Space BDに聞く、宇宙ビジネス事業開発集団の求人事情と求められる人物像
宇宙ビジネスに転職したいと思っても、膨大な知識やスキルが求められそう、本当に成長市場なのかといった様々なハードルが頭に浮かびます。宇宙業界未経験から宇宙産業に転職するとなったときにどのような職種があり、どのような働き方ができるのか、Space BD社に聞きました。
宇宙産業は、次の注力産業として注目され、各国が積極的に投資を行っています。そして、宇宙産業の成長には人材確保が必要不可欠であり、宇宙業界内の人材流動だけではなく、他業界からの人材流動が求められています。
しかしながら、宇宙業界への人材流動化のための課題は多くあります。代表的な課題としては、この産業では前例がない挑戦が多く、宇宙業界でのキャリアを持っている人が少ないため、他業界からの転職では宇宙業界での活躍イメージがつきにくく転職ハードルが高く感じてしまう人が多いという現状があります。
そこで今回は、ご自身のスキルや経験に照らし合わせ、宇宙業界への転職後の活躍のイメージをつけていただけるよう、実際の募集ポジションとどのようなバッググラウンドを持った方々が活躍されているのか、また、ポジションごとに求められる人物像を探るため、宇宙ビジネスを代表する日本の会社のひとつ、Space BD社の採用・広報を担当されている飯塚さんと同社で事業開発を担当されている藤村さんにお話をお伺いしました。
▼飯塚 はるな / 事業開発広報・採用マネージャー
2012年リクルートに入社。人材メディアの営業として顧客の採用戦略立案や採用伴走に従事した後、国家プロジェクト案件に出向し、人事として組織開発等を担当。リクルート帰任後は、政策渉外として関係省庁とのコミュニケーションを担当し、Space BDでは、広報と採用を担当。
▼藤村 将成 / 事業開発
技術経営修士と博士号を取得後、IT企業、及び重電メーカーの研究所にて、自動車・発電プラント・パワエレ製品に関する物理シミュレーションと機械学習の開発に従事。Space BDでは、技術系の新規事業開発、及び営業を担当。
(1)SpaceBDの事業紹介
――Space BD社はISSからの小型衛星放出といった「衛星打上げサービス」を主力としている印象がありますが、様々な事業を今展開されていますよね
Space BDは「日本発で世界を代表する産業と会社をつくる」をビジョンに掲げ、事業開発集団として、宇宙にまつわるあらゆる事業の企画・推進をしています。
「衛星打上げサービス」と「ISS利活用サービス」を主力事業に、宇宙をテーマとした地域産業振興や、教育・人材育成事業、技術プロジェクトマネジメントなど、宇宙の新たな利活用を創出する事業を多角的に展開しています。
“宇宙の総合商社”ってどんな仕事?Space BDが作る未来〜前編〜
“宇宙の総合商社”ってどんな仕事?Space BDが作る未来〜後編〜
「衛星打上げサービス」は、荷物(超小型衛星など)を宇宙空間に届ける輸送事業です。様々な軌道や用途の打上げ手段を保有し、顧客のニーズに合わせた打上げ手段のご提案と、各打上げ手段に荷物を搭載するための技術支援を提供しています。
加えて、衛星開発者が足りない資材があった際の代理調達や、ロケット打上げ時のリスクを補償する「リフライト保証制度」(オプション)の開発・提供など、多様なニーズに応えるワンストップサービスとなっています。
人工衛星を取り扱う会社では、衛星の小型化が進んでいる一方で、ロケットはまだ大型が主流で、ロケット事業を行う会社としては「大きな枠を販売したい」というニーズがありそこにギャップが生じています。そこで私たちはこの枠を買取り、例えば100キロを買い取ったとしたら、それを10キロ×10枠というように小分けにすることで衛星事業者に枠として販売するという、顧客のニーズに合わせた提供を行っています。
一昨年の11月にSpaceX社と契約し、今年の1月3日に打ち上げサービスプロバイダーとしては初めてとなるSpaceX社での打上げに成功していますよね。
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はい、SpaceX社のロケットを取り扱いメニューに追加出来たことで、より幅広いお客様のニーズに対応できることになりました。
また、主力事業以外にも事業領域を拡大しています。
下図は、左側の川上(衛星開発)から右側の川下(ロケットで衛星を打ち上げた後の利活用)まで様々なバリューチェーンで事業を展開していることを表した図です。特に衛星開発から実際にそれを使うまでの一連のプロセスを提供できることがSpace BDの強みと考えています。
①〜④のSpaceBDの強みとお伝えした部分は、官需がメインのマーケットとなりますが、ここで得た知見を⑤の民需の拡大に投資しながら、商業化利用を推し進めていくための動きをしています。
例えば、衛星データの活用の検討や、ライフサイエンス領域では宇宙を活用した創薬研究における新たなバリューチェーンの構築です。
他にも、国際宇宙ステーションの船外施設を使える権利を活用しながらアートの打ち上げやグローバルボーイズグループJO1をアンバサダーに迎えたエンタメ利用など、様々な利用方法の可能性を、日々検討し、民需の拡大を推進しています。
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――3月にプレスリリースのあったクラーク高校と超小型衛星開発を行ったというのもその事業の一環ですね。
そうですね、教育については、代表の永崎自身が大学で教育学部出身、新卒入社企業にて採用・人事を担当し、独立後に教育事業を始めたという経緯があり、Space BDの祖業となっています。
一見、「なんで宇宙ベンチャーが教育?」と思われるかもしれませんが、不確実性が高い宇宙に挑むという事は「未知への挑戦」でもあり、宇宙は予測不能な現代を生きる私たちにとって、非常に親和性の高い学びのテーマであると考えています。
当社の宇宙をテーマにした教育コンテンツは高校生に限らず、小学生から社会人まで幅広い方々を対象に提供しています。
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(2)SpaceBDので働く人材の特徴
――宇宙産業の中でも様々な事業を展開されているSpace BD社ではどのような方が働かれているのでしょうか?
