【2023年3月】衛星データ利活用に関する論文とニュースをピックアップ!
2023年3月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。
宙畑の新連載「#MonthlySatDataNews」では、前月に公開された衛星データの利活用に関する論文やニュースをピックアップして紹介します。
実は、本記事を制作するために、これは!と思った論文やニュースをTwitter上で「#MonthlySatDataNews」をつけて備忘録として宙畑編集部メンバーが投稿していました。宙畑読者のみなさまも是非ご参加いただけますと幸いです。
2023年3月の「#MonthlySatDataNews」を投稿いただいたのは5人でした!
氷河の亀裂をALOS-2で見つけ、Sentinel-2で雪に覆われているか否かを判断し、Lnadsat-8で常に雪に覆われていないのかを確認したというもの。Lバンドだと積雪の下の状況が分かるのか~というのと合わせて、無料の衛星データをこれでもかと活用してる。https://t.co/0EF9pQTXlO#MonthlySatDataNews
— 🛰ナカムラトモヤ(宙畑、sorano me)🛰 (@tomoucky) March 25, 2023
高解像度画像と低解像度高時間分解能画像から高解像度かつ高時間分解能な衛星画像を生成。各画像から特徴量を抽出し、それを融合し画像を再構成する。LandsatとMODISのペアからなる2つのデータセットでテストし、他手法と比較して優位性が示せた。#MonthlySatDataNews https://t.co/j5NZeh2MWs
— まぬある (@lTlanual) March 16, 2023
教師なし深層距離学習を用いたリモセン画像向けの変化検出の論文。
従来手法である教師あり学習で発生していた大量の教師データが必要なのと学習データと判読するデータにドメインギャップがあると大幅な精度低下するという課題を解決。https://t.co/ldS3xqKoSL#MonthlySatDataNews— ぴっかりん (@ra0kley) March 19, 2023
Headland and Field Edge Performance Assessment Using Yield Maps and Sentinel-2 Images https://t.co/2gnNg6UCur #mdpisustainability @Sus_MDPIより #MonthlySatDataNews
圃場の土壌や植生を観測し、圃場の場所による収穫量の差を評価した。Sentinel2でこういう評価できるほど広い圃場、良いな… pic.twitter.com/c2Hs4dTGQI
— たなこう (@octobersky_031) March 8, 2023
受動マイクロ波放射計から雨の情報を予測する。
これまではピクセル単位もしくは近傍数ピクセルだけ考慮していたが、観測波長ごとの輝度温度をRGBのようにとらえて画像として機械学習させることで、公式と同程度の精度を達成。https://t.co/iolWoeF81U#MonthlySatDataNews pic.twitter.com/5SEZbWbcrw— むた (@MutaAzusa) March 5, 2023
それではさっそく2023年3月の論文を紹介します。
Detection of anomalously emitting ships through deviations from predicted TROPOMI NO2 retrievals
航行する船舶のNO2排出量の推定。TROPOMIとS5Pの2つの衛星データから機械学習で規制に違反する船を自動的に検出する。
気温と衛星データに基づくエチオピアでの貧困予測。空間的な貧困率には気温が最も影響を与えるらしい。
食料安全保障や環境への影響を評価するために土地利用分類情報を利用。Google Earth Engineで機械学習を用いて Classification and regression tree (CART) を実施。
スペックルノイズの多く自動での変化検出が困難なSAR画像について、空間構造の整合性と画素の不一致に基づいて、教師なしでのSAR画像による差分検出の手法を提案。レイリー仮説と連携したCFAR検出器を採用した。その結果、提案手法は誤報率を低減し、カッパスコアとF1スコアを向上させるとともに、満足のいく視覚的結果をもたらすことが示された。
単一のSAR画像から標高データを精度良く算出するためのGeometry-aware consistent constraint (GACC)という手法を提案する。
