【2024年11月】衛星データ利活用に関する論文とニュースをピックアップ!
2024年11月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。
2024年11月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。
・Cloud detection sample generation algorithm for nighttime satellite imagery based on daytime data and machine learning application
(日中の熱赤外データを活用した夜間雲検出精度向上手法)
・High-resolution ocean color imagery from the SeaHawk-HawkEye CubeSat mission(CubeSatを用いた高解像度海洋色観測の可能性)
・Research on geological hazard characteristics and susceptibility of the Duku Highway based on SBAS-InSAR and improved spatiotemporal clustering
(SBAS-InSARとCCEMを組み合わせた、データ不足地域の地質災害感受性を高精度に評価する手法)
・Green turtle tracking leads the discovery of seagrass blue carbon resources
(グリーンウミガメ追跡を活用した、従来未解明の深海域で新たな海草藻場と炭素資源を特定する手法、衛星データによる手法との比較)
・Classification of protected grassland habitats using deep learning architectures on Sentinel-2 satellite imagery data(Sentinel-2衛星画像による草地生態系分類における、CNNとTransformerモデルの比較)
宙畑の新連載「#MonthlySatDataNews」では、前月に公開された衛星データの利活用に関する論文やニュースをピックアップして紹介します。
実は、本記事を制作するために、これは!と思った論文やニュースをTwitter上で「#MonthlySatDataNews」「#衛星論文」をつけて備忘録として宙畑編集部メンバーが投稿していました。宙畑読者のみなさまも是非ご参加いただけますと幸いです。
2024年11月の「#MonthlySatDataNews」「#衛星論文」を投稿いただいたのはこの方でした!
Monitoring individual rice field flooding dynamics over large scales to improve mosquito surveillance and control | Research Square #衛星論文
そうか、水田にも蚊の幼虫が生息してるのか、そりゃそうか
Sentinel-1使って地域(や水田)ごとに状況推定 https://t.co/Lzq0IVgXmE— たなこう (@octobersky_031) November 13, 2024
それではさっそく2024年11月の論文を紹介します。
Cloud detection sample generation algorithm for nighttime satellite imagery based on daytime data and machine learning application
【どういう論文?】
・本論文は、日中の熱赤外データを活用した夜間における雲検出精度向上手法を提案する
【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️前提知識
①VNIとは
・VNI(Visible and Near-Infrared, 可視及び近赤外)は、波長が 0.38–3μmの範囲にある電磁波である
②VNIの重要性
・雲と地表を区別するために、VNIデータは非常に役立つ
・雲は、VNIで高い反射率を持っていたり(白く映る)、地表は、植生や水、岩などで反射率が異なることで特徴的なパターンが出ることで、地表と雲の違いが明確に確認できる
◾️先行研究の課題
①VNIデータの欠如による夜間雲検出の精度向上への制約
・夜間ではVNIデータが利用できないため、雲と地上の特徴を区別することが困難となる
・VNIバンドは、日中においては雲検出の主要な指標として機能しており、高精度な雲検出を可能にしている
②TIR(Thermal Infrared, 熱赤外線)の情報のみでは限界がある
・TIRバンドは、物体が放射する熱エネルギーを検出でき、太陽光の影響を受けずに夜間での観測も可能である
