NASAはGeoCarbミッション中止を発表。温室効果ガスの測定を行う代替ミッションの検討へ【宇宙ビジネスニュース】
【2022年12月12日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
NASAはGeoCarbミッション中止を発表。温室効果ガスの測定を行う代替ミッションの検討へ
NASAは、南北アメリカ大陸における温室効果ガスの濃度分布の可視化を目指して2018年に発足した地球科学ミッション「GeoCARB (Geostationary Carbon Observatory)」を中止することを発表しました。
GeoCarbは、大手通信衛星企業SESの子会社であるSES-Government Solutionsが開発した静止軌道衛星に、二酸化炭素、一酸化炭素、メタンなどの温室効果ガスを高精度に測定できるセンサを搭載し観測するミッションです。このセンサは、NASAジェット推進研究所が開発した地球観測衛星「OCO-2 (Orbiting Carbon Observatory-2)」の技術を基盤にしています。GeoCarbは打ち上げの遅延が発生しているほか、運用費が想定の3倍以上となっているため、より費用対効果の良い代替ミッションに引き継がれるとのことです。
NASA本部の科学担当副長官であるThomas Zurbuchen氏は、今回の発表について以下のコメントを発表しています。
Decisions like this are difficult, but NASA is dedicated to making careful choices with the resources provided by the people of the United States.We look forward to accomplishing our commitment to state-of-the-art climate observation in a more efficient and cost-effective way.
(訳:このような決断は難しいが、NASAはアメリカ国民から提供された資源を使って慎重に選択することに専念している。より効率的で費用対効果の高い方法で、最先端の気候観測へのコミットメントを達成することを期待しています。)
衛星を活用した温室効果ガスの測定は、近年注目度が増しており、様々なミッションも展開されています。JAXAが運用する「いぶき2号」は全球温室効果ガス濃度分布の解析を行っているほか、NASAが開発し2022年7月にISSに設置された「EMIT (地球表面鉱物塵源調査)」の機器は、メタンの大量排出源の特定に成功しています。
GeoCarbの意義を引き継ぐ次回ミッションに期待です。
宙畑編集部のおすすめ関連記事
【保存版】環境問題を可視化する衛星データまとめ〜環境問題の指標・世界の取り組み・利用できる人工衛星〜
GHGSatが新機能「SPECTRA Premium」を発表。世界中の6ヶ月間の総メタンガス排出量を提供【宇宙ビジネスニュース】
今週の宇宙ビジネスニュース
ispaceの月着陸船の打ち上げ成功。CEO袴田氏「月産業を拓く、リーダーシップを発揮していく」【宇宙ビジネスニュース】
SpaceXが政府機関向けの衛星サービス「Starshield」を公表。Starlinkを超える高保証の通信を実現【宇宙ビジネスニュース】
JAXA、衛星データベンチャー・天地人に出資。法改正により企業への出資が可能に【宇宙ビジネスニュース】
JAXAとアストロスケール、衛星の燃料補給事業のコンセプト共創へ。補給前提の設計でない衛星も対象【宇宙ビジネスニュース】
参考記事
NASA to Cancel GeoCarb Mission, Expands Greenhouse Gas Portfolio