宙畑 Sorabatake

ニュース

桝太一さん、油井亀美也さんがアンバサダーに就任! CONSEOが掲げる「地球まるごと、より良い未来へ」とは

2022年9月7日に開催された衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)の設立シンポジウムで語られた内容をまとめました。

2022年9月7日、産学官の多様なプレーヤーが集まり、日本の衛星地球観測全体戦略や政策につながる議論を通じた提言をまとめることを目的とした衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)が設立されました。

コンソーシアムには107もの法人・団体が入会(2022/9/7時点の会員名簿)しており、産学官の様々な視点を交えた議論が行われるだろう期待が高まります。

では、どのようにしてCONSEOが設立されることとなったのか。その背景や今後の展望を同日に行われた設立シンポジウムで語られた内容をもとに紹介します。

(1)衛星データは地球の健康診断ができるツール

CONSEOは「地球まるごと、より良い未来へ」をビジョンに掲げています。

設立シンポジウムの基調講演では、ソニーグループ株式会社の北野宏明さんから、

「日本の約束された未来として、大型地震や火山の噴火などの大規模災害がある。また、世界的にも気候変動は待ったなしで文明の崩壊の危機に瀕している。そのためにも国家規模/地球規模での対応が必用であり、AIと衛星観測をどのように使い、どのように日本がリーダーシップをとっていくかが重要だ」

と、地球規模の危機の共有がありました。

また、東京大学の沖大幹教授は、

「1990年の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では、水が循環することや川の持つ役割が気候システムを構成する要素として考慮されていなかった。しかし、現在は衛星データから毎年の降水量や土壌水分量を把握することができる。それは、災害の予測に応用ができ、例えば、2019年の台風19号による洪水予測の捕捉率は92%(堤防決壊地点142箇所のうち、130箇所でアラートが出された)と高い水準であった」

など、地球観測衛星がどのように気候変動研究を進歩させ、持続可能な未来を支えるために重要であるかについて話しました。

そして、

「安全保障、科学技術、民間企業による社会経済など、すべてが激変する情勢において地球観測衛星の役割が非常に重要視され始めている。より良い未来のために、力を結集し、変革することが求められている。地球丸ごとより良い未来を目指すイノベーションのコンセプトを共有していきたい」

と、基調講演の最後を力強い言葉で締めたのはJAXA理事長の山川宏さんでした。

産学官のそれぞれの立場で1名ずつ語るという基調講演の構成でしたが、共通して語られたのは以下の2点だったように思います。

・地球規模での議論すべきテーマが激甚化する災害、安全保障、持続可能性……と、現在多岐にわたって存在する
・地球規模の課題に対して、地球をまるごと健康診断できる地球観測衛星がより重要な役割を担う

まさに今、地球観測衛星のあり方や展望を産学官が連携して方針を定めていく必要があるタイミングなのだと、基調講演を聞いた方は実感したことでしょう。

(2)衛星地球観測を日本の成長産業まで押し上げることも目指す

設立シンポジウムでは、CONSEOへの期待を産学官の様々な立場にある7名が5分ずつ話す時間もありました。

特に宙畑編集部が印象に残ったのは東京大学の中須賀真一教授の言葉です。中須賀教授は、宇宙基本計画を検討するうえで、議論を主導する立場でもあり、

「特に地球観測衛星については、どのような衛星が大事で、地球観測衛星に限らずどこと連携をするのか、何を考えるべきかを決めるということが、たくさんの要素が絡み合っているため、とても難しかった。」

と語ったうえで、安全保障、公共利用、防災/減災、民間の力も借りながら進めていく必要があるなど、多岐にわたる地球観測衛星の用途や期待をどのように整理するのかという難易度の高さについてあらためて問題提起をされました。

また、日本における宇宙の産業化を考える必要性についても話が及びます。

「アメリカはDoD(アメリカ合衆国国防総省)、ヨーロッパは通信・放送・地球観測など、一定の市場がすでにできている。では、日本は果たしてどのように宇宙の産業化を行っていくのかを真剣に考えていかなければならない。」

と、通信については日本は地上インフラが整い過ぎており、地球観測についても国土が狭い日本においては利点を活かすのが難しく、世界に出ていかざるを得ないのではないか……そのための戦略はいったいどういうものなのかを真剣に考えていかなければならないと語られました。

そのうえで、CONSEOに期待することを以下のように中須賀教授は話しました。

「ステークホルダーが政策を喧々諤々と議論し、政府への政策提言を行うこと。その提言をもとに政策委員会が政策を打ち出す。そのうえで立ち上がった政策がきちんと機能しているのかについて、CONSEOが監視機能と実行機能を持つことを期待している。また、世界との連携、世界進出への旗振りや地球観測衛星のニーズの掘り起こしと人材育成が重要である」

そして、特に宙畑編集部が印象に残ったのは、地球観測衛星のニーズの掘り起こしをどのように行うかについて以下のように話された点です。

「だいたい宇宙が使えそうだなという産業はすでに利活用が進んでいる。そうでない産業にもいわば押し売りのような形で話をしていかなければならない」

衛星データの利活用はどうしてもプロダクトアウト型になりがちで、様々な企業のニーズを業界知識をもとに発掘しては提案することが重要だと考えていました。しかし、宇宙業界の人が行う他業界ニーズの発掘には限界があるということかもしれません。

(3)桝太一さん、油井亀美也さんが広報アンバサダーに就任!

では、地球観測衛星の利用が進んでいないプレイヤーにどのようにして、ステークホルダーとして入っていただくのか。シンポジウムでは、CONSEOの広報アンバサダーとして、元日本テレビアナウンサーで現在は同志社大学ハリス理化学研究所助教の桝太一さんとJAXA宇宙飛行士の油井亀美也さんが就任すると発表されました。

桝太一さん、油井亀美也さんからはビデオメッセージも寄せられており、これから様々な産業・場面で地球観測衛星が拡がる可能性がある、地球を守っていくことが本当に重要であると、桝さんは漁師さんと話したこと、油井さんはISSから見た地球の姿などの実体験も交えながら話されていました。

これから地球観測衛星の利活用について、産学官が集うことで喧々諤々と議論がなされて、より良い政策の方針策定に繋がり、日本、ひいては地球規模での最善の未来が実現することが期待されます。