約50名のメンバーのうち、3分の1がエンジニアです。学生時代に宇宙工学を学んでいた、重工業メーカーで長年ISSの設計に携わっていた、など宇宙バッググラウンドを持っているメンバーが多いですが、宇宙が好きで他業界から入ってきたエンジニアも在籍しています。
事業開発やコーポレートに所属するメンバーのほとんどは、宇宙業界未経験者でして、様々なバッググランドの方々が在籍しているのが特徴です。
――宇宙業界未経験のメンバーの方が多いのですね。宇宙業界に入社するということに身構えてしまう人も多いように思うのですが、そのような課題はありますか?
そうですね。採用活動にあたっての課題として、今後、宇宙業界で働くという選択肢が当たり前になっていくであろう一方で、求職者の方々にはまだビジネスとして遠い存在だと思われていることがあります。宇宙業界をキャリアの1つの選択肢としてもっていただけるかを広報・採用側で取り組んでいるところです。
当社における採用方針として、そもそもマーケットには宇宙業界経験者が少ないため、スキル面よりもスタンス面を重視しています。宇宙業界は、不確実性が高く、予見性が低いからこそプロセスや困難も乗り越え、それを楽しめる素直な人であるかを見るようにしています。
Space BD永崎代表のメッセージ動画
また、当社としても、1人1人がコアメンバーであるということが重要フェーズであるため、採用プロセスでは、宇宙の漠然としたイメージだけでなく、宇宙における事業開発のリアルをお伝えした上で、相互理解をする場を設けることを意識しています。
Q:■小話①:Q.飯塚さんの入社の決め手は?
A.社会人10年目という節目で「自分が人生を賭けたいテーマは何か?」を問うようになり、小さい頃から夢だった宇宙業界で働いてみたいという気持ちが強くなり、Space BDへ応募しました。Space BDは、宇宙における事業開発集団という特性上、エンジニアバックグラウンドでなくても、活躍できる可能性が広がっているなと感じました。一方、宇宙業界ってどんな人が働いているのか?リアルに実感しづらい部分がありましたが、選考過程で実際にメンバーと会う中で払拭されていきました。最後は、お互いにリスペクトできる人たちがいるこの会社のメンバーであれば宇宙を一大産業化するというゴールが実現できるかもという直感的なところで入社を決めました。
Q:■小話②:Q.藤村さんの入社の決め手は?
A.宇宙業界はIT業界並みに成長すると言われていますが、実際には開発期間が長かったりコストもかかるなど様々な難しさがある中で、それでもやってみたいと気持ちになるのが宇宙業界だと思いました。考え抜いた人しか辿り着けないビジネスがあるのかもと。ここからさらにどれだけ成長するのか見えにくいこともありましたが、転職時に“新しい産業をつくりたい”という強い思いがあったので、それを信じてやろうと入社を決めました。
(3)宇宙業界で働いてみて、他業界と比較してどのような業界だと認識していますか?
やはり一番難しいところは、可能性が無限大だけど先が見えづらいというところです。
例えば、衛星データでソリューション作ろうと試行錯誤していても、衛星データのスペック不足により、事業性の高い良いソリューションが見出せないことなどがあります。それでも諦めずにいろいろ思考を巡らして、どのような仕組みで事業化できるかをを日々考えています。
ただ、その先が見えない産業というのは他にもあると思います。ロボットなど、新産業と呼ばれるものは他にもあると思いますが、その中でも宇宙は皆がワクワクする、嫌いな人っていないと思うんですね。
つらいこともありますが、楽しんでやれるっていうところは宇宙産業の魅力の一つではないでしょうか。
一方で、これから転職する人の方の気持ちを考えたときに、本当に事業として成り立つのか、現実的に考えるポイントもあると思います。
Space BDは、こんなに楽しく、何より、お互いリスペクトできる人たちが集まるこの会社であれば、この人たちと一緒ならゴールを実現できるかもしれないとおもえる職場です。
前例のない宇宙ビジネスを事業化できるビジネススキルと、感覚的にこの人たちなら本当になにかやり遂げてしまうかもしれない、と思わせてくれる人材が集まる会社です。
どんな人が宇宙業界にいるのか、宇宙業界に興味がある人はぜひ実際に会って話してみていただきたいです。
(4)SpaceBDの募集ポジションと働く社員のバッググラウンドについて
――求人ページを拝見しましたが、様々な職種で募集されていますね。それぞれどのような業務内容でどのようなスキルや経験を求められているのか教えていただけますか?