標高情報から擬似的にSAR画像を生成(して学習させることで)、単独のSAR画像から標高情報を推定する試み。
受動マイクロ波放射計から雨の情報を予測する。
これまではピクセル単位もしくは近傍数ピクセルだけ考慮していたが、観測波長ごとの輝度温度をRGBのようにとらえて画像として機械学習させることで、公式と同程度の精度を達成。
Knowledge-infused Contrastive Learning for Urban Imagery-based Socioeconomic Prediction
Urban Knowledge Graphから都市情報をモデル化して、それと都市部の衛星画像やストリートビューを突き合わせて学習させる知識注入型対比学習(KnowCL)。社会経済統計予測を行う。
Headland and Field Edge Performance Assessment Using Yield Maps and Sentinel-2 Images
Sentinel-2で圃場の土壌や植生を観測し、圃場の場所による収穫量の差を評価した。
収量マップとGoogle Earth Engine(GEE)で算出した植生指数(VI)を用いて、ヘッドランド(枕地)、圃場端、圃場中央の違いを調査した。
これらの結果から、ヘッドランドと圃場端における高い交通頻度による土壌圧縮と構造的損傷が、作物収量に悪影響を及ぼすことを示唆しています。
複数のデータを組み合わせることで様々な気候帯での降水量予測高精度化に挑戦。ERA5、ERA5-Land、TerraClimate、GPM、PERSIANN-CDR、TRMM、CHIRPSなどの複数の毎月のリモートセンシングデータセットを利用し、Google Earth Engine(GEE)プラットフォームで収集した現地測定値に対する降水パターンを評価。
Integrated Methodology for Potential Landslide Identification in Highly Vegetation-Covered Areas
植生が発達した地域の潜在的な地すべりリスクを把握する手法確立のため以下を含めた統合的な手法を検討
・地質環境解析に基づくすべりやすい地域の特定
・リモセンによる潜在的地すべりの対象地域の特定
・地質調査による地すべり把握
降雨量が植生に対してどのように影響を与えるか分析した。降雨量の変動が大きいと関連性が弱くなるとのこと。
マングローブ植林等が気候変動の回復力を促進するためにどのように機能するかを理解(NBS)すべく60年分のデータを分析
Handheld Burst Super-Resolution Meets Multi-Exposure Satellite Imagery
スマホで使われているカーネル回帰技術(kernel regression)を衛星画像に適用し、超解像を実施。様々な露光の低解像度画像からボケとノイズを除去して、高解像度化する。カーネルの融合は学習不要で、幻視がないのが利点。
EfficientTempNet: Temporal Super-Resolution of Radar Rainfall
気象系の超解像。レーダーの降雨データの時間的な超解像で10分→5分に高めるEfficientTempNet。気象系データの方が空間的にも時間的にも量が多くて均質なので、機械学習と相性良い感じがしますよね。気象データ×機械学習で記事まとめたさある。
Sentinel-1(SAR)とSentinel-2(光学)を用いた水田の検出。稲作の成長期(植生期、生殖期、成熟期)に,取得したSentinel-2のVNIR、RE、SWIRバンドと,Sentinel-1のVH、VVの偏波を組み合わせるのが水田検出精度がもっとも高くなるとのこと
高解像度画像と低解像度高時間分解能画像から高解像度かつ高時間分解能な衛星画像を生成する。各画像から特徴量を抽出し、それを融合し画像を再構成する。LandsatとMODISのペアからなる2つのデータセットでテストし、他手法と比較して優位性が示せた。
Implicit Ray-Transformers for Multi-view Remote Sensing Image Segmentation
疎なラベルを持つリモセン画像のセグメンテーションにマルチビュー画像から構成されたNeural Fieldの3D特徴とCNNの2D特徴を利用したRay-Transformerの提案。結果確認にはCARLAを用いた合成データセットとGoogle Mapの実画像を使用する。