・ただし、TIRバンドのみに基づく検出では、低温目標(例: 地表温度が低い地形)と雲との区別が難しい
◾️本研究の仮説
①日中と夜間の熱赤外放射特性の一貫性
・TIRバンドは昼夜で共通の特性を持つため、日中のTIRデータを用いて夜間用のトレーニングデータを生成できる
②日中のデータを用いたサンプル生成手法
・日中のデータには、TIRとVNIが両方含まれるため、これを活用して正確なラベル付け(データ作成)が可能である
・例えば、日中に「これは雲」「これは地表」とVNIで明確に判断し、そのTIR特性をラベル付けする
・上記ラベル付け済みのデータを、夜間のTIRデータに適用し、夜間用の高品質なトレーニングサンプルを効率的に生成する
◾️研究地域と対象データ
・研究は東アジアを対象に実施し、3種類の衛星データ(GF-5、MODIS、Himawari-8)を使用した
・データは2022年の異なる季節をカバーし、植生、都市、荒地、水域といった多様な地表タイプを含む
・各データセットの解像度は、GF-5が高解像度(40m)、MODIS (Aqua)が中解像度(1km)、Himawari-8が低解像度(5km)となる
・各衛星は、VNI(可視・近赤外), MWIR(中波赤外), TIR(熱赤外)の広範なスペクトルバンドを備えている
◾️モデル構築のプロセス
・各センサーのTIRバンド(8–14 μmの輝度温度)が入力特徴量として利用する
・MODIS (Aqua) と Himawari-8 の既存プロダクト(MYD35_L2, CLP_L2)を使用して、雲/非雲のラベルを作成する
・GF-5では、手動でラベル付けを行い、雲検出精度を検証する
【議論の内容・結果は?】
◾️昼間の雲検出に関する共通情報
・MODIS (Aqua)を用いて、植生(Vegetation)、都市(Urban)、荒地(Barren)、水域(Water)の4種類の地表タイプにおける昼間の雲検出精度を評価した
・評価指標としては、全てのデータに対する検出精度の割合としてAccuracy(全体精度)
、雲を正しく検出した割合としてCHR(Cloud Hit Rate)、誤って雲と検出した割合としてFAR(False Alarm Rate)を使用する
◾️MODIS (Aqua)による昼間の雲検出の結果
①全体精度
・全体の検出精度は 82.38% と高いレベル
②都市領域
・全体精度が91.94%と最も高い
・晴天検出でのCHR(94.41%)とFAR(0.0559)という値は、すべての地表タイプで最良の性能であった
③植生領域
・全体精度86.26%という都市領域に次ぐ高い性能であった
・曇天CHR(80.43%)と晴天CHR(88.65%)は中程度の性能を示した
・曇天でのFAR(19.57%)はやや高い
④荒地
・全体精度が 73.87% と最も低い
・曇天検出では最高のCHR(89.93%)と最低のFAR(10.07%)を記録した
・晴天では、CHRが低下(66.23%)し、FARが高い結果(33.77%)となった
⑤水域
・全体精度は 77.44%と荒地より高いが、植生領域や都市領域より低い
・曇天CHR(85.43%)と晴天CHR(70.90%)は中程度の性能であった
⑥全体総括
・都市領域は高反射率や明確な温度コントラストがあるため、雲と地表の区別が容易であったが、評価に使用された画素数が他の地表タイプより少なく、結果の一般化には注意が必要となる
・植生領域では、曇天と晴天の性能がバランス良く、安定して高い精度を示したことから、葉の反射特性や温度特性が一定のため、モデルが適切に特徴を抽出できると考えられる
・荒地領域では、曇天検出は優れる一方で、晴天時の性能が低下したことから、温度のばらつきが大きく、地表と薄い雲の区別が困難であるため、誤検出(FAR)が増加したと考えられる
・水域では、曇天では比較的良い性能を示すが、晴天では曇天CHRより大幅に低く(70.90%)、水域の熱赤外特性(低温の安定性)が薄い雲と混同されやすいため、性能が低下したと考えられる
◾️Himawari-8による昼間の雲検出の結果
①都市領域
・曇天CHRは97.98%、FARは2.02%と高い性能であった
・晴天時CHR(14.91%)が低く、FAR(85.09%)が高い
・全体精度は80.85%であった
②植生領域
・曇天時のCHRは高く(97.25%)、FARは低い(2.75%)
・晴天時のCHRは低下(10.32%)した
・全体精度は75.85%と他の地表タイプよりやや低い
③荒地
・曇天CHRは98.30%、FARは1.70%と高い
・晴天時のCHR(12.00%)は低いが、他地表タイプよりわずかに高い
④水域
・曇天CHRが最高(99.23%)FARは最低(0.77%)となった
・晴天時CHR(18.19%)は比較的高いが、FAR(81.81%)も高めであった
・全体精度は84.14%となる
⑤全体総括