▶︎募集ポジションページ:https://recruit.space-bd.com/jobs/
まず、お客様が衛星開発者様を始めとする宇宙開発をされる方・もしくはこれから宇宙産業に携わりたい方になるため、入社後は営業メンバーも技術面について深い理解が求められます。
特に下図の①〜④の分野は衛星開発者様が主な顧客となるため特に深い宇宙技術への理解が求められます。
ただし、当社社員の多くは元々宇宙ビジネスに携わっていたわけではないので、入社後すぐは先に入社をし経験を積んだ社員と一緒に営業し、必要な知識を蓄えていただきます。
特に技術的に高度な打ち合わせの際などには、営業とエンジニアが一緒に会議に出席することもあります。
以下、Space BD社の募集ポジションと各ポジションごとに持っていると良いスキルとメンバーそれぞれの主なバッググラウンドをお伺いし、まとめた内容を紹介します。あくまで一例であり、必ずこのスキルやバックグラウンドを持っていなければならないというものではありません。
※★マークは、積極採用中のポジション
募集ポジション | 持っていると良い募集ポジションスキル・バッググラウンド |
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事業開発★ | ・決められたものを売るのではなく、お客様の課題に合わせ、戦略を描き企画から売るというコンサル型営業の経験。 ・企画を含めたゼロから事業をつくった経験 ・好奇心がある人 ※職歴のイメージ:コンサル、商社、消費財メーカーなど |
衛星打上サービス営業★ | ・海外営業経験、ビジネスレベルの英語力。 ・決められたものを売るのではなく、お客様の課題に合わせ、戦略を描き企画から売る。コンサル型営業の経験。 ・エンジニアの知識やスキルセット ・プロジェクトマネジメント経験(衛星の開発打上のプロセス管理のような要素) ※職歴のイメージ:エンジニア、商社など |
ライフサイエンス★ | ・新規営業における、技術や研究についての深い理解(商談相手が研究者であることが多いため、その研究が、どのように宇宙実験に役立てられるか話せるなど) ※職歴のイメージ:化学メーカー、コンサル(ライフサイエンス領域)など |
エンジニア | ・各ポジションに合わせた求める人物像 ・宇宙工学出身者で、現職が宇宙系企業でない方(例:大学で宇宙工学勉強→製造メーカー) ※職歴のイメージ:航空メーカーなど |
事業開発-教育事業領域 | ・教育や人材育成について、ビジネス領域として語れる人。 ・ビジネスのロードマップを描ける人。 ・商談相手が人事担当や教育機関等になるため、対人事の営業経験 ※職歴のイメージ:人材紹介会社、企業内での事業開発経験など |
エグゼクティブ・事業開発アシスタント | ・営業アシスタント、請求書管理など経理的な業務の経験。 ・営業メンバーが営業に集中できるように二人三脚で自発的に動くことができる ・営業の視点と経理の視点を繋ぎ合わせられる人 ※職歴のイメージ:営業アシスタントなど |
社内IT・情報システム | ・戦略的に受注に繋げられるITの知識がある ※職歴のイメージ:ITコンサル、IT業界など |
ファイナンス★ | ・上場経験がある人 ・ファイナンス系の経験がある ※職歴のイメージ:財務系部署での経験、銀行での融資担当、証券会社など |
経理★ | ・上場経験がある人 ・経理マニュアルのようなプロセスを描ける人 ※職歴のイメージ:経理、会計コンサルなど |
広報・採用 | ・ブランディングと採用を紐付けた動きができる人 ※職歴のイメージ:人事、人材紹介会社など |
人事・労務★ | ・1から制度設計ができる ※職歴のイメージ:人事、労務など |
小話②:Q.宇宙業界で働くことの魅力とは?
飯塚さんは、今だからこそ宇宙の第一人者になれるというのが魅力の1つであると話します。これまでやってきたことを「宇宙×〇〇」と掛け合わせることで、キャリアを描き市場価値を高められると言えそうです。
その他、Space BDで働く人たちの詳細はこちらから詳細を見ることができます。
https://recruit.space-bd.com/interviews/people/
(5)まとめ
Space BDのお二人に、同社の事業内容や募集ポジションからみる求める人物像について、お話をお伺いしました。
未経験から宇宙業界に入ったメンバーがほとんどだという同社、多様なバッググラウンドを持つメンバーが活躍されています。
宇宙業界に興味はあったけれど、働くイメージまでつかなかったという方の参考にいただければ幸いです。
募集ポジションについて、興味があればぜひ挑戦してみてください。
募集情報 https://recruit.space-bd.com/jobs/