気候変動観測のカギになるのは雲とエアロゾル!日欧初の地球観測衛星ミッションEarthCARE打上げ、搭載された4つのセンサとは?
気候変動予測の精度向上をミッションとする日欧初の地球観測衛星ミッション「EarthCARE」がいよいよ打ち上げられます。雲やエアロゾルが気候変動にどのように作用するのか、搭載された4つのセンサについて紹介します。
日欧初の地球観測衛星ミッションEarthCAREがついに打上げ
日本と欧州が協力して開発を進める地球観測衛星「EarthCARE(Earth Cloud Aerosol and Radiation Explorer):はくりゅう」の打上げ予定時間が発表されました。5月29日(水)7時20分にアメリカ合衆国カルフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地からSpaceX社のファルコン9ロケットで打ち上げられる予定です。
「EarthCARE」は、雲、エアロゾル(大気中に存在するほこりやちりなどの微粒子)の全地球的な観測を行い、気候変動予測の精度向上に貢献することをミッションとした人工衛星です。
4つのセンサ(詳細は後述)を搭載する人工衛星で、JAXAと国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が共同開発した雲プロファイリングレーダ(CPR)もその一つです。他のセンサおよび本体の開発、打上げは欧州宇宙機関(ESA)が担当しています。
EarthCAREのミッション
気候変動の予測には様々な要因があり、各国の衛星があらゆる物理量の観測を行っています。
JAXAの衛星だけでも、GOSATシリーズは温室効果ガスを観測し、GCOM-Cは大気や植生などの多くの物理量を調べ、気候変動の現状の把握や今後の予測に貢献をしています。
多くの衛星が気候変動に影響する情報を調べているものの、まだまだ気候変動の予測を正確に把握することは難しいのが現状です。
この予測の難しさの要因の1つとなっているのが、雲やエアロゾルによる気候変動への影響です。
雲やエアロゾルは地球を暖める効果も冷却する効果も持つ気候変動のキーファクター
二酸化炭素やメタンガスなどは排出量が増え、大気中の濃度が上がると地球の気温を上昇させる効果があります。
また、雲が広がると、地表や海面から放射される熱が宇宙空間に放出されなくなり、地球を暖める効果がある一方で、宇宙から降り注ぐ太陽光などを反射して地球を冷やす効果もあります。
では、エアロゾルはどうかというと、光の吸収や反射の特性を持つ上に、エアロゾルの量によって雲ができてから消えるまでの時間がかわるなど、雲の性質にも影響を与えます。
このように、雲やエアロゾルは気温の上昇にも下降にも影響を与えるため、気候変動を正確に把握するのに重要な情報となりますが、これまでの地表やほかの衛星のセンサによる平面での観測では、内部構造まで把握することが困難でした。
EarthCAREは、これまで観測しきれていなかった雲の内部構造を4つの衛星を搭載することで観測し、不確実性が高かった雲やエアロゾルによる気候変動の影響を明らかにしていくことが期待されています。
EarthCAREに搭載された4つのセンサの詳細
① 雲プロファイリングレーダ(CPR)
JAXAとNICTが開発を担当。衛星から雲の上下方向に動く速度を計測する世界初のセンサで、台風のような分厚い雲でも内部の鉛直構造を調べることができます。
② 大気ライダ(ATLID)
ESAが開発を担当。レーザー光線を大気に照射することにより、大気中の微粒子(黄砂やPM2.5等)やごく薄い雲の鉛直構造を調べることができます。
③ 多波長イメージャ(MSI)
ESAが開発を担当。イメージャと呼ばれるカメラのような装置を使って、雲や大気微粒子(黄砂など)の水平方向の構造を把握することができます。
④ 広帯域放射収支計(BBR)
ESAが開発を担当。放射計と呼ばれる装置を使って、太陽光の反射や地球からの熱放射の総エネルギー量を測ることができます。
まとめ
「EarthCARE/CPR」プロジェクトのプロジェクトマネージャの富田さんは、JAXAのyoutubeチャンネルのインタビューで、開発から打ち上げまでの長い道のりだったとこれまでの苦労を語っています。センサの試験中に東日本大震災が起きたり、コロナで海外への出張が制限されてしまったり、戦争の影響で打上げ方法の変更を余儀なくされたり、様々な苦難があったそう。
欧州と日本が共同で、チャレンジングなセンサ開発における様々な苦難を乗り越え、気候変動の把握を目指すEarthCAREがどのような観測結果を提供してくれるか、多くの人が待ち望んでいるに違いありません。
打上げの様子はライブ配信も予定されています。ロケットアイドルVTuber宇推くりあさんの解説付きライブ配信にも注目です。