・Himawari-8データでは「晴天時のサンプル数が不足」しているため、モデルのトレーニングが不十分と考えられ、結果として晴天時の結果も良好ではない
・曇天ピクセルの割合が多く、晴天ピクセルとのクラス不均衡が顕著であった
・また、MODISに比べ、Himawari-8は晴天と曇天のデータ分布に大きな違いがあり、これはモデルの性能差に影響を与えている
◾️夜間雲検出における各モデルの性能比較
・昼間データを用いて訓練したMLモデル(例: LGB)を使用し、3種類の衛星センサー(MODIS (Aqua), GF-5 (02), Himawari-8)の夜間雲検出性能を評価する
①MODIS (Aqua)
[比較モデル]
・MYD_LGB_Day(提案モデル)とMYD35_L2(運用プロダクト)
[結果]
・提案モデル(MYD_LGB_Day)は全ての指標でMYD35_L2を上回った
・OA(Overall Accuracy): 0.8219(MYD_LGB_Day) vs. 0.7817(MYD35_L2)
・Precision(適合率): 0.8929 vs. 0.8839
・Recall(再現率): 0.8032 vs. 0.7678
・F1スコア: 0.8426 vs. 0.8131
・曇天時の検出(CHR: 0.8032)で高い性能を示し、誤検出率(FAR: 0.1968)も低下した
②GF-5 (02)
[比較モデル]
・GF_LGB_Day(昼間データ訓練モデル)とGF_LGB_Night(夜間データ訓練モデル)
[結果]
・昼間データを使用したモデル(GF_LGB_Day)が夜間データを使用したモデル(GF_LGB_Night)を大幅に上回っ
・OA: 0.8871(GF_LGB_Day) vs. 0.7580(GF_LGB_Night)
・Precision: 0.8562 vs. 0.7426
Recall: 0.9962 vs. 0.9411
・F1スコア: 0.9182 vs. 0.8137
・昼間データを活用した場合、夜間モデルと比べて約10%の性能向上が見られた
③Himawari-8
[比較モデル]
・HMW_LGB
[結果
・提案モデル(HMW_LGB)は、高いRecall(0.9506)とF1スコア(0.8826)を達成した
・OA: 0.7934と他のセンサーに比べやや低いが、Precision(0.8241)は良好
・晴天時のサンプル数が少なく、データバランスの改善が必要と考えられる
#VNI #雲 #地表 #可視光 #近赤外 #夜間 #TIR #MODIS #Himawari-8
High-resolution ocean color imagery from the SeaHawk-HawkEye CubeSat mission
【どういう論文?】
・本論文は、CubeSatに搭載された海洋色観測用センサー「HawkEye」を用いた高解像度での海洋色観測の可能性を提案する
【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️先行研究の課題
①空間分解能とスペクトル品質のトレードオフ
・従来の政府主導の海洋色観測ミッション(例:SeaWiFS, MODIS, VIIRS)は、広範囲な観測に適しているが、空間分解能は300–1,100 m/ピクセルと粗く、特に光学的に複雑な沿岸域や河口域にて微細な変化を捕捉するのが困難だった
・高分解能(10–60 m/ピクセル)を提供するLandsatやSentinel-2などの衛星は、主に陸域観測用に設計されており、海洋色観測に必要なスペクトル品質や信号処理能力が不足している
②光学的に複雑な水域での観測困難
・河口や沿岸部では、水中に浮いている物質や溶け込んだ有機物が種類も量もさまざまで、光の吸収や散乱の仕方を複雑にしており、領域を衛星で正確に観測するのは難しい
・さらに、陸地と水が近くに混在していたり、浅い場所では海底からの反射が強く影響したりするため、従来の衛星データでは詳細な観測ができない限界がある
③大規模衛星ミッションの高コストと制約
・大型衛星ミッションは設計、製造、打ち上げに多額のコストがかかり、柔軟性に欠ける
【議論の内容・結果は?】
◾️使用衛星
・CubeSat上に搭載された、低コストかつ高分解能な海洋色観測用センサー「HawkEye」を用いる
・本衛星は、世界中の沿岸域や河口域など、光学的に複雑な水域を詳細に観測するミッションとしており、NASAのSeaWiFSと同等のスペクトル品質を追求しつつ、約130 mの空間分解能を実現している
◾️データ例
・以下の各図は、実際の本センサーによる可視光スペクトル内の特定の波長での反射率を示しており、海面の光学的特性を定量化している。
– (a) 556 nm: クロロフィル-a濃度の指標に関連
– (b) 670 nm: 赤波長での散乱と吸収、特に濁物質などが強く反映される
– (c)–(f): 他の波長での反射率
