもりプラットフォーム」構想を発表しています。

超広域センシングネットワークについて Credit : ソニーグループ株式会社R&Dセンター

地球みまもりプラットフォームの構成技術のひとつである、衛星リモートセンシングと地上IoTセンサのデータを収集するのに必要な「超広域センシングネットワーク」は、3段階の実証が計画されています。

超広域センシングネットワークの実証 Credit : ソニーグループ株式会社R&Dセンター

フェーズ1は、地上のIoTデバイスから送信された電波をISS日本実験棟「きぼう」の船外実験プラットフォームに設置した衛星無線実験装置で受信することで、2021年12月に成功が発表されました。

続くフェーズ2がアクセルスペースとの共同検証です。ソニーグループは、フェーズ2の成果を踏まえて、地球みまもりプラットフォームの事業展開を検討する計画です。

また、共同検証のパートナー企業としてアクセルスペースを選定した理由について、ソニーグループ R&Dセンター・統括部長を務める堀井昭浩氏は、アクセルスペースの代表取締役CEO・中村友哉氏から賛同を得られたことを第一に挙げた上で

「繰り返しになりますが、自動運⽤システムです。やはりここ(運⽤)が、最終的には⼿がかかることとなりますので、そういったところをいかに簡素化して、サービスに繋げるかというところも⼀緒に模索でいることがメリットだというふうに考えております」

と説明しました。

ソニーグループR&Dセンター・統括部長の堀井昭浩氏

通常は衛星が打ち上がった後は、顧客自身が衛星の運用を行います。AxelLinerでは、アクセルスペースが衛星コンステレーション事業で培った運用の自動化技術を顧客にも提供する予定です。

自動運用システム Credit : アクセルスペース

現在は、撮影や複数衛星運用の自動化などが可能です。将来的には汎用ミッション運用の自動化や未知の異常対応の自律化も予定されています。

衛星開発や運用の専門技術が必要な作業を任せられるようになれば、企業は自社のミッションそのものに集中できるようになり、より効率的な宇宙利用が進むのではないかと見られます。

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参考

アクセルスペースの新サービス「AxelLiner」、実証衛星初号機の軌道上実証決定

アクセルスペースの「AxelLiner」実証衛星初号機Pyxisの 軌道上実証に向けてソニーグループ株式会社と共同研究を実施

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