Sentinel-5PやNOAAが公開しているオープンデータを組み合わせてクロアチアにおけるPM2.5とPM10の濃度を推定
常緑熱帯林において,様々な地上測定値と衛星データを比較・評価した。LAI-2200 plant canopy analyzer (LAI-2200)がよさそうとのことだが、いずれにせよ相関はあるものの十分な有意差はなさそう。航空機LiDAR使うと良いのでは、とのこと(だけどそれが手に入ったら苦労しないんだよなー
Deep Metric Learning for Unsupervised Remote Sensing Change Detection
教師なし深層距離学習を用いたリモートセンシング画像向けの変化検出の論文。従来手法である教師あり学習で発生していた大量の教師データが必要なのと学習データと判読するデータにドメインギャップがあると大幅な精度低下するという課題を解決。
超高解像度衛星画像における全球の水表面の検出。解像度30cmのGeoeyeやWVのデータセットを用いて、新陳や市街地の水を検出。 Pyramid consistency loss (PCL)を用いた強力なベースラインを設計。
Vehicle Detection in High-Resolution Aerial Images with Parallel RPN and Density-Assigner
航空写真に写る車両の物体検出。対象が小さく駐車場などでは密に配置されていることを考慮し、複数受容野の畳み込み層からなるパラレルRPNと密集箇所の曖昧なGTラベルを修正するDensity-assignerを提案。
画像の境界を鮮明にし、変化領域のエッジ情報をよりよく保存する仕組みを設計することで変化検出を行なった。
テキストと地上画像から航空写真を教示データなしで生成。前処理としてホモグラフィー変換でラフな航空写真を射影変換する。次にテキストと空中画像を用いて事前学習済みの拡散モデルをfinetuning。
SMAPの衛星データを使ってモデル化することで土壌水分量を推定する試み。
ピクセルベースでの農作物分類。Sentinel-2とPlanet Scopeのフュージョンの時系列データセットで、K-meand法やNearest Centroid Classifier(NCC)をベースにした手法で小麦、大麦、キャノーラなどを分類。論文内では教師あり・教師なし、どちらもの手法で検証している。
合成開口レーダ衛星データを用いたJAXA におけるインフラ監視
ALOS-2を用いたインフラ監視について、日本語でまとめられているもの。イラストや表なども用いてSARを用いたインフラ監視の仕組みをできる限り分かりやすくしているのが印象的でした。精度やコストについても言及してます。
PALSAR-1/2のデータを用いて断層の検出を行ったというもの。断層がある場所は地下水量が増える傾向がある。
Detection of Crevasses in Siachen Glacier Using Remote Sensing Satellite Imageries
氷河の亀裂をALOS-2で見つけ、Sentinel-2で雪に覆われているか否かを判断し、Lnadsat-8で常に雪に覆われていないのかを確認したというもの。Lバンドだと積雪の下の状況が分かる特性を活かしたうえで、Sentinel-2、Landsatという無料の光学衛星のデータを最大限活用している。
Development and validation of flood inundation models for estuaries
2次元流体力学モデルによる洪水域のシミュレーション結果とSARデータ(Sentinel-1)から算出した洪水域の比較による評価。イギリスでは、2,000 万人が河口付近に住んでおり、河口の洪水は同国において市民の緊急事態に対する危険性が高い自然災害のひとつです。
ICESat-2 for Canopy Cover Estimation at Large-Scale on a Cloud-Based Platform
ICESat-2/ATLASのLiDARセンサから得られるデータを用いて、国土の広い範囲における森林の樹冠被覆をマッピングしたもの。Landsat 8衛星画像、Copernicus Land Cover 2019データセットも利用している。森林の樹冠被覆は、生態学的に重要な指標です。
以上、2023年3月に公開された論文をピックアップして紹介しました。
皆様の業務や趣味を考えた時に、ピンとくる衛星データ利活用に関する話題はありましたか?
来月以降も「#MonthlySatDataNews」を続けていきますので、お楽しみに!