・以下の各図は(a)~(i)の地域を撮影したものである。
– (a) 場所未記載(2022/12/28)
– (b) アゾフ海(2023/6/6)
– (c) バングラデシュ(2022/10/26)
– (d) バハ・カリフォルニア(2023/1/6)
– (e) 北オーストラリア(2023/5/14)
– (f) サンタバーバラ(2023/5/2)
– (g) 北東グリーンランド(2022/8/26)
– (h) 黄海(2022/11/17)
– (i) 西ユカタン(2022/12/11)
・以下の図は、ハリケーン・イアン(2022年9月末)による沿岸水質への影響を高解像度で解析したものである(左からa,b,c,dの並びである)
– (a) カラー画像:サウスアトランティック湾(フロリダからノースカロライナ)をカバー
– (b) クロロフィル-a濃度: 水中の植物プランクトンの量を示し、栄養状態を評価(ハリケーン後、沿岸近くで濃度が大幅に増加している)
– (c) 490 nmでの拡散減衰係数: 水の濁りの指標で、値が高いほど濁りが強い(沿岸域で特に高値を示し、陸からの流出物や沈泥が増加していることを示唆している)
– (d) 濁有機炭素濃度: 海洋に流入した炭素の量を定量化(沿岸域で顕著に濃度が高い)
#SeaWiFS #MODIS #VIIRS #Landsat #Sentinel-2 #海洋色観測 #CubeSat #ハリケーン #クロロフィル-a #植物プランクトン #拡散減衰係数 #懸濁有機炭素濃度
Research on geological hazard characteristics and susceptibility of the Duku Highway based on SBAS-InSAR and improved spatiotemporal clustering
【どういう論文?】
・本論文は、SBAS-InSARとCCEMを組み合わせてデータ不足地域の地質災害感受性を高精度に評価する手法を提案する
【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️先行研究の課題
①複雑地形における災害評価の困難さ
・山岳地域では地形が複雑で、観測データが不足しているため、主流の災害感受性評価手法(例: 物理モデル、因果分析)は精度が低下しやすい
・地形変形データや地質データの不足が、特に物理モデルの構築や因果分析の適用を困難にしている
②従来の手法の限界
[経験的方法]
・統計的手法によって災害頻度や規模を分析しようとしても、空間的・時間的な精度が低く、災害発生場所を特定できない
[物理モデル]
・3次元的な斜面の安定性を評価するが、多くの地形や地質データを必要とし、変形速度が速い地域では困難
[因果分析方法]
・機械学習を用いるが、大量の観測データや正確な因果関係の事前知識を必要とするため、データ不足地域では適用が難しい
◾️本研究のアプローチ
①SBAS-InSARによる地形変形モニタリング
・SBAS-InSAR(Small Baseline Subset Interferometric Synthetic Aperture Radar)は、合成開口レーダー(SAR)を用いて地表の微小な変形を検出する技術である
・従来のD-InSAR(Differential InSAR)は、短期間の地形変化を捉えるのに優れているが、時間が経つにつれて干渉画像間のデコヒーレンス(信号の不整合)が増え、長期的な観測が困難であった
・SBAS-InSARは、小ベースライン干渉ペア(時間差・空間差が小さい観測ペア)を活用して、複数の観測データを組み合わせることで、長期間にわたる地形変化の時系列データを生成する
②CCEM(相関クラスタリング評価モデル)の提案
・CCEM(Correlation Clustering Evaluation Model)は、地形変形データをクラスター化(分類)し、その結果に災害特性を関連付ける新しいモデルである
・災害発生地点ごとの地形変形データを時系列的に分析し、地形変形の特徴曲線(災害特性)を抽出、これを基に災害がどの程度の頻度で発生するかを評価する
◾️データ
①対象地域
・中国・新疆ウイグル自治区を南北に結ぶ重要な幹線道路(全長562.79km)、Duku Highwayを対象とする
・大部分が標高2000m以上に位置し、急峻なカーブや急斜面が多く、積雪線を越える区間も存在し、地形の険しさが顕著である
・地形や気候条件から、崩壊、落石、土石流、雪崩などの地質災害が頻発していて、過去10年間で4256件の災害が記録され、その多くが北部210km以内に集中している
②その他データ要件
・地形変形データ: Sentinel-1 AによるSARデータ
・気象データ: NASAのERA-Interim
・地形データ: SRTM 30m DEM
◾️手法
①地形変形データの取得(SBAS-InSAR技術の適用)
