H3ロケット1号機、上昇の直前で打ち上げ中止。1段機体システムが異常を検知【宇宙ビジネスニュース】
【2023年2月13日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
2月17日、JAXAは先進光学衛星「だいち3号」を搭載したH3ロケット試験機1号機の打ち上げに挑みましたが、ロケットの自動カウントダウンシーケンス中に1段機体システムが異常を検知したため、機体が上昇する直前で打ち上げを中止しました。JAXAは詳細な状況を確認中です。
打ち上げ直前で中止。何が起きた?
H3ロケット試験機1号機は、第1段メインエンジンの「LE-9」が起動した後に、1段制御用機器が補助ブースター「SRB-3」に着火信号を送出し、点火するとロケットが上昇し始める流れになっています。(H3ロケットはペイロードの重量や投入軌道によって、LE-9の基数とSRB-3の本数の組み合わせが異なり、最小形態ではSRB-3を装着しません)
ところが、LE-9は起動したものの、1段機体システムが異常を検知したため着火信号が送られず、SRB-3の点火には至りませんでした。
そのためH3ロケットは上昇せず、周辺には雲のような白煙が現れました。これはLE-9の燃焼によって発生した高温の水蒸気や発射台を保護するために噴射している水が混ざったものです。
記者説明会が実施された2月17日午後の時点では、1段機体システムが検知した異常の発生場所は調査中ということでした。ただし、プロジェクトマネージャの岡田匡史さんによると、LE-9は正常に起動していたことが検知されていたといいます。
また、LE-9は今回のように打ち上げが中止になった場合も想定して設計されていて、点検を実施したうえで、次回の打ち上げでも同じ機体を使用できる見込みです。
プロジェクトマネージャー・岡田さんが明かしたロケットファンへの想い
打ち上げが中止になったことに対して、岡田さんは記者説明会で心境をこう語っていました。
「今日の日を待っていていただいたミッションのオーナーの方や見守ってくださっていた方々がいらっしゃいますので、申し訳ないと思っていますし、我々もものすごく悔しいです」
また、記者説明会後の囲み取材で岡田さんは「プロジェクトマネージャーは、内部と外部とのコミュニケーションをしっかりとやることが大きな仕事だと思っています」と語り、ロケットの打ち上げを見ようと訪れた人々と、種子島宇宙センター内の食堂などでやり取りをしていたことを明かしました。
H3ロケット試験機1号機の打ち上げは、もともと2月12日に予定されていましたが、H-IIAロケット46号機の打ち上げ延期や打ち上げ当日の風の状況を踏まえて飛行計画を更新するシステムの確認作業が必要となったことを受けて、15日に延期。さらに天候が安全条件に達さなかったことから17日に延期した経緯がありました。
「ロケットの打ち上げを見られずに帰る方には、直接お話をさせていただいて、少しでも種子島に来てよかったなと思っていただけるようにと思っていた2日間ですから。皆さんをまた裏切ってしまったなという思いがかなり強くてですね……」
種子島地域との協議のうえ、現在設定されているH3ロケットの打ち上げ予備期間は3月10日までです。岡田さんは
「今日はこういう結果になりましたけれども、打ち上げの中止を受けて次の打ち上げをいかに、より信頼性高く目指せるかをみんなで考えていきたいと思います。もう今日から、そういう活動に入っておりますので、ぜひ皆さんそこを見守っていただきたいと思いますし、今度の打ち上げこそ、今日の天気のように晴れやかな気持ちで打ち上げに臨めるように仕上げたいと思います」
と意気込みを述べました。