宙畑 Sorabatake

〇〇×宇宙利用

垂直統合を加速するRocket Lab、安全保障ミッション用途としても高性能な光学センサー企業のGeostを買収

Rocket Labは、アリゾナ州に拠点を置く光学センサメーカーであるGeostを買収すると発表。その概要と狙いとして推測されることを簡潔にまとめました。

2025年5月27日、ロケットの開発、打ち上げ事業に始まり、近年では衛星バスの開発に加えて、様々な企業の買収をしながら事業の垂直統合を加速するRocket Labは、アリゾナ州に拠点を置く光学センサメーカーであるGeostを買収すると発表しました。

今回の買収契約は、Geostの親会社で、ATL Partnersのポートフォリオ企業であるLightridge Solutionsとの間で、Rocket Labによる合計買収額は2億7500万ドル(キャッシュが1億2500万ドル、Rocket Labの普通株式が1億5000万ドル)となっています。さらに、収益目標の達成に応じて、最大5000万ドルの追加キャッシュが支払われるようです。
Geostは、20年以上にわたり、ミサイルアラート・追跡、情報収集・監視、地球観測、宇宙状況把握など、さまざまな用途向けの高度なEO/IRセンサシステムの提供実績を持つ企業です。これは、米国国防省が掲げる「ゴールデン・ドーム」や宇宙開発庁(SDA)が構築を進める「トラッキング・レイヤー」など、多数の衛星で構成される抗堪性のある宇宙システムの構築を目指す動きに、重要な役割を果たします。

宙畑メモ:ゴールデン・ドームとは
トランプ米国大統領が提唱する次世代型のミサイル防衛構想のこと。多数の衛星に搭載された高性能なセンサをはじめとする警戒システムで、弾道ミサイルだけでなく、極超音速ミサイルやドローンといった新たな脅威に対しても早期かつ正確に探知することで、米国本土の防衛能力を高めることを目指している。

宙畑メモ::トラッキング・レイヤーとは
米宇宙開発庁(SDA)が主導して構築を進めている、多数の低軌道(LEO)衛星で構成されるミサイル追跡ネットワークのこと。広範囲に配備された衛星搭載の電気光学/赤外線(EO/IR)センサーなどを用いて、極超音速ミサイルを含む敵国からの攻撃を全球的に探知し、リアルタイムで追跡データを提供することを目指している。米宇宙開発庁は、これらの衛星で構成される開発・配備の各フェーズをTrancheと呼んでおり、技術実証のためのTranche 0、技術強化や生産効率化のためのTranche1、全球的なカバレッジや高精度な赤外線センサーを獲得するためのTranche2と続く。Tranche0は2023年から打ち上げ開始し、2024年には全衛星の投入が完了している。Tranche1とTranche2は、それぞれ2025年の夏、2027年4月ごろの打ち上げが予定されている。

この買収は、Rocket Labにとって、同社の豊富なポートフォリオに、高度なEO/IRセンサシステムをはじめとする衛星ペイロード事業が加わることを意味します。ロケットの開発と打上げを生業とするRocketLabにとっては、需要が見込まれる衛星コンステレーションの構築に寄与する企業の買収によって、高頻度なロケット打上げ機会を得ることにつながるのでしょう。

また、Geostが持つプロダクトや知的財産、顧客、製造設備・研究所、スキルや知識を持つ社員などのアセットを所有することになります。具体的には、115名の熟練したスタッフが新たに加わることになり、同社の従業員数は、グローバルで2600名以上となります。

Rocket Lab CEOである、ピーター・ベックさんは次のようにコメントしています。

「Rocket Labは、従来の宇宙産業に革命を起こすべく設立されました。私たちは、包括的でミッションクリティカルな宇宙ソリューションの提供を拡大することで、まさにその目標を実現しています。Geostの買収により、高度なEO/IRセンサシステムを自社で保有し、安全で迅速な、費用対効果の高いシステムを大規模に扱うことができるようになります。これらの技術により、宇宙機は脅威をリアルタイムで検知、識別、対処することが可能になります。米国とその同盟国にとって、エンドツーエンドの宇宙技術を提供する信頼できるプロバイダーとして、私たちの立場が強固となり、より優れたスピード、インテリジェンス、そして運用管理が可能になります。」

Geostのゼネラルマネージャーで、Lightridge Solutions CEOである、ビル・ガトルさんは次のようにコメントしています。

「Rocket Labがエンドツーエンドの宇宙システムを拡大していく中で、Geostの高度な光学センサ技術を獲得することは自然な流れです。高性能な技術を自社で保有することで、Rocket Labは政府機関および民間ミッション向けに、迅速にフルスタックソリューションを提供することができます。これらのシステムを大規模に生産できるインフラを持つ、Rocket Labは、高度な宇宙ソリューションに対する需要の高まりに応えることができます。垂直統合型ポートフォリオに新たな高性能の衛星開発技術(原文はpayloadとなっている箇所を宙畑編集部で意訳)が加わることで、ミッションの能力が向上するだけでなく、Rocket Labのエンドツーエンドの宇宙システムプロバイダーとしての地位も向上します。」

この買収は、2025年下半期には完了する予定です。Rocket Labは、Geostの買収を通じて、宇宙事業における垂直統合をさらに進め、安全保障分野の顧客のニーズに応えていくことが予想されます。

【参考】
Rocket Lab Enters Payload Market with Agreement to Acquire Geost, Positioning Itself as Disruptive Prime to U.S. National Security

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