[データ収集]
・SARデータ: Sentinel-1 A衛星のCバンドデータを使用、101シーンを収集する
・補正データ: ERA-Interim(大気遅延補正)やSRTM DEM(地形位相補正)を活用する
[SBAS-InSAR処理]
・時間基準(60~180日)と空間基準(50~100m)でペアを作成する
・コヒーレンス(整合性)が高いピクセルを選択する
・レーダー位相差を用いて、地表変形量を算出(ミリメートル単位)する
[結果の評価と精度確認]
・定性的評価: 負の変形値(LOS方向の遠ざかる動き)が災害兆候であるかを確認する
・定量的評価: 地形変形率(日ごとの変形量)と年間平均との差を分析する
[①のアウトプット]
・全研究地域(Duku Highwayとバッファゾーン[5km])における、各ピクセルの3年間の地形変形データ
②地形変形データの解析(階層型クラスタリング)
①で取得・整備したSBAS-InSARによる地形変形時系列データをもとに、同様の変形パターンを示すピクセル(地点)同士をまとめる「クラスタリング」を行う。
[データの前処理]
・収集した地形変形データからノイズや欠損値を排除する
[クラスタリング(階層型クラスタリング)]
・ピアソン相関係数を使用し、時系列データ間の類似性を評価する
・類似性が最も高いクラスタを統合し、最適なクラスタ数に到達するまで繰り返す
・クラスタ内の相関(高いことが望ましい)とクラスタ間の相関(低いことが望ましい)を基準に評価する
[クラスタリング結果の分析]
・各クラスタに属する地形変形の特徴量(傾向、周期性、変化率)を解析する
・災害発生のトリガーとなる変形パターンを特定する
[②のアウトプット]
・地域ごとの地形変形パターン(例: 急激な変形、周期的変形)
・クラスタごとによる災害リスクの可能性示唆
③災害感受性ゾーンの構築(CCEMの適用)
災害区域で得られた地形変動特性(=実際に災害が起きている場所の特徴)」を「全域」のクラスタリング結果へ反映させ、災害発生のリスクレベルを空間的に評価する。
[特徴関数の生成]
・地形変形データをクラスタごとにまとめ、各クラスタの地形変形トレンドを平均化する
・上記平均値をもとに、災害リスクを特徴づける「特徴関数」を作成する
(「毎年夏前に急激に傾斜が増すクラスタ」や、「2ヶ月に1回程度のサイクルでゆっくりとした地形隆起・沈降が見られるクラスタ」など、災害発生と関係が深いパターンが抽出する)
[最適なクラスタ数の決定]
・災害地域の特徴関数と全地域の特徴関数を比較する
(調査エリア全体でもクラスタリングした結果があり、「ここはずっと微弱な沈降が続くグループ」「ここは比較的安定してほとんど変化しないグループ」などの特徴がつかめている)
・災害区域から得た特徴関数(つまり、災害が起きやすい特性)と、全域の特徴関数とを比較し、災害特性を最もよく表せるクラスタ数を求める
・つまり、さまざまなクラスタ数(例えば全域を10クラスタに分ける場合、15クラスタに分ける場合、20クラスタに分ける場合など)で行い、どのクラスタ数のときに「災害区域の特徴」と「全域特徴」が最も強く対応(相関)するかを確認する
[災害特性の割り当て]
・相関行列を基に、災害地域のクラスタと全地域のクラスタをリンクさせる
・全地域のクラスタに災害リスク属性(高リスク、中リスク、低リスク)を割り当てる
・各クラスタの災害発生頻度を計算し、「高感受性」「中感受性」「低感受性」に分類する
[③アウトプット]
・高リスク、中リスク、低リスク地域が視覚化されている
【議論の内容・結果は?】
◾️干渉結合グラフ
・干渉結合グラフは、SBAS-InSAR解析において、複数のSAR画像(レーダー画像)同士を「どの画像とどの画像を組み合わせて干渉画像を作るか」を示したものである
– 点(ノード):SAR観測日ごとの画像を表す
– 線(エッジ):画像同士をペアとして干渉処理を行う関係性を示す
・SBAS-InSARでは、長期間にわたる地形変化を正確に捉えるために、多くの画像ペアから干渉画像を作成し、それらを時系列でつなぎ合わせる
・干渉結合グラフは、その「画像をつなぐ骨組み」を示したもので、安定した結合関係を持つほど、信頼性の高い地形変動解析が可能になる
・以下の左図によると、干渉画像ペアの結合が安定しており、特に災害頻発地域でのデータの信頼性が高い
・また、右図によると、コヒーレンス値が高いことから、地形変形の検出に適した高品質なデータを提供できていることがわかる
◾️113箇所の災害検証エリア
・災害検証エリアは Duku Highway の 70–100 km と 150–220 km 区間を中心に設定されている
・特に 150–220 km 区間に災害の発生が集中しており、全113箇所の災害中100箇所以上がこの区間に分布している
・災害が発生した地点では、地形の変形量が明らかに他の地点より大きい(負の値が多い)
