1プロジェクト当たり最大600万円の支援!神奈川県の衛星データ利活用プロジェクト推進事業始まる
2025年07月10日、神奈川県は、県内で実施する衛星データの利活用プロジェクトを募集し、モデルケース創出に向けた事業化支援を実施することを発表。その概要と神奈川県の土地利用状況や産業についてまとめました。
2025年07月10日、神奈川県は、県内で実施する衛星データ(※)の利活用プロジェクトを募集し、モデルケース創出に向けた事業化支援を実施することを発表しました。
※「衛星データ」は、「衛星観測データ」と「衛星測位データ」の両方が対象となっています
本記事では、本プロジェクトの概要と期待についてまとめました。
神奈川県の公式HP
(1)県内総生産第4位の神奈川県が期待する衛星データの価値と展望
募集内容を見ると、以下の3点すべてを満たすものが求められるとのこと。
1.衛星データを活用し、新たなビジネスモデルの創出を目指す取組
2.衛星データを活用し、県内産業の活性化と宇宙関連産業の循環に資するプロジェクト
3.プロジェクトで創出した製品・サービスを事業化し、県内企業等に提供することを目指すプロジェクト
衛星データを活用した神奈川県発の経済活性化が求められているのだと読み取れます。
ちなみに、神奈川県は、東京都、大阪府、愛知県に次ぐ、県内総生産が35兆1594億円で第4位(フィンランドやポルトガルの国内総生産に匹敵)という日本の中でも有数の経済規模を誇る都道府県です(内閣府、県民経済計算2022年度分より)。
本プロジェクトの募集要項には「衛星データを用いた地域課題の解決や新たなサービスの創出といった取り組みは、県内産業の高度化や地域活性化に大きく寄与すると考えています。」との記載がありました。
それほど、衛星データが神奈川県にとって、経済規模をさらに拡大し、地域課題の解決にも資する重要な技術として認識され、期待されているのでしょう。その期待の現れとして、本事業で採択されたプロジェクトは、1プロジェクト当たり最大600万円の支援がされ、採択予定のプロジェクト数は3件程度となっています。
今回のプロジェクトのきっかけや事業目的について、神奈川県の担当者の方に伺ったところ、以下の回答をいただきました。
「本県では、県内企業に衛星データのビジネス利活用を促すことで、新たな価値創出や地域課題の解決につなげ、産業全体の活性化を目指しています。近年、宇宙関連産業は官主導の開発から官民連携へと移行し、急速に市場が拡大しています。特に衛星データ関連市場は全体の約7割を占めるなど、成長産業として非常に期待される分野です。
一方で、衛星データの災害対応やインフラ管理などへの有効性は広く認識されつつあるものの、特に中小企業においてはその将来性やビジネスとしての可能性が十分に知られておらず、利活用が進んでいないのが現状です。そうした課題を受け、衛星データビジネスの普及促進を通じて産業全体を活性化させ、地域課題の解決にもつなげていく必要があると考えています。」
また、今回のプロジェクトから生まれた衛星データの利活用事例は、今後どのような展開をしていくことが理想かという質問には以下のような回答をいただきました。
「まずは県内企業が衛星データ事業に参入しやすくなる環境を整え、事業の拡大を促進していきたいと考えています。その先には、各業界での横展開や労働力不足の解消といった波及効果が期待されます。さらに衛星データの利用が増えることで、衛星の量産体制が進み、最終的には地域の税収増といった形で県全体の発展にも寄与することを理想としています。」
衛星データの利用が増えることで、衛星開発の機数も増え、製造業としての売上の拡大も見込まれているということから、今回の取り組みが衛星データ利用の推進だけでなく、宇宙産業に関わるサプライチェーン全体を押し上げる取り組みとして期待されていることが分かります。
(2)全国で5番目に小さい面積で、人口は第2位。神奈川県の土地利用、最も大きいのは?
では、神奈川県はどのような特徴のある県なのでしょうか?
神奈川県は全国で5番目に小さい面積で、人口は第2位、人口密度は第3位。神奈川県のHPにある「神奈川県の土地利用」のページにも「さまざまな産業が集積している、全国でも有数の過密な県です。また首都・東京に近く、交通の利便性も高いため、開発の圧力が非常に強く、農地や森林から宅地へ土地利用の転換が進んでいます。」と記載があり、北海道のように広い土地をどのように効率的に管理・利用するのかという観点ではなく、面積が小さい中で、どのように効果的にその土地を活用するかという観点が非常に重要な県だと考えられます。
神奈川県の地域区分別の面積に関するデータは以下の通りです。

データを見ると、都市地域が最も大きい割合を占め、次いで森林地域、自然公園地域、農業地域となっています。
ちなみに、産業別の県内総生産のランキングは以下の通りです。衛星データ利用のアイデアを検討する際の参考になりましたら幸いです(令和4(2022)年度神奈川県県民経済計算より)。

(3)募集概要
募集期間や応募資格などの募集概要は以下の通りです。
支援期間:覚書締結日から令和8年2月28日まで
応募資格:応募者は、プロジェクトメンバーの中に神奈川県内に事業拠点を有する企業が含まれていることに加え、全てのプロジェクトメンバーが日本国内に住所を有する国内法により設立された法人であること、神奈川県による指名停止期間中でないこと、反社会的勢力との関与がないことなどの要件を満たす必要があります。
募集期間:令和7年7月10日から令和7年8月6日17時まで(必着)。ただし、企画提案書の提出に先立ち、令和7年7月30日17時までに「応募意思表明書」の提出が必要となります。
その他の詳細は募集要項をご覧ください。
(4)衛星データ利用のヒント
最後に、衛星データ利用のアイデアを検討するうえでのヒントとなり得る参考情報を以下に並べました。もしよろしければあわせてご覧ください。
◇衛星観測データの利用事例
・【167の実証事例のカテゴリ別採択割合推移】令和6年度の衛星データ無料利用事業者の公募第2回目がはじまる | 宙畑
・【随時更新】衛星データ利用事例を総まとめ! あなたにおすすめの事例がきっとわかる!? | 宙畑
・衛星データ利用事例集(JAXA)
◇衛星測位データの利用事例
・準天頂衛星「みちびき」を利用した実証事業の公募開始。測位サービスの実用化を後押し | 宙畑
・利活用事例集(みちびき公式サイト)