政府、24年度からの3年間を「民間衛星の活用拡大期間」に。民間衛星データの積極調達・利用図る【宇宙ビジネスニュース】
【2024年3月27日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
3月26日、2024年度からの3年間を、国内スタートアップ等が提供する衛星データを関係府省で積極調達・利用する「民間衛星の活用拡大期間」とする方針が、衛星リモートセンシングデータ利用タスクフォースの大臣会合で決定されました。
民間衛星の活用拡大期間は、関係省庁は国内スタートアップ等が提供する衛星データを含め、
1.活用可能なサービスや重要箇所のアーカイブ画像取得など国による衛星データ調達・利用の促進
2.自治体・民間等による衛星データ調達・利用に対し交付金等を活用するなど国による支援の促進
3.衛星データ調達・利用に有効な衛星データ提供プラットフォーム・解析技術・技術指針の検討・策定など国による先行的な技術研究開発の促進
を行うなど、衛星データの利用拡大に向け必要な環境整備を進めることになります。国内企業の衛星データを関係府省で積極調達・利用することで、投資促進の好循環を生み出すとともに、安全保障や国土強靭化、地球規模課題への対応に繋げたい考えです。
高市早苗内閣府特命担当大臣(宇宙政策)は、大臣会合の終わりに「引き続きスピード感を持って、取り組みを進めていただきたいと存じます」と述べました。
衛星データの利用拡大「加速期間」の成果は?
衛星リモートセンシングデータ利用タスクフォースとは、政府や自治体の業務の効率化や高度化に向けた衛星の適切な活用を民間に率先して進めるため、行政における衛星リモートセンシングデータ利用の実態や課題、推進方策の共有などを行う組織です。これまで大臣会合は、2020年12月に第1回、2022年3月に第2回が開催され、今回が3回目の開催でした。
第1回の大臣会合では、開催後から3年程度を衛星データの利用拡大に向けた加速期間と位置づけ、関係省庁は実証事業の実施を含め、衛星データの利用を集中的に検討し、順次利用を進める方針が打ち出されました。
今回の大臣会合では、関係省庁の衛星データの利用状況がまとめられた「衛星リモートセンシングデータ利用タスクフォース案件整理リスト」が資料として配布されました。第1回の大臣会合で報告された衛星データの利用状況と比較すると、衛星データを実際に利用する段階にまで進んでいるプロジェクトが増えていることがわかります。
国内スタートアップによる観測頻度は今後3年で急増の見通し
このように関係省庁での衛星データでの利活用が進むなか、特に衛星データの有用性が見えたのは令和6年能登半島地震の被害状況の把握でした。JAXAの陸域観測技術衛星「だいち2号」やアクセルスペースの光学衛星、QPS研究所とSynspectiveのSAR衛星の画像が貢献しました。
国土地理院、だいち2号のSAR衛星画像を用いて能登半島地震・被災地域の地殻変動を解析【宇宙ビジネスニュース】
QPS研究所とSynspectiveは今後も小型SAR衛星コンステレーションの機数を増やしていく計画です。2024年1月時点では、両社の撮影頻度は1日から数日に1回程度でしたが、2026年度末には1日に50回程度に向上すると見られています。
政府による民間衛星の活用拡大期間の実施と並行して、民間企業の衛星コンステレーションの構築が進み、撮影頻度が増えることで、衛星データの利活用はさらに拡大していくことが期待されます。