・変形量が負の値である場合、地形が衛星の観測線(Line-Of-Sight: LOS)方向から離れる崩落や地滑りなどの動きを示す
◾️地形変形トレンドと地質災害エリアの特徴抽出
・年間変化は地域ごとに異なるが、90–130 km間では全ての期間で沈下、205 km以南では全ての期間で隆起というパターンを検出できた
[2018年–2019年]
・中央エリア(80–130 km)で地形の低下(沈下)
・その他の地域では上昇トレンド(隆起)
[2019年–2020年]
・北中央エリア(10–130 km): 軽微な低下
・南部地域(130 km以南): 上昇トレンド
[2020年–2021年]
・特に20–40 km、60–90 km、および205–220 kmを除くほとんどのエリアで沈下
[2021年5月–2021年9月(検証期間)]
・北部地域(10–50 km): 地形の沈下
・南部地域(130–200 km): 顕著な沈下
・その他の地域: 上昇トレンド
・また、LOSデータ(衛星の観測方向に沿った変形量)とVDデータ(垂直方向の変形量)を比較すると、LOSとVDで空間分布パターンは完全に一致していて、VDの絶対値はLOSより大きいこともわかり、地形変形が主に鉛直方向で発生していることを示唆している
◾️階層型クラスタリングによる災害特性の抽出
SBAS-InSARで得られた184箇所の災害エリアの地形変動時系列データを階層型クラスタリングで分類した
・最大16クラスタで試行し、クラスタ数を変えながら「同じクラスタ内の相関(高いほど良い)」「別クラスタ間の相関(低いほど良い)」を評価
・2~10クラスタへ増やすと、クラスタ内相関は高まる一方、クラスタ間相関は低下する
・10クラスタで最適化され、その後は相関指標が安定しないため、最終的に10クラスタが妥当と判断
◾️地形変動の傾向、ハザード頻度、および感受性レベルの分類
[クラスター9]
・最頻出: 93箇所のハザード地域、10年間で1886回の災害発生
・全災害の48.5%を占める
[クラスター8]
・32箇所のハザード地域、10年間で925回の災害発生
・全災害の27.8%を占める
[クラスター4、1、2、5、7]
・中程度の災害頻度(平均184回程度)
[クラスター3、6、10]
・比較的低頻度(平均53回程度)
◾️空間クラスタとハザードクラスタ間の相関行列
・左図は、20種類に分けた空間クラスタと10種類のハザードクラスタ間の相関行列を示しており、どの空間クラスタとハザードクラスタが強く関係するかを確認できRU
・右図は、最適クラスタ数(後述の16クラス)を用いた場合の相関行列で、0.9という閾値以上の相関を持つ組み合わせを選び出すことにより、空間クラスタに災害特性を付与する
◾️CCEM適用後の空間クラスタ再分類結果TO各空間クラスタの災害感受性レベル
・どの再分類クラスタ(空間上のどの地域)が高感受性・中感受性・低感受性にあたるか明確になった
#災害評価 #山岳地域 #SARデータ #Sentinel-1 #災害地域 #地形変動 #干渉画像ペア #コヒーレンス値 #LOSデータ #VDデータ #階層型クラスタリング #災害特性 #SBAS-InSAR #空間クラスタ #ハザードクラスタが #CCEM
Green turtle tracking leads the discovery of seagrass blue carbon resources
【どういう論文?】
本論文は、グリーンウミガメ追跡を活用し、従来未解明の深海域で新たな海草藻場と炭素資源を特定する手法を提案、衛星データによる手法との比較を行う
【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️先行研究の課題
①海草藻場の分布と規模に関するデータ不足
・衛星画像解析や現地調査の限界により、海草藻場の正確な地図化が困難である
②光学的制約による衛星データの精度低下
・衛星画像は水深8m以下の浅瀬で信頼性が高いが、深度が増すにつれて海草の識別が難しくなる
・海草はグリーンアルジーやカルサイト粒子と光学的特性が類似しており、混同が起こりやすい
・特に炭酸塩の多い熱帯水域では、短い海草の葉に炭酸塩粒子が付着することで光散乱が増し、正確な検出を妨げる
◾️本研究のアプローチ
①グリーンウミガメ追跡による藻場特定の有効性
・グリーンウミガメの「餌場忠実性」(特定の餌場への継続的訪問)が、未発見の海草藻場の正確な特定に寄与する
・ウミガメ追跡は、従来の衛星画像技術では対応が難しい深度や光学的に複雑な環境でも有効である可能性がある
②動物行動を用いた分布地図化の新アプローチ
・ウミガメが移動する範囲(特に水深や地理的領域)を追跡することで、紅海における海草藻場の分布範囲を広げることを可能とする
◾️手法
①Turtle Sampling
[概要]
・グリーンウミガメ 53匹に対して GPS 衛星追跡装置 (SPLASH 10 Argos-linked FastLoc GPS) を装着する
