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Juno PropulsionがNASAのTechLeap Prizeを受賞、民間企業初となる回転デトネーションエンジンを世界で初めて実証へ【宇宙ビジネスニュース】

回転デトネーションエンジン(RDE)を、商用機としては、世界で初めて軌道上実証するミッションに挑むJuno PropulsionがNASAのTechLeap Prizeを受賞。回転デトネーションエンジンの概要と合わせて紹介します。

2025年7月23日、米国の宇宙スタートアップであるJuno Propulsionは、NASAのTechLeap Prizeを受賞したことを発表しました。この受賞により、同社は次世代の宇宙推進技術として注目される回転デトネーションエンジン(RDE)を、商用機としては、世界で初めて軌道上実証するミッションに挑みます。

宙畑メモ:回転デトネーションエンジン(RDE)とは
デトネーション(爆轟)と呼ばれる、衝撃波で燃料と酸化剤の混合ガスを瞬間的に圧縮・爆発させる現象を、リング状の燃焼器内で連続的に回転させて推力を得るエンジンです。炎が燃え広がるデフラグレーション(爆燃)を活用する従来のエンジンに比べ、原理的に熱効率が高く、より少ない燃料で大きな推力を生み出します。また、ターボポンプ等を不要とし構造を簡素化できる可能性があり、次世代の宇宙探査機や極超音速機への応用が期待されています。

Juno Propulsionは、回転デトネーションエンジン研究で有名なパデュー大学の博士課程を修了したエンジニア2名によって設立されました。科学技術の事業化を支援する非営利団体Activateのフェローシップにも選ばれて注目を集めています。

Credit : Juno Propulsion

回転デトネーションエンジンの研究開発は、世界中の宇宙機関や企業で活発に進められています。日本では、JAXAと名古屋大学のチームが研究をリードしており、2021年には宇宙空間での実証実験に成功しています。

この実験では、回転式(RDE)とパルス式の2種類を実証しており、回転式については高度約200kmで6秒間の連続動作を行い、地上試験とほぼ同じ性能で、安定動作することを確認できました。2024年11月には、液体メタンと液体酸素を推進剤とするRDEを用いた観測ロケットの打ち上げ・軌道上での動作確認にも成功し、着実な成果を上げています。

海外でも、NASAやPratt & Whitneyが、月面探査や防衛分野におけるミサイルや極超音速機への適用を目指して、地上での燃焼試験を重ねており、技術の実用化に向けた競争が激化しています。

Juno Propulsionは、今回のNASA TechLeap Prize受賞により、民間企業が開発を進める商用機として世界で初めてRDEを軌道上で実証するという重要な役割を担うことになりました。同社が成功すれば、RDEが研究開発の段階から、実用・商用利用へと移行する大きな転換点となります。
Juno Propulsion CEOのAlexis Harrounさんは、今回の受賞について次のように述べています。

「NASAからの評価を光栄に思いますし、私たちが未来の化学推進と信じる技術を実証することが非常に楽しみです。回転デトネーションは、推力効率、質量の削減、システムの簡素化において大きな利点があり、これを宇宙に初めて持っていけることを大変嬉しく思います。」

今回の受賞は、NASAがJuno Propulsionの技術力と将来性を認めた分かりやすい成果であり、同社への投資や、将来のNASAミッションへの採用、衛星メーカーとのパートナーシップ締結の機会が増えると期待されます。

また、Juno Propulsionは、2026年夏には小型衛星にRDEを搭載し、比推力や長時間運転などの評価項目を設定した軌道上実証を計画しています。この実証が成功すれば、人工衛星の軌道投入や軌道変更、月や火星を目指す深宇宙探査において、燃費が良くリーズナブルな推進システムの実現が期待されます。

【参考記事】
Juno Propulsion Awarded NASA TechLeap Prize to Fly First-Ever Rotating Detonation Engine in Orbit
Bold Steps Toward Space: How Juno Propulsion Helps Fuel the Space

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