ispaceがミッション3の打ち上げを26年に延期。着陸船は機能を強化した「APEX1.0」に【宇宙ビジネスニュース】
【2023年10月10日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
9月28日、ispaceはミッション3以降で使用する月面着陸船を当初予定されていた「Series2ランダー」から、機能を強化した「APEX1.0ランダー」へと変更することを発表しました。
APEX1.0ランダー(Series2ランダー)は、4月に月面着陸に挑んだ「Series1ランダー」から得られたデータやノウハウを活用して開発される次世代機。
Series1ランダーは、航行期間は長くかかるものの、太陽の重力を利用することで燃料を節約できるルートを採用し、ペイロード容量を最大化していました。APEX1.0ランダーでは、短い期間で月へ到達できる軌道を採用しながらも、Series1ランダーの容量の10倍以上となる、最大300kgのペイロードを月面に輸送可能な設計となっています。
さらに、将来的にはペイロード容量を段階的に増加させ、最大500kgのペイロードの輸送を目指すといいます。
短い期間で月へ到達できる軌道を採用することにより、打ち上げ条件に自由度を与え、ミッション成功の確度向上に繋がるということです。
ispaceのアメリカ拠点は、Team Draperの一員としてNASAの商業月面輸送サービス(CLPS)に採択され、NASAの3つの科学的ペイロードを月周回軌道および月の裏側の極域へ輸送する計画です。これはispaceのミッション3にあたり、APEX1.0ランダーが用いられます。
ispaceはSeries2ランダーからAPEX1.0ランダーへと移行するにあたり、ミッション3の打ち上げスケジュールを2025年から2026年へと変更することを発表しました。打ち上げのスケジュールが後ろ倒しされた背景には、ペイロードの一部により慎重な取り扱いが必要であることがわかり、ペイロードを保護する高度な防振機能の追加など、ランダーの設計を変更し、開発スケジュールを見直したことがあるということです。
打ち上げ時期の変更を受けて、ispaceの2023年度の売上高予想は、当初より31億4600万円減となる30億5000万円となりました。ispaceは「ミッション3の原価発生の遅延がそのまま売上計上の遅延となって反映されることに起因しており、現時点でミッション3の契約総額自体には大きな変更等は発生しない見込みです」と説明しています。