・ウミガメが呼吸のために水面に浮上した際に位置データを取得する
・追跡期間は平均210.94 日、最大移動距離は1432.37km
[餌場の特定手法]
・Google Earth 上に移動データを投影し、軌跡の「トルチューシティ」(軌跡の曲がり具合)と交差点のパターンを分析する
・トルチューシティが高い場所は、餌を探している可能性がある
・パターンが繰り返される場合、その場所が餌場と判断される
②Seagrass Distribution and Carbon Stocks
・Allen Coral Atlas(深度20mまで対応)を衛星データとして利用する
・Allen Coral Atlasは、サンゴ礁や海草などの海洋生態系をマッピングするためのグローバルプロジェクトである
・ウミガメ追跡データ (2019–2022年) と Allen Coral Atlas のデータ (2018–2020年) を比較し、餌場と海草藻場の一致率を評価する
③Ground-Truthing
・スノーケリングやSCUBAを使用して海草藻場の存在を確認し、深度をダイブコンピュータで記録する
④Statistical Analyses
・ウミガメと Allen Coral Atlas の地点における海草の存在/不在をクロス集計し、x^2検定を実施する
・χ²検定は、カテゴリデータの独立性を評価する手法を用いて、観察された一致率が偶然かどうかを統計的に検証する方法である
⑤Carbon Content Analysis
・海草藻場はブルーカーボン(沿岸生態系に貯留される炭素)の重要な供給源である
・堆積物中の有機炭素 (Corg) は気候変動の影響を緩和する資源として注目されており、その正確な測定が必要となっている
[炭素含有量の測定方法]
・各地点で採取した堆積物を3層に分割(上部1cm、中間4cm、底部5cm)する
・各層の堆積物を乾燥・粉砕後、3M HCl(塩酸の高濃度溶液)を使用して無機炭素を除去する
・Thermo Scientific FLASH 2000 CHNS/Oという、炭素、水素、窒素、硫黄、酸素などの元素を同時に分析する装置を用いて、有機炭素を測定する
[乾燥密度 (DBD) と炭素密度の計算]
・DBD (g/cm³) を体積当たりの乾燥重量として算出し、有機炭素の割合と掛け合わせて炭素密度を得る
・各地点の炭素密度を1m深さに統合し、面積あたりの炭素貯留量を推定する
[地域全体の推定]
・炭素密度を餌場の利用分布面積に適用し、紅海全域でのブルーカーボン量を初期推定する
【議論の内容・結果は?】
◾️餌場
・グリーンウミガメ53匹を追跡し、38の餌場を特定、複数のウミガメが同じ餌場を共有するケースも確認した
・餌場は主に北緯20.25°以北(紅海北部)に集中しており、スエズ湾やアカバ湾、紅海沿岸のほぼ全ての国(ジブチを除く)でも確認した
・産卵地から餌場への移動距離は4.48km~1275.31km、中央値は360.64kmとなっている
◾️ 未知の海草藻場の発見
・追跡データで特定した38の餌場のうち、89.47%(34地点)が新たに記録された海草藻場であった
・これにより、紅海における記録された海草藻場の総数が12.93%増加した
・Allen Coral Atlas(衛星データ)由来の予測地点(30地点)のうち、実際に海草が確認されたのは40%に留まる
#炭素密度 #ウミガメ #産卵地 #紅海 #海草藻場 #AllenCoralAtlas
Classification of protected grassland habitats using deep learning architectures on Sentinel-2 satellite imagery data
【どういう論文?】
・本論文は、Sentinel-2衛星画像による草地生態系分類において、CNNとTransformerモデルを比較した結果を提示する
【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️先行研究の課題
①CNNの限界
・CNN(例: LeNet, VGG, ResNet, DenseNet)は基本的に固定サイズのカーネル(フィルタ)で局所的な特徴を抽出するため、植生全体の広域的な特徴を捉えるのが難しい
・また、大規模データセットやクラス不均衡問題への対応力に課題が残る
・微妙な植生の違いや特定の植物クラスの分類には、さらなるモデル改良が必要
②Transformerの課題
・Transformer(例: ViT)は空間的・スペクトル的特徴を効果的に利用できるが、大量のトレーニングデータや高い計算コストを必要とする
・小規模データセットやクラス不均衡の状況下では性能が不安定になる可能性がある
◾️本研究の仮説(アプローチ)
①構造の違いが分類精度に与える影響
・異なるアーキテクチャ(CNNとTransformer)の構造的な特性が、草地生態系の分類精度に影響を与える
・Transformerは長距離依存関係をモデル化しやすい一方、CNNはローカルな空間的特徴に強い
②データリッチクラス vs データスカースクラスの性能差
・Transformerはデータリッチなクラスでは高い性能を発揮するが、データ不足クラスの分類ではCNNが有利になる
◾️データセット概要
・Castilla y León地域のGISデータ層から収集された、特定の植生クラスに基づく画像を利用
・使用するデータは、Sentinel-2衛星データ(10m解像度のマルチスペクトル画像)
・合計2586枚の画像が、5つの植生クラスに割り当てられる
・以下の5つの植生クラスがデータセットに含まれている
– 一年生植物と多年生植物が混在するステップ草地(01MPG):372枚
– 季節的に水浸しになる低地の干し草草原( 02SDW):128枚
– イベリア半島のコナラ(Quercus faginea)林と低木群(03QFG):459枚
– 高山および亜高山の石灰質草原(04GSP):952枚
– 大西洋沿岸の脱石灰固定砂丘(05EAC):675枚
◾️使用モデル
・Transformer系: ViTb19, SwinV2-t
・CNN系: ResNet-50, VGG-16, DenseNet-121
【議論の内容・結果は?】
◾️F1スコアの全体傾向
・SwinV2-tとResNet-50が最も高い性能を示し、μ_weighted F1スコア(クラスごとのF1スコアを各クラスのサンプル数に基づいて加重平均した値)がそれぞれ0.951と0.950であった
・他のモデルの性能は、DenseNet-121が0.935、ViTb19が0.937、VGG-16が0.921であった
◾️クラスごとのパフォーマンス差
・データ数が多い高サポートクラス(例: 04GSP, 05EAC)では、ほぼすべてのモデルが高い精度とリコールを達成(F1スコア ≈ 0.95以上)
・中程度のサポートクラス(03QFG)でもほぼ一貫して高い性能を示すが、DenseNet-121とResNet-50が特に優れていた(F1 ≈ 0.98)
・低サポートクラス(例: 02SDW)は、すべてのモデルで性能が低下(F1 ≈ 0.65~0.82)、DenseNet-121が相対的に優れていた
◾️モデルごとの評価
①ResNet-50
・特徴: 残差接続による安定した学習が可能で、複雑なクラス( イベリア半島のコナラ(Quercus faginea)林と低木群(03QFG))で優れた性能を発揮
・結果: μ_weighted F1スコア0.950、OA(Overall Accuracy)0.952と最高のパフォーマンス
・適用: 高精度が求められる複雑な分類タスクに最適
②SwinV2-t
・特徴: 層構造により局所的・全体的な依存関係を効率的に学習し、計算コストも抑えられる
・結果: μ_weighted F1スコア0.951、OA 0.950でResNet-50にほぼ匹敵する性能
・適用: パフォーマンスと計算コストのバランスが求められる場面で有用、特に高サポートクラス(04GSP, 05EACなど)で一貫した性能を示し、精度とリコールが高い
③DenseNet-121
・特徴: 各層の出力をすべての後続層の入力として再利用するという設計が低サポートクラス(季節的に水浸しになる低地の干し草草原(02SDW))のリコールを向上
・結果: μ_weighted F1スコア0.935、OA 0.937と堅実な性能
・適用: サンプル数が少ないデータセットでの適応力が高い
④ViTb19
・特徴: 自己注意機構による精密な関係性の学習が可能だが、計算コストが高い
・結果: μ_weighted F1スコア0.937、OA 0.941と高精度だが、データ量が少ない場合に課題あり
・適用: 十分なデータ量と計算リソースがある場合に適切
⑤VGG-16
・特徴: シンプルな設計で実装が容易だが、大規模データや複雑な分類タスクには非効率
・結果: μ_weighted F1スコア0.921、OA 0.921で最も低いパフォーマンス
・適用: 小規模データセットや簡易タスクのベースラインモデル
#CNN #Transformer #Sentinel-2 #ResNet-50 #SwinV2-t #DenseNet-121 #ViTb19 #自己注意機構 #VGG-16
以上、2024年11月に公開された論文をピックアップして紹介しました。
皆様の業務や趣味を考えた時に、ピンとくる衛星データ利活用に関する話題はありましたか?
最後に、#MonthlySatDataNews #衛星論文のタグをつけてTwitterに投稿された全ての論文をご紹介します。
来月以降も「#MonthlySatDataNews」「#衛星論文」を続けていきますので、お楽しみに!